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Q162 商標権の取得価額の範囲・会計処理/耐用年数や消費税の取扱いは?

最終更新日:2022/02/03

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Q162 商標権の取得価額の範囲

「商標」・・は、どんなものかというと、イメージは「商品名」や「サービス名」のことです。
例えば、「ポケモン」「アンパンマン」などのキャラクター、会社のロゴなども、すべて「商標」になります。

こういった「商標」。勝手に他人に使われたら困りますよね?
例えば、「ポケモン」を考えた会社が商売をしている中で、勝手に他人にその名前を利用されてしまうと・・?
ビジネスが阻害されてしまう可能性がありますね。

そこで、「商標登録」を行うことで、「他人が勝手に利用できない権利」を取得します。
これが「商標権」です。

今回は、この「商標権」の会計処理につき解説します。

 

1. 商標権とは?

(1) 商標権とは?(商標法)

特許庁に商標登録の出願・審査を経て、登録可能と判断された場合に、登録料を納付します。
この時点で、「商標登録原簿」に登録され、初めて「商標権」が発生することになります。

商標として保護されるのは、「文字・図形・記号」の他、「立体的形状」や「音」等も含まれます。
権利の存続期間は10年ですが、申請により「存続期間」をさらに10年更新延長することも可能です。

 

(2) 特許権・実用新案権との違い

「商標権」は、存続期間を更新できるところが、他のよく似た権利との大きな違いです。

存続期間更新
商標権10年申請により可
特許権20年不可
実用新案権10年不可

 

2. 商標権の会計処理

(1) 原則 資産計上 10年償却

商標権は、会計上、原則として「無形固定資産」に計上し、耐用年数10年で償却します。
償却開始時期は、「商標権登録日」、「定額法」での償却となります。
権利の存続期間が10年ですので、「償却期間」はわかりやすいですね。
 

(2) 例外 少額減価償却資産で損金処理

他の固定資産と同様、単価が少額の場合は、少額減価償却資産の特例の取扱いが可能です。

10万未満「少額減価償却資産の規定」により損金経理
10万以上20万未満「中小企業の特例規定」か「一括償却資産」を選択適用
20万以上30万未満「中小企業の特例規定」により損金経理
(3) 消費税の取り扱い

国内での商標権取得は「課税取引」に該当し、仕入税額控除の対象となります。
(海外登録の「商標権」の支払は、「消費税課税対象外」)。
同一の商標権を、自国と日本国内に登録している場合もあるので、注意しましょう。

 

(4) 商標権として登録申請しない場合

商標権として登録申請しない場合の支出額は、「開発費」として償却を行うことになると思われます。
なお、「開発費」は、税務上は「任意償却」となりますので、支出年度に一括費用処理もできますし、5年内の均等償却も可能です。
 

3. 商標権の取得価額の範囲

会計処理で一番迷うのは、支払った金額のうち、「商標権」として「無形固定資産」に計上する範囲がどこまでか?
・・という論点です。

出願から登録に至るまでには、さまざまな支出があります。
これらすべての支出が資産として「商標権」に計上するわけではありません。損金に計上できるものもあります。

取得時に「損金」にできるものは、早めに処理したほうが節税につながりますね。

 

(1) 資産に計上するもの

原則として、「無形固定資産」として計上する対象は、①購入対価と②付随費用になります。
付随費用のイメージは、事業利用や購入のために直接要した費用です。
例えば、商標そのものを作成するために依頼した「デザイン料」や、「商標調査費用」などは、ここに含まれます。

 

(2) 損金に計上できるもの

無形固定資産の取得価額に含めなくてよいものとして、
「登録免許税その他登記又は登録のために要する費用」が定められています(法基通7-3-3の2)。
例えば、「印紙代」や「登録のための弁理士手数料」などが該当します。

 

4. 支出内容ごとの会計処理

時系列ごと、支出内容ごとに会計処理をまとめると、以下となります。

時期内容科目
出願前ロゴなどデザイン料(デザイナー等)商標権(課税)
商標調査費用・調査手数料(弁理士)商標権(課税)
出願時商標出願印紙代(特許庁)租税公課(不課税)
出願手数料・電子化手数料・拒絶時の手数料(弁理士)支払手数料(課税)
登録時商標登録印紙代(特許庁)租税公課(不課税)
登録手数料、成功報酬(弁理士)支払手数料(課税)
更新時更新するために直接要した費用商標権(課税)
更新登録印紙代租税公課(不課税)
更新登録手数料(弁理士)支払手数料(課税)

更新は、使用可能期間の延長となり、「資本的支出」となります。

 

5. 商標権の使用権(ロイヤリティ)の場合は?

商標権を保有する法人等に「この商標を利用してもよいですよ」と許諾され、その使用料を支払うことがあります
(ロイヤリティやライセンス料とも呼ばれます)。

例えば、親会社が保有する「商標権」を子会社が利用する場合、子会社は親会社に一定の「ロイヤリティ」を支払います。
この「使用権」の会計処理はどうなるでしょうか?

 

(1) 権利金等として一時に支払う場合

税務上の繰延資産」に該当します。
「役務提供を受けるための権利金等」として、原則5年(5年内更新で、更新時に一時金を払う場合はその更新年数)で償却します。勘定科目は一般的に「長期前払費用」で計上します。

 

(2) 権利金等での一時金ではなく、毎月支払う場合

支出時に損金で計上します。
勘定科目は「ロイヤリティ」「支払手数料」などが一般的です。

 

(3) 消費税の取り扱い

国内登録の「商標権使用権」の支払は「消費税課税取引」となります

 

(4) 源泉徴収

使用許諾を与える方(ライセンサー)が非居住者(外国法人等)の場合、ライセンス料を支払う際には、源泉徴収が必要となります。

 

6. 会計処理例

商標登録予定のロゴマークに関する「支出額」は以下のとおりです(すべて税抜。年度は12か月とする)
● ロゴマークのデザイン料500千円(デザイナー)
● 商標調査費用100千円(弁理士)
● 出願・登録印紙代60千円(特許庁)
● 弁理士への出願・登録手数料 100千円(弁理士)

 

借方貸方
取得時商標権(課税)(※1)
租税公課(不課税) (※2)
支払手数料(課税)(※3)
仮払消費税
600
60
100
70
現預金830
決算時減価償却費(※4)60商標権60

(※1)デザイン料500+商標調査費用100 = 600
(※2)出願・登録印紙代(不課税)
(※3)弁理士への出願・登録手数料  100
(※4)商標権取得価額600 ÷ 10年(償却年数) = 60

 

7. 参照URL

(商標権)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/renketsu/06/06_01_01.htm

(税務上の繰延資産)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/08/08_02.htm

 

8. YouTube

 

YouTubeで分かる「商標権の取得価額の範囲・会計処理は?」
 

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