税金の豆知識
Q75【貯蔵品】事務用消耗品・切手・商品券・印紙等の税務処理/消費税の取扱い・勘定科目は?
最終更新日:2025/01/2695746view

貯蔵品とは、通常の仕入商品以外の、消耗品・事務用品、切手、商品券、印紙などのことを指します。
こういった貯蔵品は、税法上は大きく2種類に区分され、それぞれで会計処理が異なっています。
例えば、事務用品等は、実務上の便宜から「購入時費用処理」が認められるのに対し、商品券等の場合は「購入時費用処理」は認められていません。
今回は、これら「貯蔵品」の会計処理をまとめます。
目次
1. 貯蔵品とは?種類は?
(1) 貯蔵品と棚卸資産の違い
「貯蔵品」とは、例えば事務用品費、梱包資材、切手など仕入等以外の消耗品のことです。一方、棚卸資産は、商品・原材料など事業に直接関連する物品です。
貯蔵品のイメージは、「事業と直接関係のないこまごました物品」のイメージでよいと思います。
(2) 貯蔵品の種類は2つ
税務上、貯蔵品は下記の2種類に区分されます。
種類 | 内容 |
---|---|
事務用消耗品等 | 事務用消耗品、包装材料・販促資材など、仕入商品、原材料以外の細かい消耗品 |
物品切手等 | 商品券、旅行券など「金銭」と同等の価値があるもの(郵便切手類等も同じ取扱いです) |
2. 事務用消耗品等の会計処理
(1) 法人税・消費税上の取扱い
消耗品等に関しては、法人税上は、原則として「使用時」に費用処理となりますが、一定要件を満たす場合は、購入時に「費用」にできる簡便的な処理が認められています。
一方で、消費税上は、通常の仕入(棚卸資産)と同様、購入時に課税仕入処理が可能です。
法人税、消費税それぞれの取扱いをまとめると、以下の通りです。
法人税 | 消費税 | |
---|---|---|
原則 | 使用時「費用」 | 購入時「課税仕入」 |
例外 | 購入時「費用」(※) | - |
(※)法人税法上、例外処理(購入時費用処理)が認められる要件
●経常的に消費するもの
●毎年、おおむね一定数量を取得
●継続して取得(購入)時に経費計上
(2) 実務上の取扱い
例えば、事務用品、段ボールなどは、基本的に、法人税法上の「例外処理の要件」を満たすものと思われます。
したがって、実務上は、購入時に「費用・課税仕入処理」で完結するケースが多いかと思います。
(3) 仕訳例
「購入時費用処理」を前提とします。
事務用品10,000円(税別)購入。期末1,000円(税別)未使用
以下の仕訳となります。
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
購入時 | 事務用品費(課仕) 仮払消費税 | 10,000 1,000 | 現金 | 11,000 |
期末 | 仕訳なし | |||
利用時 | 仕訳なし |
3. 物品切手等の会計処理
商品券、ギフト券、旅行券、プリベイトカードなど、将来、これと引換えに、資産の購入や役務提供を受けることができるものは、「物品切手等」と呼ばれます。郵便切手やレターパックも、将来、「通信」という役務提供を受けることができるため、物品切手等と同様の取扱いとなります。
「物品切手」や「郵便切手類」は、貯蔵品とはなりますが、税法上の取扱いは、「上記2」と異なります。以下の通りです。
(1) 法人税・消費税上の取扱い
物品切手等に関しては、法人税、消費税とも、原則として、購入時は「費用・課税仕入」にはできません。使用時に、「費用・課税仕入」となります。
ただし、消費税上のみ、「自社利用の場合限定」で、購入時「課税仕入」処理が認められています。
(消費税基本通達11-3-7)
郵便切手類又は物品切手等は、購入時においては課税仕入れには該当せず、役務又は物品の引換給付を受けた時に・・課税仕入れとなるのであるが、・・自ら引換給付を受けるものにつき、継続して当該郵便切手類又は物品切手等の対価を支払った日の属する課税期間の課税仕入れとしている場合には、これを認める。
法人税、消費税それぞれの取扱いをまとめると、以下の通りです。
法人税 | 消費税 | |
---|---|---|
原則 | 使用時「費用」 | 使用時「課税仕入」 |
例外 | ― | 購入時課税仕入(※) |
(※)消費税上、例外処理(購入時課税仕入)が認められる要件
⇒「自社で利用」する場合
(2) 実務上の取扱い
物品切手等に関しては、法人税上、例外処理が認められません。
したがって、実務上は、購入時に費用処理(課税仕入)を行い、期末に未使用分を振り替える処理が多いかと思います。
(3) 仕訳例
自社で利用する用の切手10,000円(税別)購入。期末1,000円(税別)未使用
借方 | 貸方 | |||
---|---|---|---|---|
購入時 | 通信費(課仕) 仮払消費税 | 10,000 1,000 | 現金 | 11,000 |
期末 | 貯蔵品(税抜) | 1,000 | 通信費(対象外) | 1,000 |
翌期首 | 通信費(対象外) | 1,000 | 貯蔵品(税抜) | 1,000 |
利用時 | 仕訳なし |
購入時は「費用(課税仕入)」処理し、期末に未使用分だけ「費用戻入(課税仕入)」処理を行います。
自社で使用する切手等に関しては、消費税上は「購入時課税処理」が認められますので、期末仕訳の「貯蔵品(資産)」を、税抜金額にすることで、自動的に購入時に課税処理されることになります。
なお、「通信費」は、一般的な会計ソフトでは、「課税仕入」で設定されていますので、期末仕訳の際は、消費税部分を「手修正」する必要がある点に、注意が必要です。
(4) ご参考 切手やレターパック購入時の領収書
切手やレターパックなどの領収書については、郵便局で購入する場合は「非課税」、金券ショップ等からの購入の場合は「課税仕入」と表示されています。
が・・どちらで購入しても、最終的に利用した際に「課税仕入」となりますので、自社利用の場合は、購入時に「通信費(課税)」、期末未利用分につき「貯蔵品」に振り替える形で問題ありません。
なお・・別の話になりますが、コンビニでゴミ袋を購入した場合も「非課税」と記載されていることが多いですが、こちらも利用時に「課税仕入処理」が可能です。
4. 自社で利用しない物品切手等(商品券など)の場合
(1) 期末の仕訳
「自社で使用しない物品切手等」の場合は、原則通り、購入時に「費用・課税仕入」にできませんので、期末の仕訳は、税込額で行います。
例えば、「上記3」の事例が、得意先への「贈答用の商品券」だった場合の期末仕訳は、税込額1,100円で仕訳を行います。
(貯蔵品1,100(税込)/交際費1,100(課税)
(2) 使用時も消費税課税仕入にならない取引あり
自社で利用しない物品切手等については、利用時も、その利用目的によって消費税課税仕入にならない場合があります。
例えば、販促用の商品券を外部に贈答する場合は、対価性がないため、利用時も課税仕入にできません。一方で、謝礼や手数料として渡す場合は、サービスの対価性があるため、利用時に課税仕入になります。詳しくは、Q138をご参照ください。
5. 収入印紙
収入印紙も「貯蔵品」とはなりますが、物品切手等とは異なり、内容は「税金」ですので、利用した場合も「消費税不課税」となります。
したがって、購入時の科目は、「租税公課」(不課税)で計上し、期末未利用部分につき「貯蔵品」に振り替えます。
6. 貯蔵品の管理はどうするか?
「管理」という観点では、上記の「税務処理」とは全く別で考えないといけません。
管理の観点では、その「貯蔵品」が会社にとって重要かどうか?という点で判断します。
例えば、「段ボール」を利用する頻度が高いビジネスの場合は、たとえ、段ボール購入時に「費用処理」したからといって、「数量管理しないでいい」わけではありません。使う頻度が多いのであれば、たとえ費用処理したとしても、「数量管理」は行うべきという結論になります。一方、同じ消耗品でも、「消しゴム」などは金額小なので、管理対象外という選択も可能です。
「数量を管理」する目的は、例えば、従業員が横流しや盗難による損害の影響等を勘案して、「会社財産を正確に把握する」ことが目的です。すべての「消耗品」ではなく、重要な「消耗品」が管理の対象となります。
7. 参照URL
(法人税~消耗品等の例外処理2-2-15)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/02/02_02_02.htm
(消費税~郵便切手類又は物品切手等の課税仕入時期11-3-7 )
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/11/03.htm
(消費税~商品券やプリベイトカードなどなど)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6229.htm
8. YouTube
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