税金の豆知識
Q48【パターン別】転職・再就職した場合の年末調整・確定申告・源泉所得税の関係/扶養控除等申告書の提出は?
最終更新日:2022/01/28119512view
年途中で転職等された場合、新たな就職先から「扶養控除等申告書」の提出が求められる場合があります。
前職で提出済なのに、改めて新しい職場にも再度提出する必要があるのでしょうか?
今回は、いろんなパターンで、扶養控除申告書の提出先、源泉徴収税額、確定申告の関係をまとめました。
なお、扶養控除等申告書の記載方法は、Q10をご参照ください。
目次
1. 転職の際も「扶養控除等申告書」の提出は必要!
扶養控除等申告書は、転職したとしても、原則として「新たな転職先」に提出します。
扶養控除等申告書は、扶養の有無にかかわらず、主たる給料をもらう勤務先に提出します。
ただし、「扶養控除等申告書」は2か所同時には提出できませんので、主たる給料をもらう側のみに提出します。
一般的な「転職」の場合は、2か所同時ではありませんので、転職前、転職後それぞれの会社に提出します。
2.「扶養控除等申告書」を提出する効果
「扶養控除等申告書」を提出することで、以下の効果があります。
(1) 毎月の給与から差し引かれる所得税(源泉徴収税額)が安くなる
扶養控除等申告書の提出有無により、毎月差し引かれる所得税(源泉所得税)が決められています。
毎月給料から天引きされる「源泉所得税」は、扶養控除等申告書を提出することにより、「甲欄」と呼ばれる安い税率が適用されます(提出しないと高い所得税率(乙欄)が適用される)。
(2)年末調整をしてくれる
扶養控除等申告書を提出した先に、年末在籍している場合は、勤務先で「年末調整」をしてくれます。
逆に言うと、提出していなければ、ご自身で確定申告をしなければいけません。
3. 年途中で転職した場合は?
●転職前 A社正社員勤務(主)
●転職後 B社正社員勤務(主)
●年末はB社(主)に在籍
(1)扶養控除等申告書の提出
扶養控除申告書は、同時に2か所提出できないだけですので、たとえ転職前にA社に提出していたとしても、転職後のB社にも、改めて「扶養控除等申告書」の提出は可能です。
このケースでは、転職前はA社に提出し、転職後はB社にも提出します。
(2)源泉所得税、年末調整、確定申告の関係
この場合の源泉所得税、年末調整、確定申告の関係をまとめると、以下のとおりです。
年末調整の対象となる収入は、オレンジのマーカーをつけています(以下同様)。
毎月の源泉所得税 | 年末調整 | 確定申告 | ||
---|---|---|---|---|
転職前 | 転職後 | |||
A社 (扶養控除等申告書提出済) | 甲欄 | ― | ― | 不要 |
B社 (扶養控除等申告書提出可) | ― | 甲欄 | ○ |
●転職後のB社では、転職前A社勤務時の収入(甲欄・その時点の主たる給料)も含めて「年末調整」してくれますので、年末調整で所得は確定し、確定申告は不要となります。
●B社で年末調整をしてもらうためには、A社時代の「源泉徴収票」を入手して、B社に提出する必要があります。
4.年途中で転職したが、引き続き従前の会社でアルバイトするケース
●転職前 A社正社員勤務(主)
●転職後 B社正社員勤務(主)
●B社転職後も、引き続きA社でアルバイト(従)継続
●年末はB社(主)、A社(従)どちらにも在籍
(1)扶養控除等申告書の提出
扶養控除等申告書は、主たる会社に提出します。主たる会社は、転職前はA社、転職後はB社となりますので、まずは、A社で扶養控除等申告書を提出し、転職後はB社に提出を行います。
今回のケースでは、B社転職後も引き続きA社でアルバイトをしていますが、B社転職後のA社での立場はアルバイトですので、転職後は、B社を主たる会社として、「扶養控除等申告書」を提出できます
(提出時点で、以前A社に提出した「扶養控除等申告書」の効力はなくなります)。
(2)源泉所得税、年末調整、確定申告の関係
この場合の源泉所得税、年末調整、確定申告の関係をまとめると、以下のとおりです。
毎月の源泉所得税 | 年末調整 | 確定申告 | ||
---|---|---|---|---|
転職前 | 転職後 | |||
A社 (扶養控除申告書提出済) | 甲欄 | 乙欄 | ― | 必要 |
B社 (扶養控除申告書提出可) | ― | 甲欄 | ○ |
●B社に扶養控除等申告書を提出し、年末に在籍していますので、B社で年末調整可能です。
●B社では、前職分(A社分)も含めて年末調整してくれますが、あくまで、A社収入の転職前の部分(甲欄・その時点の主たる給与)だけで、転職後のA社でのアルバイト収入(乙欄・アルバイト代)は対象となりません(注)。
●したがって、たとえ、B社で年末調整してもらえたとしても、A社の乙欄(アルバイト部分)は年末調整できていませんので、結論、「確定申告」をしなければなりません。
(注)B社で年末調整をする際は、A社の収入のうち、転職前の部分(甲欄・その時点の主たる給料)が必要となりますので、この方は、A社から、甲欄分、乙欄分それぞれの源泉徴収表を入手し、甲欄分だけをB社に渡して年末調整してもらうことになります。
5. 年途中で転職したが、転職前から転職先でアルバイトしていたケース
●転職前 A社正社員勤務(主)、
●転職後 B社正社員勤務(主)
●転職前から、B社でアルバイト(従)を行っていた。
●年末はB社(主)在籍
(1)扶養控除等申告書の提出
扶養控除等申告書は、主たる会社に提出します。
主たる会社は、転職前A社、転職後はB社となりますので、転職前はA社で提出し、転職後はB社にも提出します
(たとえ転職前からB社でアルバイトしていても、転職後に改めてB社に「扶養控除等申告書」の提出は可能)
(2)源泉所得税、年末調整、確定申告の関係
この場合の源泉所得税、年末調整、確定申告の関係をまとめると、以下のとおりです。
毎月の源泉所得税 | 年末調整 | 確定申告 | ||
---|---|---|---|---|
転職前 | 転職後 | |||
A社 (扶養控除申告書提出済) | 甲欄 | ― | ― | 不要 |
B社 (扶養控除申告書提出可) | 乙欄 | 甲欄 | ○ |
●B社に扶養控除等申告書を提出し、年末に在籍していますので、B社で年末調整可能です。
●上記4(B社転職後にA社でアルバイトするケース)と異なるのは、B社転職前のB社給料(乙欄・アルバイト代)も、B社で年末調整してくれる点です。乙欄アルバイト収入とはいえ、年末調整するB社自身から支払われている分なので。
●この場合は、年末調整のみで所得は確定し、結論、この方は、確定申告不要となります。
●B社で年末調整をしてもらうためには、A社時代の「源泉徴収票」を入手して、B社に提出する必要があります。
6. 2か所同時に勤務している場合は?
●A社、B社2か所で掛け持ちアルバイトをしている
●A社が主たる勤務先
●年末は、A社・B社どちらも在籍
(1)扶養控除等申告書の提出
扶養控除申告書は、2か所同時に提出できませんが、どちらか一方には提出が可能です。
このケースでは、主たる勤務先であるA社にのみ提出します。
(2)源泉所得税、年末調整、確定申告の関係
この場合の源泉所得税、年末調整、確定申告の関係をまとめると、以下のとおりです。
毎月の源泉所得税 | 年末調整 | 確定申告 | |
---|---|---|---|
A社 (扶養控除等申告書提出済) | 甲欄 | ○ | 必要 |
B社 (扶養控除等申告書提出不可) | 乙欄 | ― |
●A社に扶養控除等申告書を提出し、年末に在籍していますので、A社で年末調整してくれます。
●ただし、年末調整の対象は、あくまでA社での収入部分(甲欄・主たる給与)だけですので、B社での収入部分(乙欄・アルバイト代)は、年末調整してくれません。
●したがって、この場合、A社(年調済)、B社(年調未済)の収入を合わせて、改めて「確定申告」が必要となります。
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