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Q96【分割基準】2か所以上の複数拠点がある場合の住民税法人税割・事業税の分割基準は?均等割との違いは?

最終更新日:2023/11/17

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Q96 住民税法人税割・事業税の分割基準って?

法人の場合、国税(法人税・消費税)の他、法人住民税、法人事業税という税金が課税されます。
このうち、法人住民税は、均等割の他、法人税に応じた「法人税割」が課税されます。
また、法人事業税は、法人税の所得に応じて課税(所得割)されます(外形標準課税は除く)。

こういった「住民税法人税割」「事業税所得割」の計算は、法人税で計算された所得や法人税額(課税標準額総額)をもとに計算を行います。
ただし、複数の都道府県等に「事務所等」を持つ法人は、各自治体に分割して申告・納税を行う必要があるため、法人税上の「課税標準額総額」を、各自治体に分割する必要があります。

そこで今回は、法人住民税(法人税割)・事業税(所得割)を各自治体ごとに申告・納税するための「分割基準」につき解説します。
 

1. 分割基準を適用する事務所等とは?

(1)分割基準を適用する事務所等とは?

すべての会社が、法人税上の「課税標準額総額」の分割を行うわけではありません。
複数の都道府県・市町村に「事務所等」(事務所又は事業所)を有している場合のみとなります。

この点、事務所等とは、「事業の必要性から設けられた人的及び物的設備で、継続して事業が行われる場所」を指します。ある程度の継続性が求められますので、現場事務所などは含まれません。また、従業員の宿泊所、従業員詰め所等も含まれません(地方税 取扱通知 6事務所又は事業所」)。

例えば、本社のほか、別の都道府県に現場事務所等があるだけの場合は、分割して申告・納税する必要はありません。
 

(2)政令指定都市の場合は?

政令指定都市の区は「一つの市の区域」とみなされますので、法人市民税の均等割については、区ごとに課税されます。したがって、同一市町村内の複数の区に事業所がある場合、区ごとに均等割の負担が生じます。

一方、「住民税法人税割」については、同一市町村内の別々の区に複数の事業所がある場合でも、分割は行いません。例えば、事務所移転により、神戸市中央区に8か月、長田区に4カ月在籍する場合、市民税申告書は中央区、長田区には分割せず、あくまで神戸市に対してのみ未分割の金額で計算・納税します。

 

2. 分割基準

複数の都道府県等に「事務所等」を保有する法人は、法人税上の「課税標準額総額」(法人税額や所得)を、一定の基準に基づき、各自治体ごとに分割する必要があります。

分割基準は以下の通りです。①住民税(法人税割)と②事業税(所得割)で、分割基準が異なります。

 

(1) 住民税(法人税割)

業種に関わらず、従業者数で分割します。

 

(2) 事業税(所得割)

法人の業種ごとに決められています。下記の通りです。

非製造業(特定業種除く) (※)1/2が従業者の数、1/2が事務所等の数を基準に分割
製造業従業者数で分割
(資本金1億円以上の法人は、工場の従業者数を1.5倍)

(※)特定業種・・・倉庫業・電気供給業・ガス供給業・鉄道事業・軌道事業

なお、複数事業を営む法人の場合、売上金額の大きい事業にかかる「分割基準」を適用します。
 

3. 従業者の数とは?

「従業者」とは、給料支払を受けるべき人をさします。役員(非常勤役員含む)やアルバイト・パート、派遣労働者は含みます。また、他社への出向者は、従業者数から控除し、他社からの出向者数は従業者数に含みます。

 

「分割基準」となる「従業者の数」は、各事務所等の事業年度末日の「従業者の人数」となります。

例えば、期中異動がない場合の従業者数は、各事務所等の「事業年度末日の人数」になります。
一方、期中新設・廃止がある場合は、存在「月数」に対応する従業員数を算定します(1人未満、1月未満とも、切上)。
 

(1) 「期中新設」がある場合の従業者数

「期中新設」がある場合の従業者数

 

(2) 期中廃止がある場合の従業者数

期中廃止がある場合の従業者数

 

(3)具体例

● 3月決算(小売業・標準税率適用法人とする)
● 兵庫県 1事務所は、異動なし
● 大阪府 1事務所は、2月10日に新設
● 京都府 1事務所は、12月29日に廃止
● 所得金額は300万円とする。

 
  (単位:人)

事務所/月101112従業者数従業者数の計算
兵庫県兵庫県は異動がないため、期末時点の人数=従業者数
大阪府 事務所存在月数 2月~3月 ⇒ 2か月(切上)
7人(事業年度末人数)×2/12=1.16⇒2人(切上)
京都府事務所存在月数 4月~12月 ⇒ 9か月(切上)
3人(廃止前月末人数)×9/12=2.25⇒3人(切上)
合計11

分割計算上の従業者数は、6人+2人+3人=11人となります。11人を元に、各都道府県に分割計算を行います。

なお、期中に従業者数が大きく変動した場合(各月末日人数のうち、最大従業者数>最小従業者数×2)は、各月の平均人数を算定し、「従業者数」とします。
 

4. 事務所等の数とは?

「分割基準」となる「事務所等の数」は、「各月末日の事務所等の数」の合計となります。
例えば、事務所が2つで、期中異動がない場合の事務所の数は、それぞれ12、合計24となります。また、期中新設・廃止がある場合の事務所数は、事業年度中の存在月数となります(1カ月未満は切り上げ)。具体例は下記ご参照ください。

 

【先ほどと同じ例の場合】

● 3月決算(小売業・標準税率適用法人とする)
● 兵庫県 1事務所は、異動なし
● 大阪府 1事務所は、2月10日に新設
● 京都府 1事務所は、12月29日に廃止
● 所得金額は300万円とする。

 (単位:事務所数)

事務所/月101112事務所等の数事務所等の数の計算
兵庫県12各月末事務所数の合計
大阪府 2月~3月 ⇒ 2か月(切上)
京都府4月~12月 ⇒ 9か月(切上)
合計23

分割計算上の事務所等の数は、12+2+9=23事務所となります。23事務所を元に、各都道府県に分割計算を行います。

なお、分割基準が適用される場合、都道府県ごとの「超過税率」は適用されず、標準税率か軽減税率が適用されます。
 

5. 事業税の分割計算例

先ほどの例題をもとに、事業税所得割の分割計算をまとめます。

(1)課税所得金額を、事業税率区分ごとに振り分ける。

事業税は所得ごとの税率が異なりますので、年①400万以下②400万超③800万超の区分に分けます(千円未満切捨)
今回は、所得金額300万円のため、すべて年400万円以下の区分となります。
 

(2)上記(1)の区分ごとに、1/2ずつ区分。

事業税所得割の分割基準は、①従業者の数②事務所等の数の2種類となりますので、上記(1)の区分ごとにに1/2ずつに区分します(千円未満切捨)
 ①従業者の数で区分する所得 ⇒ 150万円 ②事務所等の数で分割する所得 ⇒ 150万円
 

(3)それぞれの分割基準で按分

①従業者の数で区分する所得

所得金額150万円 ÷ 11人= 136,363.63(小数点以下は、分割基準総数の桁数+1の位以下切捨)

課税標準計算
兵庫県818,000円 136,363.63 × 6人 = 818,181.78⇒818,000円(千円未満切捨)
大阪府272,000円136,363.63 × 2人 = 272,727.26⇒272,000円(千円未満切捨)
京都府409,000円136,363.63 × 3人 = 409,090.89⇒409,000円(千円未満切捨)
合計1,499,000円

②事務所等の数で区分する所得
所得金額150万円 ÷ 23事務所= 65,217.39(小数点以下は、分割基準総数の桁数+1の位以下切捨)

課税標準計算
兵庫県782,000円 65,217.39 × 12人 = 782,608.68⇒782,000円(千円未満切捨)
大阪府130,000円65,217.39 × 2人 = 130,434.78⇒130,000円(千円未満切捨)
京都府586,000円65,217.39 × 9人 = 586,956.51⇒586,000円(千円未満切捨)
合計1,498,000円
(4)上記(3)の按分金額を、区分ごとに合算した「分割課税標準」をもとに税額を計算

令和4年3月末現在、標準税率は3.5%です。

従業者の数事務所等の数合計税額計算
兵庫県818,000円782,000円1,600,000円56,000円1,600,000円 × 3.5% = 56,000円
大阪府272,000円130,000円402,000円14,000円402,000円 × 3.5% = 14,070⇒14,000円(百円未満切捨)
京都府409,000円586,000円995,000円34,800円995,000円 × 3.5% = 34,825⇒34,800円(百円未満切捨)
合計1,499,000円1,498,000円2,997,000円104,800円

課税標準、および税額とも、各ステップで端数が生じたときは切り捨てますので、1事務所の場合よりも、総額は少なくなります。
 

6. 均等割と法人税割・所得割の「従業者数」の違い

法人住民税均等割の「従業員数」と、法人住民税「法人税割・所得割」の「従業者数」は、考え方が異なります。
大きな違いは以下です。

法人税割・所得割均等割
従業者数閉鎖等の場合は、閉鎖「前月末」の従業者数で計算し、端数は「切上」閉鎖等の場合は、事業年度末の従業者数で計算し、ゼロ

 

7. YouTube

 

YouTubeで分かる「法人住民税分割基準」
 

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