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Q226【具体例付】残価設定ローン(割賦購入) ・ 残価設定リースの税務上の取扱い/会計基準との違いは?

最終更新日:2025/10/09

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Q227 残価設定型ローン(割賦購入) ・ 残価設定型リースの税務処理/会計基準との違いは?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

はまだ税理士法人の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
                                                           YouTubeチャンネル:はまだ税理士法人のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

車を購入する場合、残価設定ローン・残価設定リースという形態の取引があります。
こういった取引は、将来下取り時の「残価保証額」が設定されており、当該「残価保証額」部分だけ毎月のリーン・リース支払額が少なくなるメリットがあります。

ただし、「残価保証額」部分については、支払が発生しないことから、仕訳や消費税課税判断などにつき、疑問が生じます。

そこで今回は、残価設定ローン・残価設定リースの税務上の取扱い・会計処理につき解説します。
(リースは、所有権移転外ファイナンスリース、売買処理を前提にします)

 

1. 残価設定ローン・リースとは?

(1) 残価設定ローン・リースのメリット

残価設定ローン・リースとは、あらかじめローン期間等満了時の下取価格(残価保証額)を決めておき、残価保証額を除いた金額を毎月支払う契約形態です。
残価設定ローン・リースは、「残価保証額」部分だけ毎月の支払額が抑えられる点にメリットがあります。
 

(2) ローン・リース満了時の取扱い

期間満了の際は、①車を返却して精算金を支払②車を買い取って買取代金を支払、どちらかの選択が可能です。

なお、ローン・リース契約終了後、車を返却する場合は、貸し手が車を第三者に売却します。その後に精算金額が確定し、貸し手から借り手に対して精算金が請求されます。
 

同じ「残価設定型」でも、ローンとリースでは、会計処理・税務処理が異なります。以下、それぞれに分けて解説します。

 

2. 残価設定ローン(割賦購入)の税法上の取扱い

残価設定ローン(割賦購入)については、「残価設定がないローン」と、会計処理で異なる点はありません
車両購入時は、残価保証額部分も含めて「車両運搬具」で計上し、減価償却を行います。
また、消費税は、取得時点で「残価保証額」も含めて、全額「仕入税額控除」が可能です。

法人税の取扱い 購入時は、残価保証額も含めて全額取得価額で計上し、減価償却可能
消費税の取扱い 購入時は、残価保証額も含めて全額仕入税額控除可能

残価設定ローン(割賦購入)の税法上の取扱い

 

3. 残価設定ローンの具体例

● 本体50,000(税抜)の車両を、残価保証20,000(税抜)でローン購入した。
  ⇒支払総額は、残価保証額20,000を除いた30,000(税抜)
● ローン期間は60カ月 (毎月のローン支払額 500 + 消費税50)
● ローン期間終了時に買取は行わず、車両を返却した。車両の市場売却価額15,000との差額5,000につき、現金で支払った(税抜) 。
● 耐用年数は5年、定率法で償却を行う(定率法償却率は0.4、償却保証率は0.108)。

 

(1) 購入時
借方 貸方
車両運搬具(課税)
仮払消費税
50,000
5,000
長期未払金 55,000

残価保証額も含めた本体価格で、「車両運搬具」を計上します。
消費税は、残価保証額も含めた金額全額が課税取引となります(=購入時に全額仕入税額控除が可能)
● 貸方「長期未払金」は、消費税込み55,000で計上します(消費税別区分でもOK)。

 

(2) ローン支払時(支払毎の仕訳)
借方 貸方
長期未払金 550 現金 550

● (50,000 – 20,000) ÷ 60カ月 = 500 (別途消費税50)

 

(3) 毎期末の減価償却
借方 貸方
1年目 減価償却費 20,000 車両 20,000
2年目 減価償却費 12,000 車両 12,000
3年目 減価償却費 7,200 車両 7,200
4年目(※) 減価償却費 5,400 車両 5,400
5年目(※) 減価償却費 5,400 車両 5,400

定率法で償却します。
(※) 50,000×0.108(償却保証率)=5,400
●耐用年数5年のため、5年後の車両の簿価は「ゼロ」になります。

 

(4) ローン期間満了時
借方 貸方
長期未払金
 
支払手数料(課税)
仮払消費税
22,000
 
4,546
454
固定資産売却益(課税)
仮受消費税
現金
20,000
2,000
5,000

● 「残価保証額」で売却した処理を行います。ただし、残価保証額部分は未払のため、売却時の簿価0円と、残価保証額20,000の差額を「固定資産売却益」で認識します(消費税課税取引)
● 一方、精算金5,000は、残価保証額が市場価額に満たない結果負担する金額となるため、「支払手数料」で認識します(消費税課税取引)

 

(5) ご参考 残価保証額で買い取った場合

期間満了時に返却せず、残価保証額20,000(税抜)で買い取った場合の仕訳は、以下となります。

借方 貸方
長期未払金 22,000 現金 22,000

 

4. 残価設定リースの税務上の取扱い

(1) 法人税・消費税上の取扱い

リース資産の取得価額は、「支払リース料」の合計額(リース料総額)となり、残価保証額は含まれません。つまり、取得時は、「残価保証額」を除いた額で「リース資産」を計上し、減価償却の合計額も、残価保証額を除いた額が上限となります。

一方、消費税上も、上記の取扱いに合わせて支払リース料総額が「消費税課税取引」となり、残価保証額部分は消費税課税対象にはなりません
ただし、リース契約終了時に契約当事者同士で精算する「精算金部分」については、消費税課税対象となります(消基通 9-3-6の4)。

 

法人税の取扱い 購入時は、残価保証額を除いた金額で計上し、減価償却
消費税の取扱い 購入時は、残価保証額を除いた金額が仕入税額控除の対象(※)

(※)リース契約終了時の「精算金支払部分」は、消費税課税対象

リース資産取得時 残価保証額を除いた部分 消費税課税対象
残価保証額部分 消費税課税対象外
精算金支払時(※) 精算金支払部分 消費税課税対象

消費税の取扱い

 

(2) なぜ、リースとローンで処理が違うのか?

リースについては、消費税法上、 リース契約書等で収受するリース料総額(残価部分を除いた額)を、「リース資産の譲渡対価」とする、明確な規定があるためだと思われます。
一方で、ローン(割賦購入)の場合は、たとえ「残価保証」がある場合でも、購入総額は、「残価設定のないローン購入額」と同額のため、原則通り購入総額での会計処理になります(=残価設定のないローン購入と同じ会計処理)。

 

(3) 中小企業の場合

所有権移転外ファイナンスリースは、原則として「売買処理」となりますが、例外的に、中小企業の場合、「賃貸借処理」が認められています。賃貸借処理の場合は、「残価保証額を除いた支払リース料」を支払時に経費処理を行いますので、今回の論点は出てきません

 

5. 残価設定リースの具体例

● 上記、「3.具体例」と同じ事例で、残価設定リースの場合の会計処理
● リースの会計処理は、原則処理(売買処理)とします。
● リース期間は5年、減価償却の方法は、「リース期間定額法」とします。

 

(1) 購入時
借方 貸方
リース資産(課税)
仮払消費税
30,000
3,000
リース債務 33,000

● 残価保証料額を除いた「リース料総額」で、「リース資産」で計上します。
● 消費税は、残価保証額を除いた金額が課税取引となります。
貸方「リース債務」は、消費税込み33,000で計上します(消費税別区分でもOK)。

 

(2) リース料支払時(支払毎の仕訳)
借方 貸方
リース債務 550 現金 550

● (50,000-20,000)÷60カ月=500 (別途消費税50)

 

(3) 毎期末の減価償却
借方 貸方
1年目 減価償却費 6,000 車両 6,000
2年目 減価償却費 6,000 車両 6,000
3年目 減価償却費 6,000 車両 6,000
4年目 減価償却費 6,000 車両 6,000
5年目 減価償却費 6,000 車両 6,000

● リース期間定額法で償却を行います。
●耐用年数5年のため、5年後の車両の簿価は「ゼロ」になります。

 

(4) リース期間満了時
借方 貸方
支払手数料(課仕)
仮払消費税(※)
4,546
454
現金 5,000

● 購入時に「残価保証額」を認識していませんので、車両返却時に「固定資産売却損益」は生じません。
● 精算金5,000は、ローンの場合と同様、残価保証額が市場価額に満たない結果負担する金額となるため、「支払手数料」で認識します(消費税課税取引)

 

(5) ご参考

期間満了時に返却せず、残価保証額20,000(税抜)で買い取った場合の仕訳は、以下となります(法基通7-6の2-10)

借方 貸方
車両運搬具(課仕)
仮払消費税
20,000
2,000
現金 22,000

● 購入直前の残存価額(ゼロ)に、買取価額(税抜20,000)を加算した金額20,000(税抜)が取得価額となります(消費税課税取引)。
● 取得後の減価償却は、他の車両と同様の償却方法(法定償却:定率法)で償却します。ここでの耐用年数は、中古資産の見積耐用年数ではなく、新品の耐用年数を適用する点、注意が必要です(法基通7-6の2-10新設 解説事例より)。

 

6. ご参考 残価設定リースに係る会計基準上の取扱い(上場会社等)

残価設定リースの場合、税務処理と、会計基準での取扱いは微妙に異なります。
リース会計基準では、残価保証額も、リース資産の取得価額に含めて処理を行い、残価保証部分は、「残存価格」とみなして減価償却の計算を行います。
したがって、減価償却の金額は、「税務処理」と一致しますが、取得価額の会計処理が異なります

税務処理と会計処理を比較すると、以下の通りとなります。

【税務処理と会計処理の比較】

残価設定リースに係る会計基準上の取扱い(上場会社等)

 

7. 参照URL

(所有権移転外ファイナンス・リース取引における残価保証等の場合の取扱い)

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/38.htm

(リース取引の税務上の取扱いに関するQ&A【消費税編】)

https://www.leasing.or.jp/studies/docs/shohizeiQA.pdf

(リース期間終了の時に賃借人がリース資産を購入した場合の取得価額等)(法基通7-6の2-10)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_06_01_2.htm
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/7081/05.htm

 

8. YouTube

 

YouTubeで分かる「残価設定ローン・リース」
 

 

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

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日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
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