税金の豆知識
Q62【5棟10室】不動産所得青色申告で65万控除が可能な「事業的規模」とは?
最終更新日:2022/10/2961700view
個人でアパート経営されている方の収入は「不動産所得」と呼ばれます。
個人事業主の場合、青色申告をすることで、所得税上さまざまなメリットがあります。
ただし、「不動産所得」については、他の所得と異なり、「事業的規模」という要件を満たすかどうか?で「青色申告の取扱い」が大きく異なってきます。
目次
1.事業的規模の判断基準~5棟10室基準~
「事業的規模かどうか」?の判断は、実質判断となりますが、目安として「5棟10室基準」というのがあり、概ね、これに該当すれば、「事業的規模」と判定されます。
(1)5棟10室基準とは
● アパート等は、貸付できる独立室数が、おおむね「10室」以上であること。
● 家屋の貸付けは、おおむね「5棟以上」であること。
(2)駐車場の場合
貸付の対象が「月極駐車場」の場合は、「駐車スペース5台分」を「アパート1室」に換算できるというのが一般的です。
(例)
アパート8室+月極駐車場10台賃貸している場合
駐車場10台=アパート2室に換算できるため
⇒ 8室+2室合計で「10室基準」を満たします。
その他、共有の建物の場合も、各自の部屋数ではなく、「建物全体の部屋数で判断できる」ということです。
(税務通信 平成28年10月10日 NO3428号より抜粋)
2.事業的規模と、そうでない場合の比較
青色申告の控除額や、専従者給与の取扱いが大きく異なります。比較すると以下の通りです
事業的規模の場合 | 事業的規模でない場合 | |
---|---|---|
青色申告特別控除 | 最高65万円の控除 | 最高10万円の控除 |
青色申告の事業専従者給与 (又は白色申告の事業専従者控除) | 適用あり | 適用なし |
固定資産の除却等の損失 | 全額必要経費可 | 「除却損失等」を差引く前の「不動産所得」の金額を限度に、必要経費算入可 |
貸倒損失 | 回収不能年の必要経費に算入可 | 収入計上年分の所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直し |
同じ青色申告でも、「事業的規模」に該当する場合は、
●青色申告特別控除が55万円認められ、そうでない場合は「10万控除」
●「専従者給与」が認められる点も大きく異なります。
3.具体例
以下、具体例で「事業的規模」の場合と、そうでない場合の税額を比較してみます。
(例題)
● Aさんアパート10室賃貸 年間収入 500万円(事業的規模に該当)
● Bさんアパート8室賃貸 年間収入400万円(事業的規模に該当しない)
● 簡便的に、AさんBさんとも経費はゼロ、「青色申告」を行っているものとする。
● Aさんは、「専従者給与」として奥様に100万支払うものとする
(奥様にはその他の収入がないものとし、奥様には所得税はかからない)
Aさん | Bさん | |
---|---|---|
売上 | 500万 | 400万 |
経費 | (※1)100万 | 0 |
青色申告控除 | 65万 | 10万 |
差引所得(利益) | 335万 | 390万 | 概算税金(所得税+住民税) | 58万 | 74万 |
(※1)専従者給与100万円
(結論まとめ)
● 税額は、Aさんの方がBさんより16万円も安くなりました!
● 原因は以下
①青色申告特別控除の差額55万円(65万円-10万円)
②Aさんは、専従者給与100万円が経費で認められる点
③Aさんの奥さんの収入100万円には給与所得控除により税金は課税されない。
どうですか?Aさんの方が収入が多いにもかかわらず、税額は全然安くなります。だいぶ違いますよね?
4.注意事項
なお、個人事業主の不動産賃貸規模が「事業的規模」になったからといって、所得区分が「事業所得」に変わるわけではない点、注意しましょう。個人事業主の「不動産賃貸収入」は、たとえ「事業的規模」になったとしても、「不動産所得」という点では変わりません。
サラリーマンなど、不動産賃貸業を主たるお仕事にされていない方は、一般的に事業規模を満たさないケースが多くなりますので、青色申告特別控除は最高10万円となります。
5.参照URL
(事業としての不動産貸付けとの区分)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1373.htm
6.YouTube
YouTubeで分かる「不動産所得青色申告で65万控除が可能な事業的規模」