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Q237 【令和7年改正】保険の解約返戻金や不動産売却がある場合の「配偶者控除」等への影響は?/合計所得金額と総所得金額の違い

最終更新日:2025/09/18

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Q237 【令和7年改正】保険の解約返戻金や不動産売却がある場合の「配偶者控除」等への影響は?/合計所得金額と総所得金額の違い

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

はまだ税理士法人の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
                                                           YouTubeチャンネル:はまだ税理士法人のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

保険の解約返戻金や不動産売却などの「一時的な収入」がある場合、「配偶者控除」などの「所得控除」ができなくなるのか?・・疑問に思われる方も多いかと思います。

そこで今回は、「一時的な収入」が、税法上の「所得控除」に与える影響や、「所得控除」を判定する際の「合計所得金額」「総所得金額」の内容につきお伝えします。
(なお、社会保険上の影響については、こちらをご参照下さい)

 

1 扶養控除・配偶者控除等への影響

例えば、扶養控除や配偶者控除など、所得税上の「所得控除等」の要件として、「合計所得金額」「総所得金額等」の上限が定められているケースが多いです。
「合計所得金額」「総所得金額等」というのは、簡単に言うと、ご自身の「年間収入」をベースにした金額となりますが、給与だけでなく、保険の解約返戻金(一時所得)や、不動産売却(譲渡所得)などの「一時的な収入」も含まれます

したがって、こういった「一時的な収入」がある年度は、「合計所得金額」「総所得金額等」が増加する結果、「所得控除」の要件を満たさなくなる可能性があります。また、例えば、旦那様の扶養に入っている奥様の場合は、夫の扶養から外れてしまうことも考えられます。

 

2 「合計所得金額」「総所得金額」で判定する所得控除等の一覧

「合計所得金額」「総所得金額等」の内容は後述しますが、まずは、「所得控除等」のうち、①「合計所得金額」の制限があるもの、②「総所得金額等」の制限があるものに区別されますので、それぞれに分けて「所得控除」の種類をまとめます。

 

(1) 合計所得金額の制限がある「所得控除等」

「合計所得金額」の制限がある「所得控除等」の種類は、以下の通りです。

所得控除等
の種類
適用できるケース
基礎控除本人の合計所得金額 2,500万円以下
扶養控除
特定親族特別控除
● 16歳以上の扶養親族 合計所得金額 58万円以下(令和7年改正)
● 19歳~23歳未満の親族 合計所得金額 123万円以下(令和7年創設)
配偶者控除・
配偶者特別控除
● 本人の合計所得金額 1,000万円以下
● 配偶者の合計所得金額 58万円以下(令和7年改正)
(配偶者特別控除は、58万超133万円以下)
障害者控除同一生計配偶者又は扶養親族の合計所得金額 58万円以下
(本人は所得要件なし)
ひとり親控除・
寡婦控除
本人の合計所得金額 500万円以下
勤労学生控除本人の合計所得金額 85万円以下
住宅ローン控除本人の合計所得金額 2,000万円以下
(家屋床面積が40㎡~50㎡未満は、1,000万円以下)
住民税非課税判定住民税均等割の非課税限度額の判定
● 障害者、未成年者、寡婦、ひとり親の住民税非課税限度額の判定

上記の他、贈与税上も、「合計所得金額」によって「特例の適用」が制限されるケースがあります。以下の通りです。

特例の種類適用できるケース
住宅取得等資金の
贈与税非課税措置
● 受贈者の合計所得金額 2,000万円以下
(家屋床面積が40㎡~50㎡未満は、1,000万円以下)
教育資金の
贈与税非課税措置
● 受贈者の合計所得金額1,000万円以下
結婚・子育て資金の
贈与税の非課税措置
● 受贈者の合計所得金額1,000万円以下

 

(2) 総所得金額等の制限がある「所得控除等」

「総所得金額等」の制限がある「所得控除等」の種類は、以下の通りです。

総所得金額
ひとり親・寡婦控除生計一の子or扶養親族の総所得金額等 58万円以下
医療費控除総所得金額等が200万円未満の場合、総所得金額等の5%を超えた金額
寄付金控除寄付金の上限は、総所得金額等の40%
(住民税上は30%のケースあり)
雑損控除損失のうち、総所得金額等の10%を超える金額(災害支出除く)
住民税非課税判定所得割の住民税非課税限度額の判定
国民健康保険の計算基準総所得金額等(総所得金額等 - 基礎控除額)

 

3 合計所得金額・総所得金額等とは?

(1) 合計所得金額・総所得金額を構成する内容

「合計所得金額」、「総所得金額」とは、以下の「所得」を指します。
なお、「所得」というのは、「収入」ではありません。収入から、「各種の経費」を差し引いた金額です。例えば、不動産を売却した場合、売却収入から過去に取得した際の「取得費等」を差引いてマイナスになる場合、所得はゼロになります。

合計所得金額総合課税① 利子所得・配当所得(源泉分離課税除く)
② 不動産所得・事業所得・給与所得(所得金額調整控除後)
③ 総合課税の短期譲渡所得・長期譲渡所得(1/2後)
④ 一時所得(1/2後)・雑所得
分離課税① 土地建物等の短期・長期譲渡所得(特別控除前)
② 上場・一般株式等の譲渡・配当所得(申告分離課税選択の場合)
③ 先物取引に係る雑所得
退職所得・山林所得
総所得金額等上記の合計所得金額-各種の繰越控除額(※)

(※)「各種の繰越控除額」とは、純損失・雑損失の繰越控除、マイホーム譲渡損失の繰越控除、上場株式・先物取引等の譲渡損失繰越控除等のことをさします。

● 「合計所得金額」「総所得金額等」には、給与所得はもちろん、保険の解約返戻金(一時所得)や、不動産所得などが含まれています。したがって、保険の解約返戻金等、「一時的な収入」がある場合、「所得控除」が適用できない可能性があります。
● 上記の通り、「合計所得金額」と「総所得金額等」は、ほとんど違いがありません。違いは、「各種の繰越控除額」を引くか引かないかの?点です。逆に言うと「繰越控除額」がない場合、「合計所得金額」と「総所得金額等」の金額は一致します。

なお、「総所得金額等」ではなく、「総所得金額」という概念もあります。「総所得金額等」のうち、「総合課税の対象」となる所得のみを指しますが、実務上でてくることは、ほとんどありません

富田林市HPより抜粋

 

4 「合計所得金額」「総所得金額等」の申告書での把握場所

譲渡所得、退職所得など、「イレギュラーな所得」がない場合、通常は、「確定申告書1表」の左側、下記の例ですと「⑫所得金額合計欄 11,460千円」が、「総所得金額」、「合計所得金額」を示します。(繰越欠損金の利用額がある場合、合計所得金額は、欠損金利用額を加算して算定)。

第1表

一方、譲渡所得や退職所得など「一時的な収入」がある場合は、少し複雑になります。「第3表」の金額より計算できます。例えば、下記の例ですと、総合課税の合計額11,460千円(第1表の⑫)+譲渡所得(特別控除前)12,908千円+退職所得600千円=24,908千円となります。

第3表

 

(2) 実務上間違えやすい箇所

実務上、「合計所得金額」・「総所得金額等」の金額を把握する際に、迷いやすい箇所をまとめます。

合計所得金額
総所得金額等
共通
● 総合課税の所得、上場株式の配当・譲渡損失は、損益通算の所得(繰越控除前)
● 土地建物の短期・長期譲渡所得は「特別控除前」の金額
(=マイホーム3,000万円控除等を控除する前の金額)
上場株式等の配当や譲渡所得は、申告する場合のみ「合計所得金額」に含まれる。
● 退職所得については、所得税上は合計所得金額に含まれるが、住民税上は、合計所得金額に含まれない。
● 所得控除は、差し引く前の金額

なお、マイホーム売却益3,000万円の特別控除などの「特別控除」の金額は、「税法上」は、「合計所得金額・総所得金額等」どちらも、特別控除前の金額となりますが、国民健康保険を算定する際の「総所得金額等」は、特別控除を差引いた金額で算定できます。

 

5 判定の具体例

(1) サラリーマンの場合

● 給与収入400万円
● 土地譲渡収入5,000万円、過去の取得費等2,000万円
(マイホーム3,000万特別控除前)
● 保険の解約返戻金収入 250万円(一時所得)

● 給与所得 400万円-給与所得控除(400 × 20% + 440,000円)=276万円
● 譲渡所得 5,000万円-2,000万円=3,000万円 (特別控除前)
● 一時所得 (250万円-50万円) ×1/2=100万円

合計所得金額=276万円 + 3,000万円 + 100万円 = 3,376万円
⇒総所得金額も同額3,376万円。

【結論】
● 合計所得金額が3,376万円となるため、基礎控除・配偶者控除・ひとり親控除、寡婦控除、勤労学生控除、住宅ローン控除は適用できません
● なお、国民健康保険料を計算する際の「総所得金額等」は、3,000万円の特別控除差引後で算定できます

 

(2) 自営業者の場合

● 事業所得300万円、不動産所得100万円。
● 当期に、過去からの繰越欠損金300万円を利用
● 医療費控除あり

● 合計所得金額=300万 (事業所得)+100万(不動産所得)=400万円
● 総所得金額等 400万-300万(繰越控除)=100万円

【結論】
● 合計所得金額400万円のため、基礎控除、配偶者控除、ひとり親控除、寡婦控除、勤労学生控除、住宅ローン控除は適用可能です。
● 総所得金額等は、繰越控除利用後100万円となりますので、医療費控除は、総所得金額(100万円)×5%を超えた金額となります。国民健康保険の計算は、総所得金額等100万円を基準に計算されます。

 

(3) 配偶者の扶養判定の例

● 配偶者のアルバイト収入123万円 (その他収入なし)
● 保険の解約返戻金 250万円(一時所得)
● 本人は、配偶者控除の所得要件を満たすものとする

● 給与所得 123万円-65万円(給与所得控除)=58万円
● 一時所得 (250万円-50万円) ×1/2=100万円

合計所得金額58万円+100万円=158万円
配偶者の合計所得金額が133万円超のため、本人は、奥様の配偶者控除・配偶者特別控除ができません。

 

6 ご参考~予定納税への影響~

前年確定申告での納税額が15万円以上の場合、翌年は所得税の予定納税義務が発生します。この場合、予定納税額については、「合計所得金額等」から「一時的な所得」は除外して算定します。予定納税額算定にあたって、除外される所得は以下の通りです。
① 山林所得
② 退職所得等の分離課税の所得(分離課税の上場株式等の配当所得等を除く)
③ 譲渡所得
④ 一時所得
⑤ 雑所得
⑥ 平均課税を受けた臨時所得の金額

したがって、例えば、不動産売却の譲渡所得・保険の解約返戻金等の一時所得がある年度でも、来年度の予定納税の額が大幅に増えるわけではありません

 

7. 参考URL

国税庁

https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru/cat2/cat21/cat21d/index.html

 

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