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Q41 【資本準備金】資本準備金を積み立てる・減少させるケースは?/資本金の金額による税金への影響/法的手続

最終更新日:2025/04/15

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Q41 【資本準備金】資本準備金を積み立てる・減少させるケースは?/資本金の金額による税金への影響/法的手続

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

決算書の「貸借対照表」に表示される「純資産の部」は、大きく、①株主から払い込まれた「資本」(資本金・資本準備金・その他資本剰余金)と、②会社が獲得した「利益」(利益準備金・その他利益剰余金)の2つから構成されます。
今回は、上記①「資本」の構成要素の内容や、「資本準備金」を増減させる背景や理由、資本金の額による税金への影響等を中心に解説します。

 

1 資本金・資本準備金・その他資本剰余金の内容・違い

(1) それぞれの内容

「資本の部」は、資本金、資本準備金、その他資本剰余金の3つで構成されます。それぞれの内容は以下の通りです。

資本金会社設立や増資に際して、株主が払い込んだ金額のうち、「資本準備金」に計上しなかった金額
資本準備金会社設立時や増資に際して、株主が払い込んだ金額のうち、「資本金」に計上しなかった金額(上記①の逆)。
その他資本剰余金上記①②以外で、資本取引から発生するもの全て。例えば、自己株式を処分した際に生じた売却益など。

● 設立や増資に際しては、株主から払い込まれた金額のうち、1/2までは「資本準備金」に計上できる規定があります。あくまで「計上できる」規定のため、払込額を全額資本金に計上する場合は、資本準備金は発生しません。
● 会計上は、「資本準備金」と「その他資本剰余金」を合わせて、「資本剰余金」と呼ばれます。

 

(2) 違いは?

資本金・資本準備金・その他資本剰余金は、すべて、「株主からの払込資金」という点では共通しています。
一方、①登記の有無や、②配当の有無の点では異なります。登記に関しては、資本金のみが登記され、配当に関しては、その他資本剰余金のみ配当が可能です。

資本金資本準備金その他資本剰余金
登記必要不要不要
配当不可不可可能

 

2 資本準備金を積み立てる理由・背景

資本準備金を積み立てるケースは3つです。①設立や増資の際に、資本準備金として積み立てるケース②資本金を取り崩して、資本準備金に振り替えるケース③その他資本剰余金を取り崩して、資本準備金に振り替えるケースの3つです。
(利益から資本準備金への直接振替はできず、「その他資本剰余金」を通じて振替を行います)。

 

(1) 設立や増資で資本準備金を積み立てるケース

設立や増資の際に、払込額の1/2を上限に「資本準備金」を積み立てるケースです。
税務上は、「資本金」の額に応じて納税負担が高くなるものがあります。そこで、「資本金」の額をおさえて、税制上のメリットを取りたい場合などに「資本準備金」を積み立てるケースが多いです。

【資本金の金額による主な税法上の影響】

法人税● 資本金1億円超の場合、法人税率は23.2%。
(資本金1億円以下かつ所得800万円以下の場合は15%)
● 資本金1億円以下の会社は、年間800万円まで交際費の損金算入限度額少額減価償却資産の特例等あり。
● 資本金3,000万円以下の法人は、「機械等の税額特別控除(取得価額の7%)」が受けられる。
消費税資本金1,000万円以上で設立した場合、設立初年度から消費税の納税義務が生じる。
事業税資本金1億円超の場合、外形標準課税の適用があります。
住民税均等割(※)資本金等の額1,000万円超、1億超それぞれの金額に応じて、利益に関係なく課税される均等割の金額が異なる
登録免許税新規設立増資の際、資本金の額が多くなれば、登録免許税の金額も変わる。

(※)住民税均等割は、資本金の額ではなく、「資本金等の額」に課税されるため、資本準備金の場合でも、均等割は減少しないケースがあります。

 

(2) 資本金を取り崩して資本準備金に振り替えるケース

上記(1)同様、税制上のメリットを取りたいケースで行われることが多いです。

 

(3) その他資本剰余金を取り崩して資本準備金に振り替えるケース

会社の規模を大きく見せたい場合などに行われます。資本準備金は、資本金とは異なり「登記簿謄本」には記載されませんが、資本準備金の方が、資本としての拘束力が高まるため、決算書において、金融機関等に対する信用力をアピールできます。
例えば、過去に蓄積された利益剰余金を、(その他資本剰余金を通じて)資本準備金に振り替えることで、融資が受けやすくなるケースや、返済、利率などの条件が改善する可能性があります。

 

3 資本準備金を減少させる理由・背景

資本準備金を減少させるケースは2つです。①資本金に振り替えるケース②その他資本剰余金に振り替えるケースです。

 

(1) 資本金に振り替えるケース

資本金に振り替えることで、会社の規模を大きく見せたいケースなどです。上記2(3)と同様です。

 

(2) その他資本剰余金に振り替えるケース

以下の理由が挙げられます。

欠損を補てんしたい場合過去の累積赤字(欠損金)を補てんするために、その他資本剰余金に振り替えます。欠損填補については、資本準備金からの直接補てんはできませんが、「その他資本剰余金」に振り替えた後、その他資本剰余金を通じて補てんが可能です。
株主への配当原資の確保株主への配当を行いたい場合に、その他資本剰余金に振り替えます。配当については、資本準備金は直接配当できませんが、「その他資本剰余金」に振り替えた後、その他資本剰余金を通じて配当が可能です。

 

4 資本準備金増減の法的手続(会社法)

会計上は、資本金・資本準備金・その他資本剰余金とも、株主からの「払込資本」として性質が異なるものではない、と考えています。一方、法律上(会社法)は、債権者に対する「拘束資本」の強弱があり、各々性質が異なるものと考えています。
したがって、法律上(会社法)は、例えば、資本金を減少させて資本準備金に積み立てる場合などで、株主総会決議や債権者保護手続が要求されています。
(会447条Ⅰ②、計規26条、25条Ⅰ①)

内容株主総会決議登記有無債権者保護手続
(公告+異議申立)
増加資本金⇒資本準備金特別決議(※1,2)必要必要
その他資本剰余金⇒資本準備金普通決議不要不要
その他利益剰余金⇒資本準備金不可(※4)
減少資本準備金⇒資本金普通決議(※2)必要不要
資本準備金⇒その他資本剰余金普通決議(※2)不要原則必要(※3)
資本準備金⇒その他利益剰余金不可(※4)

(※1)定時株主総会で、欠損の額を超えない額を減少させる場合は普通決議でOK(会309Ⅱ⑨)。
(※2)株式の発行と同時に減少を行う場合、減少後の額が、減少前の金額を下回らない場合は、取締役会決議でOK(会447Ⅲ他)
(※3)定時株主総会で、欠損の額超えない額を減少させる場合は債権者保護手続不要(会449条Ⅰ)。
(※4)直接、資本準備金⇔その他利益剰余金間の振り替えはできません。一旦その他資本剰余金に振替の後、準備金振替や欠損填補や配当目的で取り崩します

 

5 ご参考 資本金・その他資本剰余金増減の法的手続

【その他資本剰余金の増減】

内容株主総会決議登記有無債権者保護手続
(公告+異議申立)
増加資本金⇒その他資本剰余金特別決議(※1,2)必要必要
資本準備金⇒その他資本剰余金普通決議(※2)不要原則必要(※3)
その他利益剰余金⇒その他資本剰余金不可(※4)
減少その他資本剰余金⇒資本金普通決議必要不要
その他資本剰余金⇒資本準備金普通決議不要不要
その他資本剰余金⇒その他利益剰余金普通決議不要不要

【資本金の増減】

内容株主総会決議登記有無債権者保護手続
(公告+異議申立)
増加資本準備金⇒資本金普通決議(※2)必要不要
その他資本剰余金⇒資本金普通決議必要不要
その他利益剰余金⇒資本金普通決議必要不要
減少資本金⇒資本準備金特別決議(※1,2)必要必要
資本金⇒その他資本剰余金特別決議(※1,2)必要必要
資本金⇒その他利益剰余金不可(※4)

(※1)定時株主総会において、欠損の額を超えない額を減少させる場合は普通決議でOK。
(※2)株式の発行と同時に減少を行う場合、減少後の額が、減少前の額を下回らない場合は、取締役会決議でOK。
(※3)定時株主総会で、欠損の額超えない額を減少させる場合は債権者保護手続不要
(※4)直接の振替えはできません。

 

6. YouTube

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この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
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