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Q35 【所得区分別】確定申告が必要な人・不要な人 20万基準とは?/確定申告した方がお得なケースは?/しないとどうなる?

最終更新日:2025/10/09

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Q35 申告義務のある人って?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

はまだ税理士法人の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
                                                           YouTubeチャンネル:はまだ税理士法人のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

確定申告

「確定申告」は、フリーランスの方だけが必要で、サラリーマンには関係ない・・というイメージをお持ちの方も多いかもしれません。

しかしながら、確定申告が必要な人・不要な人は、「所得の種類」や「金額」などによって、必要かどうかの判断が異なります。サラリーマンの方でも、確定申告義務があるケースや、フリーランスでも確定申告不要なケースもあります。
また、状況によっては、確定申告すると「税金が還付」されるケースもあります。

そこで今回は、「確定申告が必要な人・不要な人」や、確定申告した方がお得なケースをご紹介します。

 

1.給与所得者で、確定申告が必要なケース・不要なケース

会社員やパートなど「給与所得者」の方は、基本的には、勤務先で「年末調整」が行われるため、確定申告しなくてよいケースがほとんどです。ただし、例えば、給与以外に「他の収入」がある場合は、確定申告が必要になります。
 

(1)確定申告が必要なケース

給与収入が2,000万円超の方(年末調整されないため)
主たる給与以外に「他の収入(退職所得は除く)」がある場合
同族会社の役員などが、同族会社から「貸付金利子」や「不動産賃貸料」などを受け取っている場合
(給与を受け取っている場合に限りません。金額にかかわらず確定申告が必要
災害減免法により、「源泉徴収の猶予」などを受けている人
源泉徴収義務のない者から、給与等の支払を受けている人
退職所得につき源泉徴収された金額が、本来の正しい税額より少なかった人

なお、「退職所得」については、分離課税となりますので、原則として確定申告は必要ありません
(外国企業等からの退職金など、源泉徴収されていないものは除きます)。
ただし、退職金から多めに源泉徴収されているケースもありますので、確定申告した方がお得なケースもあります。
詳しくはQ142をご参照ください。
 

(2)確定申告が不要なケース

例えば、かけもちバイトや、副業で不動産賃貸収入などある場合は、上記(1)②「主たる給与以外に他の収入(退職所得は除く)がある場合」に該当し、原則として「確定申告が必要」となります。
ただし、他の収入がある場合でも、例外的に、以下の場合は「確定申告不要」とされています。

主たる給与以外の「他の収入」の金額が20万円以下の場合
「主たる給与」+「他の収入」を合わせても、各種所得控除等差引後の課税所得がゼロ以下となる場合
複数給与から、「一定の所得控除」を差し引いて、150万以下に収まるケース

以下、それぞれお伝えしていきます。
 

 1-1.主たる給与以外の「他の収入」の金額が20万円以下の場合

主たる給与以外の「他の収入(退職所得は除く)」の金額が20万円以下の場合は、「確定申告不要」とされています。
 

(1)20万円の判定方法

「20万円」の判定は、主たる給与以外の他の収入が「給与(源泉徴収済)」の場合は、「収入ベース」で判定し、「給与以外の収入」の場合は、「所得ベース(経費を差引後)で判定します。まとめると、以下の通りです。
 

他の収入の種類 具体例 判定基準
給与の場合 かけ持ちバイト等 副業の給与(源泉徴収済)が、「収入ベース」で年間20万円以下
給与以外の場合 雑所得・不動産収入等 給与以外の所得が、「所得ベース」で年間20万円以下

他の収入が「給与」の場合は、「源泉徴収」が行われている必要がある点、注意が必要です。
 

(2)具体例

主たる給与収入400万円の他、
謝礼の受取21万円(雑所得)、謝礼にかかる経費1万円(その他の収入はないものとする)。

謝礼(雑所得)の課税所得は、経費を差し引いて、 20万円(21万円 - 1万円)となります。
⇒主たる給与以外の「他の所得」が、20万円以下となるため、確定申告は不要です。
(なお、当該20万円基準は、所得税のみの規定となり、住民税上は20万基準がありません)
 

(3)20万円基準に含まれない所得

上記の20万円基準の対象となる「他の収入」には、以下の所得は含まれません(退職所得は元々除外)

上場株式等の配当等や、非上場株式の少額配当等で、確定申告をしないことを選択したもの。
特定口座/源泉徴収選択口座内の上場株式等の譲渡所得や、特定公社債利子で、確定申告不要の場合。
源泉分離課税の預貯金等の利子等、抵当証券などの金融類似商品の収益、一時払養老保険の差益など。

 1-2.「主たる給与」+「他の収入」を合わせても、各種所得控除等差引後の課税所得がゼロ以下となる場合

「主たる給与」以外に、「他の収入」がある場合でも、給与所得控除や、その他の経費、所得控除等を差し引いて、課税所得がゼロ以下になる方は、「確定申告不要」です。
 

(1)具体例

主たる給与収入50万円、
上記の他、「副業による不動産賃貸所得」が80万円がある場合(その他の所得はないものとする)。

最低限、給与所得控除65万円、基礎控除が95万円認められますので、
50万円(給与収入合計) - 65万円(給与所得控除) = △15万円 ⇒ 切捨 給与所得ゼロ
0円(給与所得)+ 80万円(不動産所得) - 95万円(基礎控除) = △15万円
⇒ 課税所得マイナスのため、確定申告不要です。
 

(2)給与所得控除差引後のマイナスは切捨て

給与から、「給与所得控除」を差し引いた結果、マイナスになる場合は、切り捨てでゼロとなります。
当該マイナスを「給与以外の他の収入」から差し引くことはできません
例えば、上記例で、不動産所得が100万円の場合を考えます。給与所得控除差引後の△15万円を利用して、△15万円+100万円=85万円 ⇒基礎控除以下という結論にはなりません。
⇒この場合は、不動産所得100万円となり、基礎控除95万円を上回るため、確定申告が必要となります。
あくまで、給与所得控除差引後のマイナスは切り捨てとなり、他の所得から差し引くことはできない点、ご留意ください。

 

 1-3.複数給与から一定の所得控除を差し引いて150万に収まるケース

例えば、かけもちバイトなど、2か所以上から給与をもらっている場合、150万基準という例外基準があります。複数の勤務先で、それぞれ少しずつ給与をもらっているような場合が該当します。
 

(1) 要件

以下のすべてを満たす方は、確定申告不要です(所得税タックスアンサーNo1900、所得税法121条二 )

2か所以上から給与の支払(すべての給与源泉徴収済)を受けている
「給与収入」から、雑損控除、医療費控除、寄付金控除、基礎控除以外の各所得控除(※)の合計額、を差し引いた金額が150万円以下
給与所得及び退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円以下

(※)具体的には、社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、地震保険料控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除の額の合計額を差し引くことが可能です。

わかりにくいと思いますので、具体例で解説します。
 

(2) 具体例

① 主たる給与収入130万円(年末調整済)
② 主たる給与以外の給与(2か所) 50万円+30万円 (どちらも源泉徴収済)
③ 給与所得及び退職所得以外の所得(事業、不動産、雑所得等)はなし
所得控除(配偶者控除+扶養控除) 76万円あるものとします。

 

● 主たる給与以外の「他の収入の合計額」は80万円 ⇒ 20万円超のため、上記1-1は適用不可
● 3か所の給与収入合計210万円 - 給与所得控除71万円 - 基礎控除58万円 - 所得控除76万円 = +5万円 
  ⇒上記1-2は適用不可 (基礎控除の額は、令和8年までの経過措置ではなく、本則軽減前の数値で算定しています)

ここで、上記の例外規定にあてはめます。

 

給与収入 - 一定の所得控除
 < 150万円か?
給与収入(主たる給与以外も含む)の合計は210万円。
所得控除76万円を差し引くと、134万円 < 150万円となります。
 ⇒ 要件満たす
給与所得及び退職所得以外の所得合計
 < 20万円か?
「給与所得及び退職所得以外の所得」のため、従たる給与(②の金額)は含めず、③の金額だけで判断します。つまり、今回の場合、③の金額0万円≦20万円なので 
 ⇒ 要件満たす

(結論)

上記の規定より、確定申告の必要はありません
 

(3) 注意事項 給与全部が源泉徴収されていることが前提

上記の規定は、給与の全部につき、源泉徴収等がされていることが前提の規定となります(所得税法121条二)。例えば、2か所以上でバイトされていても、すべての給与所得から源泉徴収されていなければ、上記の規定は適用できません

なお、すべての給与から源泉徴収されている場合、適用は可能ですが、一般的に、主たる給与以外は「乙欄」で高い所得税率が天引きされている可能性が高いですので、確定申告することで還付されるケースも多いかと思います。
 

2.年金受給者の場合

公的年金所得者の場合は、公的年金の他に収入がなく、年金収入が400万円以下の場合は、確定申告は不要です。
また、公的年金等以外に収入がある場合でも、年金収入400万円以下であり、かつ他の所得が年間20万円以下であれば、確定申告は不要です(外国からの公的年金など、源泉徴収されていないものは除きます)。
なお、公的年金等収入が400万円超の場合は、当該20万基準はありません。詳しくは、Q187をご参照ください。

 

3. フリーランス等の場合(事業所得等)

(1)所得が生じる場合のみ申告義務あり

フリーランスの方などは、勤務先での年末調整がありませんので、原則として「確定申告」が必要となります。
ただし、所得税は、収入に対して課税されるわけではなく、「経費」や各種の「所得控除等」を差し引いた後の「課税所得」に対して課税されます。

課税所得は以下の式で算定されます。
 

課税所得 = 収入 - 経費 ー 各種所得控除等

 

収入から「経費」や「所得控除等」を差し引いて、課税所得がゼロになる場合は、確定申告義務はありません
 

【確定申告をする必要がある人 所得税タックスアンサー No2020抜粋】
・・その年の「所得金額の合計額」が「所得控除の合計額」を超える場合で、その超える額に対する税額が、配当控除額と年末調整の住宅借入金等特別控除額の合計額を超える人

 

所得控除とは、基礎控除、扶養控除、医療費控除など、各人の状況に応じて認められる経費のようなものです。
なお、令和7年に基礎控除が最低95万円に改正されたため、所得税が課税されない方(=申告義務がない方)は増加すると思われます。
 

(2)申告義務判定の具体例

●個人事業主A 売上から諸経費(青色申告特別控除含む)を差し引いた金額は90万円(=事業所得)
●所得控除は、基礎控除のみとし、その他の所得控除はないものとする。

事業所得90万円 ≦ 合計所得金額132万円のため、基礎控除は、最大値95万円認められます(令和7年改正)
基礎控除差引後のAの課税所得は、事業所得90万円 - 所得控除95万円(基礎控除) = △5万円

所得がマイナスのため、所得税はゼロ 確定申告は必要ありません
 

(3)結論

事業所得の場合、最低でも95万円超なければ、申告義務はありません(他の所得がない場合を前提にします)。
例えば、創業間もない方などで、「赤字」の場合は、申告義務はありません。

なお、上記の事例は、「基礎控除のみ」の場合の申告義務の判定です。
例えば、Aに配偶者がいて、配偶者控除38万円ができる場合は、Aの所得控除は合計133万円(95万円+38万円)となります。この場合は、事業所得が最低でも133万円超なければ「申告義務」はありません。

「所得控除」の金額は、各人によって異なりますので、各人の所得控除等の適用金額により、申告義務がない金額は、各人によって異なってくる、ということになります。
 

4.確定申告した方がよいケース

副業の人はどうなるの?

「確定申告不要のケース」に該当する場合でも、給与や年金・事業所得等から「源泉徴収」されている場合や、「予定納税」している場合は、確定申告することで、「所得税」が還付されるケースもあります。

給与や年金所得者の場合でも、「源泉徴収」や「年末調整」で考慮されている所得控除等は、すべてではありません。例えば、「医療費控除」「ふるさと納税」などは、源泉徴収税額や年末調整には反映されていませんので、確定申告することで、所得税が還付されるケースもあります(ふるさと納税ワンストップ特例は除く)。

 

(1)確定申告した方がお得なケース

代表的な例は、以下の通りとなります。

医療費控除ふるさと納税があるケース
住宅ローン初年度(初年度は年末調整不可。2年目以降は、勤務先で年末調整が可能)。
年の途中で退職し、年末までに再就職していない人
青色申告事業者で、事業で赤字が出ている場合(欠損金の繰越控除)
上場株式譲渡損失と配当所得等の損益通算・損失繰越控除、居住用財産の譲渡損失の繰越特例を受ける場合
非居住者の国内給与や、退職金等から多く源泉徴収されている場合(退職所得の受給に関する申告書 未提出)

なお、給与所得者が、他の所得等も含めて確定申告する場合は、「給与所得」も合わせて申告書に記載します
(申告する場合は、年末調整済の給与も含めて申告が必要)

 

(2)融資等の際に必要なケースも

銀行融資等を受ける際に、「確定申告書等の提出」を求められる場合があります。
また、確定申告しなければ、「非課税証明書」や「所得証明書」が発行されず、国民健康保険料の軽減措置や、お子様の奨学金の申請などができないケースもあります。
したがって、現実的には、申告義務がない場合でも、確定申告されている方も多いです。

 

5. 申告しないとどうなる?

確定申告義務があるにも関わらず、しなかった場合は、本来の税額に加えて、ペナルティ(無申告加算税や延滞税)があります。悪質な場合は重加算や刑事罰を科せられるケースもあります。
 

税率 内容
無申告加算税 納税額に対して15%~20%
(自主的に期限後申告をした場合には、5%に軽減)
申告しないことに対するペナルティ
延滞税 特例基準割合+1%or7.3% 期限内に納付されなかったことに対するペナルティ

 

なお、還付できるにもかかわらず、「確定申告し忘れた」場合でも、5年以内であれば、「確定申告」で税金の還付が可能です。また、すでに行った「確定申告が間違っていた」場合は、「更正の請求書」で差額部分の税金が還付されます。
 

6. 参照URL

(確定申告 タックスアンサー2020)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2020.htm

 

(確定申告が必要な方)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tebiki/2024/01/1_06.htm

 

7.YouTube

 
YouTubeで分かる「確定申告の申告義務」
 

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

はまだ税理士法人の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
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