税金の豆知識
Q250 【外国株配当・分配金】 外国株式・外国株ETFは、確定申告しないと損します!二重課税回避のための「外国税額控除」と「国内所得税」の関係は?
最終更新日:2026/08/2717view

最近は、日本以外の外国株(米国株式など)や外国高配当ETF(VYMやSPYDなど)にチャレンジする方も増えています
こういった商品は、配当(分配金)入金時に、日本国内の所得税だけでなく、外国の税金も控除され、日本と海外の「二重課税」になっているケースが多いです。
「二重課税となっている税金」は、確定申告すれば還付されますが、実際には「外国税が控除されている事実」や、「確定申告での還付方法」を知らない方も多いです。
そこで今回は、外国株式配当等の課税の仕組みや、確定申告での還付の方法(外国税額控除につきお伝えしていきます(以下、外国株、外国ETF等の配当・分配金を総称して「外国株の配当等」と称します)。
目次
1. 外国株等の配当等にかかる「海外」と「国内」での源泉徴収
(1) 外国株の配当等にかかる二重課税
日本国内株式の配当等に関しては、配当金受取時に、一律 20.315%(国内所得税15.315% + 国内住民税5%)が天引きされて入金されます。
一方で、「外国株の配当等」の場合は、「配当を行う現地国(=外国)」で外国税が徴収され、しかも、「受取側の日本国」でも国内所得税が徴収されます。つまり、「外国株の配当等」に関しては、二重に税金が徴収されています(二重課税)。
(2) 二重課税の具体例
具体例で、「二重課税」の状況をご紹介します。
● 上記配当に関しては、米国税金10%、日本国内税金 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が源泉徴収されている(配当の国内税金は、分離課税を前提とする)。
上記例題での税額及び手取り額をまとめると、以下となります。
| 内容 | 金額 | 計算過程 |
|---|---|---|
| 配当額面 ① | 1,000,000円 | |
| 米国源泉税 10% ② | 100,000円 | 100万円×10% |
| 国内源泉所得税等 ③ (所得税+住民税) 20.315% |
182,835円 | 90万円×20.315% |
| 手取り ④=①-②―③ | 707,165円 |
なお、「日米租税条約」により、米国配当に係る外国税率は最大10%(制限税率)と決められています。
2. 日本の所得税上の「二重課税排除」の仕組み(外国税額控除)
(1) 外国税額控除とは
同じ配当にもかかわらず、海外現地で課税され、日本でも課税される「二重課税状態」は、明らかに税負担が高くなっています。こういった「二重課税」を解消するための制度が、「外国税額控除」です。確定申告において、国内所得税から、既に天引きされている外国税部分を控除(=外国税額控除)することで、国内の所得税等の負担額を少なくする制度です。先ほどの例ですと、外国税額控除をすることで、アメリカで徴収された外国税10万円に近い金額を国内所得税から控除することで、実質税率を、国内株と同じ「約20%」程度にすることが可能です。
(2) 外国税額控除をしなくても、そもそも日本の所得税は少なく計算されている
実は・・確定申告で「外国税額控除」をしなくても、源泉徴収の段階で、日本の所得税等は本来よりも少なく計算されています。
先ほどの例ですと、配当の額面は100万円ですので、本来の所得税等の額は、100万円×20.315%=203,150円となります。
しかしながら、実際は、外国税10万円を差し引いた90万円に対して20.315%が源泉徴収され、国内所得税は182,835円となっています。つまり、差額の20,315円(203,150円-182,835円)は、確定申告で「外国税額控除」をしなくても、既に、源泉徴収段階で国内所得税が安く計算されていることになります。
3. 確定申告すれば還付されるケースも
上記の通り、日本の国内税金は、「外国税額控除」をしなくても20,315円安く源泉徴収されていますが、外国税10万円が源泉徴収されていることを考えると、まだまだ「二重課税」の状態は解消されていません。
こういった「二重課税」は、確定申告において「外国税額控除」を行うことで、解消が可能です。外国税額10万円に近い金額を取り返すことができます。
先ほどの「1.(2)の事例」をもとに、確定申告で外国税額控除するケースと、しないケースを比較すると、以下となります
(ここでは、簡便的に、外国税額控除限度額の計算は無視します)。
| 確定申告なし | 確定申告あり (外国税額控除) |
||
|---|---|---|---|
| 課税対象配当金額 | 900,000円 | (※)1,000,000円 | |
| ① | 外国税額 | 100,000円 | 100,000円 |
| ② | 国内所得税等 | 182,835円 | (※)203,150円 |
| ③ | (外税控除前)税額小計 ①+② | 282,835円 | 303,150円 |
| ④ | 外国税額控除 | - | 100,000円 |
| ⑤ | (外税控除後)税額小計 ③-④ | 282,835円 | 203,150円 |
| ⑥ | 源泉徴収税額(外国税+国内税) | 282,835円 | 282,835円 |
| 還付額 ⑤-⑥ | 0円 | 79,685円 |
(※)確定申告する場合は、配当は額面金額100万円で入力します。この結果、確定申告した場合の(外税控除前)所得税等は、203,150円(100万×20.315%)に増加します。
どうですか?確定申告しない場合は、追加の納税はありませんが、還付もありません。
一方で、確定申告で外国税額控除をした場合は、79,685円還付されることになります。
4. 証券会社からの「年間取引報告書」の表示
上記例題の場合、証券会社の「年間取引報告書」では、以下のように表示されます。
| 配当等の額 | 源泉徴収税額(所得税) | 配当割額(住民税) | 摘要 |
|---|---|---|---|
| 1,000,000円 | 137,835円 | 45,000円 | 外国所得税の額 100,000円 |
「配当等の額」の欄の金額は、外国税額及び国内所得税、住民税すべて差し引く前の額面金額が記載されます。
実際の「サンプル」での配当等の額511,815円は、外国税額および国内税金すべて差し引く前の額面金額です。(511,815円-79,700円(外国税))×15.315%=所得税徴収額66,148円に近い数値になることがわかるかと思います。
5. 外国税額控除は限度額あり
(1) 限度額の計算
外国税額控除の制度は「二重課税」を排除することを目的としています。
したがって、国内税金が発生している場合など、実際に二重課税になっている場合のみ、「外国税額控除」が可能となります。
国内所得税上は、以下の式で算定された金額が「控除限度額」となります。
(※)復興特別所得税も含む
例えば、国内所得税がゼロの場合、式に当てはめると、外国税額控除額はゼロになります。つまり、「日本国内で所得税があまり発生していない場合」は、外国税額控除限度額が小さくなり、結果的に、現地へ支払った外国税額は一部取り戻せないことになります。ただし、上記の限度額計算で、所得税上引ききれなかった「限度超過額」は、当期の「住民税」から控除が可能です。
(2) 限度超過額・控除余裕額の繰越
上記の結果、住民税からも引ききれなかった外国税額控除の限度超過額は、翌年以後、3年間の繰越が認められます。また、逆に、税額が少なく、外国税額の限度額に満たない場合(余裕額)も、来年以降の繰越が認められています。
確定申告書では、「外国税額控除に関する明細書」を作成して繰り越します。
(3) 具体例
先ほどの「1.(2)」の事例に、他の所得(給与)を追加して「外国税額控除限度額」を算定していきます。
● 上記以外の所得は、日本国内給与 額面500万円(給与所得控除差引後356万円)
● 外国税額控除前の所得税額 347,650円とする(復興特別所得税含む)。
● 配当に関しては、米国税金10%(666ドル、100,000円)、日本国内税金 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が源泉徴収されている。
● 配当の国内税金は、分離課税を前提とする。
【外国税額控除 限度額の計算】
| 金額 | 根拠 | ||
|---|---|---|---|
| ① | 所得総額(国内+国外) | 4,560,000円 | 海外配当100万円+給与所得356万円 |
| ② | うち、国外所得 | 1,000,000円 | 米国配当額面 |
| ③ | 国外所得割合 ②÷① | 0.219・・ | |
| ④ | 所得税額 | 347,650円 | |
| ⑤ | 外国税額控除限度額 | 76,238円 | ④× ③ |
| ⑥ | 外国税額(源泉徴収済) | 100,000円 | |
| ⑦ | 限度超過額(所得税等) | 23,762円 | ⑥-⑤ |
【住民税・限度超過繰越額の計算】
所得税上、外国税額控除の限度額を超えた「限度超過額」23,762円(上記⑦)は、当期の住民税から控除が可能です。また、住民税からも控除できなかった「限度超過額」は、3年間の繰越が可能です。計算の詳細は省略しますが、今回の事例ですと、住民税から22,401円(県民税4,480円+市町村民税17,921円)控除でき、控除した残額1,361円が翌年以降に繰越される「外国税額控除限度超過額」となります。
確定申告書の「外国税額控除の計算明細」を作成すると、以下となります。
【外国税額控除に関する明細書 3・4 抜粋】
④ NISA口座の場合は?
NISA口座で非課税となるのは国内所得税のみとなるため、NISA口座で外国株の配当等を受け入れた場合、外国税は天引きされてしまいます。
この点、NISA口座は国内所得税が課税されていないため、そもそも二重課税にはなっていません。したがって、NISA口座で天引きされた外国税額については、「外国税額控除」はできません。したがって、NISA口座については、たとえ確定申告した場合でも、外国税の還付を受けることはできません(他の特定口座との合算も不可)。
なお、NISA口座では、外国税10%は課税されることにはなりますが、国内所得税は課税されないため、分離課税の20.315%と比べてもまだまだお得といえます。
⑤ 二重課税自動調整制度
2020年以降、外国株式等に投資する公募投資信託やETFなどの「分配金」に関しては、外国源泉税と日本の源泉所得税等の二重課税を、源泉徴収段階で自動調整する制度が導入されています。
自動調整の対象となるもの、ならないものは以下の通りです。
(1) 自動調整の対象となるもの(確定申告不要)
上記銘柄については、入金される際に、外国税と日本の税金の二重課税を自動的に計算し、調整済の金額が入金されます。したがって、改めて確定申告する必要はありません。
(2) 自動調整の対象外のもの(=確定申告が必要)
● 海外上場ETF(VYM、HDV、SPYD、SCHDなど)
上記銘柄については、二重課税の調整は行われません。したがって、税金を還付してもらうためには、確定申告で「外国税額控除」を行う必要があります。
(3) 実務上の見分け方
「二重課税調整」がされている場合は、配当金支払通知書に、「通知外国税相当額」「分配時調整外国税相当額」等の記載があります。
⑥ ご参考 配当は「総合課税」と「分離課税」どちらが得か?
(1) 総合課税と分離課税
所得税上、配当に関しては、「分離課税」の場合は15.315%の税率となりますが、「総合課税」の場合は、最低税率が5%になりますので、所得が少ない場合は、「総合課税」を選択した方が税額は安く収まります(詳細はこちらを参照ください)。「総合課税」を選択した場合、外国税額控除との関係は以下となります。
総合課税を選択して税額が安く収まる場合は、計算式から算定される外国税額控除の限度額が下がり、限度超過が出やすくなります(分離課税を選択して税額が高くなる場合は、限度超過が少なくなります)。
(2) 海外配当は配当控除なし
国内株式と異なり、外国配当の場合は、「総合課税」で認められる配当控除10%は認められません。あくまで、配当控除は日本の法人から支払われる配当金に適用される制度ですので、海外企業からの配当には適用されません。
6. 参照URL
No.1240 居住者に係る外国税額控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1240.htm
投資信託等の二重課税調整制度開始のご案内(日本証券協会)
https://www.jsda.or.jp/shijyo/seido/tax/files/toushin_tax.pdf
配当所得がある方の入力(住民税等に関する事項)(令和4年分以降の申告)
https://www.keisan.nta.go.jp/r6yokuaru_sp/cat1/cat13/cat132/cat1324/cat13241/scid1333.html
7. YouTube
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