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Q42 食事代が福利厚生費で認められる条件/仕訳や消費税の取扱い/社長やフリーランスは?

最終更新日:2024/09/14

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社員食堂や残業食事代には税金がかかる?

例えば、社員食堂があるケースや、従業員の昼食代を会社が負担するケースもありますね。
従業員等への食事代は、福利厚生的な側面を持つ一方で、給与と同様に、従業員等への「経済的利益」の提供という側面もあります。

そこで、税務上は、食事代を「福利厚生費」にするための要件が決められています。
今回は、昼食等の食事代や、残業時のパン代などを「会社が負担」する場合の税務上の取扱いにつき解説します。

 

1. 食事代が福利厚生費となる要件

食事代を事業者側で負担した場合、下記の要件を満たす場合に「福利厚生費」での処理が認められています。
当該要件を満たさない場合は、「給与」として個人側に課税されることになります。
 

(1) 要件
会社が実費負担(現物支給)現物を支給するなど実費負担が原則です。渡切り現金での支給は「給与課税」されます。食事手当等で「給与上乗せ」も、もちろん×です(※)
全従業員を対象全従業員を対象としている必要があります。特定の役員や従業員だけを対象とした場合は、交際費や給与認定されます。
従業員等が食事代(原価)の半分以上負担●例えば、1か月当たり食事価額5,000円、従業員負担額が2,000円の場合は要件を満たしません。この場合は、給与課税されます。
⇒半分に満たない部分500円だけでなく、従業員に生じた経済的利益に対して全額が課税対象となる点に注意。
会社負担額一人当たり月額3,500円(税抜)以下●例えば、1か月当たり食事価額5,000円、従業員負担額が1,000円の場合は要件を満たしません。この場合は、給与課税されます。
⇒3,500円超過部分500円だけでなく、従業員に生じた経済的利益に対して全額が課税対象となる点に注意。

●「経済的利益」の金額は、市販の弁当の場合と、自社内で調理する食事(まかないなど)で異なります。
例えば、市販の弁当の場合は、弁当代金(会社負担額)-従業員負担額=経済的利益となりますが、まかないの場合は、通常販売価額-従業員負担額が経済的利益となります。

●従業員の中には、「半分負担が嫌」なので食事補助を受けない方がいるかもしれません。こういった場合も、法人から従業員に「食事補助の機会を与えている事実」があれば、たとえ補助を受けない方がいたとしても、「福利厚生費」の損金性に影響はありません。
 

(2)深夜勤務の場合の例外

深夜勤務の方については、社食が閉まっているケースもあり、夜食の現物提供が難しい場合があります。そこで、例外的に「現金で支給」できる以下の規定があります。

深夜勤務(22時~29時の間の勤務)で、夜食の現物支給ができない場合、1食あたり300円以下(税抜)の現金支給については、給与課税されません。

 

ただし、この規定は、深夜勤務が「勤務時間内」の方の規定です。例えば、勤務時間が9時~17時までの方が、残業で22時を越えた場合の規定ではありません(食事の現物支給と同視が立証できれば、「非課税」の余地はあるという見解もあります(税務通信 NO 3532)。
 

(3) 打ち合わせなどで支給される食事代は?

お客様と飲食店や弁当で食事しながらの打ち合わせ時の食事代は「業務を円滑に行うための費用」であるため、「給与課税」はされず「会議費」となります。
 

社員食堂や残業食事代には税金がかかる?

 

2. 従業員から徴収した食事代の消費税上の取扱い

「福利厚生費」の要件を満たすため、事業者が、従業員負担分の食事代を受け取る取引は、「課税資産の譲渡等の対価」となり、「受取金額」を課税売上として計上します。
仕訳方法は「雑収入」「立替金」など色々考えられますが、実務上は、「雑収入(課税)」で統一しておく方が混乱が生じないかと思います。

なお、会社側が負担した弁当等の購入代金は、当然「課税仕入」に該当します。
 

直営や外部委託給食施設(※1)無償で食事提供課税対象外
有償で食事提供徴収代金が課税売上
外部の食堂(※1)食券無償で交付課税対象外
食券有償で交付徴収代金が課税売上(※2)

(※1)事業者が負担する材料費、光熱費、施設の運営費、外部食堂への食事代金は課税仕入
(直営給食施設の従業員に支払う給与は課税仕入×)

(※2)従業員から受け取った食券代金を「預り金」処理し、契約食堂代金に充当する場合は、例外的に課税対象外OK。この場合は、「事業者実際負担部分」のみが課税仕入の対象。
 

3. 具体例

(例題)
●1人1か月弁当代5,000円を会社が支払(税抜額・軽減税率適用)
●従業員負担分は、給与から天引きし、従業員徴収分にかかる消費税も、別途徴収するものとする。
●従業員給料は200,000円/月。給与源泉、社会保険料等の仕訳は簡便的に省略する

 

(1)従業員が月3,000円(税抜)負担する場合

従業員が月3,000円(税込)負担する場合、弁当代金5,000円の半分以上を従業員が負担しています。
また、会社負担額は5,000円-3,000円=2,000円となり、会社負担額月額3,500円(税抜)の要件も満たしますので、「福利厚生費」の要件を満たします。

仕訳は以下の通りとなります。

借方貸方
弁当購入時福利厚生費(課仕/軽)
仮払消費税
5,000
400
現金5,400
給与天引時給与200,000現金
雑収入(課売/軽)
仮受消費税
196,760
3,000
240

●会社側での実質的な経費額は、5,000円(福利厚生費)‐3,000円(雑収入)=2,000円となります。
弁当購入額5,000円は、全額消費税仕入税額控除が可能ですが、従業員徴収分3,000円は課税売上で計上されます。
●福利厚生費の要件を満たす場合、従業員側には給与課税されません
 

(2)従業員が月1,000円(税抜)負担する場合

従業員が月1,100円(税込)負担するケースの場合、「福利厚生費」の要件は満たしません。
仕訳は以下の通りとなります。

借方貸方
弁当購入時福利厚生費(課仕/軽)
仮払消費税
5,000
400
現金5,400
給与天引時給与200,000現金
雑収入(課売/軽)
仮受消費税
198,900
1,000
100
経済的利益売上給与(不課税)4,000売上(不課税)4,000

●会社側の実質的な経費額は、経費の額は5,000円(福利厚生費)‐1,000円(雑収入)+4,000円(経済的利益売上)で、ゼロになります。
●従業員から収受しない金額(経済的利益部分)は、消費税課税対象外となります(消基通5-4-4)
(食事提供先が役員の場合は、譲渡時の「時価」を基準に消費税が課税)。詳しくは、Q184をご参照ください)。
●全額「給与」となりますので、従業員側は給与課税されます(源泉徴収の仕訳は省略)。
●市販の「弁当」の場合と、自社で提供するまかないの場合で、「経済的利益」の金額が異なり、売上計上金額は変わってきます。
 

4. 勤務時間外の残業パン代などは?

残業等でパンなどを支給するケースもあると思います。
こういったパンなどにも従業員側は半分負担が必要なのでしょうか?

(1)全額福利厚生費OK

結論的には、残業等「勤務時間外」での現物支給は、「経済的利益」の提供ではなく、会社の利益(業務遂行)のための支出と考えられ、従業員半分負担、会社負担月3,500円の要件はありません
下記の要件を満たす場合は、食事代金の全額を福利厚生費として処理が可能です。
 

会社が実費負担(現物支給)現物を支給するなど実費負担が原則です。渡切り現金での支給は「給与課税」されます。食事手当等で「給与上乗せ」も、もちろん×です(※)
全従業員を対象全従業員を対象としている必要があります。特定の役員や従業員だけを対象とした場合は、交際費や給与認定されます。
社会通念上常識の範囲内の金額●コンビニ・出前・ファーストフード・通常の飲食店など常識の範囲の金額が要件です。居酒屋の場合は、交際費や給与認定される可能性が高いです。

(※)いっしょに飲食店に食べに行くのはOK。また、会社側で食事を用意できない場合、「本人が立替、後日レシートで精算」も、残業にともなう「実費弁償」と考えられ、現金支給には該当しないと解されています。

なお、ここでの残業食事代は、あくまで「勤務時間外」での支給に限定されます。例えば、深夜勤務(18時から26時など)で、「勤務時間内」で夜食を出した場合は、「上記1」の要件が必要となります。

 

(2)宿直・日直等通常勤務時間以外の場合

宿日直に関しても、通常の勤務時間以外の当番となりますので、上記(1)と同様に、全額福利厚生費で認められます。
なお、宿日直に関しては、宿直料等として、勤務1回あたり4,000円以内(食事含めて)の現金につき「非課税」とできる規定があります。
実費弁済的な取り扱いとして、例外的に認められています。
 

5. 個人事業主本人・社長・一人社長の場合は?

個人事業主自身の残業食事代は、単なる生活費とみなされ、福利厚生費は認められません
社長や役員を対象とした「残業食事代」は、他の従業員同様認められますが、オーナー兼一人社長の場合の「社長」への残業食事代は、「給与認定」される可能性が高いです。詳しくは、Q79をご参照ください。
 

6.参照URL

(食事を支給したとき)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm

(深夜勤務夜食の金銭支給)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/840726/01.htm

(宿日直料)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/03.htm

(従業員負担消費税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6471.htm

(食事を支給したときの非課税限度額の判定)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594-1.htm

 

7. YouTube

 

YouTubeで分かる「食事代が福利厚生費で認められる条件」
 

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