税金の豆知識
Q189【令和7年改正反映】所得控除の種類は? 高齢者に優遇される「所得控除」の内容とは?扶養控除・配偶者控除・障害者控除・医療費控除
最終更新日:2025/08/0832043view

年金についても、サラリーマン給与と同様、原則として、所得税等が課税されます。
ただし、年金収入額「全額」に対して課税されるわけではなく、各種の「経費」を差し引いて、「課税所得」が生じる場合のみ課税されます。
公的年金収入から控除できる「経費」には、大きく、①公的年金等控除と②所得控除の2種類があります。
このうち、今回は、②の「所得控除」の内容をお伝えするとともに、年金受給者に優遇されている所得控除(扶養控除・配偶者控除、障害者控除等)を中心にお伝えします。
(①の公的年金等控除については、別途、Q188をご参照ください)
目次
1. 公的年金等に課税される所得の計算方法
公的年金等に課税される「課税所得」の計算は、以下の式で算定します。
公的年金等の課税所得 = 公的年金等の収入金額 - ①公的年金等控除額 - ②各種所得控除
課税される金額は、収入金額全額ではなく、公的年金等控除や、各種所得控除を差し引いた課税所得に対して課税されます。
このうち、①公的年金等控除は、年金収入の金額に応じて最初から認められる「経費」です。
一方で、②所得控除とは、配偶者控除、医療費控除など、各人の状況に応じて所得税の計算上、収入金額から差し引ける経費です。
今回は、このうち、②所得控除につき、以下お伝えしてきます
(①公的年金等控除額については、別途Q188をご参照ください)。
2. 所得控除の種類
「所得控除」は、例えば、扶養控除、配偶者控除、障害者控除等、各人の状況に応じて、収入から差しける経費です。所得控除があればあるほど、税金は安くなります。
所得税上、以下の種類の「所得控除」が定められています。(それぞれの詳細な制度内容は、リンク先をご参照ください)。
種類 | 認められるケース | 所得控除額(所得税) |
---|---|---|
基礎控除 | 誰でも認められる所得控除 | 0円~最大95万円 |
扶養控除 | 合計所得58万円以下の扶養親族がいる場合 | ● 年齢等に応じて異なる。最大63万円 |
配偶者控除 | ● 合計所得58万円以下の配偶者がいる場合 | ● 配偶者70歳未満 ・・最大38万円 ● 配偶者70歳以上 ・・最大48万円 |
配偶者特別控除 | ● 合計所得58万円超133万円以下の配偶者がいる場合 | ● 最大38万円 |
社会保険料控除・ 小規模企業共済掛金等控除 | 社会保険料等の支払がある場合(国民健康保険、国民年金、厚生年金、厚生年金基金、小規模企業共済等掛金、個人型・企業型年金加入掛金等) | 年間支払金額 |
生命保険料・地震保険料控除 | 生命保険、介護医療保険、個人年金、地震保険などの支払がある場合 | ● 生命保険料控除 ・・最大12万円 ● 地震保険料控除 ・・最大5万円 |
医療費控除 | 医療費の支払がある場合 | ● 上限200万円 |
障害者控除 | 本人やその親族が、障害者の認定を受けている場合 | 27万円~75万円 |
寡婦・ひとり親控除 | シングルマザーの人や、配偶者と死別・離婚されている場合 | 27万円or35万円 |
寄付金控除 | ふるさと納税等の寄付がある場合 | 特定寄付金額 - 2,000円 (上限あり) |
勤労学生控除 | 本人が勤労学生に該当する場合 | 27万円 |
雑損控除 | 災害や盗難、横領による損失がある場合 | 以下いずれか多い方 ● 正味の損失-(総所得金額×10%)(上限あり) ● 正味の災害関連損失-5万円 |
上記の所得控除は、広く一般的に認められますが、その中でも、年金受給者の場合は、優遇されている「所得控除」が存在します。以下、年金受給者に影響がある「所得控除」を中心に、内容や留意事項をまとめます
3. 扶養控除
扶養控除とは「合計所得金額が58万円以下」の扶養親族がいる場合に認められる所得控除です。70歳以上の扶養親族は、一般の扶養控除よりも高い控除額となっています(カッコ書きは住民税の所得控除額を示します、以下同様です)。
種類 | 控除額 | |
---|---|---|
老人扶養親族(70歳以上) | 同居老親等以外 | 48万円(38万円) |
同居老親等 | 58万円(45万円) | |
一般の控除対象扶養親族(16歳以上) | 38万円(33万円) | |
上記中、19歳~23歳未満(特定扶養親族・特定親族特別控除) | 最大63万円(最大45万円) |
● 合計所得金額とは、総合課税所得+分離課税所得の金額(繰越損失控除前)です。簡単なイメージは、公的年金等控除後、所得控除前の金額です。
● 老人扶養親族とは、70歳以上の扶養親族の方です。同居老親等とそれ以外で控除額が異なりますが、一般の扶養控除よりも高い控除額となっています。
● 同居老親等とは、老人扶養親族のうち、納税者・その配偶者の直系の父母・祖父母などで、納税者・その配偶者と常に同居している人となります。例えば、「夫の親」と「夫」が別居している場合でも、「配偶者である奥様」が「夫の親」と同居していれば「同居老親等」となります(子供が「夫の親」と同居は×)。
● 老人ホームに入居している場合は「同居要件」満たしません。一方、入院については、たとえ長期間入院している場合でも「同居」に該当します。
4. 配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除とは、「合計所得金額が58万円以下」の配偶者がいる場合に認められる所得控除です。70歳以上の配偶者は、一般の配偶者控除よりも高い控除額となっています。
ただし、配偶者控除の金額は、扶養控除と異なり、一律ではありません。本人の合計所得(年金等)に応じて、3種類に分かれます。以下の通りです。
【配偶者控除額】
本人の合計所得金額 | 老人控除対象配偶者 控除額 | 一般の控除対象配偶者 控除額 |
---|---|---|
900万以下 | 48万円(38万円) | 38万円(33万円) |
900万超950万円以下 | 32万円(26万円) | 26万円(22万円) |
950万円超1,000万円以下 | 16万円(13万円) | 13万円(11万円) |
● 配偶者特別控除とは、「合計所得金額が58万円超133万円以下」の配偶者がいる場合に認められる所得控除です。合計所得の金額に応じて、控除額は段階的に減少していきます。
なお、配偶者特別控除については、年齢により「特別に定められた規定」はないため、70歳以上の方も、70歳未満の「一般の配偶者特別控除」と同じ規定となります。
5. 社会保険料控除
社会保険料控除とは、介護保険、国民健康保険(後期高齢者医療保険含む)、国民年金等を支払っている場合に認められる所得控除です。「年間支払額の全額」が所得控除可能です。
なお、年金受給者の場合、年金受給時に介護保険料等が天引きされているケースがありますので、確定申告の際には、年金受給時に天引きされている社会保険を、忘れずに記載します。
6. 医療費控除
医療費控除は、「年間支払医療費」が一定額を超えた場合に認められる所得控除です。
上限は年間200万円まで認められ、医療費控除の金額は、「医療費支出額 - 10万円」となります。
(総所得金額が200万未満の場合は、総所得金額等×5%)
● 納税者と「生計を一」にする配偶者やその他親族の医療費も含まれます。別居していても、仕送り等、日常生活費を負担している場合は「生計を一」となります。
● 公共交通機関の交通費も、医療費控除の対象となります。
7. 障害者控除
納税者本人or納税者本人と生計を一とする「合計所得金額が58万円以下」の配偶者や扶養親族が、所得税法上の障害者に該当する場合に認められる所得控除です。本人だけでなく、生計一の配偶者等、16歳未満の扶養親族が障害者である場合も本人の所得控除が可能な点が特徴です。
(1) 障害者控除の対象
年金受給者の方は、比較的「障害者控除」ができる方が多いかもしれません。
障害者控除の対象となる人は、以下となります。
内容 | 特別障害者に該当する場合 | ||
---|---|---|---|
① | 精神上の障害 | 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態にある人 | 常に特別障害者 |
② | 知的障害者 | 児童相談所や精神保健福祉センター、精神保健指定医等の判定により、知的障害者と判定された人 | 重度の知的障害者は、特別障害者 |
③ | 身体障害者 (身体障害者福祉法) | 身体障害者手帳に、身体上の障害で記載がある人 | 障害の程度1級又は2級の人は特別障害者 |
④ | 精神又は身体に障害がある65歳以上の方で 上記①~③に準ずる方 | 市町村長等の認定を受けている方 | 特別障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人 |
⑤ | 精神障害者 (精神保健及び精神障害者福祉に関する法律) | 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人 | 障害等級1級の人 |
⑥ | 常に寝たきりで複雑な介護が必要な方 | 12月31日の現況で6ヶ月以上身体障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人(介護を受けなければ自ら排便等をすることができない状態) | 常に特別障害者 |
⑦ | 戦傷病者 (戦傷病者特別援護法) | 戦傷病者手帳の交付を受けている人 | 恩給法に定める特別項症から第3項症までの人 |
⑧ | 原子爆弾被爆者 (原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律) | 厚生労働大臣の認定を受けている人 | 常に特別障害者 |
● 「複雑な介護を要する方」につき、特に証明するものはありませんが、市町村長から認定書の交付を受けることも可能です(厚生労働省・平成14年8月1日事務連絡)
● なお、「要介護認定」については、介護保険法により認定されるものであり、上記の「障害者控除」には直接関係しません。ただし、上記④「市町村長等の認定」を受ける際に、「介護保険法の要介護認定」が要件となる場合が多いため、実務上は「要介護認定」を受けている方は、市町村長の認定を通じて所得税上の「障害者控除対象者認定」を受けることになります。
(2) 控除額
下記の3種類に区分されます。
種類 | 控除額 |
---|---|
障害者 | 27万円(26万円) |
特別障害者 | 40万円(30万円) |
同居特別障害者 | 75万円(53万円) |
● 同居特別障害者とは、特別障害者のうち、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常況としている人です。
● 「同居特別障害者」は、「扶養控除」の1つである「同居老親」よりも、同居する親族の範囲が広い点が特徴的です。「生計一の親族」が同居する場合でも認められる点、「同居老親」よりも範囲が広くなっています。ただし、同居老親同様、老人ホーム入居の場合は、同居となりません。
8. ひとり親控除・寡婦控除
ひとり親控除・寡婦控除は、納税者が「ひとり親」の場合や、配偶者と死別・離婚している場合に認められる控除です。特に、女性の方で、配偶者と死別した場合は、寡婦控除が適用できる場合がありますので、留意が必要です。
種類 | 控除額 |
---|---|
ひとり親控除 | 35万円(30万円) |
寡婦控除 | 27万円(26万円) |
9. 参照URL
(No.1182 お年寄りを扶養している人が受けられる所得税の特例)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1182.htm
(「同居」の範囲(長期間入院している場合))
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/32.htm
(No.1184 扶養家族に寝たきりの老人がいるときの控除額)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1184.htm
(障害者控除)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm
10. YouTube
YouTubeで分かる「【年金受給者】所得控除の種類は? 高齢者に優遇される「所得控除」の内容とは?」