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Q198 【令和7年改正 記載例付】公的年金等の受給者の扶養親族等申告書の提出が必要な人/提出しないとどうなる?/源泉所得税は?

最終更新日:2025/09/13

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Q198 【令和5年度】公的年金等の受給者の扶養親族等申告書とは?書き方は?/提出しないとどうなる?/源泉徴収税額は?

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
近畿税理士会 神戸支部:登録番号121899
日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
兵庫県行政書士会:登録番号19300373
1973年生まれ、大阪府豊中市出身
あずさ監査法人出身
クレアビズコンサルティング株式会社:代表取締役
YouTubeチャンネル:濱田会計事務所のちょっとお得な税金の豆知識
相続専門サイト:御影みらい相続センター

公的年金等受給者の場合、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」という書類がお手元に届く方もおられます。
毎年9月頃、「日本年金機構」から送付されます。
令和7年に基礎控除等の改正があり、当該「扶養親族等申告書」の記載内容が大幅に変更されています。

そこで今回は、「扶養親族等申告書」の記載例や、提出が必要な方、提出しない場合の影響等をお伝えしていきます。

 

1. 扶養親族等申告書とは? 送付される方は?

(1) 公的年金等の受給者の扶養親族等申告書とは?

「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」は、毎月受け取る年金から天引きされる「源泉所得税」の金額を決定する書類です。公的年金等には所得税等が課税されますが、当該所得税は、原則として、年金受取時に源泉徴収されます。
 

(2) 送付される方

「扶養親族等申告書」は、すべての年金受給者に送付されるわけではなく、所得税が課税される方にのみ送付されます。

公的年金等については、その収入額全額に課税されるわけではありません。年金収入に応じた「公的年金等控除」や、各種の所得控除(基礎控除、扶養控除等)が認められています。

したがって、公的年金等収入から「公的年金等控除」を差し引いて、「基礎控除以下」に収まる方には送付されません。
令和7年に「基礎控除」の改正が行われたことから、令和7年以降、送付される方は、以下の方となっています。

65歳以上年金収入205万円以上の方
65歳未満年金収入155万円以上の方

なお、障害年金、遺族年金については、所得税は非課税となっています。

 

2. 提出する効果・提出は必ず必要か?

(1) 提出する効果・メリット

扶養親族等申告書を提出しない場合でも、最低限、「基礎控除」や「収入に応じた公的年金等控除相当額」を考慮して源泉徴収税額を計算してくれます。

しかしながら、扶養親族等申告書を提出することで、追加で4つの所得控除(①配偶者控除 ②扶養控除 ③障害者控除 ④寡婦・ひとり親控除)を受けることができ、その結果、毎月の源泉徴収税額が安くなります。
サラリーマンの方が提出する「扶養控除等申告書」と同じような効果を有する書類です。

逆に、上記の所得控除があるにもかかわらず、提出しない場合は、年金受取時に源泉徴収される金額が多くなります。この結果、確定申告しないと還付を受けることができなくなるため、手間が生じます。

 

(2) 提出が不要な方

「扶養親族等申告書」が送付されている方でも、上記4つの所得控除(配偶者控除・扶養控除・障害者控除・寡婦/ひとり親控除)がない方は、提出する必要はありません
例えば、配偶者や扶養親族等がいない方については、そもそも提出してもしなくても、「源泉徴収税額」への影響はありません。

提出する必要がない方は、下記のすべてにあてはまる方となります。

受給者本人が障害者寡婦・ひとり親に該当しない
控除対象配偶者 or扶養親族等がいない
退職手当を受ける見込みのある配偶者or親族がいない。

なお、給与所得があり、勤務先に扶養控除等申告書を提出済の場合は、「扶養親族等申告書」は提出できません。
 

(3) 提出は必ず必要か?確定申告は不要?

扶養親族等申告書を提出すると、毎月の源泉所得税が安くなりますが、必ず提出しないといけないわけではありません。確定申告すれば、税額は正しく清算されます。
また、たとえ提出した場合でも、源泉徴収税額は、すべての所得控除が反映されているわけではなく、あくまで概算税額となるため、確定申告することで還付されるケースもあります。
例えば、医療費控除等は、源泉所得税額に反映されていませんので、確定申告することで徴収されていた所得税が還付されるケースもあります(公的年金受給者の確定申告については、Q188をご参照ください)。

 

3. 源泉徴収税額の計算

(1) 提出有無により、源泉徴収税額は異なる

扶養親族等申告書を提出しない場合、源泉所得税算定時の所得控除額は、最低限の控除(公的年金等控除、基礎控除相当額)しか考慮されないため、毎月受け取る年金から徴収される「源泉徴収税額」は多くなります。

提出する場合、しない場合、それぞれの「1カ月あたりの源泉徴収金額」は、以下となります。

提出有無源泉徴収税額
提出した場合(年金支給額 - 社会保険料(※1)- 各種控除額) × 5.105%
提出しない場合(年金支給額 - 社会保険料(※1) - 控除額の一部)(※2)×5.105%

(※1) 年金から特別徴収された介護保険料・国民健康保険料等の合計額。
(※2 )提出しない場合は、公的年金等控除、基礎控除相当額(下記参照)のみしか控除されません

 

(2) 源泉徴収税額を決定する際の「各種控除額」とは?(令和8年以降)

源泉徴収税額計算時に控除される「各種控除」の内容は、以下の通りとなります。

公的年金等控除
基礎控除相当(※) 
65歳未満
(年金収入213万円以下)
1か月分の年金支払額×25%+105,000円
(1円未満切捨て、最低額13万円)
65歳以上
(年金収入242万円以下)
1か月分の年金支払額×25%+105,000円
(1円未満切捨て、最低額17.5万円)
配偶者控除一般の配偶者32,500円(年額 390,000円)
老人控除対象配偶者40,000円(年額 480,000円)
扶養控除
(16歳以上)
一般の扶養控除32,500円×人数(年額390,000円×人数)
特定扶養親族
特定親族(令和7年新設)
52,500円×人数(年額630,000円×人数)
老人扶養親族40,000円×人数(年額480,000円×人数)
障害者控除
(本人・同一生計配偶者、扶養親族)
普通障害者22,500円×人数(年額270,000円×人数)
特別障害者35,000円×人数(年額420,000円×人数)
同居特別障害者62,500円×人数(年額750,000円×人数)
寡婦・ひとり親控除
(受給者のみ)
寡婦22,500円(年額270,000円)
ひとり親30,000円(年額360,000円)

(※)上記年金額を超える場合
65歳未満(年金額 213万円超)  1か月の年金支払額×25%+100,000円(最低額12.5万円)
65歳以上(年金額 242万円超)  1か月の年金支払額×25%+100,000円(最低額16.5万円)

所得税上、「老人扶養親族控除」の規定は、本来、同居、別居で控除額が異なりますが、上記の源泉徴収額は「別居」が前提の控除額となっています。したがって「同居」の場合は、確定申告することで、所得税が還付される場合があります。

 

4. 扶養親族等申告書の記載例

(1) 全般事項
根拠書類の添付障害者、ひとり親、寡婦に関する根拠書類の添付は、特に必要ありません。
対象年度の年度末予測情報で記載所得の見積額や年齢は、記載対象の扶養親族等申告書の、年度末12月31日時点の予想数値となります。例えば、「令和8年扶養親族等申告書」は、令和7年中に提出しますが、1年後の令和8年12月31日時点の年齢、令和8年中の所得見積額を記載します。
年間所得の見積方法所得の見積額=収入額ではありません。例えば、
● 年金所得 = 年金収入 ― 公的年金等控除
● 給与所得 = 給与収入 ― 給与所得控除
公的年金等控除額は、年金額、年齢、年金以外の所得の有無により異なります。
提出期限原則として10月末までとなります。期限を過ぎると、翌年2月15日から始まる年金受給に間に合わず、源泉徴収税額が過大に天引きされるケースもあります。

 

(2) 記載例

【表面】

 

5. 記載内容の詳細

(1) 冒頭部分

受給者のマイナンバー(or年金基金番号)と、提出年月日を記載します。

 

(2) A 受給者の欄

本人のお名前、住所・電話番号・生年月日を記載します。
 

 

本人障害区分受給者本人が「障害者」の場合は、普通傷害・特別障害のどちらかに〇をします。
障害者区分は、身体障害者手帳等の等級等により決定されます。詳しくはQ189をご参照下さい。
寡婦等区分ひとり親の方や、配偶者と死別・離婚等された方など、ひとり親・寡婦に該当する場合は、該当区分に〇をします。

退職所得がある場合】
寡婦控除、ひとり親控除は、本人の年間合計所得金額500万円の要件があります。当該判定において、所得税上は退職所得を含めて判定しますが、住民税上は退職所得を除いて判定します。当該申告書は、住民税上の扶養控除も兼ねた資料となりますので、退職所得を除いた所得で要件に該当する場合は、〇を記載します。

本人所得区分本人の年間所得の見積額が900万円超の場合は、〇をします。所得見積額が900万円超の場合、源泉所得税の計算上、配偶者として扶養人数にカウントできません(「源泉控除対象配偶者」、障害者に該当する同一生計配偶者は除く)。

 

(3) B 控除対象となる配偶者の欄

法律上、「婚姻関係」にある方のみ記載が可能です。青色事業専従者及び白色事業専従者は除きます。
 


 

源泉控除対象配偶者受給者と生計を一にする配偶者で、年間所得見積額が95万円以下(給与収入換算 160万円以下/年金収入換算 65歳以上205万円以下・65歳未満155万円以下)の方 (納税者本人の合計所得900万以下の方に限定)。
障害者に該当する同一生計配偶者受給者と生計を一にする障害のある配偶者で、年間所得見積額が58万円以下(収入換算額は同上)の方(納税者本人の合計所得900万以下の要件なし)。
配偶者の区分【配偶者の収入が年金のみの場合】
年金額が下記に該当する場合は〇をします。
 1. 65歳以上の場合・・年金額 168万円以下(=年金所得 58万円以下)
 2. 65歳未満の場合・・年金額 118万円以下(=年金所得 58万円以下)

【上記以外の場合】
すべての所得を合計した年間所得見積額(退職所得含む)を記載します。配偶者の所得額により、「源泉徴収」で受けられる控除に制限があります。

【退職所得がある場合】
配偶者に退職所得がある場合は、上記(2)②と同様です。所得税と住民税で取扱いが異なるため、退職所得を除いた金額を記載します。

配偶者障害区分配偶者が障害者の場合は〇をします。上記(2)①と同様です。
本人の所得制限はありませんが、配偶者の障害者控除は配偶者の年間合計所得が58万円以下の方に限定されます(同一生計配偶者)。
同居等の区分配偶者が、受給者又は他の扶養親族等と同居か?別居かを選択します。同居の有無により、配偶者の「特別障害者」の控除額が異なります(同居特別障害者)。

【非居住者の場合】
配偶者が、非居住者の場合に〇をします。

配偶者老人区分配偶者が70歳以上かつ、合計所得見積額58万円以下の場合に〇します(「老人控除対象配偶者」。老人控除対象配偶者は、源泉控除対象配偶者とは異なり、合計所得見積額が58万円以下が要件となります。

なお、あくまで扶養親族等申告書は、「源泉控除対象配偶者等」を記載する書類となり、「配偶者控除の対象となる配偶者」とは範囲が微妙に異なります。例えば、本人の所得見積額が900万円超の場合でも、確定申告することで、配偶者(特別)控除を受けられる場合もありますのでご留意ください。
 

(4) C 扶養親族等の欄

「配偶者以外」の親族情報を記載します。青色事業専従者及び白色事業専従者は除きます。
なお、同一の方が、複数の扶養親族等にはなれません。


 

源泉控除対象親族
又は扶養親族
受給者本人と生計を一にする、配偶者以外の親族(6親等内の血族及び3親等内の姻族)で、年間合計所得見積額が58万以下(19歳以上23歳未満の場合は85万円以下)の方

【留意事項】
令和7年の改正により、19歳以上23歳未満の親族については、年間合計所得58万円以下の「扶養親族」だけでなく、58万円超85万円以下(給与収入換算 123万円超150万円以下)の親族も、源泉所得税算定時の計算にカウントできるようになりました(源泉控除対象親族)
扶養控除等申告書の「源泉控除対象親族」とは、所得要件が異なる点にも注意

●「扶養親族等申告書」は、住民税の扶養控除も兼ねた資料となりますので、年齢に関わらず、16歳未満の扶養親族も含めて記載します。

特定・老人の種別● 19歳~23歳未満の親族で、合計所得金額が85万円以下の方は「特定」に〇をします(特定扶養親族・特定親族両方の記載を兼ねています)。
● 70歳以上の場合は、「老人」に〇をします。
障害扶養親族が障害者の場合は〇をします。
● 扶養親族の年間所得見積額が58万以下の方となります。
16歳未満の障害者も含まれます。
同居等の区分記載した方が、受給者又は他の扶養親族等と同居か?別居かを選択します。同居の有無により老人扶養親族(70歳以上)や、特別障害者の控除額が異なります。

【非居住者の場合】
記載者が非居住者の場合、国外居住に〇をします。その他、30歳以上70歳未満の場合など該当する箇所に〇をします。詳しくは、こちらをご参照ください。

年間所得の見積額扶養親族の年間所得見積額が①58万円以下、②58万超85万円以下、③85万円超、いずれかに〇を行います。年間所得見積額が58万円(19歳以上23歳未満は85万円)を超える場合は、たとえ氏名等を記入しても、源泉徴収額が安くなることはありません

【退職所得がある場合】
記載された方に、退職所得がある場合は、上記(2)②と同様です。所得税と住民税で取扱いが異なるため、退職所得を除いた金額を記載します。

なお、あくまで扶養親族等申告書は、「源泉控除対象親族等」を記載する書類となり、所得控除が可能な「特定親族」とは範囲が微妙に異なります。例えば、19歳以上23歳未満の親族の所得見積額が85万円超でも、確定申告することで「特定親族特別控除」を受けられる場合もありますので、ご留意ください。
 

(5) D 摘要欄

扶養親族等申告書の裏面の一番下に「摘要欄」という項目がありますが、こちらは身体障害者の等級や、非居住者の名称等を記載します。

身体障害者の場合身体障害者手帳等の名称・等級・交付日を記載
配偶者・扶養親族が非居住者の場合氏名・住所・非居住者である旨を記載


 

6. 前年提出済の方(継続の方)

前年に、「扶養親族等申告書」を提出済の方は、前年記載済の情報はあらかじめ印字されています。
変更がなければ、お名前等のみ記載して、提出します。
変更ある場合は、上記A、B、C欄それぞれの内容を訂正、追記等行います(二重線で訂正し、訂正印は特に不要)。

 

変更ありなし欄に☑

 

7. 参照URL

(公的年金等の課税関係)

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm

(令和8年 扶養親族等申告書の記入方法)

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/topics/2022/fuyoushinkoku.files/fuyosyousai2023.pdf

 

8. YouTube

 

YouTubeで分かる公的年金受給者の扶養親族等申告書
 
 

この記事は税理士/濱田隆祐により執筆されました。

公認会計士・税理士:濱田隆祐(はまだりゅうすけ)

濱田会計事務所の代表税理士
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日本公認会計士協会 兵庫会:登録番号17074
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