税金の豆知識

Q140 同じ年に退職金を「複数」もらう場合の所得税計算方法

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Q140 同じ年に退職金を「複数」もらう場合の所得税計算方法

退職金には、さまざまな論点がありますが、
今回は、「同じ年度に複数の退職所得」がある場合の「所得税」の計算方法です。

例えば、現在勤務する会社の「退職金」のほか、同じ年度に「他の会社からも退職金」を受け取っているような場合です。

この場合、退職金の所得税計算は、どのように算定するのでしょうか?

退職所得には、単純な「退職金」以外にも、「小規模企業共済や401K(個人型確定拠出年金)の返戻金」、「社会保険制度や生命保険会社から一時金」なども該当する場合がありますので、意外とこういったケースは多いかもしれませんね。

 

1. 退職金の所得税算定方法

退職金の所得税は、以下の方法で算定します。

● (収入金額 – 退職所得控除額)× 1/2(※)=課税退職所得の金額
● 課税退職所得×税率(分離課税)

(※)勤続年数5年以内の役員の場合は、1/2不可(Q33参照)

 

2.退職所得控除額って?

「退職所得控除額」とは、勤続年数に応じて、退職金の額から最初から差し引いてくれる「経費」のようなものです。
以下のように決められています。

 

勤続年数20年以下の場合 勤続年数×40万円(最低80万円)
勤続年数20年超の場合 800万+(勤続年数-20年)×70万円

例えば、勤続年数10年の場合、10年×40万円=400万円の「退職所得控除額」が認められます。つまり、勤続年数10年の方は、退職金400万円までは「所得税」が課税されないということです。税務上、退職金は非常に優遇されています。

 

3. 退職金の所得税率

退職金は、「分離課税」となります。分離課税の場合、他の所得(給料など総合課税の所得など)とは合算せず、退職金だけを「分離」して税金計算を行います。

退職所得に対する所得税率は、以下のように決まっています。

 

課税退職所得の金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円超 330万円以下 10% 97,500円
330万円超 695万円以下 20% 427,500円
695万円超 900万円以下 23% 636,000円
900万円超 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

上記のほか、復興特別所得税(所得税額×2.1%)、住民税10%が課税されます。

 

4. 退職金の所得税計算 具体例

勤続年数18年、退職金1,500万円の場合

 

{1,500万円 -(15年×40万円)} × 1/2 = 450万円
450万円 × 20% – 427,500円 = 472,500円 ⇒ この金額が所得税となります。

 

5. 退職金が2つ以上ある場合は?

ここからが本題です。
「同じ年に複数の退職所得」がある場合、どうやって「所得税計算」を行うのでしょうか?

 

(1) 「複数の退職所得」は合算する

同じ年に複数の退職金がある場合は、すべての退職所得を合算して、合算後の1つの退職所得に対して、退職所得控除を適用します。
それぞれの退職金に対して「退職所得控除」が適用されるわけではありませんので、注意しましょう。

 

(2) 退職所得控除の「勤続年数」は、最も長い年数を採用

退職所得控除を決定する際の勤続年数は、原則として、最も長い勤続期間(※)の「勤続年数」を適用します。

(※)「最も長い勤続期間」(以下、Aとします)
例外的に、A以外の期間のうち、Aと重複しない期間がある場合は、勤続期間の算定にあたって、重複しない期間を、Aに加算することができます(年未満切上)

 

(3) 具体例

以下の退職金を、同じ年に受け取った(下記以外の退職金はない)
● A社からの退職金 3,000万円(勤続期間30年)
● B社からの退職金 2,000万円(勤続期間20年)
● A・ B社の勤続期間で、重複しない期間はないものとする。

 

複数退職所得の合算 3,000万円 + 2,000万円 = 5,000万円
最も長い勤続年数の把握 A社の勤続期間・・・30年
退職所得控除額の算定 800万円+(30年 – 20年)×70万円=1,500万円
課税退職所得の算定 (5,000万円 – 1,500万円)× 1/2 = 1,750万円
所得税額の算定 1,750万円 ×33% – 1,536,000円 = 4,239,000円

それぞれの退職金ごとに「退職所得控除」をできるわけではなく、退職所得を合算して、退職所得控除を適用する点、ご注意ください。

 

6. 退職所得控除を最大限活用するには?

上記のとおり、同じ年に複数の退職金がある場合は、合算した退職所得に、1つの「退職所得控除」を適用しますので、それぞれの退職金に「退職所得控除」を適用した場合と比べると、税額が高くなります。

逆に言うと、複数の退職金がある場合でも、支払う年が異なれば、「それぞれの退職金ごとに退職所得控除を差し引ける」ということですよね。

例えば・・退職金支給時期をずらすことが可能であれば、「退職所得控除」を最大限活用できる場合もありそうです。

ただし、4年以内に退職金を受け取った場合(確定拠出年金の老齢給付金は14年以内)は、一定の調整が入ってしまいますので、ここは注意しましょう。(この例外規定は、次回Q141で説明します)

 

7. まとめ

複数の退職金がある場合でも、オーナー企業様など「支給時期をずらすことが可能」な環境であれば、間隔を4年以上あけて、退職金ごとの「退職所得控除の適用は可能」です。
ただし、個人型確定拠出年金の一時金の場合は、14年以上の間隔が必要ですので、なかなか・・ずらすのも難しいかもしれませんけど。

 

8. 参照URL

(NO 2735  同じ年に2か所以上から退職手当等が支払われるとき)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2735.htm

 

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