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Q199【自家用車】仕事とプライベートで利用する固定資産購入時・売却時の消費税・所得税上の取扱い・仕訳は?/みなし譲渡との関係

最終更新日:2023/06/06

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Q199 【自家用車】仕事とプライベートで利用する固定資産購入・売却時の消費税・所得税上の取扱い・仕訳は?/みなし譲渡との関係

個人事業主が、仕事兼プライベートで利用する車を購入するケースもあると思います。
こういった場合、消費税は、「購入額全額」に課税され、支払う必要があります。一方、個人事業主として「消費税納税額」を計算する際、支払った消費税につき、全額仕入税額控除ができるのでしょうか?また、売却する場合も「売却額全額」に消費税が課税されますが、上記同様、売却額全額が「課税売上」となるのか?という論点です。

今回は、個人事業主が「仕事兼プライベート」で利用する固定資産を購入・売却する場合の消費税の取扱いにつき解説します。

 

1. 購入時・売却時の消費税の取扱い

個人事業主が、仕事とプライベート両方で利用する資産は「家事共用資産」と呼ばれます。こういった「家事共用資産」は、所得税上はもちろん、消費税上も、事業利用部分と家事利用部分を区分する必要があります。

 

(1) 購入時

「家事共用資産」を取得した場合、消費税上は、事業使用部分と家事使用部分を区分し、家事使用部分については、課税仕入から除外します。また、家事使用部分に対応する消費税支払額は、所得税法上、必要経費に算入することができないため、費用勘定ではなく「事業主貸」で処理します。

事業使用割合・家事使用割合の算定については 「その資産の消費又は使用の実態に基づく使用率、使用面積割合等」の合理的な基準により計算を行います。

(消費税基本通達11-1-4 家事共用資産の取得)
個人事業者が資産を事業と家事の用途に共通して消費し、又は使用するものとして取得した場合、その家事消費又は家事使用に係る部分は課税仕入れに該当しないことに留意する。この場合において、当該資産の取得に係る課税仕入れに係る支払対価の額は、当該資産の消費又は使用の実態に基づく使用率、使用面積割合等の合理的な基準により計算するものとする。

 

(2) 売却時

「家事共用資産」を売却した場合、購入時と同様、家事使用部分については資産の譲渡の対価に該当せず、課税売上にはなりません

(消費税基本通達10-1-19 家事共用資産の譲渡)
個人事業者が、事業と家事の用途に共通して使用するものとして取得した資産を譲渡した場合には、その譲渡に係る金額を事業としての部分と家事使用に係る部分とに合理的に区分するものとする。この場合においては、当該事業としての部分に係る対価の額が資産の譲渡等の対価の額となる

 

2. 具体例

● 個人事業主が2023年1月1日に自動車を660(税込)で購入した。
● 上記車両を2023年10月1日に、660(税込)で売却した。
● 上記車両にかかる事業利用割合は30%とする。
● 簡便的に、取引は上記のみとする。消費税は税抜処理とする。
● 売却にかかる減価償却費は、譲渡所得の経費として計上し、事業所得の計算上、期中の減価償却は行わない。

 

(1) 購入時の会計処理

購入時の消費税支払額は660÷1.1×10%=60。当該消費税60のうち、事業用30%は仕入税額控除の対象となり、家事用70%は「事業主貸」勘定で処理を行います。所得税の計算上利用する「事業利用割合」を利用して、消費税の仕入税額控除についても、按分計算を行います。

借方貸方
車両運搬具(課税)(※1)
車両運搬具(不課税)(※2)
仮払消費税(※1)
事業主貸(※2)
180
420
18
42
現金660

(※1) 600×30%=180(車両)、60×30%=18 (事業部分の消費税)
(※2) 600×70%=420(車両)、60×70%=42 (家事部分の消費税)

 

(2) 売却時の会計処理

売却時の消費税受取額は660÷1.1×10%=60。当該消費税60のうち、事業用30%は課税売上、家事用70%は「事業主借」勘定で処理を行います。取得時と同様の「事業利用割合」を利用して計算を行います。

借方貸方
現金660車両
車両
仮受消費税(※1)
事業主借(※2)
180
420
18
42

(※1) 60×30%=18(事業部分の消費税)
(※2) 60×70%=42(家事部分の消費税)

 

【売却損益が生じる場合】

なお、上記例題は、取得額=売却額としておりますが、簿価と売却額が異なる場合は、売却損益が生じます、この場合、
売却損益は譲渡所得となるため、譲渡損益部分は、「事業主勘定」で仕訳を行います。(Q123参照)。
売却時の仕訳は、消費税を正しく認識するため、特殊な仕訳の入力方法が必要ですQ37参照)。

 

(3) ご参考 税込経理の場合の仕訳

参考に、「消費税税込経理」の場合の会計処理を記載します。

借方貸方
購入時車両運搬具(課税)
車両運搬具(不課税)
198
462
現金660
売却時現金660車両
車両
198
462

 

3. 車両関連経費の消費税の取扱い(ガソリン代・高速代、修理代等)

家事共用資産に該当する固定資産については、関連諸費用、例えば修繕費やガソリン代なども、固定資産本体と同様の考え方となります。家事使用部分については課税仕入にすることはできません。家事使用部分の消費税支払額も、固定資産本体価格と同様に、所得税法上必要経費に算入できないため、費用勘定ではなく「事業主貸」で処理します。事業利用割合の考え方は、車両本体と同じ割合で考えるのが一般的です。

【具体例】
個人事業主が、建物修繕費を5,500(税込)支払った。事業利用割合は30%。

借方貸方
修繕費(課税)
仮払消費税
事業主貸
1,500
150
3,850
現金5,500

(※) 5,500÷1.1×30%=1,500(修繕費)、1,500×10%=150 (修繕費にかかる消費税)
 

4. ご参考 みなし譲渡の規定の適用有無

(1) 原則

消費税上、個人事業者が、事業用資産を家事のために「消費・使用」した場合には「みなし譲渡」の規定が適用され、事業として対価を得て行われた資産の譲渡があったものとみなされます(消法4条5)。

 

(タックスアンサー No6317 個人事業者の自家消費の取扱い)
個人事業者の自家消費とは、個人事業者が棚卸資産または棚卸資産以外の資産で事業用に使用していたものを家事のために消費または使用することをいいます。
個人事業者が自家消費を行った場合は、その資産を消費または使用した時のその資産の価額、すなわち時価に相当する金額を課税標準として消費税が課税されます。・・

上記の規定は「使用」も含まれますので、原則として、固定資産を自家使用した場合も含まれますQ15参照)。

 

(2) 例外

ただし、個人事業者が事業用として購入した自動車などを、日常生活などのプライベートのために使用(消費)した場合は、「みなし譲渡」の規定が適用されないことが明確に記載されています。

(消費税基本通達5-3-2 使用の意義)
法第4条第5項第1号《個人事業者の家事消費等》に規定する「使用」とは、同号に規定する資産の全部又は一部を家事のためにのみ使用することをいうのであるから、例えば、事業の用に供している自動車を家事のためにも利用する場合のように、家事のためにのみ使用する部分を明確に区分できない資産に係る利用は、同号に規定する「使用」に該当しないことに留意する。(平27課消1-17により改正)

 

(3) 結論

一般的に、自動車等については、家事使用部分を明確に区分することは難しいため、「みなし譲渡」の規定の適用を受ける「使用」には該当しません。ただし、税務当局の最近の動きとして、個人事業主廃業の場合などは、私用に転用されたと考え、課税売上を認識する解釈のようですので、注意が必要です。

また、車両等以外、例えば建物の利用の場合などで、家事のために使用する部分が明確に区分できる場合は、「みなし譲渡」の規定が適用されるケースもあると思われます。みなし譲渡の規定は、個人事業者の同一生計親族が使用した場合も含まれます(消基通5-3-1)。

なお、事業用資産を一時的に家事使用した場合も、みなし譲渡の規定の適用はないことが明文化されています。

 

(消費税基本通達11-1-4 家事共用資産の取得)
・・・なお、個人事業者が、課税仕入れに係る資産を一時的に家事使用しても、当該家事使用について法第4条第5項第1号《みなし譲渡》の規定の適用はないのであるから留意する。

 

5. 参照URL

(消費税基本通達11-1-4)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/01.htm

(消費税基本通達10-1-19)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/10/01.htm

(消費税基本通達 5-3-2)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/05/03/01.htm

 

6. YouTube

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