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Q198 【令和5年度】公的年金等の受給者の扶養親族等申告書とは?書き方は?/提出しないとどうなる?/源泉徴収税額は?

最終更新日:2023/11/11

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Q198 【令和5年度】公的年金等の受給者の扶養親族等申告書とは?書き方は?/提出しないとどうなる?/源泉徴収税額は?

65歳以上の方は、毎年9月ごろ、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」という書類がお手元に届きます(以下、「扶養親族等申告書」と略します)。
毎年、「日本年金機構」から送付され、必要事項を記載の上、期日までに提出する書類です。
今回は、「扶養親族等申告書」の提出が必要な方や、提出しない場合の影響をお伝えし、具体的な記載方法をご紹介します。

 

1. 公的年金等に税金は課税される?

(1) 公的年金等とは?

公的年金等とは、国民年金、厚生年金、共済年金のほかに、過去に勤務した会社などから支払われる年金等(適格退職年金契約の退職年金等)を指します。

 

(2) 課税の有無

公的年金等については、原則として所得税等が課税されます(公的年金等の雑所得)。ただし、その収入額全額に課税されるわけではありません。年金収入に応じた「公的年金等控除」や、各種の所得控除(基礎控除、扶養控除等)が認められています。これらを差し引いて所得がゼロ以下となる場合は、所得税は課税されません。
なお、障害年金、遺族年金は所得税非課税となります。

 

(3) 源泉徴収

公的年金等を受け取る場合、原則として、受取額から一定の控除額を差し引いた金額に対して、5.105%の金額が源泉徴収されます。

 

2. 「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」とは? 提出が必要な人は?

(1) 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書とは?

「公的年金等の受給者の扶養親族申告書」とは、毎月受け取る年金から天引きされる「源泉所得税」の金額を決定する書類です。

 

(2) 提出する効果・メリット

扶養親族等申告書を提出することで、4つの所得控除(①配偶者控除 ②扶養控除 ③障害者控除 ④寡婦・ひとり親控除)を受けることができ、その結果、毎月の源泉徴収税額が安くなります。
逆に、提出しない場合は、上記の所得控除が受けられないため、源泉徴収される金額が多くなります。この場合は、ご確定申告をしないと還付を受けることができなくなるため、手間が生じます。
なお、給与所得があり、勤務先に扶養控除等申告書を提出済の場合は、「扶養親族等申告書」は提出できません。

 

(3) 提出が不要な方

以下の場合は、扶養親族等申告書の提出の必要はありません。

公的年金等控除を差し引いて
基礎控除額(48万円)以下に収まる方
下記の方は、所得税が課税されませんので、扶養親族等申告書が送付されません(収入が公的年金のみの方)。
● 65歳未満・・年金収入108万円以下の方
● 65歳以上・・年金収入158万円以下の方
各種の控除がない方下記の要件すべて満たす方は、源泉徴収税額に影響ありませんので、提出不要となります。
● 受給者本人が障害者寡婦・ひとり親に該当しない
控除対象配偶者 or扶養親族がいない
● 配偶者or扶養親族に退職手当を受ける見込みの方がいない。
(4) 確定申告している人は提出不要?

扶養親族等申告書を提出することで、毎月の源泉徴収税額が少なくなりますが、所得税の計算は完全ではありません。例えば、医療費控除や保険料控除など「その他の所得控除」がある場合は、「扶養親族等申告書の提出」しても引ききれない控除がありますので、確定申告することで、所得税が還付されるケースが多いです。
逆に言うと、確定申告する方は、必ずしも提出しないといけない資料ではありません。

 

3. 源泉徴収税額は?

(1) 提出有無により、源泉徴収税額は異なる

扶養親族等申告書の提出有無により、源泉徴収される金額が異なります。1カ月当たりの源泉徴収金額は、それぞれ以下となります。

提出有無源泉徴収税額
提出した場合(年金支給額 - 社会保険料(※1)- 各種控除額(基礎控除 + 配偶者控除等)) × 5.105%
提出しない場合(年金支給額 - 社会保険料(※1) - 控除額(※2)×5.105%

(※1) 年金から特別徴収された介護保険料・国民健康保険料等の合計額。
(※2 )提出しない場合は、公的年金等控除、基礎控除相当額のみしか控除されません

 

(2) 源泉徴収税額を決定する際の「各種控除額」とは?

源泉徴収税額計算時に控除される「各種控除」の内容は、以下の通りとなります。

公的年金等控除
基礎控除相当
65歳未満1か月分の年金支払額×25%+65,000円
(1円未満切捨て、最低額9万円)
65歳以上1か月分の年金支払額×25%+65,000円
(1円未満切捨て、最低額13万5千円)
配偶者控除配偶者控除32,500円(年額 390,000円)
老人配偶者控除40,000円(年額 480,000円)
扶養控除
(16歳以上)
扶養控除32,500円×人数(年額390,000円×人数)
特定扶養親族控除52,500円×人数(年額630,000円×人数)
老人扶養親族控除40,000円×人数(年額480,000円×人数)
障害者控除
(本人・同一生計配偶者、扶養親族)
普通障害者控除22,500円×人数(年額270,000円×人数)
特別障害者控除35,000円×人数(年額420,000円×人数)
同居特別障害者控除62,500円×人数(年額750,000円×人数)
寡婦・ひとり親控除
(受給者のみ)
寡婦控除22,500円(年額270,000円)
ひとり親控除30,000円(年額360,000円)

所得税上、「老人扶養親族控除」の規定は、本来、同居、別居で控除額が異なりますが、上記の源泉徴収額は「別居」が前提の控除額となっています。したがって「同居」の場合は、確定申告することで、所得税が還付される場合があります。

 

4. 扶養親族等申告書の記載例

(1) 全般事項
根拠書類の添付障害者、ひとり親、寡婦に関する根拠書類の添付は、特に必要ありません。
対象年度の年度末予測情報で記載所得の見積額や年齢は、記載対象の扶養親族等申告書の年度末12月31日時点の予想数値となります。例えば、「令和5年扶養親族等申告書」は、令和5年中の所得見積額、令和5年12月31日時点の年齢で判定します。
年間所得の見積方法所得の見積額=収入額ではありません。例えば、
● 年金所得 = 年金収入 ― 公的年金等控除
● 給与所得 = 給与収入 ― 給与所得控除
公的年金等控除額は、受け取る年金、年齢、年金以外の所得の有無により異なります。(Q188参照)。

 

(2) 記載例

【表面】
記載例

【裏面】
記載例

 

5. 記載内容の詳細

(1) 冒頭部分

受給者のマイナンバー(or年金基金番号)と、提出年月日を記載します。

 

(2) A 受給者欄

本人のお名前、住所・電話番号・生年月日を記載します。

障害区分受給者本人が障害者の場合は、普通傷害・特別障害のどちらかに〇をします。障害者区分は、身体障害者手帳等の等級等により決定されます。詳しくはQ189をご参照下さい。
寡婦・ひとり親区分シングルマザー・ファーザーの方や、配偶者と死別・離婚等された方など、ひとり親・寡婦に該当する場合は、該当区分に〇をします。詳しくは、Q46をご参照ください。
本人所得本人の年間所得の見積額が900万円超の場合は、〇をします。所得見積額が900万円超の場合、配偶者控除ができません(源泉控除対象配偶者)。詳しくはQ155をご参照ください。

なお、源泉控除対象配偶者と、控除対象配偶者、配偶者特別控除の概念は異なるため、本人の所得見積額が900万円超の場合でも、配偶者の所得金額によっては、確定申告することで、配偶者(特別)控除を受けることも可能です。

 

(3) B 控除対象となる配偶者欄

法律上、婚姻関係にある方のみとなります。

源泉控除対象配偶者受給者と生計を一にする配偶者で、年間所得見積額が95万円以下の方(納税者本人の合計所得900万以下に限定
障害者に該当する同一生計配偶者受給者と生計を一にする障害のある配偶者で、年間所得見積額が48万円以下の方(納税者本人の合計所得900万以下の要件なし)。
配偶者区分配偶者の収入が年金のみで、年金額が下記に該当する場合は〇をします(配偶者の所得見積額が48万円以下となるため)。
 1. 65歳以上の場合・・年金額158万円以下
 2. 65歳未満の場合・・年金額108万円以下
上記以外の場合は、年間所得見積額(退職所得含む)を記載します。配偶者の年間所得により配偶者控除の金額が異なります。(Q47参照)。
配偶者障害区分配偶者が障害者の場合は〇をします。上記(2)①と同様です。ただし、配偶者の障害者控除は年間合計所得が48万円以下の方に限定されます(同一生計配偶者)。本人の所得制限はありませんQ155参照)。
同居等の区分受給者又は他の扶養親族との同居の有無につき、〇をします。特別障害者判定で、同居の有無により控除額が異なります(同居特別障害者、Q189参照)。
配偶者老人区分配偶者が70歳以上かつ、合計所得見積額48万円以下の場合に〇します。老人控除対象配偶者は、源泉控除対象配偶者とは異なり、合計所得見積額が48万円以下が要件となりますQ47参照

 

(4) C 扶養親族欄
控除対象扶養親族
又は扶養親族
受給者本人と生計を一にする配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)で、年間所得見積額が48万以下の方(扶養親族、Q11参照)。なお、16歳以上の扶養親族は、控除対象扶養親族と呼ばれますが、「扶養親族等報告書」は、地方税上の扶養控除も兼ねた資料となりますので、年齢にかかわらず記載します。
特定・老人の種別19歳~23歳未満の扶養親族は「特定扶養親族」、70歳以上の扶養親族は、「老人扶養親族」と呼ばれます。該当する箇所に〇をします。
障害扶養親族が障害者の場合は〇をします。
● 扶養親族のため、年間所得見積額が48万以下の方となります。
16歳未満の障害者も含まれます。
同居等の区分受給者又は他の扶養親族と同居の有無につき、〇をします。
● 老人扶養親族(70歳以上)や、特別障害者の判定で、同居の有無により控除額が異なります(Q189参照)。
年間所得の見積額扶養親族の年間所得見積額が48万円以下か超か?いずれかに〇を行います(48万円超の場合は、控除対象外)

 

(5) D 摘要欄
身体障害者の場合身体障害者手帳等の名称・等級・交付日を記載
国内別居の配偶者・扶養親族国内別居の配偶者・扶養親族の氏名・住所を記載

 

6. 前年提出済の方(継続の方)令和5年度の改正事項

前年に、「扶養親族等申告書」を提出済の方は、前年記載済の情報はあらかじめ印字されています。手順は以下となります。

 

(1) 変更ありなし欄に☑

下記の箇所に、前年より変更ありなしの箇所にチェックマークを付します。

変更ありなし欄に☑

 

(2) 氏名欄記載

提出年月日、氏名、電話番号を記載します。

氏名欄記載

 

(3) 修正・追記
前年より変更なしの場合そのまま投函します。
変更ありの場合上記A、B、C欄それぞれの内容を訂正、追記、抹消の上投函します。二重線で訂正し、訂正印は特に不要です。

 

(4) 提出期限

右上に記載された提出期限までに提出を行います。期限を過ぎると、翌年2月15日から始まる年金受給に間に合わず、源泉徴収税額が過大に天引きされてしまいます。(期限超えて提出した場合は、後から差額は返金される)

提出期限

 

(5) ご参考 令和5年の扶養親族等申告書の改正

今回の扶養親族等申告書より、以下の内容の追加があります。

国外居住の配偶者以外の扶養親族を
扶養に入れる要件の変更
非居住者である配偶者以外の扶養親族を扶養できる要件が、所得48万円以下であることに加え、以下のいずれかに該当する要件が追加されています。
● 年齢が30歳未満又は70歳以上
● 留学のために国内に住所・居所を有しなくなった(留学証明書類、在留カード等の添付)
● 障害者に該当
● 受給者から年間38万円以上の生活費、教育費の送金を受ける見込(証明書類は不要)
本人・配偶者・扶養親族の退職所得を除いた
所得見積額の記入
住民税の改正により、住民税上の各種控除は、「退職所得を含めない所得」で判定が可能となりました(本人寡婦・ひとり親控除・配偶者控除・扶養控除)。退職所得を源泉徴収票で確認。

なお、非居住者である「配偶者」や「扶養親族」を扶養控除する場合は、親族関係書類(パスポート等)を添付して提出する必要があります。

 

7. 参照URL

(公的年金等の課税関係)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

(令和5年扶養親族等申告書の記入方法)

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/fuyoushinkoku.files/fuyosyousai2023.pdf

 

8. YouTube

 

YouTubeで分かる公的年金受給者の扶養親族等申告書
 
 

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