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Q155【手取り増加】源泉所得税が安くなる「源泉控除対象配偶者」「源泉控除対象親族」の数え方は?/年末調整で還付されるケース/令和8年以降

最終更新日:2025/09/18

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Q155 源泉所得税算定時の「扶養親族等の数」の数え方

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

給与にかかる所得税は、原則として、毎月もらう給与から、あらかじめ「源泉徴収」されています。
こういった給与から天引きされる「源泉所得税」は、どのように算定されるのでしょうか?

毎月徴収される「源泉所得税」は、各人の①給与等の金額と②扶養親族等の数で決まりますが、税制改正により、令和8年以降の「給与手取り額」への影響があります。
また、年末調整の際には、源泉徴収されていた金額が戻ってくるケースもあります。

今回は、毎月の給与から徴収される「源泉所得税」算定時の「扶養親族等」の数え方や、年末調整等との関係につきお伝えします。

 

1. 「扶養親族等の数」が違うと、手取りが全然違う!

毎月徴収される、源泉所得税は、①毎月のの「社会保険料控除後の給与等」と、②「各人の扶養親族等の数」によって決まります。
①の「社会保険料控除後の給与等」は、毎月支給される金額によって変わりますが、②の「扶養親族等の数」は、期中に変更がない限り、前年末に提出した「扶養控除等申告書」から1年間固定で算定します。
 

例えば、給与34万円(社会保険料控除後)の場合を例にします(下記表 緑マーカー部分)。
「毎月の源泉徴収税額」は、「扶養親族等の数」が0人の場合は10,750円に対し、6名の場合は0円です。
年間に換算すると129,000円の差が生じます。

【令和8年以降 源泉徴収税額表】

 

同じ額の給与でも、「扶養親族等の数」が多くなれば、「毎月の源泉徴収税額」が少なくなります。
「扶養親族等の数」が1人違うだけで、手取額がだいぶ変わってくるのが分かるかと思います。
 

2. 源泉所得税計算時の「扶養親族等の数」とは?

では、上記の「扶養親族等の数」とはどういった方を指すのでしょうか?
「扶養親族等の数」は、原則として、「扶養控除等申告書」に記載された、①源泉控除対象配偶者+②源泉控除対象親族の合計人数となります。

令和8年により、「源泉控除対象親族」という、新たな定義に改正されております(改正前は「控除対象扶養親族」)。
従来の「控除対象扶養親族」に加えて、「特定親族(一部)」も記載できるようになりました。

それぞれの内容をまとめると、以下の通りです。

源泉控除対象配偶者生計を一にする配偶者で、年間合計所得が95万円(給与収入換算160万円)以下の方 
本人の合計所得金額は、900万円(給与収入換算1,095万円)以下の要件あり)
源泉控除対象親族控除対象
扶養親族
生計を一にする16歳以上の親族で、年間合計所得が58万円(給与収入換算123万円)以下の方
特定親族
(一部)
生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、年間合計所得が58万円超100万円以下(給与収入換算123万円超165万円以下)の方

(※)親族は、「6親等内の血族及び3親等内の姻族」を指します。
また、「特定親族」とは、本人と生計を一にする、19歳以上23歳未満の親族で、年間合計所得が58万円超123万円以下(給与収入換算123万円超188万円以下)の方を指します。
 ⇒上記の「源泉控除対象親族」に記載できる方は、「特定親族」のうち、一部ということになります。
 

結論ですが、改正により、従来記載できなかった「特定親族(一部)」が「扶養親族等の数」にカウントできるようになり、改正前と比較して、毎月の給与手取額が増加する方も出てくると思います。

 

3. 扶養親族等の数 算定の具体例

本人、配偶者、お子様、それぞれの状況ごとに「扶養親族等の数」は異なってきます。
「具体例」は、以下の通りです(収入は、すべて「給与収入」とします)

本人配偶者お子様扶養親族等の数摘要
奥様お子様合計
年収800万円専業主婦18歳(収入ゼロ)すべて満たす
年収1,500万円専業主婦18歳(収入ゼロ)×本人所得基準満たさない
年収800万円専業主婦10歳(収入ゼロ)×お子様16歳未満
年収800万円年収200万円19歳(収入150万円)×奥様・・所得基準満たさない
お子様・・源泉控除対象親族に該当
年収800万円年収200万円19歳(収入180万円)××奥様・お子様どちらも満たさない

 

4. 「扶養親族等の数」に加算できるケース

上記の他、「扶養親族等の数」に人数を「加算できる」場合があります。次の2つの場合です。

 

(1) 本人が、障害者・ひとり親・寡婦・勤労学生の場合

該当するごとに「扶養親族等の数」に1人ずつ加算します。
なお、障害者については、一般障害者・特別障害者の区分は関係なく、一律1人加算となっています。

障害者控除所得税法上の「障害者」に該当する場合に認められる所得控除です。
⇒本人の所得要件はありません
ひとり親控除未婚等で、生計を一にする子がいる「ひとり親」に認められる「所得控除」です。男性・女性に関わらず、広く「未婚(独身)」の方を対象に認められます。
⇒ 生計を一にする子の総所得金額58万円以下、本人の合計所得金額500万円以下の要件があります。
寡婦控除「ひとり親」に該当せず、夫と、死別or離婚等した女性に認められる「所得控除」です。女性しか認められず、未婚だけでなく、過去の婚姻関係が必要となります
⇒ 離婚・死別によって要件は異なります。
勤労学生控除本人が、一定の学校に通いながらアルバイト等で働く場合に認められる「所得控除」です。
⇒本人の合計所得金額85万円(給与収入換算150万円)の制限があります。

【具体例】
本人が「障害者」かつ「ひとり親」の場合

 
⇒該当するごとに1人ずつ加算 ⇒ 「2人」加算します。
 

(2) 本人の同一生計配偶者扶養親族に、障害者・同居特別障害者が含まれる場合

 
該当するごとに「扶養親族等の数」に1人ずつ加算します。
ただし、「同居特別障害者」の場合は、2人加算が可能です(通常の障害者・特別障害者の場合は、1人加算のみ)

 

同一生計配偶者とは本人と生計を一にする配偶者で、年間合計所得が58万円以下の方。
「源泉控除対象配偶者」とは異なり、納税者本人の所得制限はありません
(配偶者の年間合計所得も異なる)。
扶養親族とは本人と生計を一にする親族で、年間合計所得58万円(給与収入換算123万円)以下の方
⇒16歳以上に限定されていない点、「控除対象扶養親族」と異なります。
したがって、例えば障害者の場合は、16歳未満でも1人加算できます。
同居特別障害者とは特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族で、納税者自身、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの同居を常としている方。

 

【具体例】
控除対象扶養親族が「同居特別障害者」の場合

 ⇒ 控除対象扶養親族で1人 + 同居特別障害者で2人加算し、合計3人となります。
 

5. 年末調整で還付されるケースもある

前述の「源泉控除対象配偶者」や、「源泉控除対象親族」ですが、実は、所得税上の「配偶者控除」「扶養控除(特定親族特別控除)できる方の方が範囲が広くなっています。

つまり、源泉所得税の計算では反映できなかった「配偶者や親族等」についても、年末調整では配偶者控除、特定親族として計算され、最終的には税額が還付されることになります。
 

(1)配偶者控除ができる「控除対象配偶者」と「源泉控除対象配偶者」の違い

配偶者控除の対象となる「配偶者」(控除対象配偶者)と、源泉所得税の計算でカウントされる配偶者(源泉控除対象配偶者)を比較すると、以下の通りです。

 

種類定義
配偶者(特別)控除の配偶者
(年末調整の対象)
生計を一にする配偶者で、年間合計所得が133万円(給与収入換算201.6万円)以下
本人の合計所得 1,000万円(給与収入換算1,195万円)以下の要件あり。
源泉控除対象配偶者
(源泉所得税の対象)
生計を一にする配偶者で、年間合計所得が95万円(給与収入換算160万円)以下の方
本人の合計所得金額 900万円(給与収入換算1,095万円)以下の要件あり。
同一生計配偶者
(源泉所得税の加算対象)
生計を一にする配偶者で、年間合計所得が58万円以下の方。
本人の所得制限なし。

上記を比較すると、「源泉控除対象配偶者」ではないが、年末調整で「配偶者控除」の対象となる方は以下となります。

① 本人の合計所得 900万超1,000万以下 (給与収入換算1,095万円超1,195万円以下)の方 or
② 配偶者の合計所得 95万円超133万円以下(給与収入換算160万円超201.6万円以下)の方

年末調整時には、「配偶者控除等申告書」を提出します。
上記に該当する方は、給与支払時に天引きされていた所得税が、年末調整において還付されることになります。
 

(配偶者の概念の比較図)

 

(2)特定親族と、源泉所得税が安くなる「特定親族」の比較

特定親族特別控除の対象となる「特定親族」と、源泉所得税の計算でカウントされる特定親族(源泉控除対象親族)を比較すると、以下の通りです。

種類定義
特定親族
(年末調整の対象)
本人と生計を一にする、19歳以上23歳未満の親族で、年間合計所得が58万円超123万円以下(給与収入換算123万円超188万円以下)の方
 
源泉控除対象親族
(源泉所得税の対象)
本人と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族で、年間合計所得が58万円超100万円以下(給与収入換算123万円超165万円以下)の方 ⇒上記の「特定親族」のうちの一部

上記を比較すると、「源泉控除対象親族(特定親族)」ではないが、年末調整では「特定親族」として、「特定親族特別控除」が可能な方は以下となります。

19歳以上23歳未満の「親族」のうち、
年間合計所得金額が「100万円超123万円以下」 (給与収入換算165万円超188万円以下)の方

年末調整時には、「特定親族特別控除等申告書」を提出します。
上記に該当する方は、給与支払時に天引きされていた所得税が、年末調整において還付されることになります。

 

6. 参照URL

(令和8年分源泉徴収税額表)
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/zeigakuhyo2026/01.htm

(令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について)
https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025kiso/index.htm

 

7.YouTube

 

YouTubeで分かる「給与源泉所得税計算時の扶養親族等の数え方」
 

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

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兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
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