税金の豆知識

Q107 無利息貸付の会計・税務処理/申告書の記載

最終更新日:2022/02/03

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Q107 無利息貸付の会計・税務処理/申告書の記載

前回、法人が寄付した場合の「損金算入限度額」についてお伝えしました。
今回は、実務上、寄付金認定される可能性がある「無利息貸付」(一般寄付金)を例に、会計・税務処理/申告書の記載についてお伝えします。

 

1. 通常の寄付金を支出した場合

 

まず、「通常の寄付金」を支出した場合の会計処理・税務処理です。

(例)政治団体に(政党)に100寄付した(政治団体に対する支出)
(便宜上、この支出はすべて損金不算入になる支出とします)

 

(1) 会計処理
借方貸方
寄付金100現金100

 

(2) 税務処理
借方貸方
寄付金100現金100

● 会計処理と同様です。
ただし、税務上、限度額を超えた金額は「損金不算入」となります。

 

(3) 別表の記載

(別表4 所得の金額の計算に関する明細書)

区分総額処分
留保社外流出
当期利益
加算・・・・・・・・・・・・
減算・・・・・・・・・・・・
仮計
寄付金の損金不算入額100100

● 別表4では、仮計の下に「寄付金の損金不算入額」として記載します
(加算・社外流出)。
● 別表5の記載はありません。

 

2. 無利息貸付の場合

 

(例)
● A社は、B社に現金10,000を無償で貸し付けた(経済的利益)。
● 契約上「利息」の記載はないが、市場から算定した適正利息は2%とする。
● 寄付金の損金算入限度額は100とする。
● A社、B社はグループ会社ではなく、グループ法人税制の適用はない。

 

(1) A社の処理(貸し付けた側)

 

① 会計処理

借方貸方
貸付金10,000現金10,000

 

② 税務処理

借方貸方
貸付金

10,000

現金10,000
寄付金200受取利息200

● 税務上は、たとえ無利息貸付を行った場合でも、「適正な利息を受け取った後、寄付した」と考えます

 

③ 申告調整仕訳

借方貸方
寄付金200受取利息200

● 借方「寄付金」は減算(損金)、貸方「受取利息」は加算(益金)となり、一旦、損金及び益金処理を行います。ただし、寄付金については、限度額を超えた金額は「損金不算入」となります。

 

④ 別表の記載

(別表4 所得の金額の計算に関する明細書)

区分総額処分
留保社外流出
当期利益
加算・・・・・・・・・・・・
受取利息計上漏れ(※1)200(※1)200
減算・・・・・・・・・・・・
寄付金認定損(※1)200(※1)200
仮計・・・
寄付金の損金不算入額(※2)100(※1)100

(※1)会計処理は「損益仕訳未了」のため、税務上、損益処理したとみなすもの
(加算留保・減算留保)
(※2)(※1)の結果、認識された寄付金(損金)につき、仮計下で「寄付金の損金不算入額」として記載します(加算・社外流出)。申告書上は、別表14(寄附金の損金算入に関する明細書)を記載したうえで、こちらの欄に転記します。
(100%国内子会社の場合とします)

 

(別表5 利益積立金の計算に関する明細書)

区分期首当期中の増減差引
利益準備金
・・・・・・・・・・・・・・・
寄付金・利息認定損益200200

● 加算減算でゼロになるため、記載してもしなくでもどちらでもよいと思います。

 

(2) B社の処理(借りた側)

 

① 会計処理

借方貸方
現金10,000借入金10,000

 

② 税務処理

借方貸方
現金10,000借入金10,000
支払利息200受贈益200

● 税務上は、たとえ無利息借入を行った場合でも、「適正な利息を支払った後、寄付として贈与を受けた」と考えます

 

③ 申告調整仕訳

借方貸方
支払利息200受贈益200

● 借方「支払利息」は減算(損金)、貸方「受贈益」は加算(益金)となり、一旦、損金及び益金処理を行います(借方「支払利息」は寄付金ではありません)。

 

④ 別表の記載

(別表4 所得の金額の計算に関する明細書)

区分総額処分
留保社外流出
当期利益
加算・・・・・・・・・・・・
受取利息計上漏れ(※1)200(※1)200
減算・・・・・・・・・・・・
支払利息認定損(※1)200(※1)200

(※1)会計処理は「損益仕訳未了」のため、税務上、損益処理したとみなすもの
(加算留保・減算留保)

 

(別表5 利益積立金の計算に関する明細書)

区分期首当期中の増減差引
利益準備金
・・・・・・・・・・・・・・・
寄付金・利息認定損益200200

● 加算減算でゼロになるため、記載してもしなくでもどちらでもよいと思います。

 

3. ご参考~法人から従業員への無利息貸付

法人から従業員に無利息で貸し付けた場合は、原則として給与課税されます。

ただし、以下の場合は、給与課税されません(所基通36-28)

 

雑賀や疫病等により、臨時的に多額な生活資金を要することになった使用人に対して
合理的な返済期間で貸し付けをした場合

上記通達は、従業員だけでなく、役員も対象になります
コロナウィルスによる感染被害は、上記①に当てはまると思われます(税務通信 NO3598)
 

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