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Q100【令和7年改正】基礎控除・給与所得控除の違いは?併用は可能?/収入に応じた早見表で解説/基礎控除申告書の記載例

最終更新日:2025/08/14

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Q100 【画像付2020年最新】「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」って?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

所得税上、ほとんどの方に認められる「基礎控除」という所得控除があります。
一方で、給与所得者の場合は、給与収入から差し引ける「給与所得控除」という控除もあります。
どちらも所得税等を安くできる「所得控除」ですが、両者の違いや、併用有無など・・疑問に思う方もいるかもしれません。

令和7年の税制改正により、「基礎控除」「給与所得控除」の両者とも、控除できる金額が引き上げられています。
今回は、「基礎控除」や「給与所得控除」の内容や、給与収入ごとの控除額をお伝えし、令和7年基礎控除改正による影響等につき解説します。

 

1.基礎控除とは?

(1) 基礎控除とは?

基礎控除は、最低限の生活をするために認められる、所得税、住民税上の「所得控除」です。
生活には最低限のお金が必要ですので、「生活維持に必要な部分に課税しない」ことを目的とした控除です。
サラリーマンや自営業等、すべての方を対象に認められる所得控除です。

ただし、「生活維持」という制度趣旨より、所得が多い方には認められない点に注意が必要です。

 

(2) 基礎控除の金額(令和7年改正)

令和7年改正により、基礎控除の金額が大幅に引き上げられました(改正前は最大48万円)。
ただし、令和7年、令和8年のみ経過措置があり、「合計所得金額132万円超655万円以下(給与収入換算2,003,999円超8,500,000円以下)」の方の「基礎控除」の額が大きくなっています。以下となります。

【基礎控除の額(原則)】

本人の合計所得金額
(カッコ書は給与収入換算額)
基礎控除額
132万円以下
(2,003,999円以下)
95万円
132万円超 2,350万円以下
(2,003,999円超 25,450,000円以下)
(※)58万円
2,350万円超 2,400万円以下
(25,450,000円超 25,950,000円以下)
48万円
2,400万円超 2,450万円以下
(25,950,000円超 26,450,000円以下)
32万円
2,450万円超 2,500万円以下
(26,450,000円超 26,950,000円以下)
16万円
2,500万円超 
(26,950,000円超)
0円

(※)令和7年及び令和8年分については、特例により、基礎控除の金額が下記となります(時限措置)

【令和7年・8年の経過措置(合計所得金額132万超~655万以下のみ特例)】

本人の合計所得金額
(カッコ書は給与収入換算額)
基礎控除額
132万円超 336万円以下
(2,003,999円超 4,751,999円以下)
88万円
336万円超 489万円以下
(4,751,999円超 6,655,556円以下)
68万円
489万円超 655万円以下
(6,655,556円超 8,500,000円以下)
63万円

2.給与所得控除とは?

(1) 給与所得控除とは?

給与所得控除とは、サラリーマンなどの「給与収入の金額」に応じて、最初から認められる概算経費です。
サラリーマンの場合、自営業者のように、原則として「領収書」による経費は認められません。
一方で、「給与を得るために必要な経費」は一定額発生していると考えられるため、「給与収入」に関しては、「収入」に応じた概算経費を差し引くことができます。これが「給与所得控除」です。
サラリーマンの場合は、領収書がなくても、最初から「特典」が認められている、ということですね!
 

課税される給与の額(給与所得)は、以下の式で算定されます。

給与所得 = 給与収入 ― 給与所得控除

 

(2) 給与所得控除の金額

令和7年改正後の「給与所得控除」は以下となります。
改正後は、給与所得控除の最低金額が65万円に引き上げられています(改正前は、最低55万円)。
(なお、「給与収入額190万超」については、改正はありません)
 
【給与所得控除の金額】

給与収入額給与所得控除額
190万以下65万円
190万超360万以下収入×30%+80,000円
360万超660万以下収入×20%+440,000円
660万超850万以下収入×10%+1,100,000円
850万超195万円
(3) 給与所得者は、基礎控除・給与所得控除どちらも差引OK

サラリーマンなどの「給与所得者」の場合、基礎控除、給与所得控除のどちらも差引きが可能です
基礎控除については「所得制限」がありますが、「給与所得控除」については、「所得制限」はありません。
参考に、「基礎控除」と「給与所得控除」の違いをまとめると、以下となります。

 

基礎控除給与所得控除
対象者すべての方給与所得者のみ
所得制限ありなし
金額所得に応じた金額給与収入に応じた金額
差し引く場所全所得合計から差引給与収入から差引

 

3.「基礎控除申告書」の記載方法

サラリーマンの場合、給与所得控除の適用に当たっては、勤務先に提出する資料はありません。一方で、「基礎控除」を受けるためには、年末調整の際に「基礎控除申告書」を提出する必要があります。
「基礎控除申告書」は、「配偶者控除申告書」や「特定親族所得控除申告書」「所得金額調整控除申告書」とセットの書類となっています(給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書)。

 

(1) 記載する人

所得2,500万円(給与収入換算2,695万円)以下の方は全員記載します。
ほとんどのサラリーマンが記載することになると思われます。

 

(2) 記載例

下記「水色部分」が基礎控除申告書部分です。
その年度のご自身の給与所得(給与収入、給与所得控除後の給与所得)、その他の所得を記載します。
当該金額を記載し、「控除額の計算」テーブルにあてはめてご自身の「基礎控除額」が決まります。

 
【記載例】

 

例えば、上記のサンプル例ですと、
●給与収入 500万円
給与所得 500万円 - 給与所得控除(500万円 × 20% + 440,000円) = 3,560,000円
⇒令和7年・令和8年の場合は、「控除額の計算」にあてはめて、基礎控除額は68万円となります。
 

4.住民税の取扱い

(1) 基礎控除の取扱い

上記の通り、所得税上は、「基礎控除」の金額が大幅に引き上げられましたが、住民税は改正されていません
住民税の「基礎控除」は、合計所得金額が2,400万円以下の場合は43万円です。
所得が2,400万円を超えると控除額が段階的に減少し、2,500万円を超えると基礎控除はゼロになります。
 

(2) 給与所得控除の取扱い

給与所得控除は、住民税(個人住民税)でも認められます。
給与所得控除額は、所得税の金額と同じ額になります。
 

5.課税所得の計算例

上記3「年収500万円のサラリーマン」で計算してみます。

● 給与所得控除 = 500万円×20% + 440,000円 = 1,440,000円
● 給与所得 = 5,000,000円(給与収入)― 1,440,000(給与所得控除) = 3,560,000円
● 基礎控除 = 680,000円(令和7年、令和8年時限措置)
● 課税所得 = 3,560,000円 ― 680,000円 = 2,880,000円(所得税課税所得)

【ご参考 所得税の計算】
2,880,000円 × 10%(288万円に対応する所得税率) – 97,500(288万円に対応する定額控除) = 190,500円(所得税)。
 ⇒ 上記の他、別途住民税が10%課税されます。

 

6.令和7年改正の影響

基礎控除及び給与所得控除の上限が緩和されたことで、給与所得者につき最低限課税される金額は、給与収入160万円に改正されています(改正前は103万円)。
また、当該改正にかかる調整として、配偶者控除扶養控除できる金額も、給与収入ベースで123万円まで緩和されています(配偶者特別控除は給与収入換算 201.6万円まで)。
したがって、「扶養内」で働いていた方などにとっては、「収入の壁」が上がることで、選択肢が増えることになります。

一方で、今回の改正は「税法」の改正で、「社会保険」の改正はありません
社会保険上は、「収入130万円」を超えると、扶養から外れ、健康保険等の恩典がなくなります。
また、今回の「基礎控除の改正」は、あくまで所得税のみで、住民税上の基礎控除の改正はありません

したがって、働き方につき一定の効果は期待できますが、「働き控え」の解消がどこまで進むか・・については、まだまだ微妙な所もあり、今後の改正が望まれます。

 

 

YouTubeで分かる「基礎控除申告書・配偶者控除等申告書・所得金額調整控除申告書」
 

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