税金の豆知識

Q20【役員報酬】業績悪化や臨時改定事由/一時的な報酬減額はOK?

最終更新日:2022/01/28

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役員給与に認定される具体的なケース

新型コロナ禍において、役員報酬を一時的に減額する会社も多いと思います。
税法上、定期同額役員報酬の改定は、①通常改定②臨時改定事由による改定③業績悪化改定事由による減額改定の3パターンが認められていますが、一般的に、②③は「適用場面」が限定され、かなり厳しい要件となっています

そこで、今回は、役員報酬変更が認められる「臨時改定事由」「業績悪化改定事由」の具体的ケースを、新型コロナ禍における状況も踏まえて、お伝えしようと思います

 

1.業績悪化改定事由による改定

(1)業績悪化改定事由が認められるケース

業績悪化改定事由による改定は、一般的に、かなり厳しい要件となっています。

単なる業績・資金繰りの悪化といった事実だけでは「業績悪化改定事由」に該当せず、第三者である利害関係者(株主、取引銀行、取引先等)との関係上、役員給与を減額せざるを得ない事情が生じたケースに限定されています
(法基通 9-2-13、役員報酬Q&A  Q1)。

認められるケース認められないケース
株主との関係上、業績の悪化等についての経営上の責任から、役員給与の額を減額せざるを得ない場合

取引銀行との借入金返済のリスケジュール協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合

取引先等への信用を維持・確保する必要性から、経営改善計画が策定され、役員給与減額が盛り込まれた場合。

●業績や財務状況・資金繰りの悪化事実があっても、
利益調整のみを目的として行う減額改定(国税Q&A)

●経常利益が対前年比で6%減少したため行った減額改定は、業績悪化改定自由には該当しない
(国税不服審判所の裁判事例 平成23年1月25日)

(2)現実的に業績悪化前でもOK

「業績悪化改定事由には、現に経営状況が著しく悪化した場合に限らず、現状では数値的指標が悪化していなくても、経営改善策を講じなければ、「今後著しく悪化することが不可避」と認められる場合も含まれます。
 

(3) 典型的な業績悪化改定事由に該当する事例
主要得意先の経営悪化により(1回目の不渡)、数か月後には自社売上が激減することが予想され、役員報酬を減額するケース(役員報酬Q&A Q1-2)
主力製品に瑕疵があることが判明し、今後多額の損害賠償金やリコール費用の支出が避けられない場合
(役員報酬Q&A Q1-2)
イベント請負会社が、数か月先まで開催を予定していた全てのイベントがキャンセルとなり、予定収入がなくなると想定されるケース(新型コロナQ&A問6)
外国からの入国制限や外出自粛要請により,主要な売上先の観光客等が減少し,「役員報酬」を減額するケース
(新型コロナQ&A問6-2)
(4)コロナ禍の業績悪化改定事由~弾力的な対応可~

コロナ禍では、業績悪化改定事由も「弾力的な対応」をしてくれるようです。
「税務通信No3613」に興味深い記事がありましたので、要約してお伝えします。

●業績悪化改定事由への該当性は、「第三者である利害関係者からの要望による減額」であるか否かは問わない
●コロナ禍では、疎明資料は「月次決算書」等経営状況の著しい悪化が把握できる書類を用意しておけば問題ない
●今後の第2波・第3波などを見据えて行う減額改定は,「業績悪化改定事由に基づく改定」に該当。
 

2.臨時改定事由による改定

(1)臨時改定事由が認められるケース

臨時改定事由が認められるケースは、役員の「職制上の地位の変更」や、その役員の「職務内容の重大な変更等」のやむを得ない事情がある場合です。偶発的な事実の発生など「恣意性」が入らない場合に限定されています。
 

(2)典型的な臨時改定事由に該当する事例
社長退任に伴い、副社長が社長に就任する場合(法基通 9-2-12の3)
組織再編等により、役員の職務内容が大幅に変更される場合(法基通 9-2-12の3)
行政処分等の社会的責任から、役員給与を一定期間減額するケース(役員給与に関する質疑応答事例 問3)
病気入院のため、一定期間役員報酬を減額、退院後に当初金額に戻した場合(役員給与に関するQ&A Q5)。

なお、出産や産休に伴う役員報酬の減額も、一般的に「病気入院等」の場合と同様に判断できると解されています。
 

(3)コロナ禍の臨時改定事由~期間を区切った役員報酬の減額~

例えば、新型コロナの影響により、「店舗休業要請等期間」などを区切って役員報酬を減額し、期間経過後、元の報酬額に戻す場合はどうでしょうか?

「新型コロナ禍の未曾有の経営危機下」での減額改定は、「役員の職務内容の重大な変更等」「不祥事による一定期間の減額」(役員給与に関する質疑応答事例(問3))と同様に解釈し、認められるようです。
妥当な結論ですね(税務通信「NO3632」を参考にしました)。
 

3.その他個別論点

以下、「税務通信NO3632」を参考にまとめています。

(1)業績悪化に伴い役員が報酬を自主返上する場合は?

一旦支給した定期給与を、役員が自主的に返納した場合は、「定期給与の減額改定」ではない取扱いとなります
(「役員給与に関する質疑応答事例」(問3))。

したがって、この場合、支払った「定期同額給与」は損金として認められる一方、受け取った返納金額は益金で計上します(なお、受領辞退の意思表示を支給期到来前に行った場合は,所得税非課税( 所基通28-10 )。
 

(2)業績悪化に伴い役員給与未払の場合の取扱い

資金繰りが急速に悪化し、役員報酬が「未払」となるケースもあります。この点、税務調査では、役員報酬が長期的に未払の場合には意図的な調整と判断され、役員報酬が否認される場合があります(役員貸付金認定)。

しかし、業績の悪化等やむを得ない事情により、役員報酬の支払ができない場合の「未払」は、定期同額給与が否認されることにはならないものと考えられます。なお、未払であっても、定期同額給与の「債務は確定」していることから、「未払=定期同額給与否認」というロジックにはなりません。
 

4.参照URL

(新型コロナQ&A)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/kansensho/faq/index.htm

(役員給与に関するQ&A)
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf

(役員給与に質疑応答事例)
https://internet-kaikei.com/pdf/yakuinkyuyo02.pdf

 

5.YouTube

 
YouTubeで分かる「役員報酬改定」
 

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