税金の豆知識

  • ホーム
  • 税金の豆知識
  • Q108【無償贈与】法人が固定資産を無償贈与したときの会計処理・仕訳・税務処理は?/消費税の取扱い/寄付金・受贈益?

Q108【無償贈与】法人が固定資産を無償贈与したときの会計処理・仕訳・税務処理は?/消費税の取扱い/寄付金・受贈益?

最終更新日:2023/04/13

87404view

Q108 無償贈与の会計・税務処理/申告書の記載

例えば、法人が不動産等を「無償で贈与」する場合は、お金の動きがないため、仕訳に迷われる方もおられるかもしれません。時価よりも低額で譲渡する場合も同様です。
また、無償贈与の場合の「消費税の取扱い」はどうなるのか?も気になるところです。

法人が無償贈与等を行った場合、贈与を受けた相手先だけではなく、贈与を行った法人側にも課税されるケースがあります。

今回は、法人が「無償贈与」を行った場合の会計・税務処理や、勘定科目、消費税上の取扱いにつき解説します(今回は、完全支配関係間の寄付の場合は除きます。完全支配関係間の寄付はコチラご参照ください。)
 

なお、「無償贈与」の論点は、一般的には、固定資産等を贈与するする場合の論点となります。
 

1. 法人税・消費税上の取扱い

法人が無償贈与を行った場合は、以下の取扱いとなります。法人税と消費税で考え方が異なります。
 

(1) 法人税上の取扱い

法人が無償贈与した場合は、その財産を時価で売却したものと考えます(法法22条2項)。
したがって、取得価格と時価の差額については「売却益」となります。
(広告宣伝用資産の贈与や、陳列棚等につき例外的な取扱いもあります)
 

(2) 消費税上の取扱い

消費税上は、法人税とは全く別の考え方をします。あくまで「対価を得た取引部分」のみが「消費税課税取引」となります(消法4条、28条)。したがって、無償贈与の場合は、対価のやり取りがありませんので、原則として「消費税不課税取引」となります(例外的に、一定の場合、消費税課税取引となる取引があります。後ほど解説します)。
 

2. 勘定科目・税金は?

(1) 贈与を行った法人側

財産を無償で贈与する法人側の会計処理は、相手先が従業員等か第三者なのか?で勘定科目が異なります。
以下の通りです。

 

贈与先勘定科目法人税上の損金の有無
個人(従業員・役員)給与・役員報酬従業員は損金OK、役員は損金不可
個人(第三者)寄付金損金算入限度額まで損金OK
法人(第三者)寄付金損金算入限度額まで損金OK

すべて、会計上は「経費」となりますが、法人税上の損金の点では、違いが生じます。従業員の場合は、全額損金OKですが、役員の場合は、定期同額給与を超えた部分は全額損金算入不可となります。
また、第三者の場合は、寄付金の損金算入限度額を超えた部分は損金不算入となります。
 

(2) 贈与を受けた側

贈与を受けた側は、以下となります

贈与先勘定科目課税有無
個人(従業員・役員)給与課税
個人(第三者)一時所得
法人(第三者)受贈益益金算入

3. 例題(法人⇒法人への無償贈与)

● A社 ⇒ B社に土地を無償贈与した(土地帳簿価格300 / 時価500)
● 寄付金損金算入限度額は100とする。
● A社、B社はグループ会社ではなく、グループ法人税制の適用はないものとする。

 

(1) A社の税務処理
借方貸方
寄付金(不課税)500土地300
固定資産売却益(不課税)200

税務上は時価で売却したものとされるため、借方「寄付金」は時価で計上し、土地帳簿価額との差額は「固定資産売却益」として計上します。
●借方寄付金については、損金算入限度額を超える部分は「損金不算入」となります。なお、贈与の相手先が従業員・役員の場合は、借方の勘定科目が「給与」or「役員報酬」となり、「役員報酬」については、原則全額損金不算入となります。
●消費税上は、対価のやり取りがないため、寄付金及び売却益とも消費税「不課税取引」となります。
 

(2) B社の税務処理
借方貸方
土地500受贈益(不課税)500

● 税務上は、時価で取得したものとされるため、土地を時価で受け入れ、「受贈益」は、法人税課税対象となります。
●なお、受贈側が従業員・役員の場合は「給与課税」、第三者の場合は、「一時所得」として所得税が課税されます。
●消費税上は、対価のやり取りがないため、受贈益は消費税「不課税取引」となります。
 

4. 無償贈与で消費税が課税されるケース

消費税上は、対価のやり取りがない部分については、原則として消費税は課税されません。
ただし、金銭のやり取りがない場合でも、例外的に、以下の場合は、商品等の時価で消費税が課税されます。
個人が、実質的に消費税を負担しないで取得(消費)することを防止するための規定です。

法人が自社商品を役員に贈与 or 低廉譲渡した場合(消4条5項、28条1項・3項)
個人事業者が、棚卸資産等を自家消費した場合(消4条5項、28条3項)

その他、代物弁済による債務消滅や資産交換の場合など、消費税課税取引となる例外があります。

 

5. 低額譲渡の場合は?

法人から時価よりも低い価格で「低廉譲渡」した場合も、考え方は上記の「無償贈与」と同様です。
詳しくは、「法人が財産を「低額譲渡」した場合の税金は?」をご参照ください。

 

(1) 法人税上の取扱い

無償贈与の場合と同様、その財産を時価で売却したものと考え、取得価格と時価の差額については「売却益」、時価と譲渡額の差額は寄付金となります。
 

(2) 消費税上の取扱い

消費税上も、無償贈与と同様、原則として「対価を得た取引部分」のみが「消費税課税取引」となります。

 

6. ご参考~上場会社の場合の会計処理~

上場会社の場合は、贈与を行った法人側の会計処理が異なります
(受贈側の会計処理は、上記の税務処理と同じです。公正な評価額 企業会計原則第三・五・F)。
 

(1) 会計処理

会計上は、時価で譲渡ではなく、帳簿価額で土地を減少させ、同額の寄付金を計上します。

借方貸方
寄付金300土地300
(2) 申告調整

この結果、会計と税務で相違が生じますので、申告調整が必要となります。借方「寄付金」は減算留保、貸方「固定資産売却益」は加算留保の申告調整を行います。寄付金については、限度額を超えた金額は「損金不算入」となります。

【別表4 所得の金額の計算に関する明細書】

区分総額処分
留保社外流出
当期利益
加算・・・・・・・・・・・・
売却益計上漏れ(※1)200(※1)200
減算・・・・・・・・・・・・
寄付金計上漏れ(※1)200(※1)200
仮計
寄付金の損金不算入額(※2)100(※2)100

【別表5 利益積立金の計算に関する明細書】

区分期首当期中の増減差引
利益準備金
・・・・・・・・・・・・・・・
寄付金・売却益認定損益200200

7. 参照URL

(No.6117 課税の対象となる取引)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6117.htm

 

(No.6321 法人の役員に対する贈与・低額譲渡の取扱い)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6321.htm

 

8. YouTube

 

YouTubeで分かる「無償贈与」
 

関連記事






 

濱田会計事務所への無料ご相談・お問い合わせは0120-932-116まで

顧問契約をご検討の方は、
初回のご相談は無料となっています。
まずはお電話お待ちしております。

0120-932-116

お問い合わせはこちら