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Q35 確定申告が必要な人・不要な人。しないとどうなる?気になる住民税の関係とは?

最終更新日:2025/09/15

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Q35 申告義務のある人って?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

確定申告

「確定申告」については、フリーランスの方だけが対象となり、サラリーマンには関係ない・・というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。

しかしながら、確定申告が必要な人、不要な人は、所得の種類や金額等によってそれぞれの判断が異なります。サラリーマンの方でも、確定申告義務があるケースや、フリーランスでも確定申告不要なケースもあります。

そこで今回は、「確定申告義務がある人」「しなくてよい人」につきお伝えします。

 

1.給与所得者(サラリーマン等)の場合

会社員やパートなどの方の給与所得者は、原則として勤務先で年末調整が行われるため、確定申告しなくてよい場合がほとんどです。

例外的に、確定申告しなければいけない方は、①「年末調整」されていない場合や、②(年末調整されていても)主たる給与所得以外に「他の収入」があるケースです。

(1)年末調整されていないケース
給与収入が2,000万円超の方
2か所以上の給与の支払を受けている人で、他の勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している方
海外に勤務しており、非居住者となる方
継続して同一の雇用主に雇用されない日雇い労働者日額表「丙欄」の方)
災害減免法の規定により、源泉所得税の徴収猶予、還付を受けた方
(2)主たる給与以外に「他の収入」がある場合

主たる給与以外に、他の収入がある場合は、原則として、確定申告が必要です。かけもちバイトや、副業で不動産賃貸収入などがあるケースです。
ただし、例外的に、主たる給与所得(源泉徴収済)以外の所得(退職所得は除く)が20万円以下の場合は、確定申告不要とされています(所得税のみの規定。住民税は、当該20万円以下の例外規定はない点、注意)。

他の収入が「給与」の場合
掛け持ちバイトなど
副業の給与が、「収入ベース」で年間20万円以下の場合
他の収入が給与以外の場合
年金・不動産賃貸収入など
給与以外の所得が、「所得ベース」で年間20万円以下の場合(※)

 

【給与は収入・給与以外は所得で判定】

「給与収入」の場合は、20万円は「収入ベース」で判定します(主たる給与ですでに経費(給与所得控除)が利用されているため)。一方、「給与収入以外」の場合は、「所得」つまり、「収入から経費を差し引いた額」判定します。
例えば、年金収入の場合は、「公的年金等控除」がありますので、収入ベースで、収入金額65歳以上130万円(65歳未満80万円)以下であれば、「公的年金等控除」を差し引いて20万以下となりますので、確定申告不要です。
 

(※)同族会社の役員などが、その同族会社から役員給与(給与所得)のほかに貸付金の利子や不動産の賃貸料などを受け取っている場合には、これらの所得金額が20万円以下の場合でも、確定申告が必要になります。
 

(3)住宅ローン初年度

住宅ローン初年度は、確定申告が必要となります(2年目以降は、年末調整してくれます)。

(4)退職所得は、原則申告不要

退職所得は、分離課税となりますので、上記の「他の所得」には含まれず、原則として確定申告は不要です。
(外国企業等からの退職金など、源泉徴収されていないものは除きます)
なお、退職金については、多めに源泉徴収されているケースなどの場合は、確定申告した方がお得なケースもあります。詳しくはQ142をご参照ください。
 

2.年金受給者の場合

公的年金所得者の場合は、公的年金の他に収入がなく、年金収入が400万円以下の場合は、確定申告は不要です。
また、公的年金等以外に収入がある場合でも、年金収入400万円以下であり、かつ他の所得が年間20万円以下であれば、確定申告は不要です。詳しくは、Q187をご参照ください。
(外国からの公的年金など、源泉徴収されていないものは除きます)
 

3.フリーランス等の場合(事業所得等)

(1)所得が生じる場合のみ申告義務あり

フリーランスの方などは、勤務先での年末調整がありませんので、原則として「確定申告」が必要となります。
ただし、所得税は、収入に対して課税されるわけではなく、「経費」や各種の「所得控除等」を差し引いた後の「所得」に対して課税されます。

所得は以下の式で算定されます。
 

所得 = 収入 - 経費 ー 各種所得控除等

 

つまり、収入から経費や所得控除等を差し引いて、所得がゼロになる場合は、確定申告義務はありません
 

【確定申告をする必要がある人 所得税タックスアンサー No2020抜粋】
・・その年の「所得金額の合計額」が「所得控除の合計額」を超える場合で、その超える額に対する税額が、配当控除額と年末調整の住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人

 

所得控除とは、基礎控除、扶養控除、医療費控除など、各人の状況に応じて認められる経費のようなものです。
令和7年に基礎控除が最低95万円に改正されましたので、従来よりも、所得税が課税されない方(=申告義務がない方)は増加すると思われます。
 

(2)申告義務判定の具体例

●個人事業主A 売上から諸経費(青色申告特別控除含む)を差し引いた金額は90万円(=事業所得)
●所得控除は、基礎控除のみとし、その他の所得控除はないものとする。

事業所得90万円<合計所得金額132万円のため、基礎控除は、最大値95万円認められます(令和7年改正)
基礎控除差引後のAの課税所得は、事業所得90万円 - 所得控除95万円(基礎控除) = △5万円

⇒所得がマイナスのため、所得税はゼロ 確定申告は必要ありません。
 

(3)結論

創業間もない方などは、赤字のケースも多くなると思いますが、他の収入(給与等)がなければ、事業所得が最低でも95万円超なければ、申告義務はないということになります。

なお、上記の事例は、「基礎控除のみ」のケースです。例えば、Aに配偶者がいて、配偶者控除38万円ができる場合は、Aの所得控除は合計133万円(95万円+38万円)となります。この場合は、事業所得が最低でも133万円超なければ「申告義務」はありません。
つまり、「所得控除」の金額は、各人によって異なりますので、各人の所得控除等の適用金額により、申告義務がない金額は、各人によって異なってくる、ということになります。
 

4.確定申告した方がよいケース

(1)給与所得者・年金受給者の場合

副業の人はどうなるの?

「確定申告しなくてよいケース」に該当する場合でも、給与や年金収入から「源泉徴収」されている場合は、確定申告することで、「所得税」が還付されるケースもあります。

「源泉徴収」や「年末調整」で考慮されている所得控除等は、すべてではありません。例えば、「医療費控除」「ふるさと納税」などは、上記の源泉徴収税額や年末調整には反映されていませんので、確定申告することで、所得税が還付されるケースもあります(ふるさと納税ワンストップ特例は除く)。

また、2か所以上から給与の支払を受けている場合は、副業の給与から源泉徴収額が多く引かれているケースが多いですので、確定申告することで、税額が還付されるケースもあります。
 
【その他 確定申告した方がよいケース】

上場株式の譲渡益や配当所得等の損益通算や、譲渡損失の繰越控除、居住用財産の譲渡損失の繰越特例を受ける場合も、確定申告が必要となります。

なお、給与所得者が他の所得等も含めて確定申告する場合は、「給与所得」も合わせて申告書には記載します
(その他の収入だけではない点、注意)
 

(2)フリーランス等の場合

個人事業主で赤字の場合は、申告義務はありませんが、例えば、デザイナーや士業の方々などの場合、売上から所得税が源泉徴収されているケースがあります。
こういった「源泉徴収」されている場合は、あくまで概算税額のため、確定申告することで還付されるケースもあります。

上記の他、確定申告には下記のメリットもありますので、申告義務がない場合でも、確定申告されている方が多いです。

【確定申告のメリット】

確定申告をすることで税金が返ってくる場合がある。
(収入から源泉徴収されている場合や、医療費控除を受ける場合など)
青色申告恩典(損失繰越、青色申告特別控除65万円等)、株式等の譲渡損失の繰越控除を受けるには確定申告が必要
銀行融資等を受ける際に確定申告書等の提出を求められる場合がある。また「非課税証明書」「所得証明書」が発行されず、国民健康保険料の軽減措置や、お子様の奨学金の申請などができない恐れがある。
住民税の計算は、所得税の計算と控除額などが微妙に異なる。

 

5.申告しないとどうなる?

確定申告をしない場合、本来の税額に加えて、「無申告加算税」や「延滞税」の加算、悪質な場合は刑事罰を課せられる可能性があります。

 

税率内容
無申告加算税納税額に対して15%~20%
(自主的に期限後申告をした場合には、5%に軽減)
申告しないことに対するペナルティ
延滞税特例基準割合+1%or7.3%期限内に納付されなかったことに対するペナルティ

詳しくは、Q21をご参照ください。

 

なお、還付できるにもかかわらず、「確定申告し忘れた」場合でも、5年以内であれば、「確定申告」で税金の還付が可能です。また、すでに行った「確定申告が間違っていた」場合は、「更正の請求書」で差額部分の税金が還付されます。
 

6.2か所以上から給与をもらう場合は必ず確定申告が必要か?(150万円基準)

例えば、かけもちバイトなどで、2か所以上から給与をもらっている方でも、そもそも、合計した給与から給与所得控除やその他の所得控除等を差し引いて、ゼロ以下になる方は確定申告不要です。
最低限の基礎控除は95万円、給与所得控除は65万円認められますので、最低限収入合計150万円までは確定申告義務はありません。
上記の場合の他、下記の例外基準があります。

 

(1)例外規定 150万円基準

「給与所得」の収入金額から、雑損控除、医療費控除、寄付金控除、基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下の人は、⇒申告の必要はありません。

 

(2) 具体例

① 主たる給与収入150万円(年末調整済)
② 主たる給与以外の給与 30万円(源泉徴収済)
③ 給与所得及び退職所得以外の所得(事業、不動産、雑所得等)はなし
④ 配偶者控除38万円あるものとします。
 

2か所から給与をもらっているため、原則として確定申告が必要となります。
ただし、上記の例外規定にあてはめます。

 

「給与収入」‐所得控除<150万円以下か?給与収入(主たる給与以外も含む)の合計は180万円(①150万円+②30万円)。そこから扶養控除38万円を差し引くと、142万円<150万円となります。⇒要件満たす
給与所得及び退職所得以外の所得金額合計額0円<20万円「給与所得及び退職所得以外の所得」のため、従たる給与(②の金額)は含めず、③の金額だけで判断します。つまり、今回の場合、③の金額0万円≦20万円なので⇒要件満たす

(結論)

主たる給与以外の②と③の合計は20万円を超えているにもかかわらず、確定申告の必要がないということになります。
 

(3) 給与の全部につき源泉徴収されていることが前提

ただし、上記(1)の規定は、給与の全部につき、源泉徴収等がされていることが前提の規定となります。

~所得税法121条抜粋~
第百二十一条 ・・給与等・・の金額が二千万円以下であるものは、次の各号のいずれかに該当する場合には、・・申告書を提出することを要しない。・・
一 ・・・(省略)
二 二以上の給与等の支払者から給与等の支払を受け、かつ、当該給与等の全部について第百八十三条(源泉徴収)又は第百九十条(年末調整)の規定による所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、イ又はロに該当するとき。
イ ・・従たる給与等・・の金額と、その年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円以下であるとき。
ロ イに該当する場合を除き、その年分の給与所得に係る給与等の金額が150万円と小規模企業共済等掛金控除の額、生命保険料控除の額、地震保険料控除の額、障害者控除の額、寡婦控除の額、ひとり親控除の額、勤労学生控除の額、配偶者控除の額、配偶者特別控除の額及び扶養控除の額との合計額以下で、かつ、その年分の給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下であるとき。

例えば、2か所以上でバイト等をされていて、上記の要件を満たす場合でも、給与所得から源泉徴収されていなければ、上記の規定は適用できません
 

7.参照URL

(確定申告をする必要がある人 タックスアンサー2020)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm

 

(確定申告が必要な方)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/01/1_06.htm

 

8.YouTube

 
YouTubeで分かる「確定申告の申告義務」
 

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