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Q10 【令和7年改正】「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する人は?提出しないとどうなる?/具体的な記載例

最終更新日:2025/09/04

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「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」って何?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

毎年、年末ごろに提出する「扶養控除等申告書」ですが、
アルバイトの方などは・・提出する必要があるのか?提出しなければどうなるのか?疑問を持つ方も多いかもしれません。
令和7年の改正により、令和8年分の「扶養控除等申告書」より、記載内容が大きく改正されています。

今回は、扶養控除申告書を提出する人や、提出しない場合の影響、令和8年分の「扶養控除等申告書」の記載例を中心にお伝えします。

 

1.提出する人

扶養控除等申告書は、給与の支払を受けている場合、「主たる給与の支払者」に提出します。

扶養控除等申告書は、「扶養者」がいる方だけが出すものではありません。
独身の方や、誰かの扶養に入っている方、アルバイトの方でも提出します。

 

2.提出しない場合の影響

扶養控除等申告書を提出しておかなければ、以下のデメリットがあります。
パートの方でも同様です。
 

(1)従業員側のデメリット
毎月の給与から差し引かれる所得税
(源泉徴収税額)が高くなり、手取りが減る
扶養控除申請書に記載された「扶養人数」や「提出有無」によって、給料から毎月差し引かれる所得税(源泉所得税)が決められています。したがって、提出していない場合、毎月の給与から高い所得税が差し引かれ、手取りが減ります(=「乙欄」とよばれる高い所得税率が適用)。
年末調整してもらえない扶養控除等申告書の提出が要件となっていますので、提出をしなければ、年末調整は受けられないことになります。(=確定申告をすることになる)

逆に言うと、年末調整をしてもらいたい場合は、「扶養控除等申告書」の提出義務がある、ということになります。
年末調整されない場合でも、確定申告することで、毎月引かれていた所得税は還付されるケースはありますが、実務上は、確定申告の手間が生じます。

 

(2)法人側のデメリット

従業員から扶養控除等申告書を提出してもらっていない場合、会社は、毎月支払う給与から、「乙欄」と呼ばれる高い税率で「源泉徴収」しなければいけません。仮に、従業員給与から源泉徴収していない場合でも、会社には税務署に所得税を納める義務がありますので、納付しない場合は「不納付加算税」が課税されます。

人数が多い会社の場合、金額もかなり大きくなりますので、パートやアルバイトの方にも、必ず「扶養控除申告書」を書いてもらいましょう。
 

(3)提出しない場合の手取り額の例(令和7年現在)

仮に、給料が10万円(社会保険控除後)とすると・・
 

提出の有無毎月の源泉所得税額
提出していない場合3,600円の所得税が源泉徴収される。
提出している場合扶養が0人の方でも、720円ですみます。

 

3.提出できないケース

「扶養控除等申告書」は、年末調整を受ける「主たる給与」の支払者にだけ提出が可能です。同時に複数の会社には提出できません。
例えば、勤務先が1か所の場合は、その会社に提出すれば終了です。
 

(1)同時に2か所以上で勤務するケース

副業等があり、2か所以上から給与をもらっている場合は、いずれか1つの会社(主たる給与支払者)に、「扶養控除等申告書」を提出します。
この場合、それぞれの会社での取扱いは以下となります。
 

提出した方の会社毎月の給料では安い税額で源泉徴収され、年末調整を受けることが可能。
提出していない方の会社毎月高い税額(乙欄)で源泉徴収され、年末調整は行われません。

なお、同時に2か所で働かれている方は、最終的には、各社から入手した源泉徴収票をもとに、ご自身で「確定申告」が必要となります。
 

(2)前職退職後に、転職した場合は?

副業など、同時に2か所以上で勤務するケースではなく、前職退職後、転職した場合はどうでしょうか?
扶養控除等申告書は、複数同時勤務する場合に、両方に提出できないだけですので、転職した場合は、同時勤務でありません。
したがって、退職後、新たな勤務先(転職先)に「扶養控除等申告書」の提出は可能です。

 

【具体例】
甲は、9月にA社を退職し、10月からB社に就職した場合

 

● 甲は、A社だけでなく、B社にも「扶養控除等申告書」を提出できます。
● 転職後のB社では、年末調整を行ってくれます。なお、B社が年末調整を行うためには、甲の前職A社時代の「収入」を把握する必要がありますので、前職A社の「源泉徴収票」も提出する必要があります(B社は、前職A社の源泉徴収票と、入社後のB社収入を合算し、年末調整を行う)。
 

4.提出時期・扶養年齢判定は、1年後を見越して記載

(1)提出時期

扶養控除等申告書は、原則としてその年の最初(給与の支払を受ける日の前日までに)に提出します。
例えば、令和8年分の「扶養控除等申告書」は、令和8年に入る前、令和7年12月までに提出します。

 

(2)年齢判断は、1年後の12月31日現在で記載

上記の通り、毎年、年末調整の時期に記載する「扶養控除等申告書」は、翌年分を記載している、ということになります。
したがって、例えば、令和7年12月年末調整時に記載・提出する「扶養控除等申告書」の年齢判断は、1年後の令和8年12月末時点の年齢で判断します。ここは間違えやすい論点ですので、注意が必要です。

例えば、16歳以上の「控除対象扶養親族」は、令和8年12月31日現在の年齢が16歳以上、つまり、扶養控除申告書を提出する令和7年12月末時点では、15歳以上のお子様の情報を記載します

なお、年途中で子供が生まれたり、配偶者のパート勤務等、「扶養家族」に異動があった場合は、随時「扶養控除等申告書」を会社に提出しなければいけません。

 

5.扶養控除等申告書の記載例


【令和8年 扶養控除等申告書の記載例】

(1)名前・住所等


 

ご自身のお名前や生年月日等を記載します。なお、住民票と現住所が異なる場合は、「住民票の住所」で良いかと思います。
本来は「生活の本拠」つまり、現住所を記載するのが原則的な考えですが、「居所地」を記載すると、役所によっては「不明者扱い」されるケースもあるようですので。
 

(2)源泉控除対象配偶者


 

配偶者がいる場合に、お名前や生年月日、所得の見積額等を記載します(所得は、現時点で把握できる年間所得額で記載、以下同様)。

ただし、記載できる場合は、以下の要件を満たす場合のみです

 

本人所得要件ご自身の年間合計所得所得900万以下(給与収入換算 1,095万円以下)の方
配偶者所得要件生計を一にする配偶者で、配偶者の年間合計所得95万円以下(給与収入換算160万円以下)の方
(=源泉控除対象配偶者

【所得は収入と異なる】
所得は、収入と異なります。給与所得の場合は「給与収入ー給与所得控除」で算定します。
給与収入190万円までは、65万円の給与所得控除が認められます。
例題の場合は、給与収入160万の配偶者を前提に、160万円-65万円=95万円で記載しています。
「給与所得控除」については、Q100をご参照ください。
 

(3)源泉控除対象親族


 

次の2つに当てはまる「親族」がいる場合に記載します。
「源泉控除対象扶養親族」については、本人の所得要件はありません

控除対象扶養親族(※1)
(給与収入換算 123万円以下)
本人と生計を一にする16歳以上の親族で、年間合計所得58万円以下の方
特定親族のうち、年間合計所得58万円超100万円以下の方(※2)
(給与収入換算 123万円超165万円以下)
本人と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、年間合計所得58万円超100万円以下の方

 

(※1)70歳以上の同居扶養親族(同居老親等)、19歳以上23歳未満の扶養親族(特定扶養親族)は、「所得控除」の額が異なりますので、該当する箇所に☑を入れます。

(※2)特定親族とは、19歳以上23歳未満の親族で、年間合計所得が58万円超123万円以下(給与収入換算 123万円超188万円以下)の方です。
「特定親族」は、年齢の点では、「特定扶養親族」と同じですが、対象となる方の「所得の金額が異なる」点に注意が必要です。
また、「扶養控除等申告書」に記載する特定親族は、「年間合計所得の上限が100万円」となっている点にも注意です。
該当する場合は、☑を入れます。

 

(4)障害者・寡婦・ひとり親又は勤労学生

 
障害者ひとり親・配偶者と死別・離婚された方・学生をしながらお仕事されている方は、こちらに☑します。
 

(5)他の所得者が控除をうける扶養親族等


 

自分以外の親族等が、「扶養控除等」を受ける親族を記載します。
 

例えば、夫婦共働きの場合で、夫が長男を扶養控除、妻が次男を扶養控除の対象とする場合、夫の「扶養控除等申告書」では、妻側で「扶養控除」の対象とする次男のお名前を記載します。
 

(6)住民税に関する事項

 

16歳未満の扶養親族16歳未満の「扶養親族」の情報を記載します。16歳未満の方は、所得税上の扶養控除はできませんが、住民税上の「非課税限度額」の計算に影響があります。
退職手当等を有する配偶者・扶養親族・特定親族(※)配偶者や扶養親族に退職所得がある場合に記載します。退職所得は、所得税上は扶養親族等判定時の「合計所得金額」に含まれますが、住民税上は、退職所得を含めず扶養判定が行われるため、所得税と取扱いが異なります。したがって、ここでは、配偶者等の退職所得を除いた所得見積額を記載します。

(※)なお、当該欄は、扶養親族や配偶者に「退職所得」がある場合に、記載する箇所となります。したがって、例えば、納税者本人の「合計所得金額」が、退職所得を除いて1,000万円以下となった結果、配偶者控除等の適用を受けられるケースなどは対応できません。この場合は、別途住民税申告で更正請求を行います。

6.参照URL

扶養控除等申告書https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_01.htm

 

 

7.YouTube

 

 

YouTubeで分かる「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは?記載方法は?」
 

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
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「給与所得の扶養控除等申告書」の全てがわかるPDF

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