税金の豆知識
Q70【法人住民税均等割】移転した場合の月割計算は?2か所以上の複数拠点の均等割は倍?
最終更新日:2023/11/1754515view
法人が支払う都道府県民税・市町村民税は、法人税や所得に応じて課税される「法人税割・所得割」のほか「均等割」という税金があります。
「均等割」は儲けに関係なく、地域社会の一員として支払う会費的なイメージです。
法人税割は、法人税を納めている法人、つまり黒字の法人だけが支払うのに対し、「均等割」は赤字でも課税される点が特徴です。
目次
1.均等割額の算定方法
均等割の金額は、「資本金等の額」や「従業者の数」という「法人の規模」を示す2つの指標で金額が決められています。
法人の規模に応じて区分けされ、同一区分内においては、同一の額が法人に課税されます。
(1) 都道府県民税
都道府県民税は法人の「資本金等の額」で、均等割の金額が決められます。
例えば、兵庫県の場合は、資本金等の額が1,000万円以下の場合は、均等割は22,000円です。
(2) 市町村民税
市町村民税では法人の「資本金等の額」と「従業者数」で均等割の金額が決まります。
例えば、神戸市の場合は、資本金等の額が1,000万円以下で、従業員数の数が50人以下の場合、均等割は50,000円です。
2.「資本金等の額」って何?
指標の1つ、「資本金等の額」って・・・いったい何のことを指すのしょう?
通常は、法人税申告書の別表5(1)Ⅱの「差引合計欄」の金額となります(法人税法上の「資本金等の額」 法人税法第2条第16号)
ただし、地方税上の「資本金等の額」は、無償増資があれば加算、「無償減資」がある場合は、減算調整した金額となります( 地方税法292条第1項第4号の5による調整)。
また、地方税上の「資本金等の額」と「資本金に資本準備金を加えた額」と比較して大きい方の金額が均等割の税率区分の基準となります。
詳しくは、「資本金等の額って何?」を参照ください。
3.「従業者の数」って何?
2つ目の指標、「従業者の数」は、以下の点に注意が必要です。
(1) アルバイトや役員・日雇い労働者含む
給料の支払を受ける従業員に加えて、パートや役員等も含みます。
なお、アルバイト等の人数については、直近月の総勤務時間数÷170hで算定した人数でもOKとなってます
(小数点以下の端数人数は「切上」)。
(2) 期末日で判断
従業者数は、期末に在籍している人数で判断します。例えば、期中で事業所を閉鎖した場合は、期末従業員「ゼロの欄」の均等割額となります。
従業員ゼロでも均等割は発生しますので、閉鎖するまでの月数に対する均等割は、支払が必要です
また、「均等割」の従業者数と、「法人税割・所得割」の従業者数は微妙に異なりますので、下記6を参照ください。
(3) 予定申告の場合の均等割の従業者数は?
「中間決算日末」の従業員数を利用します。
4.事業所が2つ以上の場合は?
(1) 均等割は増える
均等割は、事務所又は事業所がある自治体ごとに納付する必要がありますので、事務所等が複数ある場合は、事務所等の数だけ均等割の負担は増加します。
ただし、2か所以上の事務所等が同一県内あるいは同一市内であれば、均等割は、2か所分納める必要はありません。
(2) 政令指定都市の場合は?
なお、政令指定都市の区は「一つの市の区域」とみなされますので、法人市民税の均等割は区ごとに課税されます。
つまり、同じ市でも、2つ以上の区に事務所がある場合は、均等割の負担が増えるということになります。
(3) 事業所や事務所とは?
均等割が課税される「事業所等」の定義は以下の通りです
「事業の必要性から設けられた人的及び物的設備で、継続して事業が行われる場所」
ある程度の継続性が求められますので、「現場事務所」などは含まれません。また、従業員の宿泊所、従業員詰め所等も含まれません(地方税 取扱通知 6事務所又は事業所」)。
例えば、自宅等を形式的に本店登記し、本店では事業を行わず、別の事務所で継続して事業が行われている場合は、形式的な自宅の住所は「事業所」に該当しません。
5.均等割月割切捨計算の具体例
例えば、設立年度や、期中に「事業所の開設・閉鎖」がある場合、均等割は、12か月分ではなく「月割」となります。
均等割の「所在月数」の算定は、1月に満たない場合は1月とし、1月に満たない端数を生じたときは切り捨てます。
ただし、1か月未満の場合は、切り捨てられず「1か月」となる点は注意です。
(1) 通常のパターン
(例 3月決算を例にします)
パターン | 日数 | コメント | |
---|---|---|---|
① | 7月10日に設立開業 | 8か月と21日 | 21日切捨て⇒8か月分となります |
② | 3月31日に設立 | 1日 | 1か月未満のため1か月分 |
③ | 5月15日に大阪市 ⇒神戸市に移転 | ●大阪市・・1か月と15日 ●神戸市・・10か月と16日 | ●大阪市・・15日切捨て⇒1か月分 ●神戸市・・16日切捨て⇒10か月分 |
④ | 4月15日に大阪市 ⇒神戸市に移転 | ●大阪市・・15日 ●神戸市・・11か月と15日 | ●大阪市・・15日⇒1か月以内のため1か月(切捨なし) ●神戸市・・16日切捨て⇒11か月分 |
つまり、移転や閉鎖は、(月末日でなく)月中の方が「1か月分」お得なんですね。
なお、上記④のように、1か月未満端数切上の関係で、結果的に12か月分の均等割になる場合でも、切捨の関係で、100円程度は通常より安くなります。
(計算)
●大阪市均等割 50,000円÷12か月×1か月 =4,100円
●神戸市均等割 50,000円÷12か月×11カ月=45,800円(切捨)
合計49,900円
(2) 設立年度に異動がある場合や、期中に2回移動がある場合の月の数え方
均等割の「所在月数」の算定は、あくまで暦に従って判定しますので、設立年度に異動がある場合や、期中に2回異動がある場合などは注意が必要です。
(例)3月決算
2022年4月5日に兵庫県で法人設立し、2022年10月20日に大阪府に異動
パターン | 日数 | コメント |
---|---|---|
兵庫県 | 4月5日~10月19日 | 6か月と15日 ⇒ 切り捨て 6か月となります |
大阪府 | 10月20日~翌3月31日 | 5か月と11日 ⇒ 切り捨て 5か月となります |
(月の数え方)
4月5日からカウントして6か月は、10月4日までが6か月となります。
よくある間違いは、兵庫県が4月5日~10月19日のため、4月の1か月を切り捨てしてしまい、兵庫県を5か月(5月~9月)と算定してしまうケースです。
6.ご参考~「法人税割・所得割」の従業者数は?
均等割の「従業員数」と、微妙に計算が異なります。大きな違いは以下です。
●閉鎖等の場合は、閉鎖「前月末」の従業者数で計算し、端数は「切上」
● 従業員数は、あくまで頭数(アルバイトの人数は170Hで割らない)
(例 3月決算 5月15日に大阪市から神戸市に移転)
● 4月末(前月末)時点の大阪市の従業者数÷12か月×2か月(端数日数は切上)
● 3月末日(決算期末)の神戸市の従業者数÷12か月×11か月(端数日数は切上)
従業者数が小数点以下の場合は、切上します(1人としてカウント)。
7.YouTube
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