税金の豆知識

Q167 居住用賃貸建物の仕入税額控除改正

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Q167 居住用賃貸建物の仕入税額控除改正

令和2年度の改正により、「居住用賃貸建物」を取得した際の消費税が全額控除できなくなります。
実務上は、非常に影響がある改正になります。

令和2年10月1日以後の「居住用賃貸建物の仕入」から適用となります。

 

1. 消費税「仕入税額控除」の計算方法

(1) 課税売上割合により仕入税額控除は制限される

課税売上割合が95%以上かつ資本金5億円以下の会社については、消費税納税額の計算上、「全額仕入税額控除」が認められています。一方、上記以外の会社は、課税売上割合に応じた仕入税額控除しか認められず、金額が制限されています。

 

課税売上割合が95%以上かつ資本金5億円以下の会社 全額仕入税額控除可
上記以外 課税売上割合に応じて仕入税額控除可

 

(2) 個別対応方式と一括比例配分方式

上記②に該当する場合、「仕入税額控除」の金額を算定する必要があります。
算定方法は、「個別対応方式」と「一括比例配分方式」の2つが認められています。詳しくはQ55をご参照ください。

 

(3) 「居住用賃貸建物取得」にかかる消費税の取扱い

建物等を購入する場合、その目的が販売用・賃貸用にかかわらず、消費税自体は支払います
しかし、購入した不動産を「居住用として賃貸」した場合、賃貸収入は「非課税売上」となります。
つまり、この場合、課税売上割合が低くなり、仕入税額控除額が制限されるケースが多くなります。
 
「居住用賃貸不動産」にかかる仕入税額控除の取扱いを、算定方法ごとにまとめると、以下の通りとなります。

 

個別対応方式 全額控除不可(非課税売上対応課税仕入)
一括比例配分方式 課税売上割合を掛けた金額だけ控除可能

 

2. 改正の背景

居住用賃貸収入(非課税売上)等により課税売上割合が低い場合、課税売上割合を高めることで、仕入税額控除の金額を多くできる余地があるとも言えます。

ここを悪用し、意図的に金地金の売買等(=課税売上)を繰り返し、課税売上割合を引き上げ、仕入税額控除の額を増やす事例が横行しました。

そこで、今回の改正により、購入段階で「居住用不動産購入時の仕入税額控除自体を認めない」という大幅な制約が入ることになりました。

 

3. 具体例

● 居住用賃貸不動産収入 9,000(非課税売上 ⇒ 消費税0)
● 上記以外の課税売上  1,000(消費税 100)
● 居住用賃貸不動産購入 100,000(別途消費税 10,000)
● 上記以外の取引はないものとする

 

(1) 改正前
個別対応方式 一括比例配分方式
課税売上割合 10% 10% (※1)
売上消費税 100 100
仕入税額控除 0 1,000 (※2)(※3)
消費税納付額 100 △900

(※1)課税売上1,000÷(課税売上1,000+非課税売上9,000)=10%
(※2)個別対応方式の場合、居住用賃貸不動産購入にかかる消費税は、非課税売上対応課税仕入となるため、仕入税額控除は0になります。
(※3)一括比例方式 10,000(仕入消費税)×10%(課税売上割合)=1,000

一括比例方式では、居住用賃貸不動産購入にかかる消費税10,000のうち、一部(1,000)が仕入税額控除できる結果、還付額が900生じることになります。

 

(2) 金地金の取引を増加した場合

上記の例題に加えて、金・地金の売買を繰り返し、課税売上がトータル51,000(消費税5,100)になった場合は?

個別対応方式 一括比例配分方式
課税売上割合 85% 85% (※1)
売上消費税 5,100 5,100
仕入税額控除 0 8,500 (※2)(※3)
消費税納付額 5,100 △3,400

(※1)課税売上51,000÷(課税売上51,000+非課税売上9,000)=85%
(※2)個別対応方式での仕入税額控除は、改正前と同様0になります。
(※3)一括比例方式 10,000(課税仕入消費税)×85%(課税売上割合)=8,500

課税売上を増加させた結果、一括比例方式では、居住用賃貸不動産購入にかかる消費税額の大部分(8,500)が仕入税額控除できる結果、還付額が3,400生じることになります。

 

(3) 改正後

課税売上割合にかかわらず、居住用賃貸不動産にかかる仕入消費税10,000は全額控除できなくなるため、消費税納税額は、個別対応方式、一括比例方式どちらを採用しても、答えは同じになります。
例えば、上記金地金の課税売上を増加させた場合の、消費税納税額は以下となります。

個別対応方式 一括比例配分方式
課税売上割合 85% 85%
売上消費税 5,100 5,100
仕入税額控除 0 0 (※)
消費税納付額 5,100 5,100

(※)どちらの方法を採用しても、仕入税額控除はゼロとなり、納税額は同じになる。
 

4. 実務上のインパクト

一般的な会社は、「課税売上」が大半を占めますので、従来は、居住用賃貸不動産購入時の消費税については、「全額仕入税額控除」が可能でした。しかし、今回の改正により、課税売上割合にかかわらず仕入税額控除ができなくなりますので・・例えば、「法人で社宅用に不動産を購入する」場合などにも影響を及ぼします。

 

5. 対象となる賃貸居住建物等

以下のどちらも満たす建物等となります。
 

● 住宅の貸付け等に供しないことが明らかなもの以外の建物
高額特定資産(棚卸資産・固定資産)に該当するもの

販売用や店舗用は、従来から変更はなく、仕入税額控除制度の対象となります。

「住宅の貸付の用に供しないことが明らかな建物」の例示(消基通11-7-1)

● 建物のすべてが店舗等事業用施設である建物
● 旅館やホテルなど
● 棚卸資産として取得した建物

 

6. 対象物の譲渡や住宅貸付以外に転用した場合

取得日が属する事業年度初日から3年以内に転用(事業用の貸付けや譲渡など)した場合は、その時点で仕入控除税額が認められます。

 

7.    参照URL

(財務省、税制改正の大綱)
https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/02taikou_04.htm#04_04

 

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