税金の豆知識
Q9【災害見舞金とは?】災害時の自社や取引先の税金救済制度・消費税上の取扱い
最終更新日:2022/01/2533571view
台風や震災等による被害などで、本格稼動できないでいる企業も少なくありません。
そこで今回は、災害等が生じた場合に特別に認められる「損金」の制度内容や、取引先等に支援した「災害見舞金等」の税務上の取り扱いをまとめます。
目次
1.被災した自社に対する税務上の特例
災害等により被災した場合、自社の財産や従業員を対象とした特例制度として、以下のものがあります。
なお、下記の取扱いは、法人に限らず、事業を営む個人についても適用されます。
(1)災害により滅失・損壊した資産等
法人の有する商品、事務所等の資産が災害で被害を受けた場合、以下の損失は「損金の額」に算入できます。
●商品等棚卸資産、店舗事務所等の固定資産などの資産が災害により滅失損壊した場合の損失
●損壊した資産の取壊・除去費用
●土砂等障害物除去のための費用
(2)復旧のために支出する費用
法人が、災害により被害を受けた「固定資産」につき支出する費用は、以下の取扱いとなります。
内容 | 取扱い |
---|---|
現状回復するための費用 | 修繕費(経費) |
被災前の効用維持するための補強工事、排水又は土砂崩れ防止等の費用 | 修繕費(経費) |
資本的支出か修繕費か明らかでない場合 | その金額の30%相当額は修繕費、残額は資本的支出(資産) |
(3)従業員等に支給する災害見舞金品
法人が、被災した自己の従業員に支給する災害見舞金品は、一定の基準に基づき「福利厚生費」として取り扱われます。
また、既に退職した従業員、採用内定者に対する災害見舞金品であっても、被災した自己の従業員等と同一の基準に従って支給するものは、福利厚生費として扱われます。
「一定の基準」とは、
以下の両方を満たす場合に、「一定の基準」を満たすことになります。
① | 被災全従業員に対して被災程度に応じて支給されるなど、支給が合理的な基準によっている |
---|---|
② | 金額が、被災に対する見舞金として社会通念上相当である |
2.被災した取引先等に対する「災害見舞金等」の特例
(1) 災害見舞金
取引先の会社や従業員等に対し慶弔金等を交付した場合、税務上は、原則「交際費等」として取り扱われます。
しかし、取引先が被災した場合、「間接的に自社にも相当な損失」が生じることが考えらます。
そこで、法人に対して、被災前の取引関係の維持、回復を目的とした「災害見舞金」「事業用資産の供与」「役務の提供のために要した費用」は、税務上は、損失を回避するための費用(販売奨励金等)として「交際費等」には該当しない取扱が可能です
(災害発生後相当の期間内)。
(留意事項)
●被災の程度、取引の状況等を勘案して「相応の災害見舞金」であれば、その金額の多寡は問われません。
●勘定科目は、「販売促進費」や「雑費」「雑損失」などが考えられますが、個人的には勘定科目でイメージしやすい「販売促進費」がよいと思います。
●取引先から領収書の発行を求めることが難しい場合も、帳簿書類に支出先の所在地、名称、支出年月日を記録しておくことで経費に認められます。
(2)取引先に対する売掛金等の免除等
法人が、災害を受けた取引先の復旧支援を目的として、売掛金、貸付金等の債権を免除する場合は、免除による損失は「損金」に算入できます(リース料、貸付利息、割賦代金の減免や、災害発生後に取引条件を変更する場合も同様)。
(3)取引先に対する低利又は無利息による融資
法人が、災害を受けた取引先の復旧支援を目的として、低利又は無利息による融資を行った場合、通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は、税金が課税されません。
(4)被災した取引先の役員や使用人に対して個別に支出する災害見舞金
税務上、経費としての取扱いは可能です。
ただし、被災した「取引先の役員」や「使用人」に対して個別に支出する災害見舞金は、取引先救済を通じた事業上の損失回避の側面よりも、「お付き合い」的なの側面が強いため、「交際費」として取り扱われます
(個人事業主に対するものを除く)。
なお、「取引先の役員や使用人」でも、自己の役員や使用人と同等の事情にある者(専属下請け先の役員等)に対して、自己の役員等と同様の基準に従って支給する災害見舞金は、交際費等に該当しないものとして取り扱えます。
(5)自社製品等の被災者に対する提供
取引先で法人が、不特定又は多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、広告宣伝費に準ずるものとして「損金の額」に算入されます。
(6)ボランティア活動の人件費
法人の従業員が被災地でボランティア活動を行う場合、その活動中の給与相当額は寄附金には該当しません。
3.災害見舞金等の「消費税上」の取扱い
金銭により支出する災害見舞金は、取引先や従業員に関わらず、対価性がないため「不課税取引」に該当します。
ただし、物品を購入して支給する場合は、課税取引となります。
なお、売掛債権を免除したことによる消費税額は「仕入税額控除」可能です(対象が「貸付金」の場合は不課税取引)
4.交付を受けた側の取扱い
一方、災害見舞金等の交付を受けた側の取扱いは、以下の通りとなります。
原則 | 「受贈益」「雑収入」等として課税 |
---|---|
例外1 | 受領後直ちに福利厚生の一環として被災した従業員等に供与する物品や、使用可能期間1年未満のもの・取得価額が10万円未満のものは非課税(租措法通達 61の4(1)-10の3 ) |
例外2 | 個人が支払を受ける災害見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものは非課税 |
5.参照URL
災害に関する主な税務上の取扱いhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/higashinihon/atsukai/index.htm
取引先に対する災害見舞金等https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/hojin/sochiho/750214/08/08_61_4a.htm#atsukai12
取引先及び取引先役員等https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/higashinihon/hojin_shohi_gensenFAQ/answer07.htm
従業員https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/higashinihon/hojin_shohi_gensenFAQ/answer05.htm
ボランティア活動https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/higashinihon/hojin_shohi_gensenFAQ/answer10.htm#q27
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