税金の豆知識
Q149【国民健康保険】加入義務者は?無職やフリータは?減免や軽減される場合はあるのか?計算方法を具体例で解説
最終更新日:2023/05/1538829view
国民健康保険は、市区町村が運営する健康保険で、勤務先の社会保険等に加入していない方に「加入義務」がある健康保険です。病気やけがなどで医療機関等で受診する際、医療費の「一定割合」を国民健康保険が負担してくれます。
国民健康保険の「被保険者」になるためには、毎年一定金額を支払う必要がありますが、一定の場合は、健康保険の支払額が減免や軽減される場合があります。
今回は、国民健康保険の加入義務者の範囲や、国民健康保険料の支払額の計算方法・減免・軽減されるケースを中心に解説します(神戸市を例にします)。
目次
1. 国民健康保険の加入義務者や特徴
(1)加入義務者
日本国民は、国が定めている「健康保険」に、加入義務があります。
したがって、社会保険等「勤務先の健康保険」に加入していない人は、国民健康保険の加入義務があります。
例えば、個人事業主や年金受給者、扶養に入っていない学生などが国民健康保険の対象となります。
収入のない無職の方や、フリーターの方でも、社会保険に加入してない場合は、加入義務がある点に注意が必要です。
加入が必要な方 | 加入しなくてよい方 |
---|---|
●個人事業主 ●年金受給者(後期高齢者医療制度の方除く) ●扶養に入っていない主婦・学生の子 ●無職の方・退職して新しい職場に勤務されていない方 ●フリーターの方(勤務先の社会保険未加入の方) | ●後期高齢者医療制度に加入している方 ●勤務先の社会保険に加入している方とその扶養家族 ●生活保護を受けている方 ●外国人観光客等、旅行で一時的に日本に滞在している人 |
後期高齢者医療制度は、75歳以上になると加入を義務付けられる医療制度です。
(2)扶養の概念はない
国民健康保険では、勤務先の健康保険のような「扶養」の概念はなく、一人ひとりが「被保険者」となります。
つまり、同居家族であっても「扶養」になるわけではなく、全員が被保険者となり、それぞれの保険料が発生します。
(3)世帯単位で適用
国民健康保険は、「世帯単位」で適用を受けますので、保険税の納付義務、保険給付を受ける権利は、世帯主が有します。例えば、世帯主が職場の健康保険に加入している場合であっても、奥様に収入があり扶養を外れる場合などは、世帯主が保険の支払を行います。
2. 国民健康保険の支払額はどうやってきまるのか?
(1)世帯全員の所得合計で決定
国民健康保険は、「世帯単位」で適用を受けますので、国民健康保険料算定時の「所得」(所得割)は、世帯内加入者全員の所得合計で算定します。
(2)前年所得合計で決定
国民健康保険料は、前年の住民税の「所得」を基に算定します。
税率は、自治体によって異なりますが、所得が増えるにしたがって、段階的に保険料も増えていきます。
(納付額の上限は決められています)
各世帯の「加入者全員の所得」を合算し、世帯主が保険料を納める形となります。
3. 軽減や減免は?
一定期間の所得金額が、基準額を下回る世帯の場合は、減額の制度があります。
例えば、前年中の所得がない場合は、「均等割額」と「平等割額」が減額されます。
(1)申告が必要
国民健康保険は、前年の「住民税の申告」を基に算定されます。
所得がない場合、原則として「住民税の申告」は不要ですが、住民税の申告をしていないと、上記の軽減がかからない場合があるようです。
所得税確定申告をすると、住民税も自動で申告したことになりますので、軽減を受けたい場合などは、確定申告をしておく方が無難です。
(2)軽減金額
市によって異なります。
参考に、神戸市での所得が低い世帯につき、「均等割」「平等割」減免される基準は以下の通りです(令和3年度)
前年所得 | 減免割合 |
---|---|
43万円以下 | 5割減免 |
43万円+(28万5千円×世帯内被保険者数) 以下 | 3割減免 |
43万円+(52万円×世帯内被保険者数) 以下 | 1.5割減免 |
(ご参考 1.5割減免可能な給与収入換算額)
被保険者数 | 減免可能な所得見込上限 | 給与収入換算 | 1人 | 950,000円 | 1,500,000円 |
---|---|---|
2人 | 1,470,000円 | 2,215,999円 |
3人 | 1,990,000円 | 2,959,999円 |
被保険者の中に、給与所得者あるいは公的年金等受給者がいる場合、上記の金額に、10万円×(給与所得者等の数-1)を加えた金額を基準となります(既に減額制度の適用を受けている世帯は、金額の調整あり)。
その他、所得が前年比大幅に減少した世帯、医療費の一部負担金を減額・免除された世帯、災害により被害を受けた世帯等も、所得割等の減免があります。
4. 国民健康保険の計算
(1) 3つの合計
国民健康保険料は、大きく、下記3つの合計で決定されます。
① 所得割 + ②均等割 + ③平等割
(2) 神戸市での保険料計算(令和3年度の税率。以下同様)
上記①~③それぞれに、「医療分」「後期高齢者支援金分」「介護分」という内訳があります。
保険料率や税額等は各市町村によって異なりますが、参考に「神戸市」を例にそれぞれの金額を記載します。
各市町村によって、「独自の控除」があるケースもありますので、ご留意ください。
内訳 | 所得割 | 均等割 (1人当たり) | 平等割 (1世帯あたり) | 最高限度額 |
---|---|---|---|---|
医療分 | 8.81% | 34,260円 | 23,650円 | 630,000円 |
後期高齢者支援金分 | 3.30% | 12,450円 | 8,590円 | 190,000円 |
介護分 | 3.02% | 13,890円 | 6,760円 | 170,000円 |
合計 | 15.13% | 60,600円 | 39,000円 | 990,000円 |
● 所得割は、各世帯の「所得合計」を基礎とした金額で算定します。
● 均等割は加入人数で決まります。平等割は、1世帯ごとに決められた数値となります。
● 所得割・均等割・平等割共通ですが、介護分は、世帯内に40歳以上64歳以下の加入者がいる場合のみ、当該加入者だけで計算します。
(所得額とは?)
各種所得控除後の数値です。基礎控除43万円(加入者1人につき)や、各市役所により独自の控除があります。
5. 具体例(神戸市を例にします)
神戸市在住、3人家族で「世帯全員」が国保に加入。各人の所得と基準額は以下の通り。
職業 | 年齢 | 所得金額 | 基準額 (左記所得‐基礎控除43万円) | |
---|---|---|---|---|
夫 | 個人事業主 | 42歳 | 事業所得231万円(収入-経費) | 188万円 |
妻 | パート勤務 | 35歳 | 給与所得45万円(給与所得控除後) | 2万円 |
子 | 学生 | 10歳 | 所得ゼロ | ゼロ |
世帯合計 | 190万円 |
(1) 所得割の計算
所得割額は、世帯合計の基準額がプラスの場合にのみかかります。
介護分は、40歳以上の方(夫)のみの基準額で計算する点に注意
①医療分+後期高齢者分
(188万円 + 2万円) × 12.11%(8.81% + 3.30%)=230,090円
②介護分
188万円 ×3.02%=56,770円(10円未満切り捨て)
③合計(① + ② )
286,860円
(2)均等割の計算
介護分は、40歳以上の方(夫)のみの人数で計算する点に注意
①医療分+後期高齢者分
(34,260円 + 12,450円) × 3人 = 140,130円(医療分+後期高齢者分)
②介護分
13,890円 ×1 人=13,890円(介護分)
③合計(① + ② )
154,020円
(3)平等割の計算
39,000円(医療分 + 後期高齢者分 + 介護分)
(4)総合計(上記(1)~(3)合計)
286,860円(所得割)+ 154,020円(均等割)+ 39,000円(平等割)= 479,880円
神戸市の場合、別途神戸市独自の緩和措置等がありますので、実際は上記より金額が少なくなります(469,460円)。
(参考 神戸市~国民健康保険料計算シート)
http://www.city.kobe.lg.jp/life/support/insurance/hokenryo/08_2.html
6. 決定時期、納付方法
● 保険料率の決定時期は、前年「市県民税」決定後の6月。
● 6月~翌年3月まで、10回に分けて納付(4月・5月は納付書の送付・口座振替はなし)。
● 年金特別徴収の場合は、4月~翌2月までの年金支払月(年6回)で徴収。
7. 参照URL
● 神戸市
http://www.city.kobe.lg.jp/life/support/insurance/hokenryo/08_2.html
● 減免制度(神戸市)
https://www.city.kobe.lg.jp/a52670/kurashi/support/insurance/genmensedo.html
8. YouTube