税金の豆知識
Q114【一時所得と雑所得】違いは?確定申告や扶養・配偶者控除・社会保険との関係は?事業所得と雑所得の違いも解説
最終更新日:2025/10/09170012view

例えば、生命保険金の解約返戻金や、副業での収入なども、原則として、所得税等の課税対象となります。
こういった、収入は、所得税の区分上、「一時所得」あるいは「雑所得」に区分されますが、どちらに該当するかで、税金の計算方法が異なります。実務上は、一時所得か雑所得か?の判断につき、迷うケースも多いです。
そこで今回は、「一時所得」と「雑所得」に該当する具体的な事例や、税金の計算方法の違い、税法上や社会保険上の扶養との関係につき解説します。
目次
1.一時所得・雑所得の具体例
(1) 具体例
「一時所得」とは、名前の通り、一時的に得られた収入です。イメージは、「臨時的な収入」です。
一方で、「雑所得」とは、他の分類することのできない所得、全てを指します。
どちらも抽象的な定義のため、実務上、どちらに該当するか?・・判断に迷うケースも多いです。
具体的に、「一時所得」、「雑所得」に該当するものを列挙すると以下の通りです。
まずは、「一時所得」に該当するものを把握し、それ以外が「雑所得」に該当する、というイメージとなります。
一時所得 | 雑所得 |
---|---|
● 懸賞等の賞金・賞品 ● 競馬等、公営ギャンブル払戻金(営利や継続収入除く) ● 生命保険等の満期返戻金・解約返戻金(一時払) ● 法人からの贈与金品(個人は除く)。 ● 家屋の立退料、解除償還金 ● ふるさと納税の返礼品、ポイントで交換した景品相当額 |
① 副業収入(事業的規模除く) ② 公的年金・分割年金形式の個人年金等 ③ 国内FXや仮想通貨(事業的規模除く) |
なお、宝くじの当選金は非課税とされています。
(2) 保険金や年金は、名称だけで判断しない
生命保険の満期保険金や個人年金などは、受取方法によって、所得区分が異なります。
一括で受け取る場合は「一時所得」、年金形式で分割で受け取る場合は「雑所得」となります。
また、内容によって、所得税が課税されないものもあります。
例えば、生命保険や損害保険でも、事故等の賠償金や、身体の障害・疾病に関する給付金は非課税とされています。
その他、年金の中でも、遺族恩給や遺族年金は、非課税になります。
2.一時所得・雑所得の課税対象・計算方法の比較
(1) 課税対象・計算方法の比較
雑所得と一時所得は、それぞれの「所得区分」が異なるため、課税対象額の算定方法が異なっています。以下の通りです。
一時所得 | 雑所得 | |
---|---|---|
課税対象額 | (収入-支出金額-特別控除額50万円)×1/2 ⇒複数の一時所得がある場合は、合算後 (内部通算後)、特別控除額を差し引く。 |
収入額-必要経費(特別控除はなし) ⇒ 年金の場合は、公的年金等控除額が経費。 |
経費(支出) | 収入を得るために「直接要したもの」のみ。範囲は狭い(例 保険満期返戻金 ⇒過去の支払保険料のみ) 。 | 雑所得を得るために必要な支出全般。範囲は広い(事業所得と比べると、範囲は狭い)。 |
課税方式 | 「総合課税」 (一部の一時払養老保険などは、源泉分離課税あり) |
原則、「総合課税」 ただし、国内FXや先物取引等は「分離課税」 (仮想通貨、海外FXは総合課税)。 |
損益通算 | 認められない | 認められない |
総合課税とは、複数の所得を合算して、累進税率で計算する方法です。給与所得、事業所得、不動産所得、雑所得、一時所得、利子所得、配当所得、譲渡所得(総合課税のもの)が該当します。
「総合課税」になるものは、まずは、各所得ごとに「課税対象額」を算定したうえ、その後合算します。合算後の所得額に応じた「累進税率」で、所得税の計算が行われます。
(2) 損益通算・内部通算
損益通算とは、所得と損失を相殺し、損失があった分だけ課税所得を減らすことができる制度です。
例えば、不動産所得の赤字があれば、給与所得と相殺することができ、所得税が減少します。
この点、「雑所得」や「一時所得」は、他の所得区分との「損益通算」はできません。
例えば、仮想通貨や副業収入で赤字がある場合でも、給与所得等の損益通算して、所得税を減らすことはできません。
また、同じ雑所得同士でも、「総合課税」と「分離課税」は、完全に区分されますので、「総合課税」と「分離課税」の雑所得同士を「内部通算」することもできません(総合課税内部、分離課税内部での「内部通算」は可能)
【具体例】 申告分離課税の雑所得と、総合課税の雑所得
先物・国内FX収入(申告分離課税の雑所得) ⇔ 仮想通貨収入(総合課税の雑所得のもの)
⇒ 内部通算不可。
3.確定申告は必要か?
(1) 原則 確定申告が必要
一時所得、雑所得が生じる場合、原則として、確定申告が必要となります。
特に、講演料(雑所得)や、満期保険金(一時所得)などは、支払者(保険会社等)から、税務署に報告されていますので(支払調書)、申告しないとばれる可能性が高いです。
また、分離課税のFXに関しても、入金時に源泉徴収されていませんので、利益が生じる場合は、確定申告が必要です。
(FXが赤字の場合は、分離課税のため申告不要となりますが、損失の繰越が可能なため、申告する方がお得です)
(2) 確定申告が不要なケースもあり
例外的に、確定申告不要なケースがあります。
給与所得者の場合、雑所得、一時所得の年間合計が20万円以下の場合は、申告義務はありません。
その他、専業主婦などの場合は、雑所得、一時所得の年間合計が、最低限、基礎控除95万円以下の場合は申告義務はありません。様々なケースがありますので、詳しくは、Q35をご参照ください。
【具体例】
● サラリーマンで、給与所得者。
● 上記の給与の他、保険の解約返戻金収入額160万円(一括受取)あり。その他の所得はない。
● 上記の保険金にかかる、過去の保険金支払累計額70万円。
(160万円 - 70万円 ― 50万円) × 1/2 = 20万円(一時所得)
⇒ 一時所得が年間20万円以下となるため、確定申告は不要です。
4.扶養・配偶者控除や、社会保険上の扶養との関係は?
例えば、配偶者やお子様自身に保険の解約返戻金や、FX(雑所得)などの利益がある場合、扶養から外れるのでしょうか?
この点、一時所得や雑所得も、扶養の判定基準となる「合計所得金額」に含まれますので、これらの所得も合計して、年間合計所得が58万円超になる場合は、扶養控除・配偶者控除はできません。
なお、保険の解約返戻金等の一時所得は、経費や特別控除50万円差引後、1/2後の金額で判定しますので、実務上、扶養からはずれるケースは少ないかと思われます。
【具体例】
● 配偶者(専業主婦)に、保険の解約返戻金の収入200万円(一括受取)あり。その他の所得はない。
● 過去の保険料支払額34万円。
(200万円 ― 34万円 - 50万円) × 1/2 = 58万円(一時所得)
⇒配偶者の合計所得金額が、年間58万円以下となるため、本人は、配偶者控除可能です。
なお、社会保険上の扶養は、税法上の扶養と全く基準が異なります。原則として収入130万円(60歳以上等は180万円)未満かどうかで判定します。ただし、社会保険上の扶養判定については、「一時的な収入」は除外して判定できますので、上記例の「保険の解約返戻金」であっても、社会保険の扶養から外れることはありません
(一時的な収入ではない、例えば「アフェリエイト収入」などは、130万円基準等で判定します)。
5.副業収入が雑所得ではなく、事業所得となるケース
副業収入は、原則として「雑所得」となりますが、副業が事業的規模の場合は、「事業所得」にできるケースもあります。
所得税上、「事業所得」に該当する場合は、「雑所得」の場合よりも、税額に関する特典が多くなっています。
(1) 事業所得の場合の特典
「事業所得」に該当する場合、認められる特典は以下の通りです。
●青色申告特別控除(最大65万円)。青色専従者給与もOK
●損益通算、損失の繰越が可能
●経費の範囲が広い
(2) 雑所得と事業所得の区分
「雑所得」と「事業所得」の区分は、実務上難しいケースが多いですが、
「一定の規模で、営利性、反復継続性がある場合」は、帳簿保管を前提に、「事業所得」に該当するものとされています。
例えば、副収入やFX(雑所得)で生じた所得でも、事業として営利性、反復継続性があり、かつ帳簿を備えている場合は、「事業所得」となるケースもあります。
一方で、「金額が僅少」な場合は、事業所得とみなされないケースもあるようです。
【雑所得とみなされるケースの例】
● 副業の収入金額が少なく、全体の収入に対する割合が10%程度未満の場合
● 赤字が継続している場合(=営利性がないとみなされる)
なお、仮想通貨に関しても上記同様、営利性、反復継続性、事業的規模を満たす場合は、事業所得となります(帳簿保存も必要)。国税庁上は、「年間収入300万円超」という金額基準が示されています。
6.YouTube
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