税金の豆知識
Q244 【仕訳例付】特許権の税務処理をわかりやすく解説/取得・売却・減価償却・ライセンス料の会計処理/従業員への報奨金等の税務上の取扱い
最終更新日:2026/04/3043view

法人で、新しい技術の発明やノウハウなどを創作した場合に、「特許権」を出願するケースがあります。また、他人が取得した「特許権」を購入するケースもあります。
「特許権」として登録を行えば、当該発明等を一定期間独占することができるため、当該技術等につき、他社は無断で製造・販売・使用することができなくなります。したがって、競合排除による価格競争力の確保や、信用面の向上などが期待できます。
今回は、こういった「特許権」の取得・売却・減価償却・ライセンス料に関連する税務上の処理を中心にお伝えします。
目次
1. 特許権とは
特許権とは、発明やノウハウ等を独占的に占有・実施できる権利で、法律上は、20年の存続期間が認められています。
税務上は無形固定資産(工業所有権)として、貸借対照表の固定資産の部に計上し、耐用年数8年で減価償却を行います。
2. 取得時の税務処理(購入・自社開発)
取得時の会計処理は、他人から購入した場合と、自社開発した場合で異なります。以下の通りです。なお、他の固定資産と同様、単価が少額なものは、少額減価償却資産の特例の適用が可能です。
(1) 他人から購入した場合
購入代金等につき、無形固定資産の「特許権」で計上します。
特許権の取得原価は、他の固定資産と同様、以下の式で算定します。詳しくは、Q157をご参照ください。
取得原価 = 購入代金 + 付随費用 (運賃・関税等)
なお、国内特許権の取得は、消費税課税取引となります。
(2) 自社開発の場合
研究開発段階の費用は、原則として支出時の費用となります。また、特許出願・登録のための支出についても、ほとんどが支出時の経費にできますので、結論的には、「資産で計上」するものは少なくなっています。まとめると、以下の通りです。
| 時期 | 内容 | 科目 |
|---|---|---|
| 研究開発段階 | 実験材料費、人件費、試作費など | 研究開発費 繰延資産(開発費に該当するもの)⇒ 任意償却OK |
| 出願前 | 先行技術調査費用・調査手数料(弁理士) | 支払報酬等(課税) |
| 出願時~審査中 | 特許庁への出願料(印紙代) | 租税公課(不課税)(※) |
| 出願審査請求料(印紙代) | 租税公課(不課税)(※) | |
| 弁理士への出願書類手数料 拒絶時の手数料等 |
支払報酬等(課税)(※) | |
| 意見書・補正書の作成費用(弁理士) | ||
| 出願時~審査中 | 特許設定登録料 登録免許税(特許庁) |
租税公課(不課税)(※) |
| 弁理士への成功報酬 | 支払報酬等(課税)(※) | |
| 登録後 維持~更新 |
年金(特許料) | 租税公課(不課税) |
| 特許庁への更新料(印紙代) | 租税公課(不課税) | |
| 更新登録手数料(弁理士) | 支払報酬等(課税) |
(※)あくまで「経費に算入することができる」規定ですので、「特許権」として資産計上することも可能です。
3. 期末の減価償却
「特許権」として資産計上したものについては、税務上は8年、定額法で償却を行います(月割償却)。
4. 売却時の税務処理
特許権売却時に生じた売却益(売却額-帳簿価額)については、法人税、所得税、消費税とも課税対象となります。
なお、個人が保有する特許権の売却は、「譲渡所得」(総合課税)で認識します。譲渡所得については、最大50万円の特別控除や、長期譲渡の場合、1/2できる規定があります(発明者本人が売却する場合には、保有期間にかかわらず「長期譲渡所得」となり、その所得金額の1/2のみが課税対象となる特例があります)。
5. 取得・売却・減価償却仕訳の具体例
【具体例】 法人 3月決算
● 2026年4月に特許権を外部から880(税込)で購入した。
● 2027年4月に、上記の特許権を880(税込)外部に売却した。
● 売却年度(2028年3月期)の月割減価償却は省略する。
| 借方 | 貸方 | |||
|---|---|---|---|---|
| 取得時(2026年4月) | 取得時(2026年4月) 特許権(無形固定資産) 仮払消費税 |
800 80 |
現金 | 880 |
| 期末(2027年3月) | 減価償却費(※) | 100 | 特許権 | 100 |
| 売却時(2027年4月) | 現金 | 880 | 特許権 固定資産売却益 仮受消費税 |
700 100 80 |
(※)800÷8年=100
6. 特許権使用権(ライセンス料・ロイヤリティ)の税務処理と源泉徴収
特許権を保有する第三者から、特許の利用を許諾され、当該使用料を支払うことがあります(ロイヤリティ・ライセンス料)。例えば、親会社が保有する「特許権」を子会社が利用する場合、子会社は親会社に一定の使用料を支払います。当該「使用料」の税務処理は、以下の通りです。
(1) 権利金等として一時に支払う場合
「税務上の繰延資産」に該当します。「役務提供を受けるための権利金等」として、原則5年(5年内更新で、更新時に一時金を払う場合はその更新年数)で償却します。
勘定科目は「長期前払費用」で計上します。
(2) 一時金ではなく、契約期間に応じて毎月支払う場合
支払った際に、経費で計上します。
勘定科目は「ロイヤリティ」「支払手数料」などが一般的です。
なお、相手が国内居住者であれば源泉徴収は不要ですが、非居住者・海外法人の場合は「使用料」として20.42%の源泉徴収が必要になります。
(3) 消費税の取扱い
国内ライセンス料は、消費税課税取引となります(海外ライセンス料は対象外)。
【ご参考 ライセンサー側(権利者)】
特許権使用料(ロイヤルティ)は、収入として課税対象となります(個人の場合は事業所得・雑所得として総合課税の対象)。
7. 使用人発明・報奨金の取扱い
(1) 特許取得に伴う報奨金・補償金の取扱い
従業員等が職務上発明した場合、会社が従業員から特許権を承継して、従業員に報奨金等を支給するケースがあります。また、特許を受ける権利が、最初から会社に帰属する「使用者原始帰属制度」の場合も、従業員に補償金を支払うケースがあります。こういった「報奨金」や「補償金」の税務上の取扱いは、以下となります。
| 承継する場合(譲渡) ⇒従業員への報奨金 |
従業員側 | 譲渡所得(譲渡一時金) ⇒ 権利承継後の報奨金は雑所得。 |
|---|---|---|
| 法人側 | 特許権(消費税課税取引) | |
| 使用者原始帰属制度(譲渡×) ⇒従業員への出願補償金・登録補償金等(※) |
従業員側 | 雑所得(源泉徴収不要) |
| 法人側 | 特許権(消費税課税取引) |
(※)実績補償金(特許利用収益に応じて支出する成功報酬的なもの)は、収益計上年度の損金に算入OK(期間対応)。
(2) 特許に至らない工夫等の報奨金
特許等には至らない工夫等の報奨金に関する税務上の取扱いは、以下となります。給与所得に該当する場合は、原則として源泉徴収が必要となります。
| 通常職務の範囲内の場合 | 給与所得 |
|---|---|
| 通常職務の範囲外の場合 | 一時所得(一時払いのケース)or 雑所得(継続払いのケース) |
8.ご参考~イノベーションボックス税制~
自社開発した特許権等を、譲渡or貸付(ライセンス収入)した場合、当該譲渡、ライセンスで生じた所得の30%相当額を損金の額に算入できる制度です。
青色申告法人で、2024年4月1日以降に登録された特許権等が対象になります。
9. 参照URL
工業所有権譲渡所得
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3152.htm
使用人等の発明等に係る報償金等
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/04/10.htm
No.2592 使用人等の発明に対して報償金などを支給したとき
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2592.htm
イノベーションボックス税制
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5923.htm
10. YouTube
Coming soon
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