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Q160【2025年3月決算~】個人・中小企業向け「賃上げ促進税制」の具体例/雇用調整助成金・通勤交通費の取扱い

最終更新日:2025/05/21

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Q160 賃上げ投資促進税制(所得拡大税制)の具体例(中小企業)H30改正

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

従業員に支払った給料が、前期と比べて一定額増加した場合、税額控除できる制度があります。
「賃上げ促進税制」と呼ばれ、法人だけでなく、個人事業主も制度の対象となります。
2025年3月決算より、新たに「5年間の繰越控除」も認められるようになりました。

 

賃上げ促進税制には、①大企業(資本金1億円超等)を含む「すべての事業者」向け②中堅企業向けのものもありますが、今回は「中小企業向け賃上げ促進税制」の概要につきお伝えします。
(カッコ書きのQは「中小企業向け賃上げ促進税制よくある御質問 Q&A」に対応)

1. 中小企業向け 賃上げ促進税制とは?

(1) 中小企業向け賃上げ促進税制とは?

中小企業向けの賃上げ促進税制とは、

● 青色申告を提出している「中小企業者等」
● 国内雇用者に給与等を支給する場合
● 前年度より給与等支給総額を1.5%以上増加させた場合に、
● 原則として、増加額の15%を法人税額(又は所得税額)から控除できる制度です。

事前申請は不要ですが、確定申告の際には明細書を添付する必要があります(Q5)。

(2) 中小企業者とは?(Q1)

以下の会社等です。

資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(※1)(※2)
資本又は出資を有しない法人で、常時使用従業員数が1,000名以下の法人(※1)
常時使用従業員数が1,000名以下の個人事業主
協同組合等

(※1)前3事業年度の所得金額の平均額が15億円超の法人は除く
(※2)同一の大規模法人(資本金の額等が1億円超の法人等)から1/2以上の出資を受ける法人や、2以上の大規模法人から2/3以上の出資を受ける法人は除く

 

(3) 適用期間

2024年4月1日~2027年3月31日までに開始する各事業年度(個人事業主は令和7年~令和9年分)

 

2. 適用要件

当期の雇用者給与等支給額 ≧ 前期の雇用者給与等支給額 ×101.5%

 

●設立初年度や開業初年度は、前期がありませんので、適用できません(Q6)。
●前年の給与等支給額が「ゼロ」の場合も、適用できません(Q34)。
●1人当たりの賃金が1.5%上昇している場合でも、例えば、従業員数が減少した結果、トータル賃金額が要件を満たさない場合は、適用できません。

雇用者とは?(Q8~10)●パート、アルバイト、日雇い労働者は含まれるが、使用人兼務役員を含む役員及びその特殊関係者、個人事業主の特殊関係者は含まれない。
●中途入社や退職者も含まれる
給与等支給額(Q11,12,25~33)●国内雇用者に対して支給する給与・賃金・賞与等で、適用年度に損金算入される金額。
●退職金は含まれない。
●所得税非課税通勤交通費は、原則含まれますが、含めないことも認められます(Q11)

3. 税額控除額(控除対象雇用者給与等支給増加額)

(1) 原則15%

当期の雇用者給与等支給額-前期の雇用者給与等支給額)×15%

ただし、調整雇用者給与等支給増加額(雇用調整助成金等を控除した雇用者給与等支給額での増加額)が上限となります。

 

(2) 一定の場合、上乗せ要件あり

以下の要件どちらかを満たせば、税額控除割合が上乗せされます。

雇用者給与等支給額が前年度から2.5%以上増加税額控除率15%上乗せ
当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費×105%税額控除率10%上乗せ
子育て両立・女性活躍支援認定事業者(くるみん以上orえるぼし二段階目以上)税額控除率5%上乗せ

併用も可能ですので、①②③すべて満たす場合は、税額控除割合が30%上乗せされ、最大45%の税額控除になります。

 

(3) 上限

通常の場合及び上乗せの場合共通で、当期の法人税額(or事業所得にかかる所得税額)の20%が限度となります。

 

(4) 繰越控除可能(2025年3月決算~)

「中小企業向け賃上げ促進税制」の要件は満たすが、赤字等により、税額控除できなかった場合、「控除しきれなかった金額」につき、5年間の「繰越控除」が認められるようになりました。
 

4. 雇用調整助成金等の取扱い

雇用調整助成金等については、適用要件判定時は、「給与等支給額」から控除しなくてよいものとされています(Q12)。
ただし、実際、税額控除額を計算する際の給与等支給額の増加額の算出については、雇用調整助成金を控除して計算する必要があります。したがって、最終的には「雇用調整助成金等」の額を把握する必要があります。

雇用調整助成金等とは、雇用調整助成金、産業雇用安定助成金又は緊急雇用安定助成金の額をさします。これらに上乗せして支給される助成金も含まれます。

5. 教育訓練費とは

教育訓練費は、「国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用」です(Q17)。

 

(1) 該当するもの
他の者に委託する教育訓練等費用研修委託費・講師人件費・施設使用料等の委託費用
⇒100%子会社への委託も含む)。
他の者が行う教育訓練等に参加させる費用外部研修参加費・WEB研修も含む⇒法人が社員に支払う報奨金は×
(2) 該当しないもの

使用人等に支払う教育訓練中の人件費・交通費
● 自社役員等を講師として教育訓練を行った際の人件費等
● 会社の研修施設等の取得等に要する費用・修繕費用・光熱費。
教材の購入・製作に要する費用。

 

(3) 前期の教育訓練費ゼロでもOK

教育訓練費については、前期の費用がゼロでも、当期に支出があれば適用可能です(Q58)。

 

6. 具体例

(1) 例題

● 法人3月決算。設立20期目。資本金100万円(中小企業者とする)。
● 2025年3月期の法人税額は400万円とする(税額控除前)。
● 会社は、優良な「子育て支援サポート企業」として、厚生労働省より「くるみん認定」を受けている。
● 各事業年度の状況は下記のとおりとする。

(各事業年度の状況)

前事業年度当事業年度
2024/32025/3
給与賞与年間支給額3,000万円3,150万円
(うち、役員への給与)(△350万円)(△250万円)
小計(=雇用者への給与)(A)2,650万円(B)2,900万円
教育訓練費(C)200万円(D)300万円
(2) 要件あてはめ
計算可否
通常要件(B)÷(A)=109.4%≧101.5%
上乗せ要件1(B)÷(A)=109.4%≧102.5%
上乗せ要件2(D)÷(C)=150%≧105%
上乗せ要件3くるみん認定

⇒通常要件及び上乗せ要件すべて満たす。

 

(3) 税額控除額

① 通常+上乗せ分
(2,900万円(B)-2,650万円(A)) ×(15% + 15% + 10% + 5%) = 112.5万円

② 上限(法人税の20%)
400万円 × 20% = 80万円

① ≧ ②のため、②80万円の税額控除が可能
また、控除できなかった112.5万円-80万円=32.5万円(①-②)は、5年間繰越控除が可能

 

7. 参照URL

(中小企業向け賃上げ促進税制よくあるご質問 Q&A  令和6年9月20日更新版)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin04qa.pdf

経済産業省(中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック 令和6年9月20日更新)
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai/chinnagesokushin04gudebook.pdf

 

8. YouTube

YouTubeで分かる「賃上げ促進税制」

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

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