税金の豆知識
Q41 【資本準備金】資本準備金を積み立てる・減少させるケースは?/資本金の金額による税金への影響/法的手続
最終更新日:2025/04/1513220view
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
車両運搬具(課税) 仮払消費税 | 50,000 5,000 | 長期未払金 | 55,000 |

決算書の「貸借対照表」に表示される「純資産の部」は、大きく、①株主から払い込まれた「資本」(資本金・資本準備金・その他資本剰余金)と、②会社が獲得した「利益」(利益準備金・その他利益剰余金)の2つから構成されます。
今回は、上記①「資本」の構成要素の内容や、「資本準備金」を増減させる背景や理由、資本金の額による税金への影響等を中心に解説します。
目次
1 資本金・資本準備金・その他資本剰余金の内容・違い
(1) それぞれの内容
「資本の部」は、資本金、資本準備金、その他資本剰余金の3つで構成されます。それぞれの内容は以下の通りです。
① | 資本金 | 会社設立や増資に際して、株主が払い込んだ金額のうち、「資本準備金」に計上しなかった金額 |
---|---|---|
② | 資本準備金 | 会社設立時や増資に際して、株主が払い込んだ金額のうち、「資本金」に計上しなかった金額(上記①の逆)。 |
③ | その他資本剰余金 | 上記①②以外で、資本取引から発生するもの全て。例えば、自己株式を処分した際に生じた売却益など。 |
● 設立や増資に際しては、株主から払い込まれた金額のうち、1/2までは「資本準備金」に計上できる規定があります。あくまで「計上できる」規定のため、払込額を全額資本金に計上する場合は、資本準備金は発生しません。
● 会計上は、「資本準備金」と「その他資本剰余金」を合わせて、「資本剰余金」と呼ばれます。
(2) 違いは?
資本金・資本準備金・その他資本剰余金は、すべて、「株主からの払込資金」という点では共通しています。
一方、①登記の有無や、②配当の有無の点では異なります。登記に関しては、資本金のみが登記され、配当に関しては、その他資本剰余金のみ配当が可能です。
資本金 | 資本準備金 | その他資本剰余金 | |
---|---|---|---|
登記 | 必要 | 不要 | 不要 |
配当 | 不可 | 不可 | 可能 |
2 資本準備金を積み立てる理由・背景
資本準備金を積み立てるケースは3つです。①設立や増資の際に、資本準備金として積み立てるケース②資本金を取り崩して、資本準備金に振り替えるケース③その他資本剰余金を取り崩して、資本準備金に振り替えるケースの3つです。
(利益から資本準備金への直接振替はできず、「その他資本剰余金」を通じて振替を行います)。
(1) 設立や増資で資本準備金を積み立てるケース
設立や増資の際に、払込額の1/2を上限に「資本準備金」を積み立てるケースです。
税務上は、「資本金」の額に応じて納税負担が高くなるものがあります。そこで、「資本金」の額をおさえて、税制上のメリットを取りたい場合などに「資本準備金」を積み立てるケースが多いです。
【資本金の金額による主な税法上の影響】
法人税 | ● 資本金1億円超の場合、法人税率は23.2%。 (資本金1億円以下かつ所得800万円以下の場合は15%) ● 資本金1億円以下の会社は、年間800万円まで交際費の損金算入限度額、少額減価償却資産の特例等あり。 ● 資本金3,000万円以下の法人は、「機械等の税額特別控除(取得価額の7%)」が受けられる。 |
---|---|
消費税 | 資本金1,000万円以上で設立した場合、設立初年度から消費税の納税義務が生じる。 |
事業税 | 資本金1億円超の場合、外形標準課税の適用があります。 |
住民税均等割(※) | 資本金等の額1,000万円超、1億超それぞれの金額に応じて、利益に関係なく課税される均等割の金額が異なる |
登録免許税 | 新規設立増資の際、資本金の額が多くなれば、登録免許税の金額も変わる。 |
(※)住民税均等割は、資本金の額ではなく、「資本金等の額」に課税されるため、資本準備金の場合でも、均等割は減少しないケースがあります。
(2) 資本金を取り崩して資本準備金に振り替えるケース
上記(1)同様、税制上のメリットを取りたいケースで行われることが多いです。
(3) その他資本剰余金を取り崩して資本準備金に振り替えるケース
会社の規模を大きく見せたい場合などに行われます。資本準備金は、資本金とは異なり「登記簿謄本」には記載されませんが、資本準備金の方が、資本としての拘束力が高まるため、決算書において、金融機関等に対する信用力をアピールできます。
例えば、過去に蓄積された利益剰余金を、(その他資本剰余金を通じて)資本準備金に振り替えることで、融資が受けやすくなるケースや、返済、利率などの条件が改善する可能性があります。
3 資本準備金を減少させる理由・背景
資本準備金を減少させるケースは2つです。①資本金に振り替えるケース②その他資本剰余金に振り替えるケースです。
(1) 資本金に振り替えるケース
資本金に振り替えることで、会社の規模を大きく見せたいケースなどです。上記2(3)と同様です。
(2) その他資本剰余金に振り替えるケース
以下の理由が挙げられます。
欠損を補てんしたい場合 | 過去の累積赤字(欠損金)を補てんするために、その他資本剰余金に振り替えます。欠損填補については、資本準備金からの直接補てんはできませんが、「その他資本剰余金」に振り替えた後、その他資本剰余金を通じて補てんが可能です。 |
---|---|
株主への配当原資の確保 | 株主への配当を行いたい場合に、その他資本剰余金に振り替えます。配当については、資本準備金は直接配当できませんが、「その他資本剰余金」に振り替えた後、その他資本剰余金を通じて配当が可能です。 |
4 資本準備金増減の法的手続(会社法)
会計上は、資本金・資本準備金・その他資本剰余金とも、株主からの「払込資本」として性質が異なるものではない、と考えています。一方、法律上(会社法)は、債権者に対する「拘束資本」の強弱があり、各々性質が異なるものと考えています。
したがって、法律上(会社法)は、例えば、資本金を減少させて資本準備金に積み立てる場合などで、株主総会決議や債権者保護手続が要求されています。
(会447条Ⅰ②、計規26条、25条Ⅰ①)
内容 | 株主総会決議 | 登記有無 | 債権者保護手続 (公告+異議申立) | |
---|---|---|---|---|
増加 | 資本金⇒資本準備金 | 特別決議(※1,2) | 必要 | 必要 |
その他資本剰余金⇒資本準備金 | 普通決議 | 不要 | 不要 | |
その他利益剰余金⇒資本準備金 | 不可(※4) | |||
減少 | 資本準備金⇒資本金 | 普通決議(※2) | 必要 | 不要 |
資本準備金⇒その他資本剰余金 | 普通決議(※2) | 不要 | 原則必要(※3) | |
資本準備金⇒その他利益剰余金 | 不可(※4) |
(※1)定時株主総会で、欠損の額を超えない額を減少させる場合は普通決議でOK(会309Ⅱ⑨)。
(※2)株式の発行と同時に減少を行う場合、減少後の額が、減少前の金額を下回らない場合は、取締役会決議でOK(会447Ⅲ他)
(※3)定時株主総会で、欠損の額超えない額を減少させる場合は債権者保護手続不要(会449条Ⅰ)。
(※4)直接、資本準備金⇔その他利益剰余金間の振り替えはできません。一旦その他資本剰余金に振替の後、準備金振替や欠損填補や配当目的で取り崩します。
5 ご参考 資本金・その他資本剰余金増減の法的手続
【その他資本剰余金の増減】
内容 | 株主総会決議 | 登記有無 | 債権者保護手続 (公告+異議申立) | |
---|---|---|---|---|
増加 | 資本金⇒その他資本剰余金 | 特別決議(※1,2) | 必要 | 必要 |
資本準備金⇒その他資本剰余金 | 普通決議(※2) | 不要 | 原則必要(※3) | |
その他利益剰余金⇒その他資本剰余金 | 不可(※4) | |||
減少 | その他資本剰余金⇒資本金 | 普通決議 | 必要 | 不要 |
その他資本剰余金⇒資本準備金 | 普通決議 | 不要 | 不要 | |
その他資本剰余金⇒その他利益剰余金 | 普通決議 | 不要 | 不要 |
【資本金の増減】
内容 | 株主総会決議 | 登記有無 | 債権者保護手続 (公告+異議申立) | |
---|---|---|---|---|
増加 | 資本準備金⇒資本金 | 普通決議(※2) | 必要 | 不要 |
その他資本剰余金⇒資本金 | 普通決議 | 必要 | 不要 | |
その他利益剰余金⇒資本金 | 普通決議 | 必要 | 不要 | |
減少 | 資本金⇒資本準備金 | 特別決議(※1,2) | 必要 | 必要 |
資本金⇒その他資本剰余金 | 特別決議(※1,2) | 必要 | 必要 | |
資本金⇒その他利益剰余金 | 不可(※4) |
(※1)定時株主総会において、欠損の額を超えない額を減少させる場合は普通決議でOK。
(※2)株式の発行と同時に減少を行う場合、減少後の額が、減少前の額を下回らない場合は、取締役会決議でOK。
(※3)定時株主総会で、欠損の額超えない額を減少させる場合は債権者保護手続不要
(※4)直接の振替えはできません。
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