税金の豆知識
Q119 基準年度がない場合の「所得拡大促進税制」の具体例
最終更新日:2022/02/0321214view

前回、「所得拡大促進税制」のお話をしましたが・・
・設立間もない会社は、「基準年度」がないケースがあります。
・また、「基準年度」に給与の支給がない会社もあるかもしれません。
こういった場合、「所得拡大促進税制」の適用はできないのでしょうか?
そんなことはありません。適用できます。
目次
1. 例外的なケース
例外的なケースとして、以下の場合が考えられます。
(1) 基準事業年度がない場合
平成25年4月1日以後に新規設立した法人は、「基準事業年度」がありません。
この場合は、平成25年4月1日以後に開始する最も古い事業年度の給与等支給額の0.7に相当する金額を「基準雇用者給与等支給額」とみなします。
(2) 基準事業年度に給与等の支給がない場合
最近になって初めて従業員を雇った場合は、「基準事業年度」に給与等の支給がありません。この場合は、基準期雇用者等支給額を1円として計算します。
(3) 事業年度の月数が異なる場合
決算月を変更した場合、「基準事業年度」と「適用事業年度」の月数が異なるケースがあります。この場合は、下記の計算で、適用年度に合わせる形で計算します。
前事業年度において決算月を変更した結果、12か月に満たない場合も、「比較雇用者給与等支給額」の計算上、上記同様の調整を行います。
2. 基準事業年度がない場合の具体例
(1) 例題
平成30年5月期に「所得拡大税制」が適用できるか?検討してみましょう。
● 平成27年6月1日に新規設立した法人、資本金100万円(中小企業者)。
● 基準事業年度 なし
平成27年度(平成27年6月1日~平成28年5月31日)×0.7
● 比較事業年度 平成28年度(平成28年6月1日~平成29年5月31日)
● 適用事業年度 平成29年度(平成29年6月1日~平成30年5月31日
● 当期の法人税額は400万円とする。
● 従業員は全員、雇用保険に加入しており(一般被保険者)、
継続雇用制度対象者はいない
(各事業年度の状況)
基準事業年度 | 比較事業年度 | 当事業年度 | |
---|---|---|---|
H28/5 | H29/5 | H30/5 | |
給与年間支給額 | 2,900万円 | (C) 3,000万円 |
(A) 3,150万円 |
(うち、退職者への給料) | - | (△350万円) | - |
(うち、新入社員への給料) | - | - | (△250万円) |
給与年間支給額×0.7 | (B) 2,030万円 |
- | - |
小計(=継続雇用者への給与)① | 2,030万円 | 2,650万円 | 2,900万円 |
支給人数 | 200人 | 200人 | 230人 |
退職人数 | - | △20人 | - |
入社人数 | - | 0人 | △50人 |
小計(=継続雇用者人数)② | 200人 | 180人 | 180人 |
継続雇用者一人あたり平均(①/②) | 101千円/人 | (E) 147千円/人 |
(D) 161千円/人 |
(2) 要件のあてはめ
計算 | 可否 | |
---|---|---|
要件1 | (A)/(B)=155.1%≧103% | 〇 |
要件2 | (A)-(C)=150万円>0 | 〇 |
要件3 | (D)-(E)=14千円>0 | 〇 |
⇒要件①~③すべて満たすので、適用可
(3) 税額控除額
① 原則
{(A)-(B)}×10%=112万円
② 特典の可否
(A)÷(C)=105% ⇒ 特典適用可能。
(A)-(C)×12%=18万円(上乗せ額)
③ ① + ②
112万円 + 18万円 = 130万円
④ 上限(法人税の20%)
400万円 × 20% = 80万円
③ ≧ ④のため、④80万円の控除が可能(80万円を超えた部分は切り捨て)
6. 参照URL
● 金融庁HP(所得拡大促進税制ご利用ガイドブック)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/pdf/29pamphlet2.pdf