税金の豆知識

Q71 事前確定届出給与って?

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Q74 事前確定届出給与って?

 

1.事前確定届出給与って何?

「役員給与」については、「定期同額給与」(※)以外に、「事前確定届出給与」という制度があります。

この「事前確定届出給与」は、給与の「支払時期」と「支払金額」を、事前に税務署に届け出て届け出どおりに「役員給与」を支払う税法上の制度です。

(※)「定期同額給与」・・毎月定額を支給することで「損金」として認められる「役員給与」の制度。
「定期同額給与」は、税務署に届け出る必要はありません。

 

2.事前確定届出給与を利用するケース

例えば、非常勤役員に対して、「不定期」に給与を支払う場合は、「定額給与」からは外れてしまいます。
こういった場合、「事前確定届出給与」を利用することで、非常勤役員への給与を「損金処理」できます。

 

3.税務署への届け出時期は?

区分 届出時期
既存法人

(株主総会で、時期・金額を決定)

① 株主総会決議日から1か月以内
② 会計期間開始の日から4か月経過日
①② いずれか早い日
新設法人 設立後2月以内。

なお、期日通りに提出済でも、期日経過後に後から内容が間違っていたことに気づいた場合は、再提出できません。
提出する際は、必ず注意しましょう!

 

4.届出どおりに支給しなかった場合は?

「届出額」とぴったり一致した額を支給しなければ、全額損金不算入(1円でも)
「届出月」どおりに支給しない場合も、全額損金不算入(たとえ「資金繰りが悪化した」などの理由でも×)
未払金で計上しても×です。実際の支給が必要です。

なので・・実務的には・・結構使いづらい制度なんですね。意外と利用している会社は少ないかもしれません。

 

(1) 支給金額が不一致のケース

① 届け出額>実際支給額のケース(支給時期は一致)

届出内容 実際
支給時期 金額 支給時期 金額
6月 200万 6月 200万
12月 200万 12月 100万

200万+100万=300万円全額が損金不算入。
12月分100万円だけではなく、6月支給分200万円も「損金不算入」となる点に注意

●仮に、「年間支給額」がゼロの場合は、損金不算入額がゼロになりますので、
結果的に不算入額はゼロとなります。

 

② 届出額<実際支給額のケース(支給時期は一致)

届出内容 実際
支給時期 金額 支給時期 金額
6月 200万 6月 200万
12月 200万 12月 300万

●200万+300万=500万円全額が損金不算入。

12月の超過額100万円だけではありません。6月支給額200万+12月支給額300万=500万円全額が否認されます。

 

(2) 支給時期が不一致のケース(支給額は一致)
届出内容 実際
支給時期 金額 支給時期 金額
6月 200万 6月 200万
12月 200万 11月 200万

●200万+200万=400万円全額が損金不算入

●単に忘れていた場合も×です。

 

(3) 実際に支給しない場合も、「源泉所得税」が課せられる?

事前確定給与は、実際に支払いがなくても支給日前に、「支給辞退の意思表示」がなければ、「源泉所得税が課税」される場合もあるようです。本当にそこまでされるかどうか?はわかりませんが、税務上のルールでは、そうなってるようですね(所得税基本通達28-10の反対解釈)。

(所得税基本通達 28-10)
給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。

 

5. 定期同額給与との関係は?

「定期同額給与」と「事前確定届出給与」は、全く別の制度ですので、重複して運用できます。
なので、例えば、事前確定届出給与が否認された場合も、「定期同額給与の損金算入」が否認されることはありません。

 

6. 金額の変更は?

「事前確定届出給与」も、「定期同額給与」と同様、職制上の地位の変更等がある場合は、「変更届」を提出して、金額等を変更できます。次の2つのパターンです。

内容 提出期限
臨時改定事由 役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更等 臨時改定事由発生日から1カ月以内
業績悪化改定事由 経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があること

(法基通達9-2-13)

その事由により、定めの内容変更を行う株主総会などの決議日から1ヶ月以内

でも、上記のうち、「業績悪化改定事由」は、実務的には相当ハードルが高いですので、注意しましょう。
以下、「業績悪化改定事由」をまとめます。

 

7.業績悪化改定事由とは?

「経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があること(法基通達9-2-13)」

これ、簡単に書いてますが、実務的には、「相当ハードルが高い」です。
単純に、数値が相当悪化して倒産の危機にあるだけではなく、

「経営状況悪化に伴い、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情」

 
が生じていることが要求されます。

 

「役員給与Q&A」では、以下の場合が、例として挙げられています。

不特定多数の株主との関係上、業績等の悪化につき経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合
(同族会社でも可だが、客観的な理由が必要)
銀行との「借入金返済リスケジュール」の協議で減額せざるを得ない場合
取引先等からの要望による「改善計画」に「役員給与減額」が盛り込まれた場合

 

8. 源泉所得税の税率は給与?賞与?

事前確定届出給与は、税務上は「賞与扱い」となりますので、賞与の源泉所得税率を用います。

 

9. 社会保険料との関係は?

社会保険料の算定は、「月給」と「賞与」で計算方法が異なり、「賞与」は社会保険料の上限が決められています
(健康保険上限573万・厚生年金上限150万)。

そして、社会保険上は、「年3回までの支払」であれば、「賞与」と取り扱われます。

つまり・・定期同額給与を低くして、年3回までの「事前確定届出給与」を高くすると、社会保険料(健康保険+厚生年金保険)が安くなる可能性があるんですね。
 
ただし、最近は、上記の社会保険引き下げに歯止めをかけるため、下記の通達が出ています。
 

●(年管管発0918第5号)
「賞与」とすることで、社会保険の負担が少ないにもかかわらず、実際は、月給同様に給与を「分割支給」している場合は、賞与ではなく「給料」として社会保険は計算してください!という通達。

上記通達により、月給不足分を引き出す場合は、社会保険上は「給料」と認定される可能性がある、ということですね。

もちろん、会社から、月中に全く引き出さない場合は、社会保険上も問題ありません。

月給で足りない部分を引き出した場合、税法上「事前確定届出給与」自体が全額否認されるだけでなく、「社会保険上」もリスクがある点、ご留意ください。
 

10. まとめ

事前確定届出給与は、定額給与以外に支給する賞与を「損金算入」できる点、大いに節税に利用できる制度ですね。

ただし、届け出額通りに支給しないと否認される点で、実際はなかなか使いづらい制度である点も確かです。

下記のような法人様であれば、検討の余地は大いにあると思います。ぜひ利用されてみてはいかがでしょうか?

「事前確定届出給与」を支払ったとしても、そこまで会社の業績に影響がない会社
ある程度、個人で貯金があって、月中にお金を引き出すことなないような社長様

 

 

11. 参照URL

(役員に対する給与)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm

(定め通りに支給されたかの判定)
https://www.nta.go.jp/law/zeiho-kaishaku/shitsugi/hojin/11/16.htm

(変更届)

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/6059.htm

(健康保険法及び厚生年金保険法における賞与に係る報酬の取扱い)

http://www.keikikenpo.or.jp/keikikenpo-pdf/news-20150930-2.pdf#search=%27%E5%B9%B4%E7%AE%A1%E7%AE%A1%E7%99%BA%EF%BC%90%EF%BC%99%EF%BC%91%EF%BC%98%E7%AC%AC%EF%BC%95%E5%8F%B7%27

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