税金の豆知識
Q168 【徹底比較】法人と個人事業主の「減価償却」の取扱い
公開日:2020/06/10 最終更新日:2020/10/032147view

今回は、固定資産の「減価償却」につき、法人と個人事業主での共通点・相違点を比較してみます。
目次
1. 共通点~建物・建物付属設備・構築物の法定償却方法~
償却方法の届出を行わない場合、建物・建物付属設備・構築物の「法定償却方法」は、個人・法人とも「定額法」で共通しています。(法人税上、平成28年4月1日以降取得建物・建物付属設備・構築物は「定額法」に改正)
法人 | 個人 | |
---|---|---|
建物 | 定額法 | 定額法 |
建物付属設備 | 定額法 | 定額法 |
構築物 | 定額法 | 定額法 |
2. 異なる点
(1) その他の法定償却方法(工具器具、車両、機械装置その他)
建物・建物付属設備・構築物以外の有形固定資産(工具器具・車両・機械装置等)にかかる「法定償却方法」は、法人と個人事業主で異なります。以下の通りです。
法人(法人税) | 個人事業主(所得税) | |
---|---|---|
工具器具備品 | 定率法 | 定額法 |
車両運搬具 | 定率法 | 定額法 |
機械装置その他 | 定率法 | 定額法 |
(2) 償却費の計上が強制か任意か?
償却費の計上については、法人の場合は任意ですが、個人事業主は強制となります。
法人 | 個人事業主 | |
---|---|---|
償却費の計上 | 任意 | 強制 |
① 法人の場合(法31)
「償却費として損金経理をした金額」のうち、償却限度額に達するまでの金額
⇒損金経理を前提に、償却限度額の範囲であれば、計上額は自由(未償却も可)
② 個人事業主の場合(所49)
「政令で定めるところにより計算した金額」
⇒損金経理関係なく、償却限度額が強制的に減価償却として計上されます。
3. 留意事項~個人事業主が法人成りする場合~
例えば、個人事業主時代から保有する「事業用車両」を、法人成りにより法人に引き継ぐ場合を考えます
(償却方法は届出していないものとします)
法人成りした際に「償却方法の届出」を行わないと、法定償却方法が、個人と法人では異なるため、減価償却計算が煩雑になる可能性があります。
個人事業主時代の「定額法」で、法人成り後も継続したい場合は、法人成り後に、「定額法」で届け出をする方が、実務上は楽ですね。
4. 参照URL
(平成28年4月1日以降取得資産の減価償却)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5409.htm