税金の豆知識
Q248【令和8年改正】試験研究費の特別控除はこう変わる!一般型+オープンイノベーション型・戦略技術領域型の最新ルールと具体的計算方法
最終更新日:2026/07/1711view

研究開発投資に関しては、試験研究費の「一定割合」を法人税等から控除できる「研究開発税制」が認められています。研究開発税制は、大きく、①一般型(総額型)②中小企業型(中小企業技術筒基盤強化税制)の2種類に区分されますが、別枠で、③オープンイノベーション型(特別試験研究費)、④戦略技術領域型の税額控除制度も認められます。
今回は、そのうち、①一般型(総額型)の試験研究費の税額控除の内容を中心にお伝えするとともに、③オープンイノベーション型、④戦略技術領域型の内容も解説します。
(②中小企業型(「中小企業技術基盤強化税制」)については、Q247をご参照ください)。
目次
1. 一般型(総額型)の試験研究費の税額控除とは?適用できる方
(1) 一般型の試験研究費の税額控除とは?
試験研究費(=税法上の試験研究費)の一定割合を、法人税等から控除できる税額控除制度です。研究開発投資の維持・拡大支援を目的にしています。
各事業年度の「試験研究費」の額に、研究開発費の増減割合に応じて変動する控除率(0〜14%程度)を乗じた金額を、法人税額から控除できます。一般型は、試験研究費が増加傾向にある事業者の方が、控除率が高くなる点が特徴です。
(2) 適用できる方・併用関係は?
青色申告事業者が対象となります(個人事業主も含みます)。ただし、①一般型の試験研究費の税額控除と、②中小企業型(中小企業技術基盤強化税制)の重複適用はできません。一方で、③オープンイノベーション型④戦略技術領域型はそれぞれ別枠で認められますので、併用も可能です(ただし、当然、同一の試験研究費については、重複適用できません)。
2. 全体像
試験研究費の税額控除は、計算方法が非常にややこしいですが、大きなステップは、①試験研究費の集計②税額控除額の算定の2ステップとなります。
| ① | 当期の試験研究費の集計 | ● 税務上の「試験研究費」の集計 |
|---|---|---|
| ② | 一般型(総額型)の税額控除額を計算 | ● 控除率を決定(増減試験研究費割合・売上高試験研究費割合に応じた控除率) ● 控除額を算定当期試験研究費×控除率(上限あり) |
以下、2つに分けて解説していきます。
3. 当期の試験研究費の集計
税法上の「試験研究費」に該当する金額を集計します。なお、税務調査上は、「試験研究費」に該当するかどうか?が論点になるケースが多いです。試験研究費の範囲や、試験研究費把握の際の留意事項は、以下の通りです。詳細は、Q194をご参照ください。
| 研究開発プロジェクトの整理 | 研究開発開始時点で、研究目的、予算、スケジュールなどを明確にしておき、文書化しておく。 |
|---|---|
| 費用の区分管理 | 会計単位として、研究開発部門を区分する。テーマごとのプロジェクトコードを発番し、材料費、人件費、外注費などの開発費用を集計する。 |
| 根拠資料の整備 | 研究開発との関連を説明できるよう、契約書・見積書・プロジェクト資料などの根拠資料を整備する。 |
4. 一般型(総額型)の税額控除算定方法
一般型の試験研究費の「税額控除額」は、以下の式で算定します。
当期の試験研究費 × 税額控除率(0〜14%)
なお、一般型の「試験研究費の特別控除」は、「総額型」の税額控除となりますので、例えば、前年と比べて試験験研究費の増加がゼロ、あるいはマイナスの場合でも、税額控除が適用できるケースもあります。ただし、「税額控除率」は、試験研究費の増減割合に応じて変動しますので、比較対象となる「比較試験研究費」や、「増減試験研究費」を算定する作業が必要となります。具体的な計算ステップは、以下の通りです。
(1) 比較試験研究費・増減試験研究費の算定
| ① | 当期の試験研究費の集計 | 当期の試験研究費を集計 |
|---|---|---|
| ② | 比較試験研究費の集計 | 前3年以内開始各事業年度の試験研究費の額の平均額を集計 |
(2) 増減試験研究費割合の算定
上記(1)より、増減試験研究費割合を算定します。以下の式で算定します。
(3) (通常)税額控除率の算定
税額控除率は、「増減試験研究費割合」によって異なります。以下の通りです
(令和9年4月1日開始事業年度~の時限措置)
| 増減試験研究費割合 | 税額控除率の計算 | 税額控除率 |
|---|---|---|
| 15%超 | 11.5%+(増減試験研究費割合-15%)×0.375(最大14%) | 11.5%~14% |
| 3%以上15%以下 | 8.5%+(増減試験研究費割合-3%)×0.25 | 8.5%~11.5% |
| 3%以下 | 8.5%-(3%-増減試験研究費割合)×8.5/13(※) | 0%~8.5% |
| 設立年度or比較試験研究費ゼロ | 一律8.5% |
例えば、増減試験研究費割合が△10%の場合⇒0%、+3%の場合⇒8.5%、+15%の場合⇒11.5%、21.666%超⇒14%となります。改正により、増減試験研究費割合のマイナスが大きい場合は、税額控除率が0%になるケースも生じます。
(4) 割増控除率が適用できるケースあり
上記(3)の控除率は、「通常控除率」と呼ばれます。一方で、「一定」の場合、上記の「通常控除率」が、最大1.1倍できる特例が認められています(上限は14%)(以下、当該割増控除率につき、「通常控除率」と区別して、「割増控除率」と称します)。「一定」の場合とは、売上高に対する試験研究費比率が10%超の場合です。
割増控除率が適用できるケース = 売上高試験研究費割合が10%t超のケース
(※)売上高試験研究費割合は以下の式で算定します
(中小企業技術基盤強化税制とは、売上の集計期間が異なる点注意)
上記の要件を満たす場合、「割増控除率」は、以下の式で算定されます。
割増控除率=(売上高試験研究費割合-10%)×0.5 (上限は0.1)
「割増控除率」の上限は0.1となっていますので、最大で、「通常控除率」が1.1倍できるということになります。
(5) 税額控除額の算定
上記(4)までで算定した税額控除率を用いて、税額控除額を算定します。
当期の試験研究費 × 税額控除率(0〜14%)
(6) 法人税の控除限度額
原則として、当期の法人税額×25%までの上限(控除限度額)が定められています。
ただし、以下の場合は、乗除限度額の上限が緩和される経過措置があります。
(令和9年4月1日開始事業年度~の時限措置)
【経過措置】
① 増減試験研究費割合により前後5%ずつ変動(20%~30%)
| 増減試験研究費割合 | 控除上限の計算 | 控除上限 |
|---|---|---|
| +7%超 | 25%+0.625×(増減試験研究費割合-7%)の上乗せ | 最大+5%上乗せ (=最大30%) |
| △1%未満 | 25%+0.625×(増減試験研究費割合+1%)の減額 | 最大△5%の上限減少(=最小(20%) |
例えば、増減試験研究費割合+15%⇒最大の30%、△9%⇒最小の20%になります。
② 売上高試験研究費割合が10%超の場合の上乗せ措置
売上高試験研究費割合が10%超の場合、最大10%の上乗せ措置があります。
控除上限 = 25% + [(売上高試験研究費割合−10%)×2 (最大10%)]
上記①・②のうち、高い方の上限額を採用できるため、最大、法人税×35%まで控除上限が認められることになります。
なお、上記と別に、設立10年以内等の一定のベンチャー企業については、控除上限に15%の上乗せが認められるため、最大50%の税額控除が可能です。
(7) 使いきれなかった場合の繰越控除は?
控除しきれない「繰越控除限度超過額」は、切り捨てとなり、繰越は認められていません。(なお、中小企業技術基盤強化税制については、令和8年4月1日以後開始する事業年度から、3年間の繰越が認められる予定となっています)。
(8) ご参考 ~大企業向けの所得制限等(令和8年3月31日まで)~
「一般の試験研究費税制」に関して、令和9年3月31日までに開始する事業年度までは、大企業につき、所得、雇用、設備投資要件があります
(令和9年4月1日開始事業年度以降、当該要件の継続有無については、現時点では未定)。
5. オープンイノベーション型(特別試験研究費)の試験研究費税制とは?
大学・公的研究機関・他企業など「外部の相手方」と共同研究や委託研究を行った場合、その共同研究や委託研究に要した費用(特別試験研究費)につき、通常より高い控除率で法人税額から控除できる制度です。青色申告事業者が対象となりますが、一般型(総額型)とは「別枠」で、税額控除が可能です。
したがって、一般型の試験研究費とは区分して、税額控除の計算を行います(一般型で集計した試験研究費については、重複適用不可)。
オープンイノベーション型の試験研究費の「税額控除額」は、以下の式で算定します。
当期の特別試験研究費 × 税額控除率(20%~30%)
(1) 特別試験研究費に該当するもの
特別試験研究費とは、大学・国研・認定新技術事業者等、外部の第三者との共同研究・委託研究に要した費用です。単純な受託開発費、ロイヤルティのみなどは除外されます。なお、オープンイノベーション型の税額控除を適用する場合は、第三者による「特別試験研究費」事前確認・証明が必要です。
【特別試験研究費に該当する具体例】
以下のような相手先との共同研究・委託研究が対象となります。
● 大学・国立研究開発法人等
● 認定を受けた研究機関・ベンチャー企業
● 一定の要件を満たす他の国内外企業 等
(2) 税額控除率
相手先の属性などに応じて、20%・25%・30%のいずれかとなります。(詳細は経済産業省HP参照)。
| 国・大学等との共同研究・委託研究 | 30% |
|---|---|
| 一定のスタートアップベンチャー企業等との共同研究・委託研究 | 25% |
| その他の民間企業との共同研究・委託研究 | 20% |
(3) 控除限度額
総額型(一般型)と同様に、当期の法人税額×10%までの上限があります。
当該上限額は、総額型(一般型)の税額控除とは「別枠」で認められます。
(4) 使いきれなかった場合の繰越控除は?
一般型と同様、控除しきれない「繰越控除限度超過額」は、切り捨てとなり、繰越は認められていません。
6. 戦略技術領域型の試験研究費税制とは?
AI、先端ロボット、半導体など、特定の戦略技術分野にかかる試験研究費につき、通常よりも高い控除率で法人税から控除できる税額控除制度です。青色申告事業者が対象となりますが、「一般型(総額型)」・「オープンイノベーション型」とは「別枠」で、税額控除が可能です。
したがって、一般型等とは区分して税額控除の計算を行います。
戦略技術領域型の試験研究費の「税額控除額」は、以下の式で算定します。
当期の重点産業技術試験研究費 × 税額控除率 (40% or 50%)
(1) 戦略技術領域型 試験研究費に該当するもの
AI、先端化ロボット関連技術や、量子関連技術、半導体通信関連技術など、国家戦略技術領域に該当する試験研究費となります(詳細は、経済産業省HP参照)。なお、戦略技術領域型の税額控除を適用する場合は、産業技術力強化法に基づく研究開発計画の認定が必要とされています。
(2) 税額控除率
原則として、40%となりますが、特別重点産業技術試験研究費の場合は50%となります。
(3) 控除限度額
控除限度額は、当期の法人税額の10%までの上限があります。
当該上限額は、総額型(一般型)の税額控除とは「別枠」で認められます。
(4) 使いきれなかった場合の繰越控除は?
戦略技術領域型については、3年間の繰越控除が認められていますので、注意が必要です。
7. 他の税額控除との関係
今回の研究開発税制(一般、特別、戦略)を活用すると、最大、法人税額の55%まで(ベンチャー企業は70%)税額控除が可能となりますが、当該研究開発税制は、他の税額控除制度(例 賃上げ促進税制等)との併用も可能です。
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