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Q2 【具体例付】個人事業主の開業費の範囲・会計処理・いつまで開業費で認められる?

最終更新日:2022/01/17

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Q2 個人事業主の開業費

個人事業主が開業する際には、さまざまな支出が発生します。税務署への「開業届」を提出する前に支払う場合も多いかと思います。そこで今回は、「いつの支払」が開業費で認められるのか?開業費の範囲はどこまでか?など実務上迷いそうな論点をまとめます。

 

1. 個人事業主の開業費の範囲は?法人と異なる点

(1) 法人と異なる点

法人の場合、開業費は、「法人設立のために特別に支出した費用」と定義されていますが、個人の場合は、単に「開業のために必要な支出」とされ「特別に」という文言がありません。したがって、個人事業主の開業費の範囲は、法人より広いという点に特徴があります。
また、範囲や上限も特に決められていませんので、「開業にかかった費用」という説明ができれば、上限なく「開業費」として計上できます。

 

(2) 開業費に含まれるもの(個人事業主)

個人事業主の場合、経常的な支出も含めて、開業前の支出はすべて「開業費」として処理が可能です。

(例示)
通信費、消耗品費、水道光熱費、名刺、広告宣伝費、交際費、打ち合わせ費用、ガソリン代、家賃、交際費、交通費、従業員給料など

 

(3) 開業費に含まれないもの(個人事業主)

通常の仕入、車や備品等の固定資産、テナント入居時の礼金などは、そもそも「開業のために支出した費用」とはいえませんので、それぞれ仕入、固定資産等で計上します。

(開業費に含まれないもの)

仕入仕入で計上
車両・備品など固定資産として計上し、耐用年数に応じて経費処理
礼金税務上の繰延資産(長期前払費用)として、一定年数で償却

なお、「固定資産」や「敷引」については、金額が少額の場合、一括で経費に計上できる特例があります。詳しくはQ31Q67をご参照ください。

 

2. いつまでの経費が開業費?

個人事業主の場合、法人と異なり、法人設立登記完了後の費用に限定されていませんので、「開業日までの支出」であれば、すべて対象となります。
ただし、あくまで「開業のために必要な支出」である必要がありますので、客観的な資料で「開業費」であることが説明できる必要があります。
一般的には、開業前6か月~12か月程度までが妥当なラインのようです。
なお、税務署に「開業届」を提出しているかどうか?は関係ありません。開業届提出の有無にかかわらず、利益が生じた場合は「申告義務」が発生します。

 

3. 開業費の会計処理・償却期間

(1) 繰延資産として償却

開業費は、一旦「経費」ではなく、「繰延資産」として「資産」で計上します。

 

(2) 償却期間

開業費の償却は、60カ月均等償却又は任意償却のどちらかとなります。任意償却は、繰延資産の額の範囲内の金額を「償却費」として認めるもので、金額制限は設けられていません。つまり、支出時に全額償却してもよく、全く償却しなくてもかまいません。ここでようやく「経費」にできることになります。
また、開業費を支出後60カ月以内に経費にしなければいけないという規定もありません。したがって繰延資産の未償却残高は、60カ月を超えても、いつでも「償却費」として必要経費に算入できます

 

4. 節税として利用可能

上記の通り、開業費の償却は「任意償却」となりますので、利益が生じたタイミングで自由に「経費」にすることが可能です。
例えば、初年度は赤字のケースも多いと思いますが、赤字の場合にはそもそも税金がかかりませんので、償却を行っても税金が減るわけではありません。そこで、初年度は開業費の償却を行わず、利益が出たタイミングで償却することも可能です。利益が生じた期に「償却」を行えば、税金の支払が少なくなりますので、キャッシュフローの改善につながります。

 

5. 仕訳のタイミング?具体例

開業費は、一般的に「開業日に仕訳」を行います。あくまで「開業時点」から会計年度が始まるからです。一般的には、税務署の「開業届」に記載した「開業日」になります。

(具体例)

● 開業日 2021年3月1日
① 2020年12月に事業用テナント敷金20万円、敷引30万円、家賃3か月分15万円を支払った。
② 2021年2月に、開業パンフレット外注費3万円を支払った。
③ 2021年2月に、単価40万円の備品を購入した。
④ 2021年2月に、商品30万円を仕入れた。
開業費は、均等償却するものとする。

 

(1) 開業日の仕訳
借方貸方
3/1 敷金(資産)
長期前払費用(資産)
開業費(資産)
200,000
300,000
150,000
元入金 550,000 (※1)
3/1 開業費(資産) 30,000 元入金 30,000 (※2)
3/1 備品(資産) 400,000 元入金 400,000 (※3)
3/1 仕入(経費) 300,000 元入金 300,000 (※4)

(※1)敷金は将来返還されるため、「敷金」(資産)で計上。一方、敷引は返還されないため、税務上の繰延資産(長期前払費用)で計上。家賃は開業費で計上OK
(※2)開業にかかるパンフレットのため、開業費で計上OK
(※3)開業後に利用する備品は固定資産のため、開業費×。「備品」(固定資産)で計上
(※4)仕入商品は、通常の営業業務にかかる費用のため開業費×。「仕入」で計上

開業費の会計処理の日付は「開業日」となります。
● 元入金(もといれきん)とは「個人事業主専用の勘定科目」で、個人事業主が開業する際に確保する「事業資金」を示します(法人の資本金に該当)。

 

(2) 決算日の仕訳
借方貸方
12/31 開業費償却
長期前払費用償却
30,000
50,000
開業費
長期前払費用
30,000
50,000
(※1)
(※2)

(※1)開業費合計 150,000+30,000=180,000円
⇒均等償却する場合は180,000円÷60カ月×10か月(3月~12月)=30,000
借方は、「開業費償却」という「経費」の勘定科目を利用します。
任意償却の場合は、償却の金額は自由となります。全額でも、ゼロでも構いません。
(※2)敷引は、税務上の繰延資産(長期前払費用)として、60カ月で償却します。
300,000円÷60カ月×10か月=50,000円

 

6. 参照URL

(償却期間経過後における開業費の任意償却
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/04/08.htm

 

7.YouTube

 

YouTubeで分かる「個人事業主の開業費の範囲」
 

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