税金の豆知識
Q130 ゴルフ会員権購入・売却時の会計処理・消費税の取扱い/プレー代、年会費は?(預託金方式・株式方式)
最終更新日:2022/02/0372050view
取引先等との親睦を目的に、法人で「ゴルフ会員権」を保有する場合もあると思います。
ゴルフ会員権は、大きく「預託金形式」と「株式形式」の2種類に分かれますが、実務上は「預託金形式」のゴルフ会員権が多いと思います。
預託金方式・株式方式それぞれの「法的形式」は異なりますが、税務処理上の取扱いは、共通している点が多いです。
今回は、法人の「ゴルフ会員権」取得・売却時の税務処理や、プレー代・年会費等の会計処理を中心にお伝えします。
目次
1. ゴルフ会員権の種類・法的な性格
(1) 種類
ゴルフ会員権の実質内容は、「施設でゴルフをプレーできる権利」=「施設利用権」ですが、
種類は、大きく「預託金方式」と「株式方式」の2種類に分かれます。
種類 | 内容 |
---|---|
預託金方式 | 会員がゴルフ場に「預託金」を預け、優先的施設利用権と預託金返還請求権を取得する制度 |
株式方式 | 会員が、ゴルフ場に「株主」として出資し、優先的施設利用権と株主の地位を取得する制度 |
(2) 法的な性格の違い
「預託金方式」と「株式方式」は、法的な性格が異なるため①勘定科目②資産価値下落時の損失の取扱いの点で異なります。
種類 | 勘定科目 | 損失計上 |
---|---|---|
預託金方式 | 債権(≠金銭債権) | 預託金返還請求権が顕在化した場合に限り、貸倒引当金・貸倒損失の計上が可能 |
株式方式 | 投資有価証券 | 時価が著しく下落した場合等は、株式評価損の計上が可能 |
両者の大きな違いは上記のみです。その他の内容、例えば「購入時、売却時、プレー代等」の取扱いは、ほぼ同じですので、以下の「購入時・運用時・売却時の会計処理」については、両者を特に「区分せずに」まとめます。
2. 購入時の会計処理
(1) 法人税上の取扱い(=資産計上)
ゴルフ会員権の「本体価額」「入会金」「名義書換料」は、購入時の「損金算入」が認められていませんので、資産で計上を行います。預託金方式は「投資その他の資産(会員権)」、株式方式の場合は「投資有価証券」で計上します。
また、「ゴルフ会員権」は、利用に応じて価値が減少するものではありませんので、減価償却は行いません。
(2) 消費税の取扱い
①ゴルフクラブから取得する場合(募集等)
会員権本体については、預託金方式の場合は「預託金」、株式方式の場合は「出資金」の取得となりますので、「資産の譲渡等の対価」には該当せず「消費税課税対象外」となります。
会員権本体と別に支払う、将来返還されない「入会金」は「消費税課税取引」となります。
②第三者から取得する場合
会員権本体については、「預託金方式」「株式方式」どちらも、消費税課税取引となります。なぜなら、ゴルフ会員権の購入・売却は、消費税上「非課税」とされていないためです(非課税とされる「有価証券」の範囲から除外)。
なお、会員権本体と別に支払う、将来返還されない「名義書換料」は、「消費税課税取引」となります。
(3) 購入時の会計処理まとめ
購入形態 | 内容 | 科目 | 消費税 | 募集 | 預託金 | 会員権or投資有価証券 | 対象外 |
---|---|---|---|
入会金 | 同上 | 課税 | |
第三者購入 | 購入価額 | 同上 | 課税 | 購入時の名義書換料・ 仲介手数料 | 同上 | 課税 |
~ご参考~
レジャークラブ(宿泊・体育・遊技施設その他等)の入会金・年会費の会計処理(法基通 9-7-13の2)
基本的には、ゴルフ会員権の処理が「準用」されます。
ただし、入会金については、①会員有効期間の定めがあり、かつ②脱退時に返還されないもの(役員等給与以外)は、「繰延資産」で償却可能な点だけ異なります。消費税は課税取引となります。
(4) 例外~給与と取り扱われる場合~
①個人会員での登録しかできないゴルフ会員権
法人が負担した入会金等は、原則として個人に対する「給与」と取り扱われます。
ただし、入会が「法人の業務上必要と認められる場合」は「資産計上」が可能です。
②記名式の法人会員で、特定の役員等が名義人の場合
原則として「資産で計上」可能です。
ただし、これらの者が法人業務に関係なく利用する場合は、個人に対する「給与」と取り扱われます。
3. 運用時の会計処理(プレー代、年会費)
法人の業務上、必要なゴルフのプレー代、接待飲食代、年会費、ゴルフ場利用税などは、すべて「交際費」として処理を行います。(法人業務に必要でない個人の娯楽を目的とした場合は「給与」扱いされます)
内容 | 科目 | 消費税 |
---|---|---|
年会費、 管理料・利用料、 名義書換料 | 交際費(※1) | 課税 |
プレーに直接要する費用 | 同上(※1) | 課税 |
ゴルフ場での接待飲食費 | 同上(※2) | 課税 |
ゴルフ場利用税 | 同上 | 対象外(※4) |
緑化協力金 | 同上(※3) | 対象外(※4) |
(※1)入会金等を「給与処理」している場合は、こちらも「給与」となります。
(※2)ゴルフ場での接待飲食費は、交際費課税での「飲食費」には該当しません。詳しくはQ39参照ください。
(※3)ゴルフ緑化促進会(特定公益増進法人)に対する支払は、寄付金となります。
(※4)科目は「交際費」でも、消費税は「対象外」となる点に注意しましょう。
4. 売却時・預託金等返還時の会計処理
(1) 法人税上の取扱い
第三者売却時は、売却額は益金、ゴルフ会員権「本体価額」「入会金」「名義書換料」は損金算入となります。
ただし、法人の場合は他の経費と通算可能ですので、必ずしも法人税が課税されるわけではありません
(個人の場合は、総合課税の譲渡所得、給与等との損益通算不可)
(2) 消費税の取扱い
①ゴルフクラブから預託金等返還の場合
会員権本体については、預託金方式の場合は「預託金」、株式方式の場合は「出資金」の返還となりますので、「資産の譲渡等の対価」には該当せず「消費税課税対象外」となります。
②第三者に売却する場合
「預託金方式」「株式方式」どちらも、売却額につき消費税課税取引となります。なぜなら、ゴルフ会員権の購入・売却は、消費税上「非課税」とされていないためです(非課税とされる「有価証券」の範囲から除外)。
内容 | 法人税 | 消費税 |
---|---|---|
ゴルフ会員権の売却 | 売却額益金 本体・入会金・名義書換料等損金 | 売却額全額が課税 |
預託金等の返還 | 課税なし | 対象外 |
5. 評価損・貸倒損失の計上
「預託金方式」と「株式形式」で税務上異なる点は、資産価値が大幅に下落している場合の取扱いです。
法的な性格が異なるため、税務上の「損金算入ロジック」が異なります。
(1) 預託金方式の場合
預託金方式の場合、施設を利用できる「権利」ではありますが「金銭債権」とは異なりますので、その状態では貸倒引当金や貸倒損失の計上は認められません。
ただし、ゴルフ会員権が、何らかの形で「金銭債権」(預託金返還請求権)に転換された場合は、金銭債権に対する貸倒引当金・貸倒損失の計上が可能となります(法人税基本通達9-7-12)。
この取扱いは、ゴルフ場施設を利用できる(=プレーできる)できないにかかわらず可能です。
(預託金返還請求権の全部または一部が顕在化する場合)
退会届を提出し、 預託金が返還されない場合 | 退会届による会員契約の解除により、預託金返還請求権(金銭債権)に転換されるため、貸倒引当金計上可。 |
---|---|
破産手続の開始決定 特別清算手続の開始決定 | これらは、「清算型」の倒産処理手続のため、この時点で金銭債権に転換されるため、貸倒引当金計上可。 |
会社更生法の更生手続の開始決定 民事再生法の再生手続の開始決定 | これらは、「再建・再生型」の処理手続のため、この時点では金銭債権には転換せず、貸倒引当金の計上はできない。 |
更生計画・再生計画認可による 一部切り捨て額 | 契約変更により、預託金返還請求権の一部が金銭債権として顕在化し、その一部が切り捨てられたと考え、その事業年度で貸倒損失計上可 (施設を利用できる場合でも) |
(2) 株式方式の場合
通常の非上場株式同様、株式発行法人の資産状態が著しく悪化した場合や、その価額が著しく低下した場合、評価損の計上が可能です。
(要件)~下記のいずれかを満たす場合(法令68①ニロ,法基通9-1-9)
①その発行法人に次に掲げる事実が生じた場合
●会社の整理開始の命令又は特別清算の開始の命令
●破産手続開始の決定
●民事再生・会社更生手続開始の決定
②発行法人の1株当たりの純資産価額が、会員権取得時に比しておおむね50%以上下回ることとなった場合。
6. ご参考~預託金形式の貸倒損失の計上時期・仕訳例
(1)貸倒損失の計上時期
貸倒損失は、利益操作防止の観点から、回収不能が明らかになった事業年度のみ計上が認められ、その後の事業年度で、損金算入することは認められません。
したがって、「ゴルフ会員権の預託保証金」の一部が切り捨てられた場合は、切捨てられた事業年度以外は、損金算入できない点に注意しましょう。
例えば、切り捨てられた年度で貸倒損失処理を失念していた場合、将来売却した際に、当該切捨て部分を、「ゴルフ会員権売却損」として損金計上することはできません。十分に注意しましょう(Q60「貸倒損失の実務上の判断は」 参照)。
(2)貸倒損失の仕訳例
(例)
民事再生計画認可により、預託保証金が額面2,000⇒1,500に切り捨てられた。
①切り捨て前のゴルフ会員権簿価が、2,300の場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
ゴルフ会員権評価損(有税) 貸倒損失(損金) | 300 500 | ゴルフ会員権 | 800 |
● 会計上、簿価と預託保証金の差額300は、「ゴルフ会員権評価損」として費用計上します。ただし、税務上は、金銭債権に転換された「預託金部分のみ」が貸倒損失の対象となりますので、当該ゴルフ会員権評価損300は、有税になる点注意。
● 切捨ての事実により、預託保証金部分は、金銭債権に転換されていますので、預託保証金のうち、額面切り捨て額、500全額に貸倒損失を計上できます。
②切り捨て前のゴルフ会員権簿価が、1,800の場合
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
貸倒損失 | 300(損金) | ゴルフ会員権 | 300 |
● 切り捨て前簿価≦額面の場合は、ゴルフ会員権評価損の計上はありません。
● 例題を見る限り、切捨額は500のように見えますが、実質的には、切捨以前に既に簿価が額面を下回っています。あくまで、切捨後の額面1,500が下限となりますので、簿価1,800と切捨後の額面1,500との差額300が貸倒損失となります。
7. 参照URL
(会費及び入会金等の費用)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_07_03.htm
(ゴルフ会員権 消費税)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6249.htm
(船荷証券6-2-2)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/06/02.htm
(ゴルフ会員権が金銭債権に転換する時期)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/09/04.htm
(ゴルフ会員権の預託金の一部が切り捨てられた場合の取扱い)
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/20/08.htm
8. YouTube
YouTubeで分かる「ゴルフ会員権購入・売却時の会計処理」