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Q91 所有権移転外ファイナンスリースの借り手の税務処理/リース取引の種類や償却資産税の取扱いは?

最終更新日:2022/11/18

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Q91 所有権移転外リース取引の借り手の税務処理(中小企業)

「リース取引」の会計処理は、意外と苦手にされている方が多いかもしれません。
「原則と例外処理」、あるいは「会計と税務処理が異なる点」が混乱する原因の一つかもしれません。

会計上「リース取引に関する会計基準」という基準がありますが、中小企業の場合は、税務基準で十分だと思いますので、今回は、ほとんどの中小企業様に関連する「税務処理」を中心に解説します。

リース取引にかかる「税務処理」を理解するにあたっては、まずは「リース取引の種類」や、法人税上の「リース取引の範囲」を確認する必要があります。
今回は、最初にこのあたりの内容をお伝えの上、リース取引の税務上の取扱いを、具体例を用いて解説します。

 

1.リース取引の種類

リース取引には大きく2種類あります。ファイナンスリース取引とオペレーティング取引です。
 

(1)ファイナンスリース

ファイナンスリースはのイメージは、複合機やPCリースなど・・リース期間終了後もそのまま使い続けるようなリースです。形式上は「リース」ですが、実質「分割払い」で購入しているような内容のものです。

ファイナンスリース取引の定義は、資産の賃貸借で、下記2つの要件を満たすものです

解約不能リース期間中「中途解約」できないもの、又は中途解約する場合、未経過リース料の90%以上を支払うこととされているもの。
フルペイアウトリース物件の経済的な利益を実質的に享受し、物件の使用に伴う費用を実質的に負担するもの。

ファイナンスリースには、下記の2種類があります。

①所有権移転リースリース契約終了時に、所有権が移転するリース取引です。例えば、リース期間終了時に無償譲渡(譲渡条件付)、著しく有利な価額で買い取る権利があるもの(割安購入選択権付)、特別仕様物件、リース期間がリース資産法定耐用年数の60%~70%の年数を下回る期間のものなどです。
②所有権移転外リース取引リース契約終了時に所有権が移転しないリース取引です。上記①以外はすべてこちらとなり、複合機など、リース取引の大半はこの「所有権移転外ファイナンスリース」に該当します。所有権移転外ファイナンスリースの場合、契約後も利用するためには、「買取費用」や「再リース料」を別途支払うことが一般的です。
(2)オペレーティングリース

オペレーティングリースは、上記「ファイナンスリース」以外のリースとなります。オペレーティングリースの実質内容は「賃貸借」ですので、必要な期間だけ物を利用し、契約終了時には返却します。契約途中で解約が可能、費用は貸主負担(ノンフルペイアウト)のリース契約です。
 

2.リース取引の税務処理

法人税法上の「リース取引」は、上記のうち、(1)ファイナンスリース取引が対象となります。
したがって、オペレーティングリース取引は、法人税上の「リース取引」ではありませんので、「賃貸借処理」となります。

一方、ファイナンスリース取引は、税務上は原則「売買処理」となります。
ただし、「所有権移転外ファイナンスリース」については、賃貸借処理をしても、損金として認めてくれる特例・例外規定があります。また、この場合、減価償却の明細(別表16)も添付不要となります(法63条)。

それぞれのリースごとの「税務処理」の原則・例外をまとめると以下の通りです。
 

種類原則例外
オペレーティングリース賃貸借処理
所有権移転ファイナンスリース売買処理
所有権移転外ファイナンスリース売買処理賃貸借処理

(リース取引の範囲)法施令 第百三十一条の二 
・・・売買があつたものとされた同項に規定するリース資産につき同項の賃借人が賃借料として損金経理をした金額又は同条第二項の規定により金銭の貸付けがあつたものとされた場合の同項に規定する賃貸に係る資産につき同項の譲渡人が賃借料として損金経理をした金額 は、 償却費として損金経理をした金額に含まれるものとする。

 

3. 所有権移転ファイナンスリース取引の借り手の会計処理

 

原則処理例外処理
仕訳●「売買処理」
● リース契約時にリース料総額で「リース資産」及び「リース債務」を計上(※1)
● リース料支払時は、「リース債務」取崩。
● 決算時は「減価償却」を行う。

●「賃貸借処理」容認(※2)
● リース契約時の仕訳はなし。

●リース料支払時に「支払リース料」で計上

● 決算時に「減価償却」は行わない。

費用計上方法リース期間で「定額法」による減価償却減価償却は行わない代わりに、「支払リース料」が減価償却費として「損金経理」した額に含まれる(※3)

消費税リース取引開始時に、リース料総額に対する消費税全額を計上し、全額「仕入税額控除」OK

同左。ただし、リース料支払時に、支払リース料に対応する消費税を計上する「分割控除」もOK

(※1)契約上「利息部分」が明記されている場合は、利息部分を別建てしますが、実務上は、利息部分が明記されていない取引が多いと思いますので、省略します)
 

(※2)ご参考~中小企業の会計に関する指針等~

中小企業は、「中小企業の会計に関する指針」or「中小企業の会計に関する基本要領」の適用が可能です。上記指針等での所有権移転外ファイナンスリースの会計処理は、「賃貸借処理」が原則となっています。

したがって、中小企業は、会計処理に関しても「賃貸借処理が可能」という結論となり、実務上は、この「例外処理」で行う企業が圧倒的に多いです。

 

(※3)
リース料が均等払であれば、支払リース料=償却限度額と一致するため、税務申告調整は不要。また、賃貸借処理の場合は、減価償却の明細(別表16)も添付不要となります(法63条)
 

4. 借り手の仕訳例(所有権移転外リース取引)

● リース料総額6,600千円(税込)
● リース期間60か月。60回払い(110千円(税込)/月×60回)
● 「利息部分」は契約上明記されていない。
● 「例外処理」での消費税は、リース料支払時に分割控除を採用するものとする。

 

原則処理例外処理
借方貸方借方貸方
取引開始時リース資産
仮払消費税
6,000
600
リース債務
(※1)
6,600仕訳なし
リース料支払時(支払毎)リース債務110普通預金110リース料
仮払消費税(※3)
100
10
普通預金110
毎期末減価償却費
(※2)
1,200リース資産1,200仕訳なし

(※1)契約時の貸方「リース債務」を、リース債務6,000千円、未払消費税600千円に分けるやり方もあります。
しかし、「未払消費税」を区分すると、税務署への支払と誤解する可能性があるので、当事務所では、「リース債務」に含めて処理します。(あくまで「リース債務」は、リース会社に対する支払を表す)
 
(※2)6,000千円÷60か月×12か月=1,200千円

 

(※3) 消費税は、契約時に全額控除も可です。
 

5.償却資産税の取扱いは?

「所有権移転外リース取引」は、償却資産税の申告対象外となります(貸している側が申告)。

 

6.参照URL

(所有権移転外リース取引)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5704.htm

(リース取引についての取扱いの概要(平成20年4月1日以後契約分))
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5702.htm

(所有権移転外ファイナンス・リース取引につき賃貸借処理した場合の取扱い)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/16/23.htm

 

7. YouTube

 
YouTubeで分かる「所有権移転外ファイナンスリースの借り手の税務処理」
 

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