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Q95【帳簿保存期間】請求書や帳簿の保存期間は?電子帳簿の場合は?/人事関係書類の改正や会社法の取扱いも解説

最終更新日:2023/11/17

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Q95 帳簿書類の「保存義務」は何年?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

最近は電子帳簿保存法の改正など・・帳簿や請求書の保存関係の論点を、新聞で見かける場合も多いですね。

電子取引の電子保存義務は、2年の猶予期間(令和5年12月31日まで)が設けられることになりましたが・・
今回のテーマは、事業を続ける限りどんどんたまってくる「帳簿や請求書」。
いつまで保管しておく必要があるのか?という論点です。

帳簿や請求書の保存期間は、税法上定められています。保存期間は、「紙保存」でも「電子データの保存」でも共通です。

ただし、「保存期間」は、法人税、所得税、消費税で微妙に異なっています
今回は、税法上定められた帳簿や請求書等の保存期間につき、法人と個人事業主に分けて解説します。

 

1. 法人の場合

(1) 原則的な保存期限

確定申告書の提出期限から7年間となります。

(例)

決算年度確定申告書提出期限帳簿保存期限
令和4年3月期令和4年5月末令和11年5月末

 

 

 

帳簿総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、
固定資産台帳、売上帳、仕入帳など
7年
書類決算書類貸借対照表・損益計算書・棚卸表など
現金預金取引等関係書類領収書、預金通帳、小切手控・借用証など
 その他請求書、契約書、納品書、注文書、見積書、
電子取引の電磁的記録、源泉徴収簿等
 

なお、現状は、請求書発行側は、「請求書の控え(写し)」が存在する場合のみ「保存義務がある」規定となっています。
ただし、令和5年に導入されるインボイス制度では、受け取った請求書だけではなく発行した請求書(適格請求書)についても7年間の保存義務がありますので、結論的には保管しておいた方がよさそうです。

 

(2) 例外

青色申告で、欠損金の繰越控除を行っている場合は、以下の例外があります。

平成20年4月1日以後に欠損金が生じた事業年度の帳簿等9年間
平成30年4月1日以後に欠損金が生じた事業年度の帳簿等10年間

(具体例)
● 令和4年3月期が赤字の場合(青色申告)
 ⇒確定申告申告期限 令和4年5月末 ⇒ 帳簿保存期限   令和14年5月末

帳簿保存期限の原則期間(7年間・令和11年5月末まで)の間に、令和4年3月期に発生した繰越欠損金が「既に利用済」の場合は、原則どおり7年間の保存で構いません。

 

(3)会社法

会社法上は、下記の書類は10年の保存期間がありますので、少し頭の隅に置いておいてもよいと思います。

計算書類および附属明細書貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表など
会計帳簿および事業に関する重要書類総勘定元帳、各種補助簿、株式申込簿、株式割当簿、株式台帳、株式名義書換簿、配当簿、印鑑簿など

2. 個人事業主の場合

重要書類は7年間、その他の書類は5年間です。

青色申告、白色申告別にまとめると以下の通りです。
(2014年1月より、白色申告者についても、「帳簿の記帳」と「帳簿書類の保存が義務づけられています)

(1) 青色申告の場合

 

 

 

帳簿総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、
固定資産台帳、売上帳、仕入帳など
7年
書類決算書類 貸借対照表・損益計算書・棚卸表など
現金預金取引等関係書類(※)領収書、預金通帳、小切手控・借用証など
 その他請求書、契約書、納品書、注文書、見積書、送り状など
 
5年
 

(※)現金預金取引等関係書類は、前々年度分の所得が300万円以下の場合は5年でOK

ただし、消費税課税事業者の場合は、消費税の仕入税額控除の要件として、「帳簿等の7年間保存」が要求されていますので、現実的には請求書や契約書等は7年間保存が必要です。

 

(2) 白色申告の場合

 

 

帳簿収入金額や必要経費が記載してある帳簿 7年
上記以外の帳簿 5年
書類決済に関して作成した棚卸表など
業務に関して作成または受領した請求書、納品書、領収証など

3. 帳簿保存期間を守らなかった場合は?

保存期間を守らなかった場合・・以下の影響があります。

消費税消費税上、「仕入税額控除」の適用を受ける要件として、「帳簿及び請求書等の保存」が義務付けられています(税込支払額 3万未満の少額取引を除く)。
つまり、帳簿保存していない期間は、仕入税額控除が認められない可能性があります。仕入税額控除が認められない場合は・・・消費税の追徴額がかなり多額になってしまいますので、十分ご留意ください。
青色申告の取消青色申告の要件として「帳簿書類の保存」が要件となります。したがって、帳簿保存されていない場合は、「青色申告」が取り消される場合があります。
会社法上の過料会社法上の帳簿・書類の保存義務(会976条)に違反する場合は、100万円以下の過料が科せられる場合もあるようです。

なお、インボイス制度導入に伴い、令和5年10月からは課税事業者(適格請求書発行事業者)から交付を受けた適格請求書等の保存が仕入税額控除の要件となります。
 

4. 帳簿保存方法は?

(1) 原則 紙保存

紙ベースでの保存が原則となります。
とはいっても・・実務上は、税務調査の際に「直近でまとめて打ち出す」場合も、必ずしも×とは言われないようですね。

ただし・・会計ソフトのバージョンアップがあった場合、過去の書類が開けなくなるケースがありますので、最低限のリスクヘッジとしてPDFでの保存をお勧めします。

 

(2) 例外 電子データ保存

国税関係帳簿書類については、電子データ保存・スキャナ保存も認められます。紙に出力する必要がなくなりますので、管理コスト削減につながります。

ただし、電子データ保存は、改正により「事前申請承認」が不要となる等、従来より要件は緩和されていますが、検索機能の整備等、現状でもさまざまな要件がありますので、注意が必要です。

 

5. 人事関連書類は?

賃金台帳や労働者名簿等は、従来は3年間の保存義務でしたが、2020年の民法改正と合わせて、労働基準法が改正され、人事関係書類保存義務は、5年間に延長されています(労働基準法109条、115条、Q&A Q2-1)。

対象となるものは、例えば、労働者名簿、賃金台帳、雇用・解雇に関する書類・災害補償に関する書類・賃金に関する書類・その他労働関係に関する重要な書類(出勤簿、タイムカード等の記録、労使協定の協定書、各種許認可書、退職関係書類、休職・出向関係書類等)が挙げられます。
 

経過措置として、当分の間は3年が適用されますが、将来的なことを見据えると、これらの関係書類は5年間は保存しておいた方がよさそうです。
 

6. 参照URL

(法人税法 帳簿書類等の保存期間及び保存方法)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm

(所得税法 記帳や帳簿等保存・青色申告)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/01_2.htm

(消費税法 帳簿の記載事項と保存)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6621.htm

(No6496 消費税法 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6496.htm

(改正労働基準法等に関するQ&A)
https://www.mhlw.go.jp/content/000617980.pdf

 

7. YouTube

 

YouTubeで分かる「【帳簿保存期間】請求書や帳簿の保存期間は?」
 

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