行政書士

株式会社

1.株式会社とは?

株式会社は、株式を発行して集まった資金で事業活動を行う会社のことです。
営利(=利益の獲得)を目的としています。
法人の中では一番代表的な形態となります。


2.株式会社の特徴

株式会社の特徴は、下記の4つです


(1)出資者と経営者が分離(所有と経営の分離)

株式会社では、「出資者と経営者」が完全に分離されています。
株式会社は、資金の出し手である株主と別に、経営は「経営者」に委託することができます。
例えば、出資者と別に、経営のプロを雇って社長にすることができる点に特徴があります。


(2)社員の地位は、細分化された「株式」

株式会社での社員の地位は、「細分化された」株式という形となります。 出資単位を細かくすることで、世間から資金を集めやすくする工夫がされています。
また、この「株式の地位」は、原則として自由に譲渡ができますので、投資資金の回収も保証されています。


(3)株主には、株式数(出資額)に応じた権利がある

株式会社では、原則として、1株式に1議決権があります。
また、剰余金配当や残余財産分配の際も、株式数(=出資金額)に応じた配分が行われます。


(4)株主は、間接有限責任

株式会社の株主は、出資額以上に責任を負うことはありませんので、リスクが限定されます(間接有限責任といいます)。例えば、会社が倒産した時でも、株主は、既に支払った出資額以上に請求されることはありません。
一方、個人の場合は無限責任ですので、デフォルトした場合は、個人の全財産から返済する義務があります。


3.株式会社のメリットデメリット

株式会社のメリットとデメリットを、個人・合同会社と比較します。 メリットのある方に色を付けています。


(1)個人と比較

株式会社個人
社会的信用度高い低い
出資者の責任出資者は有限責任事業主は無限責任
設立・解散手続設立・解散ともに手間がかかる簡単(開業届・廃業届を提出するのみ)
設立・解散費用高い0円
決算処理個人と比較すると複雑普通
税金●赤字繰越期間 10年 ●本人・家族への給料を損金可 ●税率は固定 (実効税率約30~35%) ●経費の範囲は広い●赤字繰越期間 3年 ●本人、家族への給料は損金不可 ●所得に応じた累進課税 (最高実効税率55%程度) ●経費の範囲は狭い
税金(均等割)赤字でも均等割の負担がある (7万円程度)赤字の場合、税金はゼロ
保険・年金健康保険・厚生年金国民健康保険・国民年金
その他法人に限定される取引も可 (ネットショッピングモールなど)社会保険に加入できない
選択される方々の特徴取引先との信頼関係上、法人の必要がある方手軽にビジネスを始めたい方

●保険・年金の観点では、法人・個人どちらがお得か?は、一概には言えません。 例えば、お一人で経営される法人の場合は、ご自身の負担額だけを考えればよいので、厚生年金は、国民年金の上乗せ部分となり、将来の「返戻金」の面ではお得とも言えます。 一方、従業員がいる場合は、従業員部分の「会社負担額」がありますので、法人の方が負担額は高くなります。


(2)合同会社と比較

株式会社合同会社
社会的信用度合同会社よりも一般的認知度は低い
出資者の責任出資者は有限責任同左
最低資本金1円以上1円以上
代表者の名称代表取締役代表社員
議決権持ち株数に応じた議決権社員1人に1議決権
設立・解散手続手間がかかる手間は少ない(設立時の定款認証不要)
設立費用高い ●登録免許税最低15万円 ●定款認証手数料5万円安い ●登録免許税最低額6万円 ●定款認証不要(手数料0円)
公告義務ありなし
社員(取締役)の任期最大10年(譲渡制限ある会社)
利益配分の自由度低い(出資に応じた配分のみ)高い(定款で配分比率の定めOK)
意思決定出資者≠経営者の場合は、意思決定が遅れる場合あり出資者=経営者のため、意思決定は早い
役員任期ありなし(定款で定めない限り) ⇒定款書換手数料なし
ファイナンス株発行で大量な資金調達可能大量の資金調達は難しい
その他将来株式公開も可能●株式公開はできない ●出資者退社により出資額(資本)が減少する場合あり

●税務上の決算処理、税率などに両者の違いはありません。 ●社会保険についても、両者の違いはありません。

4.株式会社運営の留意事項


(1)法人名・ドメインはどうするか?

法人名称は、「同一住所に同一商号」の法人登記はできません。
ただし、実際に、同じビル内に同じ会社名が登記される事例は考えにくいので、あまり気にする必要はありません
(法務局オンライン検索で、調査可能)。

実務上は、ドメイン登録の方が重要です。
ドメインに法人名を入れる場合、他に登録済の「ドメイン」であれば登録できないので、ドメイン登録がないか?事前に確認しておきましょう。


(2)資本金の金額をいくらにするか?

設立時は、資本金をいくらにするか?を決める必要があります。 資本金は「登記事項」ですので、設立後は、誰でも登記簿を閲覧して把握することができます。もちろん、資本金額が大きい方が、信頼性は高まります。

ただし、税務上は、「資本金等の額」によって税額が変わるものがありますので、単純に「資本金」を高くするのがお得とは言えません。
例えば、赤字でも支払が発生する「法人住民税均等割」は、資本金等の額が「1,000万超」になると税額が変わります。
また、1,000万以上の資本金で設立した場合は、初年度から「消費税課税事業者」になります。

これらを考えると、設立時の資本金は、1,000万円未満にしておくことが無難かもしれませんね。

(3)報酬の金額をどうするか?

税務上、役員報酬は、原則、1年間は変更できません。
例えば、設立初年度決算間近になって、利益がでそうだからといって報酬額を増額することはできないんですね。

つまり、設立後ある程度の期間内に、1年間の利益を予想しつつ、役員報酬の額をいくらにするか?を決定しておく必要があります。


(4)決算月はいつにするか?

特に決まりはありませんので、自由に決定できます。

ただし、税務上は、設立後2年間は、原則的に消費税が「免税」になりますので、初年度の期間が長くなるように、決算月を設定するケースが多いです。

例えば、3月設立なら、2月決算にすれば、初年度が一番長く取ることができます。


(5)設立日をどうするか?

設立日も特に決まりはありません。例えば、「大安」を設立日にする方もいます。

大した話ではないですが、税務上は、会社設立日を「月の初日」つまり1日にするよりも、2日以降にした方が、法人住民税均等割が1カ月安くなります。均等割は、日の端数は切り捨てられますので。


(6)事業目的をどうするか?

定款には「事業目的」を記載します。事業目的とは「何をする会社なのか」を対外的に明示するものです。
外部に依頼される方は、司法書士様等が「事業目的」のサンプル等を提案してくれますので、そこまで気にしなくてよいと思います。

なお、設立と同時に金融機関からの融資を予定されている方は、会社のビジネスが「事業目的」に記載されているか?がチェックされる可能性があります。

また、許認可が必要な業種の場合は、事前に行政窓口に「記載に必要な文言はこれで間違いないか?」確認しておくことも大切です。


(7)株式譲渡制限をどうするか?

株式譲渡制限会社とは、「株式譲渡の際に、取締役会や株主総会の承認が必要な会社」です。
株式譲渡制限会社では、好ましくない人物が、株主になることを未然に防止できますので、一般的には、この「株式譲渡制限会社」を選択する中小企業がほとんどだと思います。

その他、「譲渡制限会社」の一般的なメリットを記載します。
●役員の任期延長可、株主総会招集手続きの簡略化
●取締役会の設置義務なし。取締役・監査役の資格を限定できる


(8)取締役会・監査役の設置有無?

株式譲渡制限会社は、「取締役会」の設置義務がありません。
取締役会を設置しない限り、監査役の設置は任意となりますので、中小企業の場合は、譲渡制限会社にして、取締役会も監査役を置かない会社が多いですね。


(9)取締役の任期をどうするか?

株式譲渡制限会社は、取締役の任期は10年まで延長可能です。中小企業の場合は、最大任期の10年にする場合が多いです。


5.株式会社設立の流れ(発起設立・現物出資なしの場合です)


(1)設立費用・設立に要する期間

実費として、最低20万円程度はかかります。実費と司法書士等手数料を合わせると、概ね30万程度かと思います。
●設立に要する期間は、おおむね2週間程度です。


(2)株式会社設立の流れ

①定款の作成

●定款とは、事業目的や根本規則などを規定したものです。設立時には必ず作成しないといけません。
●定款には、必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」と、記載しなければ効力が生じない「相対的記載事項」、任意に定款に記載しておける「任意的記載事項」があります。


(絶対的記載事項)

「絶対的記載事項」は、1つでも欠けていると、定款全体が無効となります。


●目的
●商号
●本店の所在地
●設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
●発起人の氏名及び住所
●発行可能株式総数


(相対的記載事項・任意的記載事項)

定款で定めなければ、法の条文通りの効力が発生しますので、法の効力を変更したい場合は、定款で「相対的記載事項」を定めます。記載しておかなければ効力が生じないものですので、絶対的記載事項と同じくらい、大切な事項となります。


代表例を記載します(他にもたくさんあります)。


●株式の譲渡制限に関する規定
●取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、委員会、代表取締役の設置
●取締役会の招集通知期間の短縮
●取締役会の決議の省略
●剰余金配当の定め


②定款の認証

定款作成後は、公証役場で公証人による「定款の認証」を受けます。
「定款の認証」とは、定款が正当な手続きで作成されたことを証明するものです。
この認証を受けなければ、定款の効力は生じません。


場所その法人所在地を管轄する法務局に所属する公証役場
必要書類●定款3部
●発起人全員の印鑑証明書
●発起人全員の実印+身分証明書
●収入印紙”
料金手数料5万円、収入印紙4万円

(注意事項)

電子定款の場合は、印紙代4万円がゼロになります
●定款には、発起人全員が実印を押しますが、定款末尾に発起人全員の「捨印」が押印されていれば、訂正が容易です。


③資本金の払込(現物出資は除く)
払込資本金を発起人個人の銀行口座へ払込みます。
書類作成「払込証明書」を作成し、払込後の通帳コピー
(表紙、表紙裏、振込金額記載ページ)を綴じて、割り印。

(注意事項)

●通帳は、既存の個人の通帳でOK。払込の根拠が残るよう、通帳が発行されるタイプの銀行
振込方法は、氏名が履歴で残る「振込」で行います(ネット銀行での払込も可)。
●資本金の払い込みは、必ず「定款認証日よりも後の日付」で行います
(登記書類を法務局で受理してもらえない可能性あり)
●ここでの印鑑(払込証明書や割り印)は、個人実印ではなく、「会社の実印」、つまり代表取締役印です。


④役員の就任承諾書の入手
取締役・監査役に就任される方住所・署名・捺印(印鑑証明と同じもの)をした「就任承諾書」が必要。
代表取締役に就任される方取締役会非設置会社原則、各取締役が代表権を有するが、定款や発起人の決議で代表取締役を定めることも可能。
この場合は、設立時代表取締役に就任する旨の承諾は、原則必要なし(※)
取締役会設置会社設立時代表取締役を選定し、代表取締役の「就任承諾書」が必要。

(※)設立時取締役の互選により、代表取締役を選定した場合のみ必要


⑤設立時代表取締役の選定決議書の入手
取締役会非設置会社以下の場合は不要。 ●代表取締役を置かない場合。 ●定款や発起人決議で代表取締役を決定した場合。
取締役会設置会社必要

⑥登記申請書類の作成&提出

事務所所在地を管轄する法務局に、設立登記書類を提出します。

必要書類留意事項
設立登記申請書+印紙貼付台紙登録免許税 (最低15万円)
定款●公証人認証済の定款を添付。
●電子認証の場合はCDR等で提出。
払込証明書●通帳コピーと綴じたものを提出
発起人の決定書 (発起人全員押印)●定款で本店所在地を定めている場合は不要。
●定款で、本店所在地を最小行政区(例 港区など)までしか定めなかった場合には、本店の具体的所在地を発起人の過半数一致で決定した「発起人の決定書」を添付。
設立時役員(取締役・代表取締役・監査役)の就任承諾書ただし、取締役会非設置会社の場合は、以下の場合、「代表取締役の就任承諾書」は不要。
●取締役1人の場合。
●定款や発起人決議で代表取締役を決定した場合。
印鑑証明書●取締役会非設置会社の場合は、各取締役の印鑑証明書が必要。
●取締役会設置会社の場合は、代表取締役の印鑑証明書のみでOK。
印鑑届出書●法人印鑑(代表者実印)を届出する書類。
登記事項を記録したCDRなど●申請書に記載する事項のうち、登記すべき事項を、CD-R等に保存して提出。

登記申請書類を提出して、約1~2週間で登記が完了し、株式会社の設立が完了します


⑦税金・社会保険・労働保険関係の届

法人設立完了後、税務署、県税事務所、市役所、年金事務所、労働局、ハローワークなどに、それぞれ提出物があります。詳しくは、Q99をご参照ください。


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