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Q232【休業休職中】労災保険の給付金・傷病手当金に所得税は課税されるのか?/休職中の社会保険料を会社が負担した場合の取扱い 

最終更新日:2025/05/22

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Q232【休業休職中】労災保険の給付金・傷病手当金に所得税は課税されるのか?/休職中の社会保険料を会社が負担した場合の取扱い

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

ケガ・病気などで休業した場合、労災保険の給付金や、健康保険の傷病手当金が受給できるケースあります。また、給付金等で足りない部分を、会社等が独自に補てんする場合もあります。
こういった「給付金・補てん金」には、所得税や社会保険は課税されるのでしょうか?
今回は、休業・休職中の「給付金・会社の補てん金等」にかかる、税務上・社会保険上の取扱いにつきお伝えします。

 

1 労災保険給付金・傷病手当金の取扱い(法定給付金)

(1) 労災保険上の給付(休業補償給付他)

労災保険上、「休業補償給付」という制度があります。「休業補償給付」とは、業務上のけがや病気で、休業する場合に受けられる労災保険上の給付金です。勤務中に限らず、通勤途中の事故、過労による病気なども含まれます。
当該「休業補償給付」については、直接、従業員に入金されますが、所得税は非課税となります(所法9条1項3号イ)。また、労働の対価(報酬)には該当しませんので、社会保険も非課税となります(標準報酬月額に含まれない)。

上記の他、会社都合で休業する際に支払われる「休業手当」(労基第26条)というものがあります。こちらは、会社から直接支払されるものとなり、賃金と同様の扱いになります。所得税上は給与課税、社会保険上も課税されます。

 

種類所得税社会保険
休業補償給付等(従業員都合。労基法 76条他)非課税非課税
休業手当(会社都合。労基法 26条)課税(給与所得)課税

 

(2) 健康保険上の給付(傷病手当金)

健康保険上、「傷病手当金」という制度があります。「傷病手当金」とは、業務外のケガや病気の場合で、休業する場合に受けられる健康保険上の手当です。当該「傷病手当金」についても、直接、従業員に入金されますが、所得税は非課税となります(健康保険法52条、62条、99条)。また、労働の対価(報酬)には該当しませんので、社会保険も非課税となります。

 

種類所得税社会保険
傷病手当金(健保法 52条他)非課税非課税

 

2 会社等からの補てん金の取扱い(法定外給付金)

上記1「法定給付金」以外に、会社や健康保険組合などから独自に支給される「補てん金」を受け取れる場合もあります。

 

(1) 休業補償付加給付・傷病手当金付加金

「休業補償付加給付」とは、業務中のケガや病気などの場合に、就業規則に基づき、会社が独自に「休業補償給付と平均給与の差額」を給付するものです。また、健康保険組合によっては、傷病手当金で不足する部分を上積み支給するケースがあります。「傷病手当金付加金」と呼ばれます。
こういった付加金は、心身に加えられた損害に基づく慰謝料となり、労働の対価(報酬)には該当しませんので、所得税、社会保険どちらも課税されません(恩恵的なもの)。

 

種類所得税社会保険
休業補償付加給付(会社)非課税非課税
傷病手当金付加金(健保組合等)非課税非課税

 

(2) 見舞金は?

入院等をした社員に対し、会社から見舞金を支給するケースもあります。こういった見舞金についても、金額が「社会通念上相当」と認められるものであれは、所得税は課税されません。また、上記に該当する見舞金は、恩恵的なものであり、労働の対価(報酬)ではありませんので、社会保険上も非課税となります

 

種類所得税社会保険
見舞金(社会通念上相当な金額)非課税非課税

 

(3) 支給した会社側の処理は?

休業補償付加給付・見舞金などは、会社から直接従業員に支給することになります。当該部分については、原則として「社員に対する経済的利益」となります。したがって、支給した会社側は、原則として「給与処理」を行いますが、就業規則に基づき、福利厚生の一環として支給する場合は、福利厚生費で処理が可能です

 

3 休職中の社会保険料を、会社が負担する場合

社会保険料は、病気や事故、介護休業等による休職中も支払義務があります。休職期間中の社会保険は、原則として労使折半で負担しますが、休職中の「従業員負担の社会保険料」を、会社で負担するケースもあります。
こういった会社が負担した「従業員負担部分の社会保険料」は、個人側に所得税や社会保険は課税されるのでしょうか?

 

(1) 税務上は原則 給与課税

「従業員負担の社会保険料」を会社が負担した場合、原則として、「社員に対する経済的利益」として給与課税が行われます。
なお、少額の「経済的利益」は課税しない規定があります(所基通36-32)。ただし、ここでの「少額」は、月の自己負担額が300円以下のケースとなりますので、実務上適用できるケースはほとんどないかと思われます
(給与課税された「従業員負担の社会保険料」は、個人側で社会保険料控除の対象にできます(所基通74・75-4))。

【所得税基本通達36-32】
使用者が、役員又は使用人のために次に掲げる保険料・・を負担することにより・・受ける経済的利益については、・・その月中に負担する金額の合計額が300円以下である場合に限り、課税しなくて差し支えない
(1) 健康保険法、雇用保険法、厚生年金保険法又は船員保険法の規定により役員又は使用人が被保険者として負担すべき保険料
(2) 生命保険契約等又は損害保険契約等に係る保険料又は掛金

 

所得税基本通達 74・75-4(使用者が負担した使用人等の負担すべき社会保険料)
役員又は使用人が被保険者として負担すべき社会保険料を使用者が負担した場合には、その負担した金額は、役員又は使用人が支払った又は給与から控除される社会保険料の金額には含まれないものとする。ただし、その負担した金額でその役員又は使用人の給与等として課税されたものは、給与から控除される社会保険料の金額に含まれるものとする。・・・

 

(2) 社会保険料も課税

従業員負担の社会保険料を会社が負担した場合、「会社からの報酬」とみなされ、社会保険も課税されます。また、健康保険上の傷病手当金などは、当該部分だけ支給額が減らされる影響があります。

 

(3) 負担した会社側の処理は?

会社で負担した社会保険料が「給与扱い」される場合、法人側では、「源泉徴収」が必要となります。また、負担する従業員が役員の場合は、定期同額給与を超えた金額につき、損金に算入できません。
実務上、休職中の従業員負担社会保険料は、会社がいったん立替払いし、後日、従業員から回収するケースが多いです。

 

4 ご参考 休職中の社会保険・雇用保険

(1) 休職中の社会保険

社会保険については、病気や事故、介護休業等により休職する場合でも免除されません。介護保険も同様です(産休・育休で休職期間は免除)。
社会保険料の計算は、毎年4月~6月に支給された標準報酬月額をもとに計算しますが、休業期間中の報酬がゼロの方については、従前と同じ標準報酬が適用されます(算定基礎届は「報酬ゼロ」で提出)。休職中の社会保険料は、「傷病手当金」などを元に計算されるわけではない点、注意が必要です。

 

(2) 休職中の雇用保険

雇用保険については、賃金の支払有無に関わらず、雇用関係が続いている限り、被保険者資格は継続します。ただし、休職中に賃金の支払がなければ、雇用保険料の徴収は必要ありません
なお、休業補償給付や傷病手当金は「賃金」ではありませんので、雇用保険もかかりません。

 

5 参照URL

NO1905  労働基準法の休業手当等の課税関係

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1905.htm

傷病手当

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1400_qa.htm

 

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この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

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