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Q188【令和7年基礎控除改正反映】所得から差し引ける公的年金等控除とは?確定申告書の記載例/源泉徴収票の見方!/所得税の計算例 

最終更新日:2025/08/08

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Q188【公的年金】確定申告書の記載例/所得税の計算例・控除額や還付額は?/源泉徴収票の見方!

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

年金には税金がかからない・・と思われている方もいるかもしれません。
しかしながら、年金も、給与など他の収入と同様に、所得税・住民税が課税されます。

ただし、「収入金額全額」に対して課税されるわけではありません。
また、年金受取時に源泉徴収されている場合もありますので、確定申告した方がお得なケースもあります。

今回は、年金等から差し引ける公的年金等控除等の内容をお伝えし、具体例を用いて、確定申告したほうが良いケースをご紹介します。
 

 

1. 年金の種類と課税される所得の計算方法

年金の種類は、「公的年金」・「公的年金等以外の年金」の2種類に分かれます。
「公的年金」は、国民年金、厚生年金のことを指し、「公的年金等以外の年金」は、国民年金基金、確定拠出・給付年金、個人年金など、公的年金の上乗せ給付部分を指します。

どちらも、「収入額全額」に課税されるわけではなく、収入額から「公的年金控除」や「経費」「各種所得控除」を差し引いた「課税所得」に対して課税されます。

それぞれの「課税所得」の計算は、以下の通りです。

種類所得計算方法
公的年金課税所得 =収入金額- 公的年金等控除額 - 各種所得控除等
公的年金等以外の年金課税所得 = 収入金額 - 経費 - 各種所得控除等

2. 年金から差し引かれる「公的年金等控除」・「経費」とは?

(1) 公的年金から差し引かれる「公的年金等控除」の内容

公的年金等控除とは、公的年金の金額に応じて決められている、最初から認められる経費です。控除額は、①65歳未満と②65歳以上で異なり、65歳以上の方が金額が多くなっています。
ただし、①②どちらも、「公的年金等に係る雑所得以外の合計所得」の金額によって、控除額が3区分されていますので、少しややこしくなっています。以下の通りです。

【公的年金等控除額】
(65歳未満)

公的年金等の収入年金以外の所得
1,000万円以下
年金以外の所得
1,000万円超2,000万円以下
年金以外の所得
2,000万円超
130万円未満600,000円500,000円400,000円
130万超
410万円以下
収入金額×25%
+275,000円
収入金額×25%
+175,000円
収入金額×25%
+75,000円
410万円超
770万以下
収入金額×15%
+685,000円
収入金額×15%
+585,000円
収入金額×15%
+485,000円
770万超
1,000万以下
収入金額×5%
+1,455,000円
収入金額×5%
+1,355,000円
収入金額×5%
+1,255,000円
1,000万超1,955,000円1,855,000円1,755,000円

(65歳以上)

公的年金等の収入年金以外の所得
1,000万円以下
年金以外の所得
1,000万円超2,000万円以下
年金以外の所得
2,000万円超
330万円以下1,100,000円1,000,000円900,000円
330万超
410万円以下
収入金額×25%
+275,000円
収入金額×25%
+175,000円
収入金額×25%
+75,000円
410万円超
770万以下
収入金額×15%
+685,000円
収入金額×15%
+585,000円
収入金額×15%
+485,000円
770万以上
1,000万未満
収入金額×5%
+1,455,000円
収入金額×5%
+1,355,000円
収入金額×5%
+1,255,000円
1,000万以上1,955,000円1,855,000円1,755,000円

 

(2) 公的年金等以外の年金から差し引く「経費」の内容

公的年金等以外の年金については、過去の年金保険等支払額が「経費」になります。
保険会社等で、過去の年金支払額をもとに「毎年の控除額」が算定され、当該金額が毎年通知されます。
例えば、個人年金の場合は、以下のような書類が送られてきます。

 

公的年金等以外の年金の「経費」とは?

 

3. 各種所得控除とは?

例えば、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、医療費控除など、各人の状況に応じた所得控除が認められています。
こちらについては、詳しくは、Q189をご参照ください。
 

4. 確定申告は必要か?

最終的に「課税所得」がある場合は、所得税等が課税されますが、基本的には年金受取時に「源泉徴収」されていますので、必ずしも申告が必要というわけではありません。

(1) 源泉徴収票の見方

毎年1月ごろに、下記のような「公的年金等の源泉徴収票」が送付されます。

源泉徴収票の見方

上記の「源泉徴収票」の見方は、以下の通りです。

支払金額年金収入額を示しています。公的年金等控除前の金額です。この金額が400万円以下であれば、原則として「確定申告は不要」となります。
源泉徴収税額年金受取時に、既に天引きされている「源泉所得税額」を示しています。
社会保険料の額年金受取時に、既に天引きされている「介護保険額」を示しています。

 

(2) 確定申告した方が良いケースも

上記の通り、年金については、受取時に「源泉徴収」されていますので、原則として、年金収入額が400万円以下であれば、原則として確定申告は不要となります
(確定申告不要の要件については、Q187をご参照ください)。

しかしながら、源泉徴収額については、すべての所得控除が反映されているわけではなく、最低限の所得控除等をもとに決定された金額が天引きされています。
したがって、例えば、「医療費控除」が多くあるような方などは、確定申告することで当該源泉徴収額が還付されるケースもあります。
 

5. 確定申告不要の計算例

● 本人の年齢 67歳
● 公的年金収入150万円、社会保険料5万円、源泉徴収税額 0円。年金受取時に天引きされている。
● 66歳配偶者あり(配偶者収入は年金収入 年間30万円のみ)
● 本人は年金以外の収入はないものとする。
● 医療費年間支出額 50万円

確定申告不要の要件

● 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下全部が源泉徴収対象
● 公的年金等にかかる雑所得以外の所得金額が20万円以下

⇒要件を満たすため、原則、確定申告不要です。
また、源泉徴収されている金額はゼロのため、確定申告しても還付額はゼロのため、申告する意味もありません。

 

6. 確定申告した方がよい場合の計算例

「上記4.の源泉徴収票」を例題にします。

● 本人の年齢 67歳
● 公的年金収入2,396,142円、介護保険料95,220円、源泉徴収税額 14,849円。年金受取時に天引きされている。
● 66歳配偶者あり(配偶者収入は年金収入 年間30万円のみ)
● 年金以外の収入はないものとする。
● 医療費年間支出額 50万円

 

(1) 確定申告の有無

● 公的年金等の収入金額の合計額が400万以下全部が源泉徴収対象
● 公的年金等にかかる雑所得以外の所得金額が20万円以下

原則、確定申告不要です。
しかし、上記例では、源泉徴収されている金額が14,849円あります。別途、医療費控除があるため、確定申告することで、源泉徴収税額が還付される可能性があります。

 

(2) 所得税の計算

① 所得の計算

総所得金額
(公的年金控除後)
2,396,142円 - 1,100,000円(65歳以上の公的年金等控除額)= 1,296,142円
課税所得
(所得控除後)
1,296,142円-95,220円(社会保険料控除)-950,000円(基礎控除)-380,000円(配偶者控除)- 435,193円(医療費控除(※))= △564,271円

(※)医療費控除の金額 500,000円-1,296,142円(総所得金額等)×5%=435,193円。
⇒総所得金額等が200万未満のため、医療費控除額は、総所得金額等×5%となります。

 

② 所得税額
所得マイナスのため ⇒所得税は0円

 

③ 還付額
14,849円(源泉所得税)-0円(実際の所得税)=14,849円が還付されます。

なお、あくまで、還付の最大金額は、天引きされた源泉徴収税額14,849円となります。介護保険料などが還付されるわけではありませんのでご留意ください。

 

(3) 確定申告書の記載例

確定申告書は以下の通りです(令和7年基礎控除改正反映)
確定申告書上記載されている番号は、上記4.「源泉徴収票」記載の番号ととなります。

 

 

(4) 結論

年金収入が400万以下でも、源泉徴収票の「源泉徴収税額」に金額が記載されている場合は、確定申告することで還付されるケースがあります。
逆に言うと、源泉徴収されていない場合は、確定申告する必要はありません。

つまり・・源泉徴収の金額が少ない場合は、手間暇かけて「確定申告」をする必要があるのか?という選択になります。
例えば、「源泉徴収票」に記載された源泉徴収税額が1,000円の場合・・わざわざ確定申告会場にいって交通費1000円かかるくらいなら・・申告するだけ時間の無駄ということも言えます。
還付される最大金額との比較で、申告有無を決める形で良いかと思います。

 

7. 参照URL

(公的年金等を受給されている方へ)

https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/campaign/h30/Dec/01.htm

(No.1600 公的年金等の課税関係)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

8. YouTube

 

YouTubeで分かる【年金受給者】所得から差し引ける公的年金等控除とは?確定申告書の記載例/源泉徴収票の見方!/所得税の計算例
 

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