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Q231 【医療保険・見舞金】法人が受け取った入院給付金等の課税関係/法人から個人に支払う見舞金は給与課税されるのか?

最終更新日:2025/06/07

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Q231 【医療保険・見舞金】法人が受け取った入院給付金等の課税関係/法人から個人に支払う見舞金は給与課税されるのか?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

福利厚生の観点で、法人で、従業員の入院等に備えた「医療保険」等に加入して、保険料を支払うケースがあります。

法人で加入する「医療保険」は、一旦法人が受け取り、その後、従業員に「見舞金」として支給するケースが多いです。
こういった法人が支払う「保険金」や、従業員に支給する「見舞金」は、法人の経費=損金にできるのでしょうか?また、従業員側は、「見舞金」に所得税が課税されるのでしょうか?

今回は、法人が受け取った「入院給付金」にかかる課税関係や、個人に支払う「見舞金」に関する法人税及び所得税上の取扱いにつき解説します。
(今回は、保険金受取人が「法人」の場合を前提とし、参考に、受取人が個人の場合の取扱いを「5.」に記載します)。

 

1. 保険金支払時・受取時の課税関係(法人)

(1) 保険金支払時

従業員を被保険者とした法人加入の医療保険は、支払った保険料につき、「保険料」として損金算入が可能です。
ただし、支出時の一括経費にできないケースもあります。詳しくはコチラをご参照ください。

 

(2) 保険金受取時

保険事故等の発生により、法人が受け取った入院給付金等については、益金に算入され、法人税の課税対象となります。
一般的には、「雑収入」など営業外収益で計上します。

 

2. 見舞金支給に関する個人・法人側の課税関係(個人・法人)

法人が受け取った入院給付金等は、福利厚生の一環として、従業員に「見舞金」を支払うケースが多いです。こういった「見舞金」は、法人側で経費にできるのか?個人側では課税されないのか?疑問が生じます。

 

(1) 個人側 「社会通念上相当と認められる金額」は、非課税

所得税上、「見舞金」のうち、社会通念上相当部分は「非課税」とされています(所基通9-23、9-22、同施行令30)。
「見舞金」に関する、所得税上の規定は、以下となります。

【所基通 9-23】
葬祭料、香典又は災害等の見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるものについては、令30条の規定により課税しないものとする。

【所得税施行令 30】 抜粋
法第9条第1項第18号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、次に掲げるもの・・・とする。
三 心身又は資産に加えられた損害につき支払いを受ける相当の見舞金・・・

 

【ご参考~見舞金は医療費控除の「補てんされる金額」には該当しない~】

個人の医療費控除を計算する場合、「保険金など補てんされる金額」は、医療費控除の金額から差し引く必要があります 
ただし、会社からの「見舞金」や、「出産お祝い金」などについては、「補塡される金額」には該当しませんので、医療費控除の金額から差し引く必要はありません(所基通73-9)。

 

(2) 法人側 所得税上課税されないものは「給与課税」されない

また、法人税上も、所得税上、課税されないものは「給与課税」されないものと規定されています(法基通9-2-10)。

【法人税基通 9-2-10】
法人が役員等に対し9-2-9に掲げる経済的な利益の供与をした場合において、それが所得税法上経済的な利益として課税されないものであり、かつ、当該法人がその役員等に対する給与として経理しなかったものであるときは、給与として取り扱わないものとする。

【まとめ】
「見舞金」に関して、個人・法人それぞれの課税関係をまとめると、以下となります。

個人側社会通念上相当範囲所得税 非課税
上記を超える所得税 課税
法人側社会通念上相当範囲福利厚生費
上記を超える給与

● 「社会通念上相当範囲」を超える金額でも、法人側は原則として損金算入可能ですが、「給与」として処理されるため、個人側では所得税が課税されます。
(ただし、役員報酬の場合は、定期同額給与の規制があるため、損金算入できないケースもあります)。
● 見舞金については、消費税「不課税取引」となります。

 

(3) 退職職員や採用内定者に対する支払は?

退職社員や採用内定者に対する見舞金でも、既存社員と同一の基準に従って支給するものは、福利厚生費として損金算入が可能です(措通61の4(1)-10(2))。

 

(4) ご参考~災害見舞金・医療費見舞金も同様~

今回の論点と別になりますが、例えば、台風や地震などの災害等の影響により、従業員に「災害見舞金」を渡した場合や、高額な医療費を負担した従業員に対する見舞金も、「社会通念上相当範囲」であれば、福利厚生費として処理が可能です。
なお、取引先の会社や、取引先の従業員等に対する「見舞金」は、「接待交際費」となります(重要な被災等の場合は、「災害見舞金」で処理が可能です)。 

 

3. 社会通念上相当と認められる金額とは?

「社会通念上相当と認められる金額」については、過去の判例で、見舞金の上限は、入院1回あたり5万円程度とされている事例があります(平成14年6月13日 国税不服審判所)。

 

【事例の概要】

同族会社が受け取った入院給付金の半額(400万円程度)を、見舞金として同族役員に支払った判例。
当該見舞金が、役員に対する「経済的利益」に該当するか?が議論されています。

 

【結論・根拠】

類似法人(8社)の「福利厚生規定」や、実際見舞金支払額が50,000円を超えていないことを基に、見舞金の上限は、入院1回あたり5万円程度と示されています。

 

【実務上のあてはめ】

あくまで、当該判例は個別案件のため、すべての状況に当てはまるわけではありませんが、課税実務上は、当該金額を目安に判断するケースが多いです(新型コロナウィルスQ&Aにも、見舞金5万円であれば、所得税非課税と記載されている箇所があります)。

 

4. 慶弔規定の作成

「社会通念上相当と認められる金額」を支給する場合でも、そもそも「福利厚生費」として認められるためには、「従業員全員が受給できる機会を確保する」必要があります。例えば、特定の役員だけに支給する場合などは認められません

したがって、実務上は、従業員全員を対象とする「見舞金に関する慶弔規定」を定め、当該規定に基づいて支給を行う必要があります。

「慶弔見舞金規定」では、以下の内容を記載します。下記サンプルもご参照ください。

● 支給対象となる従業員(原則 すべての従業員)
● 慶弔見舞金の種類・支給対象となる事由
● 慶弔見舞金の金額・計算方法
● 支給手続・添付書類等

 

【慶弔見舞金規定のサンプル】


 

【慶弔見舞金規定のサンプルダウンロードはコチラ

 

5. ご参考~受取人が個人等の場合の課税関係(個人・法人)

法人が加入した医療保険の場合でも、保険金受取人を「法人」ではなく、「従業員個人」にすることも可能です。
この場合の、課税関係は以下となります。
 

(1) 受け取った保険金の課税関係(個人側)

個人が受け取る「入院給付金」は、「心身又は資産に加えられた損害にかかる保険」のため、「上記2」同様、所得税は非課税となります(所基通9-23、同施行令30)。
 

(2) 支払った保険料の課税関係(法人・個人)

受取人が「個人」の場合は、法人側で支払う「保険料」につき、給与課税されるケースがあります。「福利厚生費」にできるケースと、「給与」とされるケースがあります。「給与」の場合は、個人側に所得税が課税されます。

保険の対象が、従業員全員の場合、従業員に対する「経済的利益」はないものとされ、個人側には課税されません(=福利厚生費OK)。一方、特定の者だけを対象とする場合は、従業員等に対する「経済的利益」の供与となり、「給与課税」扱いされ、個人側に所得税が課税されます(法基通9-2-9(12))。
役員報酬の場合は、定期同額給与の規制があるため、損金算入できないケースもあります。

 

【法基通 9-2-9】
法第34条第4項《役員給与》及び法第36条《過大な使用人給与の損金不算入》に規定する「債務の免除による利益その他の経済的な利益」とは、次に掲げるもののように、法人がこれらの行為をしたことにより実質的にその役員等・・に対して給与を支給したと同様の経済的効果をもたらすもの・・をいう。・・
(12) 法人が役員等を被保険者及び保険金受取人とする生命保険契約を締結してその保険料の額の全部又は一部を負担した場合におけるその負担した保険料の額に相当する金額

 

なお、あくまで、支払保険料につき「給与課税」の論点が生じるのは、受取人が「個人」の場合です。今回のメインの論点となる受取人が「法人」のケースは、支払保険料に関する「給与課税」の論点は生じません
受取人が「法人」の場合は、「見舞金」に関してのみ、給与課税の論点があります。

 

6.参照URL

従業員等に支給する災害見舞金品

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/higashinihon/hojin_shohi_gensenFAQ/answer05.htm

経済的利益の供与・給与としない経済的利益(法基通9-2-9、9-2-10)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_02.htm

 

7.YouTube

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この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
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