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Q189【令和7年改正反映】 年金受給者等高齢者を扶養している場合に優遇される「所得控除」の種類は?/高齢者自身に適用しやすい所得控除は?

最終更新日:2025/09/06

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No189【令和7年改正反映】扶養控除や配偶者控除が可能な条件は?要介護認定は障害者控除? 高齢者を対象に優遇される「所得控除」の内容とは?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

高齢になると、一般的に、「医療費」や「介護費用等」の支出が多くなるケースが多いです。
こういった高齢の「親」や「配偶者」などを扶養している場合、「金銭的な負担」が多くなることが予想されます。
そこで、税務上、「高齢の親族等」を扶養する場合は、通常よりも優遇された「所得控除」が認められています。

また、医療費控除など、高齢者自身に関連が深い(=適用しやすい)「所得控除」もあります。

今回は、高齢者を扶養する場合に優遇される「所得控除」の種類や、高齢者自身に適用しやすい「所得控除」をご紹介します。

 

1. 扶養控除

(1) 扶養控除とは?

扶養控除とは「合計所得金額が58万円以下」(給与収入換算123万円、年金収入換算118万円(65歳未満)、168万円(65歳以上))の扶養親族がいる場合に認められる「所得控除」です。

扶養控除ができる70歳以上の「扶養親族」は、「老人扶養親族」と呼ばれ、一般の扶養控除よりも高い所得控除額が可能です。また、そのうち、「同居老親等」は、通常よりも高い所得控除額が認められています。
以下の通りです(カッコ書きは住民税の所得控除額を示します、以下同様)。

種類控除額
老人扶養親族(70歳以上)同居老親等以外48万円(38万円)
同居老親等58万円(45万円)
一般の控除対象扶養親族(16歳以上)38万円(33万円)
上記中、19歳~23歳未満(特定扶養親族)最大63万円(最大45万円)
(2) 同居老親等の判定

「同居老親等」とは、老人扶養親族のうち、納税者・その配偶者の「直系の父母・祖父母など」で、納税者・その配偶者と常に同居している人をさします。
「同居老親等」は、常に同居している必要がありますが、本人だけでなく、配偶者が同居している場合も同居と認められます。例えば、「夫の親」と「夫」が別居の場合でも、「配偶者の妻」が「夫の親」と同居していれば、夫の「同居老親等」と認められます(子供が「夫の親」と同居している場合は、子供の「同居老親等」となり、夫の同居老親等にはならない)

ただし、老人ホームに入居している場合は「同居要件」満たしません。一方、入院については、たとえ長期間入院している場合でも「同居」に該当します。

 

2. 配偶者控除・配偶者特別控除

(1) 配偶者控除

配偶者控除とは、「合計所得金額が58万円以下」(給与収入換算123万円、年金収入換算118万円(65歳未満)、168万円(65歳以上))の配偶者がいる場合に認められる所得控除です。配偶者控除ができる70歳以上の配偶者は、「老人控除対象配偶者」と呼ばれ、一般の配偶者控除よりも高い控除額となっています。

配偶者控除の金額は、扶養控除と異なり、一律ではなく、本人の合計所得(年金等)に応じて、3種類に分かれます。以下の通りです。

【配偶者控除額】

本人の合計所得金額老人控除対象配偶者
控除額
一般の控除対象配偶者
控除額
900万以下48万円(38万円)38万円(33万円)
900万超950万円以下32万円(26万円)26万円(22万円)
950万円超1,000万円以下16万円(13万円)13万円(11万円)
(2) 配偶者特別控除

一方、配偶者特別控除は、「合計所得金額が58万円超133万円以下」の配偶者に認められる所得控除です。合計所得の金額に応じて、控除額は段階的に減少していきます。こちらの「配偶者特別控除」については、年齢により「特別に定められた規定」はないため、70歳以上の方も、70歳未満の「一般の配偶者特別控除」と同じ規定となります。

 

3. 医療費控除

(1) 医療費控除とは?

医療費控除は、「年間支払医療費」が、「一定額」を超えた場合に認められる所得控除です。
高齢者は、通常、「医療費」の支出が多くなるため、高齢者自身の「所得控除」として活用しやすい所得控除です。

また、「医療費控除」は、本人の分だけでなく、納税者と「生計を一」にする親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)の医療費も対象となります。したがって、例えば、扶養している親や配偶者の医療費を支払った場合でも、「生計が一」であれば、ご自身の「医療費控除」として活用できます。
 

(2) 生計を一とは?

「生計を一」とは、「財布が一緒」という意味で、必ずしも「扶養している・同居している」必要はありません。例えば、単身赴任等で別居していても、仕送り等、日常生活費を負担している場合は「生計を一」となります。
 

(3) 医療費控除の額

医療費控除の金額は、「医療費支出額 - 10万円」となります。
(総所得金額等が200万未満の場合は、総所得金額等×5%を超えた金額)
上限は、年間支出額200万円まで認められ、公共交通機関の交通費も、医療費控除の対象となります。

 

4. 障害者控除

(1) 障害者控除とは?

障害者控除とは、所得税法上の「障害者」に該当する場合に認められる所得控除です。
高齢者の場合、「障害をお持ちの方」も多くなりますので、高齢者自身の「所得控除」として活用しやすい所得控除です。

また、「障害者控除」も、「医療費控除」と同様、本人が障害者の場合だけでなく、納税者と「生計を一」にする親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)が障害者の場合も適用できます。したがって、例えば、扶養している親や配偶者が障害者の場合でも、「生計が一」であれば、ご自身の「障害者控除」として活用できます。
 

(2) 所得要件等

本人が障害者の場合、所得要件はありませんが、生計を一とする親族が障害者の場合は、親族の「合計所得金額が58万円以下」(給与収入換算123万円、年金収入換算118万円(65歳未満)、168万円(65歳以上))の所得要件があります。

また、青色事業専従者給与を受け取っている場合、障害者控除と併用はできません。
なお、親族の年齢要件はありませんので、「16歳未満の扶養親族」が障害者の場合も、本人の所得控除が可能です。
 

(3) 障害者控除の額

下記の3種類に区分されます。
特別障害者とは、精神or身体に重度の障害がある人を指し、一般の障害者と区別されています。
また、同居特別障害者とは、特別障害者である控除対象配偶者や扶養親族で、納税者本人、配偶者、生計を一にする親族のいずれかとの「同居を常況」としている人です。

種類控除額
障害者27万円(26万円)
特別障害者40万円(30万円)
同居特別障害者75万円(53万円)

【同居特別障害者と同居老親の範囲の違い】

「同居特別障害者」は、「扶養控除」で認められる「同居老親」よりも、同居する親族の範囲が広くなっています。同居老親等の場合は、「納税者本人・配偶者が同居」する場合のみ認められますが、「同居特別障害者」の場合は、「生計一の親族が同居」する場合も認められます。
ただし、同居老親と同様、長期入院は「同居」と認められますが、老人ホーム入居の場合は、「同居」と認められません。

(4) ご参考~障害者控除の対象~

障害者控除の対象となる人は、以下となります。

内容特別障害者に該当する場合
精神上の障害精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態にある人常に特別障害者
知的障害者児童相談所や精神保健福祉センター、精神保健指定医等の判定により、知的障害者と判定された人重度の知的障害者は、特別障害者
身体障害者
(身体障害者福祉法)
身体障害者手帳に、身体上の障害で記載がある人障害の程度1級又は2級の人は特別障害者
精神又は身体に障害がある65歳以上の方で
上記①~③に準ずる方
市町村長等の認定を受けている方特別障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている人
精神障害者
(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)
精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人障害等級1級の人
常に寝たきりで複雑な介護が必要な方12月31日の現況で6ヶ月以上身体障害により寝たきりの状態で、複雑な介護を必要とする人(介護を受けなければ自ら排便等をすることができない状態)常に特別障害者
戦傷病者
(戦傷病者特別援護法)
戦傷病者手帳の交付を受けている人恩給法に定める特別項症から第3項症までの人
原子爆弾被爆者
(原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律)
厚生労働大臣の認定を受けている人常に特別障害者

● ⑥の「複雑な介護を要する方」ついては、市町村長から認定書の交付を受けることも可能です
(厚生労働省・平成14年8月1日事務連絡)
● なお、「要介護認定」は、介護保険法により認定されるものであり、税法上の「障害者控除」には直接関係しません。ただし、上記④「市町村長等の認定」を受ける際に、「介護保険法の要介護認定」が要件となる場合が多いため、実務上は「要介護認定」を受けている方は、市町村長の認定を通じて、所得税上の「障害者控除対象者認定」を受けることになります。

 

5. その他の所得控除

上記の他、高齢者の場合に該当しやすい所得控除や、忘れやすい所得控除は以下となります。
 

(1) ひとり親・寡婦控除

ひとり親控除・寡婦控除は、納税者が「ひとり親」の場合や、配偶者と死別・離婚している場合に認められる控除です。高齢になると、配偶者と死別等されるケースも多くなります。こういった場合に、ひとり親控除や寡婦控除が利用できるケースもあります(寡婦控除は女性のみ)。

種類控除額
ひとり親控除35万円(30万円)
寡婦控除27万円(26万円)
(2) 社会保険料控除

社会保険料控除とは、介護保険、国民健康保険(後期高齢者医療保険含む)、国民年金等を支払っている場合に認められる所得控除です。「年間支払額の全額」が所得控除可能です。
年金受給者の場合、年金受給時に介護保険料等が天引きされているケースがありますので、確定申告の際には、年金受給時に天引きされている社会保険を、忘れずに記載します。

 

6. ご参考~所得控除の種類~

所得税上、以下の種類の「所得控除」が定められています(それぞれの詳細な制度内容は、リンク先をご参照ください)。

種類認められるケース所得控除額(所得税)
基礎控除誰でも認められる所得控除0円~最大95万円
扶養控除合計所得58万円以下の扶養親族がいる場合年齢等に応じて異なる。最大63万円 
特定親族特別控除19歳~23歳未満で合計所得58万円超133万円未満の
親族がいる場合
3万円~最大63万円 
配偶者控除合計所得58万円以下の配偶者がいる場合● 70歳未満 最大38万円
70歳以上  最大48万円
配偶者特別控除合計所得58万円超133万円以下の配偶者がいる場合1万円~最大38万円
社会保険料控除・
小規模企業共済掛金等控除
社会保険料等の支払がある場合
(国民健康保険、国民年金、厚生年金、健康保険
小規模企業共済等掛金、確定拠出掛金等)
年間支払金額
生命保険料・
地震保険料控除
生命保険、介護医療保険、個人年金、地震保険などの支払がある場合● 生命保険料控除 最大12万円
● 地震保険料控除 最大5万円
医療費控除医療費の支払がある場合上限200万円
障害者控除本人やその親族が、障害者の認定を受けている場合27万円~75万円
寡婦・ひとり親控除ひとり親や、配偶者と死別・離婚されている場合27万円or35万円
寄付金控除ふるさと納税等の寄付がある場合特定寄付金額 - 2,000円
(上限あり)
勤労学生控除本人が勤労学生に該当する場合27万円
雑損控除災害や盗難、横領による損失がある場合以下いずれか多い方
● 損失額-(総所得金額等×10%)(上限あり)
● 災害関連支出-5万円

 

7. 参照URL

(No.1182 お年寄りを扶養している人が受けられる所得税の特例)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1182.htm

(「同居」の範囲(長期間入院している場合))

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/32.htm

(No.1184 扶養家族に寝たきりの老人がいるときの控除額)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1184.htm

(障害者控除)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1160.htm

 

8. YouTube

 

YouTubeで分かる「【年金受給者】所得控除の種類は? 高齢者に優遇される「所得控除」の内容とは?」
 

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
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