税金の豆知識
Q243【使用貸借】個人名義の車を、会社が「無償」で使っても大丈夫か?法人から個人・法人の無償賃貸は?税務調査で指摘されるケース
最終更新日:2026/05/152008view

中小企業の場合、オーナー社長個人名義の車を、法人(同族法人)での業務に利用するケースもあります。
しかしながら、個人名義の車を、法人が無償で利用する場合、法人側は「ただで利益を受けた」ものとして、法人税が課税されないのか、疑問が生じます。また、個人側にも何らかの課税関係が生じないか?不安に思う方もいるかもしれません。
そこで今回は、個人名義の車両等を、法人が「無償で利用」する場合の課税関係や、「税務調査」で問題となるポイント等を中心にお伝えします。
目次
1. 無償で利用する契約は「使用貸借契約」
他人の物を「無償」で利用する契約は「使用貸借契約」、「有償」で利用する契約は「賃貸借契約」と呼ばれ、民法上、適法な契約として認められています。
例えば、個人事業主が法人成りする際に、個人時代に事業利用していた車を、法人成り後もそのまま法人が無償で利用する場合などは、個人法人間で、「使用貸借契約」を締結します。
しかしながら、個人名義の車両を、法人が無償利用する場合、法人は、対価を支払うことなく「使用できる利益」を得ています。こういった場合、法人側は「タダで利益を受けた」ものとして、法人税が課税されないのか・・疑問が生じます。
2. 個人名義の車両を、法人が使用貸借する場合
以下、個人名義の車両を、法人や個人が「使用貸借」する場合の税務上の取扱いをお伝えしていきます。
「無償譲渡」の場合の取扱いと比較してお伝えします。
(1) 無償譲渡の場合
所得税上、個人名義の車を、法人に(無償賃貸ではなく)無償or著しく低い価額で譲渡した場合は、譲渡した個人側は「時価で譲渡」したものとして、所得税が課税されます(「みなし譲渡所得課税」、所得税59条)。
この場合、受け取った法人側も、時価相当額との差額につき、「受贈益」として法人税が課税されます(法22条2項、法基通4-2-6)。
(2) 使用貸借(無償賃貸)の場合
一方で、個人名義の車両を、法人に無償で賃貸する「使用貸借」の場合は、所得税、法人税とも、税金を課税する規定は存在しません(借地権認定課税は除く)。
税務上は、そもそも、個人は営利を目的とする主体ではないため、他人に「タダで貸す」だけでは、(無償譲渡ほどの)課税すべき収入は発生しないと考えているためです。
なお、個人名義の車両を、「個人」に無償で賃貸する場合も、同様に課税されません。
結論、個人名義の車を、会社や個人が「無償」で利用する「使用貸借」の場合、個人側及び法人側とも課税されません。
(3) ご参考~不動産の場合~
なお、個人が法人に、「土地」を使用貸借する場合は、例外的に課税されるケースがあります。「土地」の場合は、個人から法人に「借地権に相当する経済的利益」が移転しているものとして、法人税が課税されます(借地権認定課税)。
税法上は、同じ「使用貸借」でも、土地に関しては、「利用権」という「無形の財産」が移転しているものと考えています。
3. 個人から法人への使用貸借で、税務調査で問題となるケース
上記の通り、個人から法人等に対する車両の「使用貸借」自体に課税されることはありませんが、個人名義の車両の使用貸借については、税務調査で厳しくチェックされる傾向があります。
個人名義の車両を、法人に「使用貸借」する場合でも、「法人から個人への経済的利益の供与」がある場合は、個人側に「給与課税」が行われます。具体的には、以下のケースです。
(1) 法人が、「使用権」を超える費用を負担するケース
個人から法人への「使用貸借契約」は、あくまで、法人側に「使用権」を与えるにすぎません。したがって、法人が、使用権を超える費用を負担する場合は、本来個人が負担すべき費用を会社が負担していることになります。この場合は、法人から個人への「経済的利益の供与」として、個人側に給与課税が行われます。
例えば、「ガソリン代や駐車場代」などは、使用者側(法人側)で負担すべきものですので、これらの費用を法人が負担していても、税務上は問題ありません。
一方で、「車検代や保険料」などは、本来、所有者側(個人側)で負担すべきものです。したがって、使用者である法人が、「車検代や保険料」まで負担している場合は、個人側への経済的利益の供与として、個人側に「給与課税」が行われます。
実務上は、使用貸借契約において、貸主・借主双方の「費用負担の範囲を明記」しておく必要があります。使用に伴う費用は使用者側で負担し、所有に伴う費用は所有者が負担する、などを明確に記載しておきます。
(2) 使用貸借車両を、個人がプライベートで利用している場合
法人に使用貸借している車両を、個人側でプライベートで利用する場合は、個人側に給与課税が行われるケースがあります。
例えば、「プライベート利用部分のガソリン代等」を、法人が負担している場合は、法人が、「個人が負担すべき部分」を負担していることになります。この場合は、経済的利益の供与として、個人側に「給与課税」が行われます。
(法人税上、個人事業主のような「家事按分」の概念はありませんが、個人と法人が混在する支出を全額法人が負担している場合は、「法人業務利用部分」のみが、交通費等の経費、プライベート部分は給与課税)。
したがって、例えば、運行記録を記載するなどで「法人業務利用部分」を明確にし、業務部分のみを経費、その他の部分は貸付金として、役員個人から返金してもらう形が安全です。
なお、個人側に「給与認定」が行われる場合、役員の場合は、「役員賞与」となりますので、法人税上は損金不算入となり、源泉徴収の対象にもなりますので、税額へのインパクトは大きくなります。
4. 法人名義の車両を、個人や法人が使用貸借する場合は?
(1) 法人から個人に使用貸借する場合
上記と逆のパターンです。法人名義の車両を、使用貸借契約で「個人」が利用する場合は、「本来個人が負担すべき費用を法人が負担」していることになります。この場合は、法人税、所得税上、給与課税する明確な規定があります。原則として、個人側に「経済的利益」が生じているものとして、給与課税されます。
同じ「使用貸借」でも、法人から個人への使用貸借の場合は、法人税上の規定が適用され、上記2と逆の結論になる点、注意が必要です。
(2) 法人間での使用貸借の場合
例えば、グループ会社法人間で「使用貸借契約」を締結し、無償で車両等を利用する場合です。
この場合も、上記(1)同様、法人税法の規定が適用されます。「通常受けるべき対価」を取らずに相手方に経済的利益を与えた場合、その利益相当額は 寄附金とされます(法基通9-1-13、法法77条)。
したがって、法人から法人に、車両を「使用貸借」した場合は、寄付金認定され、法人税が課税されるケースがあります(提供側(寄付金/賃貸収入)・使用者側(賃料/受贈益))。
なお、100%グループ法人間での使用貸借の場合は、グループ法人税制により、寄付金や受贈益は、損金益金不算入となります。
5. ご参考 法人名義でも、高級車が税務否認されるケースは?
参考に、法人名義の高級車「フェラーリの経費計上」が認められた裁判例をご紹介します。
直接的には今回の論点と「別の論点」となりますが、私的利用部分につき「経費否認」される可能性がある点で、今回の論点と、近い考え方が示されている判例です。
(1) 国税不服審判所 平成7年10月12日熊裁 平7第2号
フェラーリにつき、経費計上が認められた理由を要約すると、以下の通りです。
● 業務として、3年間で7,500キロ程度走行していることが確認され、業務での利用実態が証明できた。
● 代表者は、個人で別の高級車を複数台所有しており、それらの費用は法人経費にはしていなかった。
● 社用車利用時は交通費等を支給しないという「社内旅費規程」が存在し、交通費・通勤手当は支給していなかった。
(2) 上記裁判例からの結論
単に、「高級車」というだけで経費性が否認されることはないが、逆にいうと、「私的利用がある部分」は、経費否認されるケースがある、と読み取ることもできます。具体的には、以下のケースで、税務上問題になる可能性があります。
● 業務使用の記録が不十分または存在しない
● 実態は私用が中心で、個人使用と業務使用の区分が曖昧
● 役員が個人所有の車を持っていない状態で、会社名義の車のみを使用
6.YouTube
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