税金の豆知識
Q175【インボイス制度対応】「消費税課税事業者選択届・不適用届」を提出するケース・提出期限は?/出し忘れの影響や対応方法
最終更新日:2022/12/1724302view
消費税に関しては、各種の届出を忘れると適用できない制度が多いため、提出するタイミングを怠ることで、大きな損をする可能性があります。消費税は「届け出」の税金とも言われています。
そこで今回は、消費税関係届出書のうち、「消費税課税事業者選択届」(以下「選択届」と略します)、「消費税課税事業者選択不適用届」(以下「不適用届」と略します)を提出するケースや、提出しなかった場合の影響、実務上の対応方法等につき解説します。
なお、「簡易課税選択届」「簡易課税不選択届」については、Q176をご参照ください。
目次
1. 消費税課税事業者選択届を提出するケース
(1) 内容・提出期限
内容 | 免税事業者が、あえて「課税事業者」を選択する際に提出する書類 |
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提出期限 | 原則:適用したい課税期間開始日の前日まで 例外:事業「開始」(or設立)年度の場合は、開始(設立)事業年度末までOK |
(2) どういった場合に提出?
「消費税課税事業者」の場合、「支払消費税>受取消費税」の状況であえば、消費税が還付されます(簡易課税を除く)。しかし、「免税事業者」の場合は、たとえ上記の状況であっても、消費税還付を受けることができません。
例えば、設立2年間は、原則として「免税事業者」ですので、たとえ支払消費税が多い状況であっても、消費税還付の請求ができません。そこで、消費税免税事業者が、消費税還付を受けることを目的に「選択届」を提出します。
(消費税還付の仕組みについては、Q170をご参照ください)。
具体的には、以下のケースで提出することが考えられます。
初年度の仕入や設備投資が多く、 大きな赤字が見込まれる | 設立間もない会社では、仕入や設備投資等の初期費用が多く、「支払消費税>受取消費税」の状況になる場合があります。こういった場合、「選択届」を提出することで、消費税の還付を受けることが可能です。 |
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輸出売上が多い場合 | 輸出売上は「免税取引」となりますので、消費税を受け取っていません。したがって、「輸出売上」が多い場合は、「支払消費税>受取消費税」となるケースが多いです。輸出売上をメインとする会社は、「選択届」を提出することで、消費税の還付が受けることが可能です。 |
なお、「簡易課税」の場合は、そもそも還付を受けることができませんので、「選択届」を提出する場合は、「原則課税」のケースとなります。
(3) 注意事項
2期間「継続適用」が強制される ⇒2年トータルでの判断が必要 | 「消費税課税事業者」を選択した場合、2期間「継続適用」が強制されます。つまり、初年度に「赤字」や「輸出売上が多い」場合でも、2年目に「黒字」や「国内売上が多く見込まれる」場合は、2年目に納税が発生してしまい。2年トータルで見ると損をする可能性があります。 したがって、「選択届」を提出するかどうか?は、今後2年間の状況を予測したうえで判断する必要があります。 |
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「調整対象固定資産」 「高額特定資産」を取得した場合 | 調整対象固定資産や高額特定資産を取得した場合は、上記の継続適用が、実質3年縛りとなります。 |
2. 消費税課税事業者選択届の届出を忘れた場合の対応
「選択届」の提出期日は、原則として、「適用したい課税期間開始日の前日まで」となっており、実務上、提出を失念するケースも多くみられます。
例えば、翌年、輸出100%になる場合や、大きな設備投資を予定しているにもかかわらず、提出を失念していた場合は、還付を受けることができません。そこで、提出を失念していた場合の対応策として、以下の点が挙げられます。
(1) 課税期間の短縮
「消費税計算期間」は原則として1年単位ですが、3カ月or1か月に課税期間を短縮することが可能です。もし、「届出書」の提出もれに気づいた場合は、「課税期間を短縮」することで、「新たな課税期間の前日」までに「届出書」を提出すると、影響を最小限に抑えることが可能です。ただし、提出後、最低2年間は「短縮課税期間」での申告が強制されます。
(2) 決算期の変更
法人の場合は、決算期を自由に変更できます。もし「届出書」の提出忘れに気づいた場合は、「決算期を変更」することで「届出書」を提出すると、影響を最小限に抑えることが可能です。
3. 「選択届」提出時期の特例
「選択届」の提出時期は、原則として「適用したい課税期間開始日の前日」となります。
ただし、例外的に、事業「開始」年度のほか(消9④、消令20)、以下の例外が認められています。
(1) 2年以上休業状態事業者の特例
2年以上「国内課税資産等の譲渡や課税仕入等がない状態」で、再び事業を開始した場合(課税資産の譲渡等)」、提出時期は、再開した「事業年度末」に延長されます(消基通1-4-8)。
なお、休業期間中、少なからず「課税仕入」がある場合でも、休業期間中に「課税資産の譲渡(=売上)」自体がない場合は、「課税資産の譲渡に直接関係のある課税仕入ではない」ものとして、当該特例の適用が認められるようです(税務通信 NO 3614)。
(2) インボイス制度開始に伴う特例
免税事業者が、適格請求書発行事業者の登録(インボイス制度)を受けるためには、原則として、「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要がありますが、適格請求書発行事業者登録日が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中の場合は、消費税課税事業者選択届を提出しなくても、登録日から課税事業者となる経過措置が設けられています。
4. 消費税課税事業者選択不適用届を提出するケース
(1) 内容・提出期限
内容 | 課税事業者選択事業者が「免税事業者」に戻りたい場合に提出する書類 |
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提出期限 | 原則:適用をやめたい課税期間開始日の前日まで |
(2) どういった場合に提出?
提出する場合は、「選択届」を提出した状況と「逆の状況」になった場合です。課税事業者を選択して「還付」を受けていたが、例えば、国内売上増加等により、「支払消費税<受取消費税」となる場合は、「課税事業者」を選択するメリットがなくなりますので(消費税納税となる)、「不適用届」提出します。
具体的には、以下のケースが考えられます。
黒字になった場合 | 従来は大赤字で「還付」を受けていたが、黒字転換して「消費税納付」の状況に変わる場合は、「課税事業者」を選択するメリットはありません。そこで「不適用届」を提出し、「免税事業者」に戻ります。 |
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輸出売上が少なくなった場合 (=国内売上が多くなった場合) | 従来は輸出が多かったが、国内売上(課税売上)が増加する状況に変わる場合は、「課税事業者」を選択するメリットはありません。そこで「不適用届」を提出し「免税事業者」に戻ります。 |
(3) 注意事項
基準期間の課税売上高が1,000万円超の場合は提出不可 | 基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円超の場合は、そもそも「免税事業者」の選択自体ができませんので、提出できません。 |
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2年縛り終了後でしか提出できない。 | 先ほどお伝えした通り、課税事業者選択には「2年縛り」がありますので、「不適用届」の提出時期に制約があります。 (調整対象固定資産等の取得がある場合は「3年縛り」) |
(4) 「不適用届」提出失念による事故の例
過去に「選択届」を提出していたことを失念し、「免税事業者」と勘違いして消費税申告及び納税を忘れるケースです。「選択届」は、「不適用届」を提出しない限り、その効力は継続しますので、「課税事業者」が続きます。
例えば、以下のケースです。
普段は課税売上高が1,000万円を超えるため「消費税申告」をしているが、たまたま基準期間(2年前)の売上が1,000万以下になった場合
基準期間の課税売上高が1,000万以下になったことで、「免税」になるものと勘違いして「消費税申告書」の提出を忘れるケース。過去に「選択届」が提出されている以上、基準期間の課税売上が1,000万以下の場合でも、「課税事業者」が強制適用されます。
特に、税理士が変わった場合は、過去に提出していた「選択届」の存在を知らず、「消費税申告」を失念してしまうケースがありますので、十分注意しましょう。
5. 参照URL
(消費税課税事業者選択届)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_01.htm
(消費税課税事業者選択不適用届)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/1461_02.htm
(インボイス制度 お問合せの多い質問 令和4年8月31日掲載)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0521-1334-faq.pdf
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