税金の豆知識

  • ホーム
  • 税金の豆知識
  • Q239 【個人事業主】事故や災害等の損害につき認められる経費の範囲は?/受け取った保険金や損害賠償金に所得税は課税されるのか?

Q239 【個人事業主】事故や災害等の損害につき認められる経費の範囲は?/受け取った保険金や損害賠償金に所得税は課税されるのか?

最終更新日:2025/12/06

2411view

Q239 【受取保険金】個人事業主が、天災や事故等で受け取った保険金や損害賠償金には所得税が課税されるのか?認められる経費の範囲は?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

はまだ税理士法人の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
                                                           YouTubeチャンネル:はまだ税理士法人のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

個人事業主が、突発的な事故や災害等により「損害」を被った場合、建物や車などの除却・原状回復費用が発生します。
また、販売する商品が毀損する場合もあります。
こういった損失は、どこまで経費で認められるのでしょうか?

また、損害保険会社や、事故等の相手先から「保険金」や「損害賠償金」などをもらうケースもあります。
こういった「受取保険金等」は、「補てんされる対象」が、固定資産なのか?商品なのか?で取扱いが異なります。

今回は、個人事業主を前提に、災害等の際に認められる経費の範囲や、受け取った保険金等の取扱いにつき解説します。
(事業を行わない個人の場合は、雑損控除となりますので、今回のメインの論点ではありません)

 

1. 建物や車などの固定資産が損壊した場合

(1) 既存資産にかかる損失は全額経費OK

事故や災害などで被害を受けた「事業用資産の未償却簿価」は、「資産損失」として、事業所得等の必要経費に算入可能です(所51条、令140)。
ただし、資産の時価(廃材等の売却収入等)がある場合は、当該経費から控除します(所其通51-2)。
なお、事故や災害等に伴って発生する「取壊費用」や「撤去費用」などは、上記の「資産損失」には含まれませんが、別途、経費算入が可能です(所37条)。

 

(2) 修繕費や原状回復費用は?

事故や災害前の状況に回復するための原状回復費用や修繕費については、全額「修繕費」に計上可能です。被災前の「効用を維持」するために行う「補強工事」も同様です(所基通7-8-5、51-2)。
ただし、災害前と比較して品質、性能等が「明らかに向上する支出」の場合は、資本的支出として「資産」に計上し、「減価償却」により、数年間にわたって経費に計上します(所基通37-10)。

なお、災害により損壊した資産の場合は、「原状回復費用等」以外の支出のうち、資本的支出と修繕費の区分が不明な金額につき、支出額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出として処理することが認められています(所其通37-14の2)。

 

(3) 受け取った保険金等は、原則非課税

個人事業主の方で、突発的な事故や災害などにより「資産に加えられた損害」につき受け取った保険金や損害賠償金等は、原則として、所得税等は非課税とされています (所法9①18) (法人の場合は、法人税が課税されます)。

一方、「必要経費を補てんする保険金等」には、所得税が課税される、規定があります(所施令30条)。
ただし、ここでの「必要経費」は、「通常の維持管理費用」に限定され、「臨時的な費用を補てん」するものは除かれています(所基通9-19)。
したがって、例えば、災害により生じた仮店舗賃借料、従業員給料などを補てんする保険金は課税されますが、突発的な修繕など、臨時的な出費をカバーする受取保険金は、課税されません

なお、事故や災害に限らず、例えば、事業で利用している機械等が故障した場合の「臨時的な修繕」に関連する保険金等も、同様の扱いで課税されません。

 

2. 判定の具体例

【損害・支出の内訳】
● 損壊建物簿価 500万円、取壊費用 100万円、原状回復費用 300万円
● 上記以外の支出 600万円 (資本的支出、収益的支出の区分は不明)
● 休業中に、仮店舗として別の場所を借りた際に支払った賃料 200万円

【受取保険金の内訳】
● 店舗損壊に対応する保険金 1,000万円(建物・修繕等の保険)
● 休業中の賃料補償 損害賠償金 100万円

 

(1) 損害・支出経費の取扱い

● 損壊建物簿価500万円、取壊費用100万円、原状回復費用300万円については、全額経費として認められます。
● 上記以外の、区分不明な支出(600万円)については、災害特例を適用し、支出額の30%相当額を経費に計上します。

600万円×30%=180万円(=修繕費)
600万円×70%=420万円(=固定資産計上)

● 休業中の賃借料200万円も、全額経費で認められます。

 

(2) 受取保険金の取扱い

● 損壊建物簿価、取壊費用、原状回復費用は、臨時的な費用となります。したがって、当該店舗損壊等に対応する保険金1,000万円は「必要経費を補てんする金額」には該当しないため、所得税は課税されません
● 休業中の賃料補償損害賠償金100万円は、「必要経費(賃料)を補てん」するものですので、所得税が課税されます。

 

3. 販売する商品が毀損した場合

(1) 既存商品にかかる損失は全額経費OK

突発的な事故や、災害などで毀損した「商品」にかかる損害は、全額経費(仕入高等)で計上できます。

 

(2) 受け取った保険金等は課税

商品や原材料など、棚卸資産等の損害に対応する保険金や損害賠償金は、「通常経費を補てん」するもののため、所得税が課税されます(所施令94条)。固定資産を補てんする保険金等と取扱いが異なる点、注意が必要です。

なお、棚卸資産を補てんする保険金だけでなく、休業中の売上を補償するような「収益補償」の保険金等に関しても、同様に所得税が課税されます。
 

【まとめ】

収入(受取保険金等) 費用 会計処理
車や建物等の固定資産 原則 非課税 全額経費 費用のみ計上
例外(※) 課税 全額経費 収入・費用両建て
棚卸資産 課税 全額経費 収入・費用両建て

(※)「通常の維持管理等」の経費を補てんする保険金、損害賠償金など

 

4. 消費税の取扱い

損害賠償金や保険金には、消費税は課税されません
一方で、修繕工事など、対価性のある支出については、たとえ保険料がある場合でも、全額「仕入税額控除」が可能です。

なお、受け取った保険金や損害賠償金には、消費税は課税されません。

 

5. 損益通算・繰越控除

事業所得や不動産所得で、災害等損失を経費で計上した結果、赤字の部分は、他の所得と損益通算が可能です(所法69)。
また、「純損失の繰越控除」については、原則として、青色申告の場合に認められますが、災害による損失の場合は、白色申告の場合でも、3年間の繰越控除が認められています(所法70)。

 

6. ご参考 個人の雑損控除

個人の方が、火災や地震等で生じた損失は「雑損控除」という所得控除が認められています。ただし、当該制度は「生活に通常必要な資産」が対象となりますので、「事業用資産」の場合は、「雑損控除」ではなく、今回お伝えした通り、「事業所得等」での経費で計上します。
なお、店舗併用住宅については、事業部分は経費、自宅部分については、「雑損控除」が認められます。

 

7. 参照URL

No.2201 個人事業者が事業所得の必要経費を補てんするための損害賠償金を受け取ったとき

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2201.htm

(7-8-6) 災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_08.htm

災害により事業用資産の損益通算・繰越控除

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-045/02.htm

 

8. YouTube

Coming soon

 

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

はまだ税理士法人の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
                                                           YouTubeチャンネル:はまだ税理士法人のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

【関連記事】



 

濱田会計事務所への無料ご相談・お問い合わせは0120-932-116まで