税金の豆知識
Q239 【受取保険金】個人事業主が、天災や事故等で受け取った保険金や損害賠償金には所得税が課税されるのか?認められる経費の範囲は?
最終更新日:2025/11/1211view

個人事業主が、天災や、突発的な事故等により「損害」を被った場合、保険金・損害賠償金などをもらうケースがあります。
こういった受取保険金等には、所得税が課税されるのか・・あるいは、毀損した固定資産の簿価や、原状回復費用などは経費にできるのか・・疑問が生じます。
今回は、個人事業主を前提に、災害等で受け取った保険金の取扱いや、支払った経費の取扱いにつき解説します。
目次
1. 建物や設備損壊等の保険金等の場合
(1) 損失は全額経費OK
災害などで被害を受けた「事業用資産の未償却簿価」は、「資産損失」として、事業所得等の必要経費に算入可能です(所51条、令140)。ただし、災害後の状況で、資産の時価(廃材等の売却収入等)がある場合は、当該経費から控除します(所其通51-2)。
なお、災害等に伴って発生する「取壊費用」や「除却費用」などは、上記の「資産損失」には含まれませんが、別途、経費算入が可能です(所37条)。
(2) 修繕費や原状回復費用は?
災害前の状況に回復するための原状回復費用や修繕費については、全額修繕費に計上可能です。被災前の「効用を維持」するために行う補強工事も同様です(所基通7-8-5、51-2)。
ただし、災害前と比較して品質、性能等が「明らかに向上する支出」の場合、資本的支出として「資産」に計上し、減価償却を行います(所基通37-10)。
なお、災害等の場合は、以下の特例があります。
上記の「原状回復費用等」以外の支出のうち、資本的支出と修繕費との区分が不明の場合、支出額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出として処理することが認められています(所其通37-14の2)。
(3) 受け取った保険金等は、原則非課税
個人事業主の方で、火災など、突発的な事故等により資産に加えられた損害につき受け取った保険金や損害賠償金等は、原則として、非課税とされています (所法9①18) (法人の場合は、法人税課税)。一方、必要経費を補てんするような保険金等は、所得税が課税される規定があります(所施令30条)。
ただし、当該「必要経費を補てんする保険金等」の範囲は、「通常の維持管理費用」に限定され、「臨時的な費用を補てん」するものは除かれています(所基通9-19)。例えば、災害により生じた仮店舗賃借料、従業員給料などを補てんする保険金は課税されますが、突発的な修繕など、臨時的な出費をカバーする受取保険金は、原則通り、課税されません。
なお、災害に限らず、例えば、事業で利用している機械等が故障した場合の修繕に関連する保険金等も、同様の扱いで課税されません。
2. 判定の具体例
● 損壊建物簿価500万円、取壊し費用100万円、原状回復費用300万円
● 上記以外の支出600万円 (資本的支出、収益的支出の区分は不明)
● 休業中に、別の場所を借りた際の賃料200万円
【受取保険金の内訳】
● 店舗損壊に対応する保険金1,000万円(建物・修繕等の保険)
● 休業中の賃料補償 損害賠償金 100万円
(1) 損害・支出経費の取扱い
● 損壊建物簿価、取り壊し費用、原状回復費用(合計900万円)は、全額経費として認められます。
● 上記以外の区分不明な支出(600万円)については、災害特例を適用し、支出額の30%相当額を経費に計上します。
600万円×30%=180万円(=修繕費)
600万円×70%=420万円(=固定資産計上)
● 休業中の賃借料200万円も、全額経費で認められます。
(2) 受取保険金の取扱い
● 損壊建物簿価、取壊し費用、原状回復費用は、臨時的な費用となります。したがって、当該店舗損壊等に対応する保険金1,000万円は「必要経費を補てんする金額」には該当しないため、所得税は課税されません。
● 休業中の賃料補償損害賠償金100万円は、「必要経費(賃料)を補てん」するものですので、所得税が課税されます。
3. 商品損失・収益補てんの保険金等の場合
(1) 損失は全額経費OK
災害などで毀損した「棚卸資産」にかかる損害は、全額経費(仕入高等)で計上できます。
(2) 受け取った保険金等は課税
商品や原材料など、棚卸資産等の損害に対応する保険金や損害賠償金には、所得税が課税されます(所施令94条)。また、休業中の売上を補償するような「収益補償として取得」する保険金等に関しても課税されます。
棚卸資産の損害や、収益補償としての保険金などは、「通常経費や売上を補てん」するものであるため、という考え方に基づきます。
【まとめ】
| ① | 収入 | 費用 | 会計処理 | |
|---|---|---|---|---|
| 建物や設備 | 原則 | 非課税 | 全額経費 | 費用のみ計上 |
| 例外(※) | 課税 | 全額経費 | 収入・費用両建て | |
| 棚卸資産や収益 補てん保険金等 |
課税 | 全額経費 | 収入・費用両建て | |
(※)「通常の維持管理等」の経費を補てんする保険金、損害賠償金など
4. 消費税の取扱い
損害賠償金や保険金には、消費税は課税されません(不課税)。
一方で、修繕工事など、対価性のある支出については、たとえ保険料をもらっていた場合でも、全額「仕入税額控除」が可能です。
5. 損益通算・繰越控除
事業所得や不動産所得で、災害等損失を経費で計上した結果、赤字になった部分は、他の所得と損益通算が可能です(所法69)。
また、「純損失の繰越控除」については、原則として、青色申告の場合に認められますが、災害等損失については、白色申告の場合でも、3年間の繰越控除が認められています(所法70)。
6. ご参考 個人の雑損控除
個人の方が、火災や地震等で生じた損失は「雑損控除」という所得控除が認められています。ただし、当該制度は「生活に通常必要な資産」が対象となりますので、「事業用資産」の場合は、「雑損控除」ではなく、今回お伝えした通り、「事業所得等」での経費で計上します。
なお、店舗併用住宅については、事業部分は経費、自宅部分については、「雑損控除」が認められます。
7. 参照URL
No.2201 個人事業者が事業所得の必要経費を補てんするための損害賠償金を受け取ったとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2201.htm
(7-8-6) 災害の場合の資本的支出と修繕費の区分の特例
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/07/07_08.htm
災害により事業用資産の損益通算・繰越控除
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/saigai/h30/0018008-045/02.htm
8. YouTube
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