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Q71【記載例付】役員賞与を経費にできる「事前確定届出給与」とは?届出通りに支給しなかった場合の取扱い/社会保険は安くなる?

最終更新日:2026/03/12

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Q74 事前確定届出給与って?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

はまだ税理士法人の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
                                                           YouTubeチャンネル:はまだ税理士法人のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

 

役員報酬については、法人税上、利益調整防止の観点から、原則として、「毎月同額で支給する金額」についてのみ損金算入できる規定となっています。定期同額給与と呼ばれます。
したがって、原則として、毎月「同額の給与」以外に支払う「役員賞与」については、「損金」にできません。

ただし、例外として、税務署に「事前に届出」することにより、「役員賞与」などを「損金」にできる制度があります。
「事前確定届出給与」と呼ばれています。

今回は、「事前確定届出給与」の内容や、支給しなかった場合の取扱い、社会保険等への影響等を中心にお伝えします。

 

1. 事前確定届出給与とは?メリット・留意事項

(1)事前確定届出給与とは

「事前確定届出給与」とは、毎月の定額給与とは別に、「支払時期」と「支払金額」を、事前に税務署に届出することにより、「役員賞与等」を損金に算入できる制度です(「定期同額給与」については、税務署に届け出る必要はありません)。
 

(2)メリット

「事前確定届出給与」を支給するメリットは、以下の通りです。

 

役員賞与を損金算入できる 通常は損金にできない「役員賞与」を、損金にできるため、法人税の課税所得の圧縮が可能。
資金繰りの安定 毎月の資金繰り予想が難しい場合、例えば、入金が多く、資金確保が容易な時期に、まとめて「役員報酬」の支払が可能なため、資金繰りが楽になる。
社会保険料が安くなるケースも 役員賞与の「社会保険料」については、社会保険料の上限が設けられている「標準賞与額」が適用できるため、社会保険料が安くなるケースがある。

その他、例えば、非常勤役員等に対して、「不定期に給与を支払いたい」場合など、柔軟な設定が可能な点が特徴です。

 

(3)留意事項

一方で、「事前確定届出給与」を支払う場合の留意事項は、以下の通りです。
 

届出どおりの日付・
金額で支給が必要
支給する日付・金額が、届出書の日付・金額と1円でも異なる場合は、支給額が全額損金不算入(超過分だけでなく全額)。
所得税は変わらない 所得税額は、年間所得をもとに「累進課税」で税額が決定されるため、「定期同額給与」でも「事前確定届出給与」でも、所得税総額は変わらない
社会保険上否認のリスク 社会保険上は、形式上「役員賞与」であっても、実態として「給与の分割支給」と認められる場合は、「給料(報酬)」として社会保険料が課税される。

2. 要件・税務署への届出期限

(1)要件

事前確定届出給与を「損金」にできる要件は、以下となります。

株主総会等で「支給時期」「支給金額」を事前に決議
「事前確定届出給与に関する届出書」を、所轄税務署長に、提出期限までに提出
届出書に記載した「支給時期・支給金額」どおりに、実際支給されていること
(2)税務署への届出期限

税務署への「届出書」の提出期限は、以下となります。

区分 届出時期
既存法人 ①  株主総会決議日から、1か月経過日
 (職務執行開始日後の場合は,開始日から1月経過日)
②  会計期間開始の日から、4か月経過日
  ⇒ 上記①②のうち、いずれか早い日
新設法人 設立後2月以内

通常、「株主総会日~次の定時株主総会日」までが役員の「職務執行期間」ですので、実務上は、株主総会決議日から1ヶ月経過する日で期日を判定します。
 
(例)

2027年3月決算。株主総会の開催日が2027年5月24日の場合

 ⇒ 起算日は2027年5月25日となり(初日不算入)、提出期限は2027年6月24日となります(土日祝の場合、その翌日)。

なお、定時株主総会である必要はありませんので、例えば、決算月翌月に臨時株主総会を開催して支給を決定し、税務署に届出等の要件を満たしていれば、決算月翌月に支給することも可能です。

 

(3)期限までに間に合わなかった場合・金額が誤っていた場合

「届出書」の提出が、期限に間に合わなかった場合や、提出した金額が間違っていた場合は、以下の取扱いとなります。

提出期限に間に合わなかった場合 期日を超えた場合、期限後に提出しても、税務署は受け付けてくれません
金額が誤っていた場合 期日経過後に金額等が間違っていても、原則として、撤回できません
(期限内であれば、「取下げ書」を提出することで、差替え後の届出書の提出が可能)

3. 届出どおりに支給しなかった場合の影響

(1)届出通りに支給しなかった場合

届出書通りに支給しない場合、以下の影響があります。

金額不一致 「届出額」とぴったり一致した額を支給しなければ、全額損金不算入(1円でも)
日付不一致 「届出日」どおりに支給しない場合も、全額損金不算入(単に「資金繰り悪化」などの理由も×)

なお、「実際支給」が必要となりますので、支給日に「未払金」で計上しても、認められません。
 

(2)具体例

● 6月1日・12月1日にそれぞれ200万ずつ支給する旨、「事前確定届出給与に関する届出書」を提出。
● 6月は届出書通りに支給したが、12月は、
   ① 届出額より少ない100万の支給 ② 届出額より多い300万の支給を行った場合

届出内容 ①実際支給(少ないケース) ②実際支給(多いケース)
支給時期 金額 支給時期 金額 支給時期 金額
6月1日 200万 6月1日 200万 6月1日 200万
12月1日 200万 12月1日 100万 12月1日 300万
合計 400万 300万 500万

【損金不算入額】

届出額と実際支給額が異なるため、実際支給額全額(300万 or 500万)全額が損金不算入。
12月支給分だけではなく、6月支給額も全額、「損金不算入」となる点に注意(超えた分・不足分だけではない)

●また、金額はぴったり一致している場合でも、「支給時期が異なる」場合も同様に、全額損金不算入になります。

 

4.支給しない場合の手続は?

資金繰りの都合などで、当初届出していた額を支給できないケースもあります。こういった場合、何らかの手続が必要なのでしょうか?例えば、年1回事前確定届出給与を、「200万円」で届出していたが、資金繰りの都合で、1円も支給できなかった場合などです。
こういった「年間実際支給」がゼロの場合は、単に損金にできる金額がゼロになるだけで、新たな損金不算入額が発生するわけではありません
ただし、場合によっては、「源泉所得税等」が発生するケースがあるため、「所定の手続」を行っておく必要があります。

 

(1)支給しない場合の手続

事前確定届出給与を支給できない場合も、特に税務署への「届出手続」があるわけではありません。
ただし、支給日前に、「支給辞退の意思表示」がなければ、「源泉所得税が課税」される可能性があります。
以下の規定があります。あくまで規定の反対解釈となるため、実際に課税されるかどうか・・まではわかりませんが。

(所得税基本通達 28-10)
給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。

 

上記より、あらかじめ支給をしない場合は、以下の手続を行う方が安全です。

株主総会等での決議 支給予定日「前」に、株主総会等で「当該事前確定届出給与を支給しない(or減額)」旨を決議
辞退届を入手 支給しない意思を明確化するため、辞退する役員本人から、「受領辞退届」を入手

なお、支給予定日後に「不支給」とする場合は、未払金部分が「債務免除益」として課税されるケースもあるようですので、実務上は、支給日前に、取りやめ決議、辞退届を入手しておく方が安全です。
 

(2)定期同額給与への影響

「定期同額給与」と「事前確定届出給与」は、全く別の制度です。
したがって、事前確定届出給与が否認された場合も、「定期同額給与の損金算入」が否認されることはありません。

 

(3)役員ごとに判定

定期同額給与は、「役員ごと」に判定します。ある役員について事前確定届出給与が「損金不算入」になった場合でも、他の役員は、「届出通り」に支給していれば、その役員分は損金算入できます。
 

5. 金額の変更は?期中就任役員の場合は?

(1)金額の変更は2パターン

「事前確定届出給与」も、「定期同額給与」と同様臨時改定事由(職制上の地位の変更等)や、業績悪化改定事由が生じた場合は、改定が認められます。「変更届」を提出して、金額等を変更します。次の2つのパターンです。

内容 提出期限
臨時改定事由 役員の職制上の地位の変更、職務内容の重大な変更等 臨時改定事由発生日から1カ月以内
業績悪化改定事由
(法基通達9-2-13)
経営状況が著しく悪化したことなど、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があること

その事由により、定めの内容変更を行う株主総会などの決議日から1ヶ月以内

ただし、「業績悪化改定事由」については、単に「資金繰りが悪化した」程度では認められません。実務的には相当ハードルが高くなっています。詳しくはこちらをご参照ください。
 

(2)期中に就任の役員の場合は?

期中に就任した新任役員に対しても、「事前確定届出給与」の支給は可能です。
役員の就任も、上記(1)の「臨時改定事由」に含まれると解されています。
したがって、期中に役員就任する「臨時株主総会」決議日から一か月以内に事前確定届出書を提出すれば、設定は可能です(税務通信 NO 3021より)
 

6. 社会保険料が下がるケースも

(1)賞与にかかる「社会保険料」は、上限あり

社会保険上、「年3回までの支給」は、「賞与」と取り扱われ、「標準報酬月額」ではなく、「標準賞与額」が適用されます。
当該「標準賞与額」については、健康保険は年度(4月~3月)あたり573万円まで、厚生年金は、1か月あたり150万円までの上限が設けられています(協会けんぽ)。
 

(2)事前確定届出給与により社会保険料が安くなることも

上記より、例えば、「定期同額給与」を低くして、社会保険料の上限がある「事前確定届出給与」を高くすることで、社会保険料(健康保険+厚生年金保険)が安くできる可能性があります。
 

(3)「社会保険料節税スキーム」は・・問題視

ただし、現在、毎月の役員報酬を低く抑え、賞与を多くすることで「社会保険料を削減するスキーム」は問題視されており、今後数年以内に、上限額そのものの見直しが行われる可能性がある点、注意が必要です。
現時点でも、「賞与の設定」が多いにも関わらず、実際は毎月預金口座から引き出しているような場合は、「給与」とみなされ、給与としての社会保険料が徴収されるケースがあります。根拠は以下の通りです。
 

●(年管管発 0918第5号 要約)
「賞与」とすることで、社会保険の負担が少ないにもかかわらず、実際は、月給同様に給与を「分割支給」している場合は、賞与ではなく「給料」として社会保険を計算する。

 

7. 届出書記載例・役員給与変更株主総会議事録

(1) 事前確定届出給与

「事前確定届出給与に関する届出書」の記載例を載せておきます。
詳細はYouTubeご参照ください。


 

 

(2) 役員報酬変更株主総会議事録

事前確定届出給与を実施する際の株主総会議事録の記載例です。

株主総会議事録(wordファイル)のダウンロードはこちら

 

8. 参照URL

(役員に対する給与)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5211.htm

(事前確定届出給与に関する届出)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/5104.htm

(変更届)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hojin/annai/6059.htm

 
 

9. YouTube

 
YouTubeで分かる「役員賞与を経費にする方法」
 

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